砂混じりの企業少女   作:華氏6度

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プロローグ(2)

 食堂へ向かう頃には基地内の騒々しさも不安や愚痴から明るいものに変わってきており、その様は笑い声などの騒がしさへと変わっていた。

さっぱり目の日替わり定食を少し悩んだ後、結局いつものから揚げ定食に決めてジューシーなお肉に思いを馳せながら注文する。

そして待ち時間に昔の記憶をたどる。

このいつものと出会ったのは確かこの食堂を初めて利用したときだろうか。うまく利用できずにいた私の横から勝手に二人分のから揚げ定食を頼み、おすすめだからと食べさせてくれた。そんな思い出。傍から見ればかなり痛かった行動に見えるかもしれないが、実際助かったのも事実だ。他を食べたことはないからもっとおいしいものもあるのかもしれないけど、この食堂でそれを食べることが習慣になってしまった。

 

 この時間は食堂利用者も多いこともありすぐに提供され、それが乗ったトレイを持ちながら、企画的空いているテーブルの席に少女は座る。

「今日の任務はずいぶんと大変だったそうじゃないか。」

少女の同僚はそう話しかける。

彼は少女のことをかなり気にかけていた。尤もその理由は世話焼きである彼の本質にあるのだが。

「別に。たった一分で終わった普通の仕事だった。」

少女はそんな彼の内側にある心とは裏腹に、ぶっきらぼうな対応で答える。

遅れて出た何故内容を知らない彼がそんなことを?という問いはすぐに晴れた。

味噌汁の中の自分がひどい顔をしていたのだ。元々意識して鏡を見ない質の少女だったが、それでもすぐに異常であると気づいた。顔色は味噌汁に溶けて見えないが、目元や閉じていない口から疲労が感じ取れる。

その時少女は初めて先の任務が自分に精神的負荷をかけていたことに気が付いた。

 

『なぁわかるだろ!?俺たちだってカイザーのせいで人生めちゃくちゃなんだよ!お前に情があるならせめてあいつらだけでも見逃してやってくれないか!?』

 

「…………」

「無理はしない方がいいと思うぜ?」

「……貴方には関係ない」

気持ちトレイをテーブルの対角線にいる彼から離し、もう見えないように味噌汁を飲み干した。

次に吐いた息は白く、空気に溶け込んでいく。

休みの趣味の話題などで盛り上がっている周りとは対照的に端に食器がぶつかる音しかしないテーブルにはその他の人は来なかった。少女が喉に詰まらせながら食事を終わらせれば、自分より前からいた現在進行形で困った顔をしている彼よりも早くに立ち上がりトレイを返却口に向かう。

未だ治っていない足の重さは、から揚げを急いで食べたことによる胃もたれということにした。

 

 そうして自室に帰る。荷物を置き急ぎ足で洗面所に向かって台に手のひらを叩くように置き向こうにいる人間を睨む。高くも低くもない身長の内訳である平坦な胴体と細い腕。ストレートセミロングから覗くいつもよりも鋭い目は不満を主張していた。

其れは私だった。間違いなく私であった。

恩人の下で働き、今日も任務を成功させて、不味くないご飯を食べている。

 

――私だった。

 

口に含んだ髪の毛の不快感で引き戻される。初めての感覚に髪が伸びたことを実感する。

まだここまで髪が長くなかったあの頃。

 

   ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

最初からずっと私は必死だった。

 

「安定するまでここにいるといい。」

 

砂漠に倒れていた私に自室を与えてくれた理事に何かを返したかったから。

心の底から言った。少し泣いていたかもしれない。

「……あの!」

「何かで恩返しさせてください!」

 

「……そうか、それなら。」

 

簡単なテストをした。多分普通の学校でやるような体力測定とか、射撃演習。

 

「運動センスに、そのスコアか……なら少し、仕事を任せられるかもしれない。」

 

運がいいことに私は普通よりも良い結果が出せたらしい

これなら、その長所を生かして働ける。上がった息を整えながら理事のことをまっすぐ見て。

「わかりました。任せてください!」

 

仕事に必要なことを直接教えてもらった。

「いいか?一見善良な人に見えても大体の奴は腹に何かを抱えてる。簡単に信用するな。常に疑ってかかれ。」

 

「じゃあ……ここにいる人たちも……?」

 

「ああ」

 

「理事は?」

 

「私は行動で示しているだろう?それに、カイザーコーポレーションは平和のための組織だ。その重役だ。その私が邪悪であるはずがないだろう?」

 

「そうですね。」

 

 

初任務は一人の離反者の粛清だった。

目に映るのはやっぱり砂。

アビドス砂漠を拠点にしてれば嫌でも入ってくる。5付けられたGPSの残り2つ離反者はそれに気づけずに壊しそびれたのだろう。

両手にサブマシンガンを強く握り、不安定な足場の砂を蹴りそれを動力として加速する。飛んでくる手榴弾は撃って壊すか、砂をかけて不発にした。弾丸を当て体力を奪っていけば廃墟群に逃げ込んだ。そのまま追跡する。

潜伏先の部屋のドアを蹴り飛ばせば座り込んでいた離反者は驚いた様子だった。

また逃げ出すために立ち上がりながら嘆いていた。

「なぜ逃げきれない……!」

手に持つGPSアプリを目の前の離反者に見せてみれば諦めたように立ったそばから座り込み、抵抗をやめた。

理事に任務の報告をしようと回線をつなげばまだだと言う

 

「まだ、逃げられる可能性がある。」

 

「ですが……。」

 

「社外秘の文書が流出する可能性がある。そうすれば不和を望む連中が阻止をしに来るだろう。」

「気絶させろ。」

 

生憎と気絶させる方法は一つしか知らない。

弾丸がまだ残っていることを確認したのち目の前の離反者に向ける。

 

「おい待て、もう抵抗はやめる!」

 

恐怖に竦んでいるが、止めるわけにはいかない。

 

「大丈夫だ。これは正しいことだ。」

 

理事の声がイヤホンから耳に入る。

決意を固める。そうだ。これは正しいこと。

全身から汗が出てくる。

グリップを強く握り。

引き金に手を当て。

そして

 

 

――ピピピッ!

通信が入った。いらないことまで思い出してしまっていたようだ。

回線を開けば相手は理事だった。

次の仕事なのだろう。元々長い休みがもらえるなんて期待はしていなかった。

ただ

「次の仕事の詳細が決まった。目標はアビドス高等学校。我々はもう待つことをやめにした。

差し押さえに当たってアビドス高等学校の生徒が抵抗に出てくるだろうが、彼女らの主戦力である小鳥遊ホシノは契約のためこちらで保護するため、残りの4人に外から来た大人を足しての5人のみだ。人数差を埋めるために我がカイザーPMC軍も同行することになる。

作戦決行日は小鳥遊ホシノが運ばれる予定の一日後。明後日に行う。」

精鋭が集まるアビドス高等学校だと聞いているが、カイザーPMCの軍隊が数十人来るのだから、件の大人を考慮しても、過剰な方だろう。

「本作戦も頼むぞ『白妙ヒトミ』」

 

「了解しました。」




登場人物

主人公=少女=白妙ヒトミ
 カイザーPMC所属の生徒。記憶喪失により、年齢不明。
 砂漠で倒れているところを拾われ、PMCで働くことに。
 身長150↑で白い布をかぶっている。
 敬語が外れている方が素。
 
 固有武器
 ファーストブラッド
 安全性や安定を犠牲に火力を維持下げることなく軽量化したスナイパーライフル。
 ――任務の遂行には、火力が必要だ。


カイザーPMC理事
 カイザーコーポレーションの理事であり、カイザーPMCの代表取締役。
 ヒトミの雇い主であり、戦闘や任務のことを教えた。


同僚
 何かとヒトミを気にかけているPMCの戦闘員。
 PMCがあくどいこともしているのを認識しており、そのうえで生活のため働いている。
 ヒトミにから揚げをおすすめしたのもこの人。
 他より身長が高く声が低い(当社比)


アビドス高等学校
 天災の砂嵐で本校は埋まり、人も少なくなった。
 今生徒が残っているのは分校のほうである。
 総生徒数5人と、異常な少なさながら、一人一人が強いため、襲撃を退けている。

   ―――――――――――――――――――――――――――――――――――

これでプロローグは終わりとなり、本編が始まります。
二つに分けなくてもよかったなぁと少し後悔しています。

ハーメルンの普通はわからないですけど誰にも読まれないかな……と思っていたのですが、読んでくださる方、一話目でお気に入り登録してくださる方、評価を付けてくださる方までいて!!
うれしみのあまり、阿波踊りを踊ってしまいました。

読んでくださる方に満足していただけるような作品にするために頑張ります!
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