[完結] From outside Kivotos 作:ケトゥ毛
「“……協力?”」
「そうですとも。“契約”などという大層なものではなく、純粋な協力です。」
「“……何を企んでる?”」
黒服の底知れない瞳を凝視しながら問いただす。
「クックック……そもそも、企むほどの事ではございませんよ……私はただ、この事態の起源を知りたいだけなのです。」
言葉を切り、黒服は不気味に肩を揺らす。
「第一……あくまで私が今求めるものは先生、あなたの協力であって、あなたの愛弟子たちの身柄などではございませんので……」
あくまで生徒に手を出すつもりはないらしい。
……が、言葉通りに額面通り受け取っていいものだろうか。どこまで信用できたものではない。
「”私の協力? それで、今度はどんな実験をするつもりなんだ?“」
「実験ですか……クックック……あなたが望むのなら、そのように捉えていただいても構いませんが……?」
実験ではない……? じゃあ黒服は何を真に望んでいるんだ?
「ああ、勿論今すぐに決断していただきたい訳ではございません。詳細はお伝えいたしましょう。」
黒服が指を鳴らす。
「ひとまず、場所を変えましょうか。」
〈カチッ〉
「“……!!?“」
「な、なんですか!?」
突然、周囲の景色がぐにゃりと歪み、一瞬で別の場所へと切り替わった。視界が開けると、何故か目の前にヒマリが驚愕の表情で立っている。
「先生!? もしかして完璧病弱天才美少女に会いたいが為に、瞬間移動をも習得したというのですか!?」
「“ここは……”」
「問題なく動作したようですね。安心して下さい。あなた方に危害を加えるような品ではございませんので。」
「!」
これもゴルコンダの所持する作品による現象というわけか……。
無数のモニターが整然と並ぶ巨大な部屋。見覚えがある、ここは特異現象捜査部の部屋だ。
周囲を見渡せば、ヴェリタスの生徒たちも目を白黒させて立ち尽くしている。
「一応ですが、あの場にいた生徒の皆さんもここに移動させておきました。あなた一人だけを引き抜いては、誘拐だと誤解をされても困りますからね。」
確かに私一人だけを連れ去ったのなら、拉致されたように見えて生徒たちが暴走しかねない。
「先生、あれは一体……?」
「他の方には申し遅れましたね。わたくしの名前は、『ゴルコンダ』と申します。そしてこちらは、わたくしの体を代行してくれている『デカルコマニー』です。」
「そういうこった!」
ゴルコンダの背後から現れた絵画が声を張る。
「私のことは『黒服』とでもお呼びください。」
「ゴルコンダ……デカルコマニー……黒服……」
「私たちは、観測者であり、探究者であり、研究者です。『ゲマトリア』という名を拝借して活動しております。」
「ゲマトリア……まさかこのような形で相まみえることになるとは……」
ヒマリも彼らの存在については予期していたようだ。車椅子の手すりを強く握りしめている。
「“……それで、私に何をさせたいんだ?”」
「簡単な話ですよ。」
黒服は静かに、先ほどの小さな歪んだ球体へと指をさした。
「あなたには”これ“の記憶を観測して欲しいのです。」
「”記憶?“」
球体……いや、あの“ヌル”が抱えていた記憶を直接覗き見る……ということだろうか?
「この場にある“ダイブ設備”とゴルコンダの作品を繋ぎ合わせることで、この存在の持つ記憶データを直接覗き見ることが可能なはずです。そこから先生の視点を通じてモニターに映し出される映像から、私達も記憶を観測する、といった形式になります。その直接的な観測者の役割を、先生には担っていただきたいのです。」
私がこの球体の記憶世界へダイブし、その視界をモニターを通じて全員で共有する……。頭の中で構造を整理しながら、一つの疑問が浮かび上がった。
「“それは私でなくとも成立するんじゃないか? 記憶が見たいのなら、自分でダイブしてみればいいだろう?“」
「クックック……残念ですが、それが不可能であるからこそ先生のお力添えを望んでいるのですよ……」
「”どういうことだ?“」
「私達のような“精神も形体も変わり果てた存在”が“それ”の記憶に接続した場合、自身の存在そのものが歪められ、汚染されてしまう恐れがあるのです。そしてそれは……“神秘”を宿す“生徒”達も同じでしょう……。つまり、この場において『神秘』も『恐怖』も持たない、“旧人類”に最も近いあなただからこそ、極めて低い危険性で記憶を紐解くことが可能なのですよ……!」
“変わり果てた存在”……? “旧人類”……?
黒服の言葉に含まれた異質さに背筋が凍りつく。
「先生、こいつの言うことなんか聞かなくていいよ。」
ホシノが鋭い視線を黒服に向けたまま、私の前に割り込んできた。
「“ホシノ……”」
「おや? よろしいのですか? あなたは“それ”の正体を知りたくはないと?“」
黒服が冷ややかにアベルを指し示す。
「それに、まだ事態が完全に収まったとも言えません……わたくしが封じたのはあくまで”最初の殺人者“という側面だけです。”残滓“がまた形を変えて動き出す可能性も十分にございます。」
「先生、どうかご決断を。」
「”…………“」
重苦しい静寂が部屋を包み込む。
今この膠着した状況を打破できるのは、確かに私しかいないのかもしれない。口では高尚なことを語る彼らの、本当の企みも分からないままだ。
だが……。私の本音を言うならば、あの存在の正体をどうしても知りたかった。
あれは何故このキヴォトスに突如現れたのか。本当に私たちが恐れたような“化け物”と切り捨てていいものだったのか。
最後に見せた、あの哀れで空虚に満ちていた“それ”の素顔を知りたい。何にあれほど渇望し、苦しんでいたのかを知りたい。
「“……分かった……”」
拳を握りしめ、前を見据える。
「“引き受けよう。”」
「先生……!? なんで……!?」
「先生!? 駄目です!」
「“ごめん、ホシノ……みんな……”」
でも、どうしても知りたいんだ。なんで“ああなってしまったのか”を、そして“こうなってしまったのか“を。これは“
だからこそ、それを生徒たちにそのまま口に出すことはできなかった。
「“この状況を打開できるのは私なんだ。信じて欲しい”」
もちろんそれも真実の一片だ。だが同時に、自分の私情を覆い隠すための格好の言い訳でもあった。
「先生……」
俯く生徒たちの中で、シロコが静かに一歩前に踏み出した。
「ん、分かった。」
「シロコちゃん!?」
「先生が本当にそうしたいのなら、私は止めない。」
「“シロコ……”」
「でもその代わり、絶対無事に戻ってきて。」
「“分かった……約束する。”」
自分のエゴが混ざっている選択だけに、信じてくれるシロコたちの真っ直ぐな瞳が心に痛かった。
「宜しいのですね?」
「”ああ“」
「それでは先生、こちらへ。」
促されるまま、ダイブ用の特製シートへと腰を下ろす。
「ダイブの前に、こちらの集束装置を装着してもらいます。」
頭部にヘルメットのようなヘッドギアを装着され、重厚な器具が固定される。
「先生、準備はよろしいですね?」
黒服の声が響く。最後に一度だけ視線を巡らせた。
私のことを不安と祈りが混ざったような瞳で見つめる生徒たちの姿が、視界いっぱいに広がる。
「“ああ、準備はできたよ。”」
「クックック……では、起動しますね。」
〈カチッ〉
電子音が鳴り響いた瞬間、私の意識は途方もなく深い暗闇の世界へと、一気に引き摺り込まれていった。
————————————————-
他人の記憶が脳に直接流し込まれる
何も見えない。真っ暗闇の中であなたは目覚めた
一筋の光、屍の大地を見た
暗所は恐ろしく、孤独で寂しい。それにも関わらず飢餓は訪れる
あなたはただ“苦しみ”を感じた
あなたは変化を観測した
友人となるであろう存在との邂逅
孤独を打ち消す“歓喜”
変化は絶えず起きる
様々な出会いを経て、感じるものは“苦しみ”だけでは無くなっていた
導きを経て目的が生まれる
『
“地上”の景色を見た。
荒れ果てた末に更地になった大地、澱んでいるが微かに光の差し込む空、悍ましい進化を遂げた生物……
“あの人”の憧れた地球
本来の無作為な世界を観測した
そして、そこに人間らしい存在は既に居なかった
あなたは酷く落胆した
記憶は続く
もはや飢餓の苦渋にも慣れていた
ある景色を観測した
それは“故郷”のように感じられた
異形が行き交う集落
それはあなたの故郷ではない
しかし異様な光景は何故だか懐かしく、そして儚いものに感じられた
未だ記憶の主の正体は分からない
とても見覚えのある姿が見える
あなたにとって馴染み深い外形だった
楕円形の頭をしたその人物によって情報がもたらされる
『キヴォトス』という単語が耳に入る
それは『楽園』を目指す上で大きな励みになった
探究の日々は幾年か続いた
生存の為の争い、更なる情報の為の探検、新たに出来た異形の友人たち
野生的で血腥い日々の中に“自分”の居場所ができた
小さな記憶の主の全容が少しずつ顕になって行く
あなたのものでないはずの日々をあなたは酷く気に入ってしまった
だが“異変”が起きてしまった
日々に亀裂が生じ始めた
記憶は赫い不穏な空に照らされる
『楽園』が遠ざかって行くような疑念が生まれる
あなたは記憶の中で初めて人間と呼べるものを見た
従来の感覚とは違うものを覚えた
少女は『生徒』にも見えた
彼女の持つヘイローはあなたの知るものよりも明瞭だった
旅の仲間に少女が加わった
何故かあなたは“後悔”を感じた
あなたは恐ろしい存在を見た
虐殺の権化とも言うべき“怪物”との戦い
これまでよりも死を間近に感じた
『恐怖』を打ち倒す光景、“輪っか”を破壊する瞬間を見た
激しく心臓が鳴り続ける
そして見た
“怪物”の正体を
それはあなたにとって馴染み深い存在だった
事切れた『生徒』が目の前に横たわる
知らない制服からあなたの持つ生徒ではない事が分かる
しかし間違い無く生徒であった
怪物など居なかった
生徒は少女の友人であった
彼女の死を伝えた時、少女は何故か安堵したような表情をした
不穏に思えた
旅の仲間は故郷に戻る事を決めた
焦燥が高まる
あなたは不安を感じた
燃え盛る故郷が視界に広がる
故郷に居た友達のほぼ全てが原型をとどめていなかった
故郷を与えてくれた人物に顔はもう無かった
あなたの中で燻る“何か”を感じた
あなたは“敵”を見た
何匹もいるそれらから逃げる事は叶わなかった
四肢が胴体からちぎり取られる
幾度となく痛ぶられた
だがその痛みなど対した事は無かった
痛みなんて何度も経験したはずだった
しかしまだ知らなかったのだろう “本当の痛み”を
それも酷い裏切りに遭うまでは
“敵”が視界から消える
“裏切り者”を問い詰める
だが“それ”は既に壊れていた
狂っていた
狂っていた
狂っていた
あなたはまた“後悔”を感じた。
それは怒りよりも強かった。そして無意識にその感情を消そうとした
これまでに無い程に焦燥を感じる
這いずり、血反吐を吐き、立ち上がる
そして紅く染まった友人と再会した
あなたにも自然にあと一人を探さねばならないという義務感が生じる
あなたは見つけてしまった
物言わぬ鉄屑を
『楽園』の導き手は既に居なかった
そして巨躯が倒れた
白かったそれは最後には赤黒く染まってしまった
山羊は呪詛を遺す
最初の友人が息絶えた
あなたは気づいた
たった今『
あなたの中で燻っていた何かが噴き上がる
記憶の主は“憎悪”に侵された
悲しみはとうに心の奥底に封じ込められていた
涙を流すことは許されていたのだろうか?
何年にも渡る復讐を見た
燃ゆる憎悪のみが原動力だった
孤独になろうと絶えない飢餓に抗うため、仲間、敵、あらゆるものの屍を喉の奥に押し込み続けた
気候、環境が荒れ続け、そうするしかなくなってしまった
仲間の肉の味など、忘れてしまいたかっただろう
殺し、殺され、奪い、奪われ
被害者達は互いを憎む事しか出来なくなっていた
話し合えたかもしれない、もっと解法があったかもしれない
少し前のあなたならそう思えただろう
だが何故か『生徒』達が殺すべき“敵”に見えた。忌むべき“怪物”としか思えなかった
敵が居なければ、生きる目的がなかった
翌る日も銃声が鳴り響く
炎に飛び込んで身を隠した
摩耗していくのは痛み以外の感覚
理性はとうに無い
かかった血も吐瀉物も洗い落とす事は無くなった
蝿の集る記憶は終点に近づく
もうそこに“敵”は居なかった
全てが粘土のように潰れ、敵が終わった事に気づくのには時間がかかった
あなたの気持ちは晴れなかった
記憶の主にはその原因が分からなかった
あなたには分かった
“後悔”がそこにはあった
必死に考えない様にしていたのだろう
赫く染まった空、紅く湿った地面、明瞭な記憶はこれで最後だった
ただ静寂に包まれた屍の大地、それは最初の記憶と同じ
結局、記憶の主の最後には何も残らず、何も持たない最初に戻ってしまった
あなたが最後に感じたのは“虚しさ”だった
そうして終わるかと思われた記憶には続きがあった
あなたは見た、悍ましい光景を
生きたまま体から自分自身が剥がされて行く
『黒い太陽』によって体が奪われて行く
奪われた体は幼く、漂白されたように変わり果てた
それからあなたと記憶の主に共感する事が出来なくなった
既にそれは人の感性を失っていた
あなたは気づいた
無理やり裏返され、剥がれて散り散りになっても終われず存在し続ける人格
“自分”を失い、空白になった存在
もはや誰でもなくなってしまった者
それが“null”と呼んでいたものの正体だと
“怪物”など居なかった
成れの果てが渇望するもの、それは失われた自分自身だったのだろう
自分の見てきた光景は覚えているのに、自分の部分だけが破損している
自分が無い為に、記憶を正しく解釈する事ができず、それが如何に哀しい出来事なのかも分からずにいる
なんて哀れな存在なのだろう
もはやあなたと感性が共通していないために、あなたの感じたものが記憶の主のものと同じにはなり得ないだろう
ここから先の記憶は不明瞭で成れ果ての記憶の主が正確に何を感じていたかは分からない
朧げな景色の中に白い人影が幾つか見える
それらからは“名前”が与えられた
“最初の殺人者”と
あなたは再び体を焼き焦がす強い“憎悪”を感じた
しかしこれは記憶の主のものではない
全くの他人のもの
名前により、憎悪の本質が書き換えられた
目に映るもの全てが憎く感じる。
羨ましく、嫉妬深い感情に苛まれる
こうして“怪物”は生まれた
それから目に映るものを殺し続けた
あなたの良く知る生徒達を無実であるにも関わらず殺していった
“別のあなた”を無惨に殺害する光景を見た
しかしあなたはこれを知らない
知らない世界での出来事だったのだろうか
少なくともこのような虐殺は元の記憶の主も望まなかっただろう
全てを殺し尽くし、また静寂に包まれる
その時既に憎悪は残っていなかった
仮初の憎悪も長くは持たず、結局、空虚な状態に戻った
火は絶え、灰のみが残る
そうしてまた暗闇に閉じ込められた
光の無い世界で、誰でもないものは本来の目的を思い返した
空白になった部分を取り戻す事
ただ存在する記憶を”自分“はどう解釈していたのかを思い出すために
あなたは“彼”だったものを理解した
———————————————————-
先生は黒服の要求を受け入れた。私には、先生が本当は自らそれを望んでいるように見えた。だから、先生の思う通りにさせるべきだと思った。
先生が記憶の世界にダイブしてからの彼の視点を、私たちもモニター越しにリアルタイムで共有した。
それはとても辛く、痛々しく、胸が押し潰されそうになるほど苦しい記憶だった。けれど……なぜか手放し難い、切なく大切なものにも感じられた。
だが、最後に突きつけられた記憶は、ノイズまみれで途切れ途切れの、はっきりしない異質で歪なもので……。
その記憶は……ただただ、恐ろしい地獄のような記憶だった。
私を、ホシノ先輩を、アビドスのみんなを、キヴォトス中の人々を。そして、先生を……まるで機械のように淡々と殺すだけの日々の記憶。
この記憶を持っていた人物が、元はどんな人だったのかは私には分からない。でも、ただ一つだけ確かなのは……この人のような人生だけは、絶対に送りたくないと心の底から思った。
全てを失って、その上であらゆる大切な存在を殺させられる。そんな、どうしようもない悲惨な人生だけは嫌だ。
やがて静寂とともに、モニターの映像がぷつりと途切れる。
記憶の再生が終わったのだろう。
「“……ゲホッ、ゲホッ!!”」
「先生!」
重い呼吸音とともに、先生が記憶の世界から現実へと戻ってきた。
「“うっ、お゛え゛ぇ……!”」
〈ビチャッ〉
「先生!!」
苦しそうに胃液を嘔吐してしまった先生のもとへ、私はホシノ先輩と共に飛びつくように駆け寄る。他人の惨烈な記憶を、しかもあんな悪夢のような死の記憶を直接脳内に流し込まれたのだ。普通の人間に耐えられるような負荷ではないはずだ。
「シロコちゃん、みんな、何か拭くものを探して!」
「分かった……!」
私は大急ぎで汚れてしまった先生の服と床を拭くためのタオルと水を持ってくる。
見上げた先生の顔は、あまりにも虚ろで、まるで自分のすべてを失ってしまったかのような、酷く痛ましい表情をしていた。
……私は、安易に先生の背中を押すべきではなかったのかもしれない。
「先生? 大丈夫……?」
「“……”」
「“……僕……私は……大丈夫だよ……””」
一瞬、先生の口から普段は決して聞いたことのない幼い一人称が漏れ聞こえた気がした。
先生は蒼白な顔のまま、無理に平気を装うような歪な笑顔を作ってみせる。
「大丈夫なわけないでしょ! ほら、しっかりして!」
「“……うぅ……”」
〈バタ〉
「先生!!」
限界を迎えたように、先生の身体から力が抜け、その場に崩れ落ちた。私は咄嗟に手を伸ばし、倒れ込むその身体をしっかりと支え抱きとめる。
「黒服……先生に万が一のことがあったら、私はお前を絶対に許さないから。」
低い声で黒服を睨みつけると、男は不気味に肩を揺らした。
「安心してください。先生の命に関わるような決定的な事態にはなっておりませんよ。」
「少なくとも、単純な精神的負荷の他に、先生ご自身にも何らかの“原因”がありそうですがね……」
先生を見下ろしながら、黒服は言葉を続ける。
「私としても、先生に倒れられては困るのです。ひとまず先生を、ゆっくりと休息の取れる場所へ運んであげてください。」
「あなたがこの記憶から得た『解釈』を聞かせていただくのは、また次の機会にさせてもらいましょうかね……」
「……」
「シロコちゃん、行くよ。」
「う、うん……」
ヒマリさんや他のミレニアムの生徒たちに誘導してもらい、私たちはぐったりと意識を失った先生を抱え、エリドゥ内にある医務室のような休める場所へと運んでいった。
男は”それ“を理解してしまった。故に”それ“は理解できないものでは無くなった。
だが、己の原点を思い出した。心の奥に閉じ込めた記憶を
--------------------------
[補足
-『ヌル』
Null、ヌルまたはナルと読む。
誰でもない。殺意も無い残り滓。歪な外形は人間を模倣し、騙すためのものや畏れさせるためのものではなく、思い出せない“自分”を無理矢理に再現しようとした結果である。もはや感性もとうに人間のものでないため“人間を定義する外見の特徴”を上手く解釈できていない。仮初の憎悪は長くは持たなかった。偽物で自分のものではないはずの憎しみが尽きた時、それは失ったものにひたすら執着した。己亡き者はそれを元の自分のように解釈する事はできず、最初からそこに怪物など居なかった。
預言の大天使が観測したものは既にカインでは無かった。あの夢に野晒しにされていた屍は“それ”が殺したものではない。きっと“彼”の殺された友人達のものだったのだろう。
-『カイン』
最初の殺人者の名。廃棄物の名前の一つ。
歪んだ人型が紅く湿り、赫い炎に燃え、身体中から山羊の角が生えた異形の外形を持つ。別の時空のキヴォトスを滅ぼし続けてきた真性の害悪であり、純粋な悪意そのもの。『忘れられた神々』を消したい者にとって都合の良い道具になったのだろう。色彩の嚮導者にはなり得なかったが、その必要性がそもそも無かった。
ただ生きている者を羨んで、憎んでいる。誰一人として生存を許さない
この作品は『キヴォトス外から』来た者にフォーカスを当てています。
それは失楽園の彼だけでなく、先生もです
なので先生の過去の掘り下げも行われます
オリキャラ周りがかなりダークな雰囲気になる可能性があるのですが、参考にしたいのでできれば......
-
暗い。陰鬱な雰囲気は好き
-
別にいいと思う
-
あまり好きでは無い