From outside Kivotos   作:ケトゥ毛

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 楽園から追放されたのだ 
 きっとそれは”エデン“ではなかった
 でも間違いなく楽園だった
 楽園でさえも失われた
 もはやその存在証明などしようもない


3話『青春の物語への侵入者』

 

 

「セリカちゃん、今日はもう上がっていいよ。」

 

「はーい」

 

いつも通りバイトが終わる。もう遅い時間帯なので帰る支度をする。

 

 

ビュオオオオオオオオォォォ〉〈ガタッガタッ

 

 

「うおっ」

 

「な、何!?」

 

 突風が吹くような音と共に窓が揺れる。

 

「あちゃー……こんな時間に嵐か?」

 

嵐?暗い上に暴風が吹き荒れる中で帰るのは大変だ。帰れなかったら嫌だな....

 

ヒュオオオオォォォォォォ……

 

「……ってあれ?」

 

 風が弱まってきた。

 外を覗いてみる。静寂に包まれていて、空が曇っているわけでもない。

 

「ただの突風……?」

 

「そうか……?ならいいんだけどよ……」

 

今日の天気予報をアプリで確認する。これから数時間は快晴と表示されている。

でももしかしたらこれから天候が悪化するかもしれない……。

 

「おっ、帰るのかい?」

 

「はい、天気が悪くない内に帰りたくて……」

 

「そうか、じゃあ気をつけてな!」

 

別れを告げて外に出る。

 

うぅ……さむっ……

 

 夜は冷えるものだけど、何故かいつもより気温が低い気がする。

 それに電灯が故障したのか点滅したり消えたりしているせいかいつもより暗い。

 おまけに全く人通りが少ないどころか誰も歩いていない。

 

(いつもはもっといるのに……)

 

 なんだか不気味だ。早く帰りたい……

 何だか今日だけ似てるけど違う世界にいるみたいに感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ザッザッ……

 

 

 アスファルトに何かを引きずるような音が聞こえた。

 後ろに誰かいるのかと思って振り返る。

 

「(誰もいない……)」

 

「(気のせいだったのかな……)」

 

 少し不穏だ。

 なるべく気にしないようにして家路を辿る。

 

ザザッ ザッ

 

(……!)

 

 また聞こえた。今度ははっきりと。

 

「(な、なんなの……?)」

 

 気味が悪い、そう思っている内に無意識に少し早歩きになっていた。

 

ザッザッザッ

 

「(まただ……!)」

 

 音と同時に咄嗟に振り向く。すると音が止まった。

 間違いなく誰かいる。でも一体何者……? 何のために……?

 

「(まさか……”ストーカー”……?)」

 

 不意に“ある人物“が脳裏に浮かぶが……。

 あの人ならこんなことせずに話しかけてくるだろうし、悪趣味なイタズラもしないだろう。

 

「(もしかして、またヘルメット団?)」

 

 その可能性は低そうだけど、とりあえず良くない状況なのは間違いない……。

 

「(とりあえず逃げなきゃっ!)」

 

 走って何とか撒こうとする。

 

 

ザザザッザザッ

 

 足音が速くなった!音が近づいてくる。

 

 自分よりも速く迫ってきているように感じる。

 

 このままでは追いつかれる....!相手の思う壺にはなりたくない。

 だから『シンシアリティ』を構えて後ろに向けて叫ぶ。

 

「居るのは分かってるわ!目的はなんなの!?」

 

 あの時の二の舞にはなりたくない。しかし足音は止まらずに近づいてきた……!

 

ザザザッザザッ

 

 そして……

 追い……抜かれたっ……!?

 

 足音が自分の進路よりも先の位置で止まる。

 いまだに相手の姿が見えない。

 

「(もしかして……私が狙いじゃないの……?)」

 

 明らかに私の後をつけてきているようだったのに……。

 

「(でも……なら、今のうちに……!)」

 

 走り出そうとする。

 すると

 

「 ぉ ぃ }

 

「っ!!」

 

 真横の路地から“何か”に呼びかけられた。

 突然の出来事に声も出せない。

 

みつ け た 」

 

「ひっ……」

 

 背筋が凍る。段々と“それ”が近づいてくる。近いのに真っ暗で音の正体が見えない。

 

{ お 前は 俺 か ]

 

 まるで人の声を無理やり再現しようとして失敗したような合成音声、それに似た神経を逆撫でするその“音”が言葉で私に問いかけてきている....?

 

「 お前 は俺 か}

 

「(なに……!?なんなの……!?)」

 

 鳥肌が立つ。気がつくとすっかり足がすくんで金縛りにあったように動けなくなっていた。

 

{お 前 は 俺 か

 

 同じ言葉で問いかけられる。

 “俺”? オレ? お礼? おれって何のこと……?

 

し……しら……ない……!

 

 声を振り絞る。

 でも“それ”はこの言葉には反応しない、依然としてじわじわと迫ってくる。

 

 

 

【 お前 は 俺 か }

 

 目の前まで“それ”が来る。

 見えないのに恐ろしくて腰が抜けてしまう。

 

「こ、来ないでっ……!」

 

 暗がりに“六本の指”がうっすらと見えた。

 異様に細長い手がこちらにゆっくりと伸びてくる。

 

「(嫌っ……)」

 

 恐ろしくて目を瞑った。

 

 同時に何か“ざりざりとした”砂のような感触が頭を這う。

 

ち がう }

 

 人ではないものの声が脳内に響くと同時に、意識が奥へと押し込められた。

 

 

 

 

 

————————————————————-

 

 

 

 

 

ピピピピッピピピピッ

 

「“ふわぁあぁぁ……”」

 

 久々に良く寝れた。アベルの件もあって仕事を早く切り上げても良くなったのでかなり健康的な睡眠が取れた。三、四日徹夜する事もざらにあったのでなんだか嘘みたいに爽快な朝だ。

 

 でも、そんな量の仕事は誰がやるんだろう?

 

 もしかして後回しになってるだけ?

 

 少し申し訳ない気持ちになる。いつか埋め合わせはしよう、いつになるか分からないけども。

 

「“アベル、朝だよ”」

 

 アベルの元まで行って少し揺さぶる。

 

「……!」

 

 ぱっちりと目を開けて起き上がった。

 目を大きく開けているときの顔は少しだけアリスに似ている気がする。

 

「“おはよう、アベル。“」

 

「……お、はよ」

 

「“上手く喋れるようになってきたね。”」

 

 とても学習が早いような気がする。

 このぐらいの年の子どもってみんなこんな感じなんだろうか?

 

 時間を確認しようとして端末を起動する。

 

「“なんだこれ……”」

 

 とんでもない量の通知が入っている

 

「(私、何かしたっけ)」

 

 とりあえず内容を確認する。

 

「“な、なんだこれ……”」

 

 とんでもない鬼電の履歴と最後に添えられた『すみません、こちらだけで対処できそうです。夜分遅くに申し訳ございませんでした。』というメッセージ。

 

「(何かあったんだろうな……)」

 

 それだけは分かる。

 とにかく職場に向かってから色々聞こう、話はそれからだ。

 

 

 

 

 

--------------------ー-------------

 

 

 

 

 

 職場に着いてから例の人物に連絡する。

 

「”おはよう、リンちゃん。“」

 

「誰がリンちゃんですか——ではなく……昨晩は申し訳ございませんでした……」

 

「”何があったの?“」

 

「そうですね……。昨晩、先生がご帰宅なされてからの話なんですが、つい先日に発生した”歪み“、それと同質の反応が”アビドス砂漠“から検出されたのです……。」

 

「(”アビドス砂漠“……!)」

 

 まさか、黒服の忠告通りになったという事か……?

 

「D.U.で観測されたものよりもかなり規模が大きかったため、先生の支援が必要になるのかと思われたのですが、周辺には住民もおらず、“カイザーコーポレーション”が所有している場所とも離れていたため、わざわざ先生の手を煩わせる必要が無いと判断しました。」

 

「なので……。昨晩は、その……。申し訳ございませんでした……。」

 

「“いやいや、無事で何も心配ないのならそれで良かったと思うよ。だから気にしないで。”」

 

 やっぱりD.U.での一件もあって様々な問題の対処に追われていたのだろう。アベルも私に丸投げするぐらいには。

 なのでかなり心の余裕が無かったからあの鬼電に繋がったのだと考えられる。

 

「(本当にいつもお疲れ様です……)」

 

「”……それで、結局何か変わったことは?何かその”歪み“の跡に残ってたりしなかった?”」

 

「それなんですが……調査した時には既に何も無く、確認できた事はただ地形が円形に窪んでいたぐらいです。なのであの子……いえ、アベル……さん.……? のように何かが現れるような事態にはなりませんでした。」

 

「“そうなんだ。ありがとう。“」

 

「では、申し訳ありませんがこれ以上時間を割くとD.U.が混乱に陥りかねないので私はこれで失礼させて頂きます……。」

 

「”あっ、引き止めちゃってごめんね...“」

 

「元々は私の不手際が原因なのでお気になさらないで下さい。それではこれで……」

 

 ホログラムが切れる。

 

「(おいたわしや……)」

 

 と、いう事で今アベルと共にシャーレのオフィスにいる。

 

「先生、おはようございます。今日はよろしくお願いします……ってこの子も居るんですか……」

 

「“やあ、ユウカ。”」

 

 ユウカが今日の当番としてここに来た。

 

「”じゃあそこの書類の整理を頼めるかな。“」

 

「えっ、あっはい」

 

 ユウカには悪いが私はこの子に目をつけておくのも義務なのだ。

 

「じゃあ、私も休んだ分も含めて仕事を———」

 

 と思ったところで着信が入る。何だろう?

 

 この着信は……アビドス高等学校の生徒、奥空アヤネからのものだ。

 

「“私だよ。どうし——“」

 

「先生っ!大変ですっ!」

 

「“お、落ち着いて。何があったの?”」

 

「先生……すみません……少し焦ってしまって……」

 

「先生……セリカちゃんが……セリカちゃんが……」

 

「( この流れは……まさか…… )」

 

 

「セリカちゃんが()()行方不明になってしまいましたっ!」

 

 

「“ええ!?”」

 

「せ、先生!?どうしました!?」

 

「“ユウカ!アベルを頼む!」

 

「先生!?ちょっ、どこ行くんですか!?先生!?」

 

 

 

 

--------------------------------------

 

 

 

 

 

「先生!」

 

「“ごめん遅れた!詳しく聞かせてくれ!”」

 

 セリカがまた行方不明になってしまったため、アビドス高等学校に来た。そして今から詳細を聞く。

 

「はいっ、朝、いつも通りセリカちゃんを呼びに行ったんですが……あの時と同じで返事が無くて、部屋には制服もカバンも無くて……」

 

 確かに、あの時と同じだ。ということは……。

 

「”またヘルメット団の仕業なのかな?“」

 

「いえ……それが……」

 

「ん、もうヘルメット団は〆た。」

 

「”シロコ!?“」

 

 締めたっ!?

 

「でも何も知らなかった。関係は無さそう。」

 

「”そ、そうなんだ“」

 

「“となると……カイザーコーポレーション……?”」

 

「それも違うだろうね。おじさんも色々調べたんだ。だけどカイザーは今回の件には関わってないみたい。」

 

「私はセリカちゃんのバイト先に話を伺ったのですが……いつもの時間に帰宅してその後は知らないようで……」

 

 ホシノとノノミからも情報が提供される。

 思い当たる節が全て外れてしまう。

 

 いや、一つだけ関係があるかもしれない

 

「”みんな、少し聞いてくれないか?——”」

 

 

 

 ……という訳でこの場の全員に“歪み”の事、アベルの事を話した。

 

「なるほど……つまり“歪み”から“何か”が生じていてそれが関係あるかもしれない、という事ですか……」

 

 歪みが観測されたのは滅多に人のいないアビドス砂漠、わざわざそこにセリカが行く理由が無いため吸い込まれたという訳では無いだろう。

 

 加えて、リンちゃんは歪みの跡には何も残っていなかったと話していた。でもあくまでそれは”確認した時点で“の話。アベルの時とはまた別で生じた”何か“が自ら移動した可能性はある。

 

「だとしても、その情報からはセリカちゃんが今どこに居るかまでは分からないね。先生、どうするの?」

 

 ホシノの冷静な分析が入る。

 

「”心配ない、あの時と同じように何とかするさ“」

 

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

 

 

「この『シッテムの箱』に常駐しているシステム管理者であり、メインOS——A.R.O.N.A、命令待機中。」

 

「”A.R.O.N.A!頼みがある。セリカの居場所を特定してくれないか?“」

 

「承りました。直ちに実行致します。」

 

「“ありがとう、助かるよ。“」

 

「それと、先生。」

 

「”...?何かな?“」

 

「“何か”がアビドス砂漠から監視カメラを掻い潜って侵入してきたようです。くれぐれもお気をつけ下さい。」

 

「“ああ、ありがとう!”」

 

 

 

 

 

------------------------------

 

 

 

 

 

「“特定できたよ!場所は……”」

 

 手短に位置を伝え、その場所まで向かう。

 

「セリカちゃん!」

 

 セリカの位置が特定された場所まで来た。

 しかし、おかしい……

 

「“セリカ……?”」

 

「セリカちゃん!こんなところで何してるの!?」

 

 セリカは見つけた、見つけはした。でも予想とあまりにも違う……。

 

 誘拐されている訳でも拘束されている訳でもなく、ただ誰もいない廃棄された都市を練り歩いている。

 

「セリカちゃん!待って!」

 

 遠くに見えるセリカをアヤネが追いかけようとする。

 

「待って、アヤネちゃん」

 

「“ホシノ……?”」「ホシノ先輩、なんでですか!?」

 

 ホシノがアヤネの腕を掴んで引き留める。

 

「何か、いや明らかにおかしい。」

 

「でも……! そこにセリカちゃんがそこに……!」

 

「……アヤネちゃんは待ってて、“私”が見てくるよ」

 

 一瞬の間に放たれたホシノの真剣な雰囲気に気圧される。

 

「でも……先輩……」

 

「おじさんなら大丈夫だよ〜、だから信じて、ね?」

 

 いつもの口調に戻る、でも真剣な眼差しはそのままだ。

 

「“なら……!”」

 

「“私も行く、生徒に任せっきりするのは大人として情けないからね!”」

 

 少なくともここまで連れてきたからには私も“責任”を果たさなければならない。

 

「分かったよ、こういう時の先生は止められないからね。」

 

 

 二人でセリカに近づく

 

「“セリカ? 私だよ、こんなところで何してるの?”」

 

 恐る恐る話しかける。

 こちらに気づいたのか、首だけを振り向かせた。そしてワンテンポ遅れて体全体をこちらに向ける。

 

「“セリカ……?”」

 

 セリカだ。見た目そのまま、でも何故か彼女は愛銃とカバンを持っていない。

 おまけに目もどこか“虚ろ”で、焦点があっていないようの見える。

 

「“セリカ……? 何か嫌な事でもあったの……? 話を聞くよ……?“」

 

「待って、先生。」

 

 ホシノに制止される。そして彼女は語りかける。

 

「セリカちゃん……じゃないよね?」

 

「”……え?“」

 

 セリカじゃ……ない……?どういうことだ?

 

 するとセリカ?が口を開く。

 

お前は 俺か?

 

「”え……何……?“」

 

お前は 俺か?

 

 セリカの声だ。セリカの声で、セリカの姿で”それ“は問いかける。

 

「”『俺』って何かな....?“」

 

お前は 俺か

 

悪寒が走る。会話が通じない、”不気味の谷“現象のようでゾッとする。

 

お前は 俺か

 

「動くな」

 

 歩み寄ろうとした“それ”に、ホシノが低く警告を飛ばす。銃口は一切ぶれない。

 

「動けば撃つ」

 

 通じているかは分からない。

 だが、“それ”は向けられた銃の存在だけは正確に理解していた。足が止まり、僅かに重心が沈む。

 

「……」

 

 一瞬の静止。

 

 ――次の瞬間。

 

「“なにっ……!?”」

 

 “それ”が、地面を蹴った。

 

「警告はしたからね」

 

ダアンッ‼︎

 

 “Eye of Horus”が火を吹く。

 狙いは致命部位ではない。抑止と制圧だから急所は外してあるようだ。

 

ヒュッ

 

「“なっ……!?”」

 

 避けた……いや、弾道を読んだように滑り抜けた。

 

 銃弾が空を裂く。その軌道の“隙間”を縫うように、“それ”は身を翻し、跳ね、踏み込む。

 ひらり、ひらりとまるで重力の支配を受けていないかのような動き。

 

「“なんてアクロバティックな動きだっ!?”」

 

「くっ!!」

 

 ホシノは即座に距離を切る判断を捨て、近接格闘を想定した体勢へ移行する。

 だが速い。

 

 視界に入った瞬間にはもう、蹴りが来ていた。

 

 反射的に上体を反らし、紙一重でかわす。

 だが、それで限界だった。

 

 着地の一瞬。

 体勢が流れた、その“後隙”。

 

 “それ”が踏み込み、ホシノの頭が掴まれた。

 

「“……なんだ!?”」

 

 ホシノの視界が急激に歪む。

 セリカの体から、“灰のようで、煙のような”黒い粉末が噴き出したかと思うと、意思を持つかのようにホシノへと流れ込んでくる。

 

「――っ!!」

 

 次の瞬間。

 ホシノとセリカは、同時に地面へと崩れ落ちた。

 

「“ホシノ!?大丈夫かい!?”」

 

 するとホシノが何事もないようにむくりと立ち上がる。

 

「“ホシノ……?”」

 

こ れも ち がう

 

「“ホシノ……?何を言って——-“」

 

シュバッ

 

 

先生っ!

 

「“えっ”」

 

 駆けつけてきたシロコ達の声が聞こえた。

 そしてホシノが私の方向へ……!?

 

「“まずい……!”」

 

 銃弾ではなく飛んでくるのは肉体!バリアで逸らす事はできない……!

 

「“がっ....!?”」

 

 顔をむんずと掴まれる。

 

「ホシノ先輩!?何やってるんですか!?」

 

 

先生!!

 

 その声が聞こえた同時に、意識が奥へ、底へと押しやられた。

 

 

 

 

 

--------------------------------

 

 

 

 

 

 朧げだが何か見える。これは、私の視界……?

 

 だが私の意思とは関係なく動いている!

 

先生……?

 

「(駄目だシロコ!それは”私“じゃない!)」

 

 だが声が届かない。まさか“何か”が私を乗っ取っている……!?

 直後、内側から壊れたような不安定な声が聞こえる。

 

ち がう

 

違う ち がう チガ う }

 

{どこに も な い

 

 

俺 じゃ な い

 

 

こ こ じゃ ない

 

ど こ だ

 

 

先生!待って!どこにいくの!?

 

 体が勝手に廃墟の暗がり走り出す。

 馴染んだ自分だけの体が全くいうことを効かないのを見ているだけしかできない……!

 

「(くそっ……!)」

 

 なんとかできないのか……?

 

バタン

 

「(何だ!?)」

 

 突然、体が倒れた。

 

 同時に視界にかかったモヤが晴れていく。

 

「“んぐっ!? げほっげほっ”」

 

 体の奥底から”灰のような“粉末が噴き出て暗がりへと飛んでいく。

 そして気づいた。

 

「体が……動く……!」

 

 体の自由が戻った。しかしもうヘトヘトに疲弊している。

 

「先生!!」「一体どうしたんですか!?」

 

「“シロコ!!ノノミ!!”」

 

 私を追ってきた二人と合流する。

 

「”私はもう大丈夫だ!ホシノは!?セリカは!?”」

 

「はぁ……はぁ……。おじさんなら……ここにいるよ……」

 

 ホシノがセリカを担ぎながら来た。

 彼女もとても疲弊している、しかし、ありえない。彼女この程度でこんなに息を切らすはずがない。

 

「先生!先輩!何が起きてるんですか!?」

 

「“アヤネ……!”」

 

全員が揃った……!

 

 

 

 

 

-------------------------------------

 

 

 

 

 

「やっぱり、先生もおじさんと同じで体を乗っ取られていたみたいだね。」

 

「“となるとセリカも……”」

 

「体を、乗っ取る……? でも“何が“そうするの……?」

 

「それよりもセリカちゃんが目を覚さないのは何でですか……?まだ乗っ取られているんですか……?」

 

「”アヤネ、『何か』が乗っ取る体を移る時、灰のような粉末が噴き出て移っていた。そしてそれは私の体から出て廃墟の奥へ消えていったんだ。だからもう乗っ取られてはいない、はず……“」

 

「では……まさか……」

 

「脈はある。その心配は要らない。」

 

 シロコがセリカの首に触れながらそう補足してくれた。

 

「げほっ!げほっ!」

 

「「セリカちゃん!?」」

 

 突然セリカが咳き込んだ。

 

「”セリカ!?大丈夫!?“」

 

「うぅ……やめて……私は……”俺“じゃ……ないから……」

 

 意識が朦朧としているのかうわ言を発している。

 

「セリカちゃん!」

 

「先生!手当をお願いします!」

 

「“分かった!”」

 

 

「けほっ……」

 

 そうして水分を摂らせたりしているうちに彼女が目覚めた。

 

「“セリカ!私が分かるかい!?”」

 

「んん……先生……」

 

 

 

 

 

-----------------------------------

 

 

 

 

 

 目覚めたセリカを連れてアビドス高等学校へ戻った。

 幸運な事に特に後遺症などは見られなかったが、極端に疲弊し切っている事だけは確かだった。

 

 乗っ取られた者に共通するもの……それは極度の疲弊……。

 そしてあるフレーズ、“お前は 俺か?

 

 これらは一体何を意味するのだろう……?

 

「”……それにしても、セリカは攫われてばかりで何だか”どこかのお姫様“みたいだね”」

 

「それじゃおじさん達は配管工ってこと?」

 

「う、うるさい!」

 

「でも良かったです……こうしてまたみんな揃ったのですから……ね、シロコちゃん?」

 

「ん、そうだね。だっては私たちは」

 

 

「アビドス生徒会なんだから」

 

 




[補足]

-先生とアベル
 現時点ではアベルは突然現れたよく分からない子供なので彼にとってはどちらかといえば生徒達の方が大事です。そもそもどちらかなど決める人物ではないですが。

-歪み
 何かによって何もない状態を通り越して物理的に負の値まで到達した結果発生する現象。紙を折り曲げて点と点を繋げるように、領域同士を繋いでいるのかもしれない。エセサイエンスなのでそこまで設定は気にしなくていいです。

-アビドス生徒会
 ま……まさか……。


ユウカが苦労人枠になりそうです。

本当にキャラクターに違和感がないか心配なので指摘してくれたら本当に嬉しいです。

オリキャラ周りがかなりダークな雰囲気になる可能性があるのですが、参考にしたいのでできれば......

  • 暗い。陰鬱な雰囲気は好き
  • 別にいいと思う
  • あまり好きでは無い
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