目にいっぱいの砂を食んでいた。
ぼやけた視界を上に引っ張れば何か液体を飲まされる。味覚が効かないため本来ならば恐れるべきなのだろうが、なぜだかうんと優しく感じて、意識を手放した。
次に目を覚ました時にもまだそばにいてくれた其の人を、今度ははっきりとした意識で見る。一つの皴もない衣服に身を包んでいる体は、ふくよかな体型と形容するには見た目のメカニックさに邪魔される。顔を見れば無機質に赤く光る眼がこちらを覗いていた。
それが覚えている限りの一番昔の記憶であり、命の恩人であるカイザーPMC理事との出会いであった。
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「今回の対象は我がカイザーグループの工場やビルの周辺でデモ活動をしている団体の全員を倒すことだ。一度叩けばうるさい愚鈍どもも少しは静かになるだろう。」
そうして今はキヴォトスの大企業であるカイザーコーポレーションの系列企業、民間軍事会社のカイザーPMCで恩を返すために仕事をしている。
通信越しに見える理事は話を続ける。
「奴らの拠点にはいくつかのプロパンガスボンベが併設されている。打ち抜けばよく燃えるだろう。彼らのライフラインではあるが、所詮は平和と自由を謳うカイザーグループに仇をなしている悪人どもだ。気にしなくていい。」
遠くを見れば件のガスボンベが見える。
横の民家には電気がついているが、理事がそういうなら大丈夫でそれが平和で正義なのだろう。
あの時に感じたやさしさはきっと幻じゃないから。
腰のベルトに取り付けられた水筒を親指でなぞる。
あの時の液体の容器であり、私の正しさの証。
もっと機能的なものに変えろと言われたが、個性的な見た目も相まって、変える気にはなれなかった。あの口が悪く仏頂面な理事がこれを持っていたというのだから少し心の内で笑ってしまう。
そして覚悟を決める。背中に担いでいたスナイパーライフルの足を立て、構える。
「……まあ、そうだな」
スコープを覗き込み照準を合わせる。
「戦闘に明るくないであろう相手に奇襲も踏まえて」
引き金にかけた手に力が入る。
「一分で終わらせろ」
「了解しました。」
――瞬間、爆発が起こる。
煙の中に目を凝らせば照明が消えている。どうやら電線も焼き切れたらしい。
慣れた手つきでスナイパーライフルを背中に固定し、今度は腰につけているサブマシンガンを手に取る。明らかに重量過多だが、この世界のヘイロ―を持つ生徒にその常識は通用しない。
民家から煙に巻かれ、焦りながら出てくる数名の影が見える。
あれが
とうに慣れてしまった火薬のにおいに安心感を覚えながら全速力で走り、距離を詰める。まだ十秒弱だ、余裕はある。
外に出た奴の銃口がこちらに向く前に仕留め、民家の中に侵入するのは丁度二十秒を過ぎたあたり。だが、おかしいブリーフィングの情報では最低でもあと五人はいなければならないはずだ。逃したのかと焦りで壁を蹴飛ばし外を見やるが、そんな形跡は見られない。
――あと、三十秒。
外で倒れている奴等の中から意識のあるのを起こし叫ぶ
「残りの奴らは何処だ!」
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まるで死の淵に立っているような剣幕で怒鳴られた彼の表情には恐怖が浮かんでいた。
「し、しらない!」
そう答えるが、収まりはしなかった。それどころか頭にかぶっている白い布と黒い髪から覗く眉間には皴が寄り瞼はあり得ないほど見開き、ともすれば眼球が落ちてきそうな気すら感じさせた。
だが彼にも引けない理由があった。
「俺たちは確かに武力による襲撃を起こそうとしていた!だがここにいない奴らはみんなそうしようとはしなかった!」
「なぁわかるだろ!?俺たちだってカイザーのせいで人生めちゃくちゃなんだよ!お前に情があるならせめてあいつらだけでも見逃してやってくれないか!?」
……残念ながら説得は届かず、肩を掴む手の力が強くなるだけであった。
キヴォトスにはロボットや悪魔のような角が生えた住民がいるが、彼には目の前にいるのはロボットよりも情に薄く悪魔よりも理不尽な存在に見えた。カイザーの発行する借金の利子の10分の一で金を貸してくれた銀行の役員を悪魔だと一緒に罵っていたのは、そこに倒れているあいつだったか……そんな突拍子のないことを考えてしまう彼の心は限界だった。
「わかった。わかったから一人目の背が高いやつの場所は……」
そうして彼は話だした。
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焦っていた。仕事は『全員の討伐』そして情報によればデモ隊の人数はまだ残っている。
「し、しらない!」
嘘だ。
きっと嘘だ。
目が泳いでいる。
失敗したらきっと失望される。この場で倒すのが無理なら、居場所を吐かせればきっと許してくれるはず。額に頬に汗が垂れる残り二十秒。
「なぁわかるだろ!?俺たちだってカイザーのせいで人生めちゃくちゃなんだよ!お前に情があるならせめてあいつらだけでも見逃してやってくれないか!?」
悪人は平気で嘘をつく。そしてそんな奴への対処法は、全部理事が教えてくれた。
手のひらに力が入る。
――早く
――早く!
――早く!!
「わかった。わかったから一人目の背が高いやつの場所は……」
やっぱり嘘をついていた。
すべて聞き終えたときには残り五秒を過ぎていた。
大急ぎで理事への回線を開く
「ぎりぎりか……」
不満げな声音に少し震えながら報告を始めた。
「報告をします。まず民家にいたデモ隊は……」
「――そうか。まあ、いいだろう。その情報の場所にはこちらから軍を向かわせておく、仕事は終わりだ。戻ってこい」
……通信が切れる。
どうにかなった現状に安心しながら、水筒に口をつける。
緊張による喉の渇きではない。体質的な問題で、こまめに水を口に入れないとパニックになってしまうのだ。大事な水筒を持ち歩くのもそれが要因の一つであったりする。
やけに重たい足を無理して動かし帰路に就くのだった。
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やがてたどり着いた砂漠の中の一画。というには少し大きいかもしれないが、そこには拠点であるカイザーPMCの基地があった。何やら『宝探し』のためであり、その『宝』は世界平和にとって大きな役割を果たすとのことらしい。
ここには大量の人がいる。大義のためにひとまず見つかるまでこれからも全力を尽くそうとケツイがみなぎった。
さて、入り口から入り気づいたがかなり中がざわついている。
比較的冷静そうな職員に話を聞いてみれば、先ほどまで侵入者が入ってきていたらしい。
正体は大量の借金が積み重なっている『アビドス高等学校』だったとのこと
五人で乗り込んできたにも拘らず、かなりの戦力であったそうな。
情報を頭に入れながら理事の役職室へと向かう。
部屋では理事と黒いスーツを身にまとった人の話が終わったところであった。
黒いスーツはその人を確かに象徴するものであったが、それよりも目を引いたのは顔面に入った亀裂と妖しく笑う口元だった。一般人であると決して言えない不気味な風貌からは寒気を引き出された。振り返った黒いスーツの人はこちらを見た後そのまま歩いてきて、まるで心でもわかるかのように、
「黒服です、どうぞ。」
と、すれ違いざまに名乗り部屋を出て行った。
理事に黒服とは何者かを聞きたい気持ちを抑え椅子に座っている理事の前に立った。
「――先の任務ご苦労だった。」
「取り敢えず少しの休憩期間だ、次の任務が決まれば連絡する。以上。」
「はい。失礼しました。」
会話が淡白過ぎて少し先ほどの黒服に嫉妬を覚えながら部屋を後にする。
水筒を飲みながら窓を見ると人がまず残っていない砂漠特有の綺麗な星の輝きとともにもう夜であること、そしてご飯をまだ食べていないことに気が付いた。不思議なもので意識した途端にご飯のことしか考えられなくなる。まだ重い足にあと少しだと言い聞かせ食堂に向かうことにした。
登場人物
主人公ちゃん
次で自己紹介が挟まると思います
カイザーPMC理事
カイザーコーポレーションの理事であり、カイザーPMCの代表取締役。
でけぇ岩を投げつけられると死ぬ
黒服
黒い。
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どれぐらい書けばいいのかわからず、他の方の小説を参考にしようと文字数チェッカーに通してみたところ一万字を超えており、でんぐり返しをしてしまいました。
すでに心が折れそうです