狼は共食いなんかしねえが、
人間ときた日にゃ生き身の人間をぼりぼり食うんだ。
『紅い花』より。
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あの騒動から一か月とは言わずとも、何週間かが過ぎようとしていた。
丁度気持ちよく日が当たり思わずあくびが出てしまうようなアビドス高等学校の一教室で、先生含めて対策委員会の全てのメンバーが集まっていた。
「こんにちは、先生」
「アビドス対策委員会の一日は、今日もまた慌ただしいです」
そうして、奥空アヤネは先生にそれからのことを話始めた。
対策委員会が正式にアビドスの生徒会になったこと。アビドスの借金は相変わらずなくなっていないこと。前回の騒動が何もなかったかのように証拠隠滅されていてカイザーコーポレーションにお咎めが何のなかったこと。『黒服』については何もわからなかったこと。
そして最後に小鳥遊ホシノの元気がないことを耳打ちした。
「……それではアビドス対策委員会の定例会議を始めます」
そんな言葉で締めるとともに彼女たちの少し歪な日常が始まった。
「それでね、仮想通貨っていうのは~」
「セリカの詐欺話はさておき、この経路から建物に侵入すると――」
各々が目を輝かせながら自分が持ってきたプランを説明するも、再現性の無さや、倫理的問題から撃沈していく。
「そんな簡単に大金は稼げませんよね~やっぱり前話していたアイドルの件を――すいません電話です」
十六夜ノノミは電話でひとしきり会話し終えた頃。
「すいません~少し急用で席を外しますね~★」
そう言っていそいそと教室を出ていった。
「ノノミ先輩が抜けてしまいましたが、まだ時間もありますので続けたいと思います」
しばらく談笑ともとれる対策の案を出し合った時、壊れそうな勢いでドアが開いた。
「大変なことになった、協力してほしいの」
息を上げながら入ってきたのは三大学校が一つゲヘナ学園の風紀委員長空埼ヒナであった。
「”どうしたのヒナ!?”」
尋常ではない様子で教室に入ってきた生徒に先生は要件を尋ねる。そしてヒナはその問いにこう返した。
「カイザーコーポレーションがとんでもない兵器を発見したらしいの」
「その名を『列車砲シェマタ』」
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私は走っていた。もちろん任務のためだ。前回の失敗についても、理事から何も言われなかったが簡単にわかるほど距離が遠くなっていくのを感じる。きっと、次はないだろう。
それ以外は日常を取り戻していた。変わったことといえば世間からの風当たりが強くなり、以前のように外出できなくなったことぐらいだろうか。昔までは気にも留めなかったであろうことにも反応してしまう。
『人を傷つけて金を受け取ってうれしいか?クズが』
今日の依頼の最中に言われた言葉だ。
いままでの悪口や恨み言を集めれば一冊本ができてしまうのではないかと思ってしまう心は、ゆっくりと荒んでしまっていってしまう。
足取りが重くなってしまって。
帰りたくなくなって。
少し、寄り道をした。
失敗続きだったがようやく成功した任務の帰り道では、目に入るゴミすら心地よく感じて。
丁度いいあの渓谷で、足を滑らせればこの安寧が続くのだろうかとそこまで近づいた。
今思えばこれが良くなかったのだろう。
これから始まる一連の惨事の始発点だったのだろう皮肉に光る鋼鉄の輝きを。
あの時はただただ、きれいだと思った。
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「”列車砲シェマタ……”」
復唱し、思案する先生をよそにヒナは辺りを見渡す
「貴方たち、十六夜ノノミは……?」
「電話で呼ばれて今席を外していますが」
「遅かったのね……」
「ノノミ先輩がどうしたのよ」
「あの子のゴールドカードがシェマタの鍵よ」
「どうしてノノミが……?」
「そのことは追って話すわ、とにかくすぐ見つけないと」
「”ノノミの位置はわかったよ、道案内は任せて。」
「すぐにでも行きましょう。あなた達も仲間を取り戻すために」
一向はすぐに駆け出した。砂漠の様子は変わらない中、気持ちの良い日の光は暑苦しいだけのものへと変貌を遂げていた。
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「どうして今の道を曲がったんですか?」
外の景色が映画のフィルムのよう車窓に映し出しているのを眺めながらノノミは執事に聞いた。こんな荒廃しただけの景色の映画は売れないだろうと、この町の昔を思い出しながら。
「……お嬢様に向かっていただく場所はネフティスではありません」
「……」
ノノミは何も言わずにそのまま景色を眺め続けた。
騙して悪いが、仕事なんでな。
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一区切りついてのプロローグなので今回は文字数を控えさせていただきます。(言い訳)
それとXアカウントを開設いたしました。適当なことと裏話を喋れたらと思います。
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