砂混じりの企業少女   作:華氏6度

9 / 11
助け舟(ブースター付き)

喧しい車の駆動音が収まれば、目的地であろう廃墟にたどり着いた。ボロボロで風情すら感じる壁には所々に窓が配置されているが、残念ながらブラインドが中の様子を覗く私の視線を遮ってしまう。手前で待っていた四五人に囚人のごとく移動を急かされる。もう見なくていいと思った感情が感じ取れない顔面に張り付いている液晶から、私は苛立ちを隠せているのだろうか。

 

入り口を(くぐ)れば、老衰に足が縺れているかのように、心許無く放つ蛍光灯の明かりを頼りに(もぐ)っていく。潜ると言えど、階段で上に登っているのだが、私には髪がぼさりとしてしまうような、じめりのある不気味な洞窟の探索に感じられて仕方なかった。

 

一階層上がるたびにちらほらと見えるうんとも言わない無機質や、年季の割の大所帯の移動が与える振動に耐えきれず、ぽろぽと壁から離れていく破片が落ちていくのを数えるのにも飽きてきた頃、目的の階層に着いたようで少し進んで左にある部屋に押し込められる。私が歩く速度に不満があるのか、何回か背中を押されるたび歩幅がずれてステップでも踏んでいるような気分になる。それほど優雅なものでもなかったが。

 

そして部屋の奥の椅子に座らされる。何人かの体に遮られはするが、部屋の全貌が見渡せる位置だ。十歩ほどで端に辿り着くぐらいの正方形の空間で執事がようやく口を開く。

 

「早速本題ですが」

「お嬢様、カードを渡していただけますか?」

「どうしてですか?執事さん。それにそこにいる彼らと随分と仲が良く見えるのですが」

「お嬢様には関係のないことです。カードを渡していただけますか?」

 

「……怪しすぎて、渡したくないですね。ネフティスに返却ということでしたら私からしておきますので、スマホを返していただけますか?」

拒否の意思とわざと的外れな返答を返せば、執事は意図を理解したようにため息をつき。

 

「荒事はしたくなかったですが、お嬢様が望むのであれば仕方ないでしょう」

すちゃりと何人かの銃口が向けられる。

「少しの間気絶していただきますね」

だだだと銃声が響き倒れた。

 

私の目の前のロボットが。

「なっ……!」

執事の驚いた声と同時に、先ほどまで体で塞がれていた場所が見えるようになれば、奥にまた別の大きい躯体が手に持つアサルトライフルから少量の煙を出していた。

 

少しの静寂の後、銃撃戦が始まった。

一人であるにも関わらず、軽快な身のこなしで被弾を抑えて人数差を埋めていく。

それは最後、執事の顎にハイキックをめり込ませ私の方に手を差し出して。

 

「助けに来たぜ、行こうかお嬢様」

そう言った。

 

 

私は一連のことを見ていることしかできなかった。愛銃を持っていないことも影響していたが、一番の要因はあまりにも速くの出来事だったからだ。

勿論そんな短時間で何が起こったかなど分からずに茫然していると、がたがたと階段を上ってくる音と少し慌てたような声が部屋の外から聞こえてくる。

 

「あぁもう。あとからうだうだ言うなよ」

彼は片手で私を掬い上げて抱えて、そしてそのまま走り出した。

 

ドアを足で蹴り開け、見える敵の意識を次々に落としていく。動くものが見えなくなれば、持っていたアサルトライフルをドアの近くで倒れている奴の物に持ち替えて、階段とは反対の方向へと走っていく。ようやく明瞭になってきた頭の中は疑問でいっぱいになっていた。

 

「彼らとは仲間じゃなかったんですか?」

「仲間だったさ、つい数秒前まで」

「なぜこんなことを……?」

「そういうことは逃げ切ってからだ、な!」

 

投げ込まれた焼夷弾の火に進路を塞がれるが、小指に引っ掛けた発煙手榴弾で消化していく。

 

体をここまで届く煙に巻かれ、そのまま突き進む。煙の中に入ってくるのを迎撃しながら。

 

抜けだして見えたのはT字の通路。奥はガラス張りになっており、右と左の通路に五人ほどのロボットが片方ずつ待ち構えていた。

大きさ故か、ブラインドは掛けられておらず代わりのカーテンが外界を遮断している。

 

 

「止まれ!」

口の動きがなくて誰が言ったか分かりはしなかったが、そう言われた。後ろの煙が晴れてきて、兵士が同じく五人ぐらい。

 

「歓迎パーティーにしては人数が少ないじゃないか」

「黙れ、裏切り者が。束の間の逃避行もここで打ち止めだ」

 

「どうかね、悪いが俺はもう少し続けたい気分なんだ」

その言葉と共に走り出した。

 

「撃て!」

全方位から弾をばら撒かれ、私にも少し当たるが、この程度ではキヴォトスの住民は倒れはしない。

「歯を食いしばっておけよ」

小声で囁かれ反射的に従う。

そして奥のカーテンの裂け目に銃口を突き立てて、窓に亀裂を入れて。

肩を武器にしたタックルで窓を破った!

 

暗く窮屈な洞窟に穴が開き、輝く世界が広がる。

 

「フハハハハーーー!!」

間近に聞こえる高笑いと一緒に仰向けで落ちていけば、確かに少し気分が良かった。

笑う気分にはなれなかったが。

 

増していく速度を落とすため、銃の先を廃墟の壁に直線を引いていく。衝撃で滑り落ちるが、地面に着くころには恐怖を感じない速度になっていた。

 

「こんな高さから落ちたのは初めてです~」

「そいつはよかった。あとはあんたのミニガンと俺の荷物を回収して撤退する。あと一走りだ」

「スマホは回収してるから安心しろよ」

「いろいろ起き過ぎて頭が追いつきません……」

 

少し話していると上から打ち下ろされ始める。

「やばやばやば!走れ走れ!」

「わわわわわ!」

急いで廃墟から逃げ出した。




てめぇ、誤射じゃねぇな・・・!

   ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

諸事情で休み休みではありますが、28キロ走ったので全身が痛いです。
あとガシャポンでノノミのラバストが出ました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。