[完結] From outside Kivotos 作:ケトゥ毛
指定された座標と、空を切り裂くように出現した巨大な異形ヘイローの位置は、寸分違わず一致していた。
「“あそこだね。”」
「はい、間違いないと思われます。」
ヘイローの直下では、常理を無視した“光”の旋風が凄まじい勢いで巻き起こっており、大気と空間そのものがガラスのように音を立ててひび割れ始めている。
「な、何が起きてるんだ!?」
「助けてくれ!!」
衝撃波によって辺りの建物が崩落し、逃げ惑う住民たちの悲鳴と怒号が街に響き渡っていた。
歪む光の奥底から、私ははっきりと見覚えのある……あの悲壮な気気配を感じ取る。
「“……そこにいるんだね。”」
かつての器の気気配を感知したのか、ポケットの中にあったあの球体が、磁力に強く引かれた砂鉄のように不気味に震え、反応し始めいていた。
「先生、一度本部に戻りましょう! このまま近づくのは危険すぎます!」
「“…………”」
「“いや、私一人であの中心に向かうよ。”」
「先生!? 何故ですか!?」
「待ってください……! 先生っ!!」
もしこの現象が、キヴォトスの外から来た概念に由来するものなのだとしたら……『神秘』を持つ生徒たちが近づくことこそ、あまりにも危険すぎる。
それに……今の私には、何としてもなさねばならない“やるべき事”があるのだから。
「やっぱり先生の様子がおかしいんです! 誰か止めてください!」
背後からの叫びを聞きながら、私は薄々と自分自身の異変を自覚し始めていた。
そう……今の私は、到底まともで冷静な状態ではない。
だが、それは今に始まった事ではなく、過去の記憶を取り戻したもっと前から……ずっとそうだったのだろう。
誰に引き留められる訳にもいかない。私は生徒たちを振り切るように、異変の光が渦巻く中心へ向かって強く地を蹴り、駆け出した。
大衆が逃げてくる激しい流れとは逆の方向へ進む。
中心に近づくにつれ、やがて周囲から人影が完全に消え去った。
空間のひび割れは、ますます密度を増していく。
ひび割れた歪みの箇所は、光すら届かないほどに見えなくなってしまっていた。
周囲はこんなにも眩しく輝いているというのに、そのひび割れた部分だけが漆黒の絵の具でべったりと塗りつぶされたようになっており、狂おしいほど異様だ。
「待って!!」
突如、後ろから悲痛な叫び声が響き、私の腕が強い力で掴まれた。これは……さっきのヴァルキューレの生徒の声ではない。
驚いて振り向くと、そこには息を切らせた一人の生徒が立っていた。
「“ホシノ……!? アビドスに戻ったんじゃ……!?”」
ホシノたちとは、サンクトゥムタワーに着く前に別れたはずだったが……。
「先生、待ってよ……! 何をそんなに急いでるの……!?」
「“ホシノ、やらなきゃいけないことがあるんだ! 危険だから戻っていてくれ!”」
「それって……それって先生一人じゃなきゃダメな事なの!? どうしてそんなに焦ってるの……!?」
「“ごめん、ホシノ……! でも、腕を放してくれ!”」
何故ホシノがここに居るのかは分からない。だが、私は止まるわけにはいかない。行かなくてはならないのだ。
「やっぱり先生、様子がおかしいよ……」
掴まれた腕から伝わる、痛いほどの震え。
「先生も……私を置いて居なくなっちゃうの……?」
「先生まで居なくなったら……私……私は……っ!」
「“それは……?”」
今のは……一体どういう意味なんだ? 私が、消える……?
突如、それとは違う方向の暗がりから、不気味で重厚な声が響いた。
「事もあろうに、随分と厄介な事態になったものだ。」
「“お前は……!”」
いつか見た、あの双頭の人形。マエストロがそこに佇んでいた。
「“何故ここに……?”」
「経緯の解説は省略させてもらうよ、先生。迅速にあの中心まで向かうと良い。“あれ”は今や、キヴォトスという概念そのものに不当な干渉を起こしている。このままではあの“ひび”が広がり……この『学園都市のテクスチャ』そのものが剥がされてしまうだろう。」
「”テクスチャが、剥がされる……?“」
「それはそこに居る生徒も同じだ。あれの直接的な影響を受けた場合、世界を構成するテクスチャを失い……”生徒ではなくなる“。」
言葉を切り、マエストロは冷淡に付け加える。
「……要するに、そなたたちの概念で言う『死亡』に等しい不可逆の事象が起きるということだ。」
「”……っ!“」
「だが先生、そなたはこの世界のテクスチャを持たぬ外の者。故にあの絶対的中心へ行くことが可能なのだ。だから急ぐと良い、そなたの愛する可憐な世界を完全に失ってしまう前にね。」
「“……元より、そのつもりだ。”」
「“ホシノ……この先は、私一人でしか行けないんだ。”」
「でも……もし先生が……っ!」
「“大丈夫……どこにも居なくなったりしない。私を信じてくれ。”」
私の言葉に反するように、ホシノの腕を掴む力は強くなっていく。私という存在を失うことに、彼女は耐えがたいほどの不安を感じているのだろうか。
……私は、自分が思っている以上に生徒から深く慕われているのかもしれないな。でなければ……こんなにも傷つき、心配されることなんてないはずだ。
『先生』としての……“私”は。
「先生……っ!」
「先生、この者は私が責任を持って安全な場所へ送ろう。何も気にせず行くと良い。」
「“……彼女を傷つけるなよ。”」
「ハッ、そのような無意味で美意識を欠く行為などするものか。」
マエストロが、ホシノの肩へ静かに触れる。
「待ってよ……! 先生っ、先生っ……!!」
ホシノが叫びを言い終わる前に、ゲマトリアの空間歪曲技術によって、ホシノとマエストロの姿がその場から一瞬でかき消えた。
……これで、私を引き留める者は誰もいなくなった。先へ進める。
崩壊していく街を走りながら、自らに問いかけ、思考を巡らせる。
私は何故……あのように壊れてしまった『アベル』を、かつての『彼』に戻したいと強く望むのだろうか。
このキヴォトスで連邦生徒会の『先生』として赴任してからというもの、私はどこかで過去の惨めな自分自身を無視し、蓋をして暮らしていた。
“あの人”に対する消えない疑問でさえ、考えることを意図的に避けてきたのだ。
赴任した最初の頃は、常に「このままでいいのだろうか?」という自虐的な疑念が胸を渦巻いていたはずなのに。
……今のあの球体も、それと同じなんだろう。
本来の自分という存在を失ったまま、覆い隠された残酷な方向に目を背けたまま生きていて、本当に良いのだろうか?
それは、哀れな“彼”もまったく同じなのだ。
過去を奪われ、赤子同然の無垢で無力な状態に歪められたまま生かされて、本当に良いはずがない。
過去の清算は、どれほど苦しくとも正しく済ませるべきなんだ。
かつての“僕”という存在の肯定も否定も出来ていないのに、“私”という大人が偽物かどうかなんて、決められるはずもないのだから。
過去を忘れるのではなく、受け入れる。
それから“自分の探求”は始まるんだ。
「“見つけたぞ……”」
光が狂乱するように渦巻く中心には、いつか見たあの幼い子供が静かに宙に浮いていた。
しかし、その背には巨大で眩い白の4対の翼が生え揃っている。歪に異形と化したその姿は、どこか恐ろしくも神々しくさえ映った。
もはや、私たちがかつて“アベル”と呼んでいた可憐な存在ではなくなりつつあるようだ。
言葉通り、すべてを統べる『絶対者』とも形容できる神聖な異形。私は崩落し積み上がった建物の瓦礫を足場にして、上へ上へと高みを目指して駆け上がっていく。
視界の先には、まるで宇宙の深淵のように不気味で空虚な光景が広がっていた。
あの神々しい存在の膨大な威圧に影響されているのか、今のキヴォトスそのものが白紙へリセットされていくかのように、異界の景色が都市の街並みを酷く侵食している。
次第に、この場所の重力の概念までもが狂い、消え始めていた。
足が地面を離れ、身体がふわりと宙へ浮き上がる。
無重力の流れに乗れば……これなら、あそこへ届く。
ポケットから、あの不気味な球体を取り出す。
球体は脈動しながら蠢き、変形し始めていた。まるで意思を持つ樹木のように根を伸ばし、黒い枝分かれを広げている。
あとは……これを元の器へと統合するだけだ。
だが、伸ばしかけた手が一瞬だけ止まる。
不意に、大切な愛おしい生徒たちの顔ぶれが脳裏に溢れ出してきた。
アリス、モモイ、ミドリ、ユズ……ゲーム開発部のあたたかな笑顔が。
そして……あの苦悩していた“リオ”の顔が。
……これで、もう二度と“アベル”という存在は居なくなる。
このあどけない存在を犠牲に捧げることで、キヴォトスの破滅という未曾有の危機を回避することができるのだ。
あの子たちは、この結末を知ったらどう思うだろうか。
また深く傷つき、悲しむのだろうか。
かつて交わした、あの『トロッコ問題』の話をふと思い出す。
あの時は、前提条件そのものが違っていた。
だが、今回のこれは……。
歯を喰いしばり、固い決意を胸に込める。そして、差し伸べた器に向けて黒い球体を叩きつけた。
触れた瞬間、球体はどろりと灰色の流体へと姿を変え、あどけない小さな身体の表面を伝うように隙間なく覆い尽くしていく。
直後、空間そのものを揺らす絶大な衝撃波が発生した。
天に聳えていた巨大な異形のヘイローが、音を立てて崩壊し始めたのだ。
それと同時に狂っていた重力が一気に元へと戻り始める。
空中で投げ出され、直下へ向かって急速に墜落していった私は、地面に叩きつけられ、気を失った。
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「先生がエネルギー体の座標まで一人で行っただと!?何故そのまま向かわせた!?」
「申し訳ありません……突然一人で走っていってしまったために止める間も無く……」
「クソッ……先生も先生だ!一体何を考えている……!?」
「局長、私たちはどうすれば……」
「……とりあえず住民の避難を優先しろ。先生はあの光の中心へ向かったんだったな?人員を派遣して先生を追跡する、いいな?」
「「はいっ」」
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「あれ……? 空に浮かんでた巨大なヘイロー?が消えたみたい……」
「本当ですね……」
局長からの緊急命令を受け、荒れた道路に車を走らせる。
先生がたった一人で危険な中心部へ向かってしまった以上、一刻も早く合流しなければならないのだ。
「建物がこんなに倒壊してる……ここから先は車じゃ到底通れそうにないね……」
「そうですか……」
仕方なく車を安全な場所に停め、装備を整えて徒歩で先へと向かう。
「ミレニアムの方でも何か大事件があったみたいだし……こんな頻繁にキヴォトス全域で異常事態が起きるのは、あまりにも不吉だな……」
「ですねぇ……」
「先輩!! あれ見てください!!」
後輩の一人が息を飲んで叫んだ。
「どうしたの!?」
「先生が……!」
指示された方向へ慌てて視線を向ける。
倒壊した瓦礫の山の上に、50m以上はありそうな巨大な4つの白い翼……のような構造体が横たわっており、その中央付近に何やら二つの人影が力無く倒れていた。
「あ……!」
駆け寄ると、倒れていた片方は間違いなく先生の姿だった。全身に傷を負っており酷く痛々しい。上空から叩き落とされ、体を強く打撲したのかもしれない。
「救援を大至急手配して、すぐに! 君は先生の状態の確認と、必要なら応急処置を!」
「はいっ!」
「分かりましたっ!」
テキパキと指示を出す。しかし……。
もう片方の、先生のすぐ傍らでうつ伏せになって倒れている人物は一体何なのだろうか?黒いボサボサとした長髪の人物が、無防備に倒れ込んでいる。
でも……。
「……なんで全裸なんだろう」
よく見ると、その人物の背中には痛々しく黒ずんだ羽の付け根のような痕跡が残されていた。
翼を無理やりに千切られたようにも見える。……もっといえば、生まれたての鳥の翼みたいにみすぼらしい。
翼の存在からして、トリニティ総合学園出身の生徒なのだろうか。
「先輩、こっちの人の方はどうしますか……?」
「同じくこの事故か何かに巻き込まれたのかもしれない。先生の無事を確認したら、この人の状態の確認もお願い。」
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「“……うぅん……”」
深い眠りの底から、ゆっくりと意識が浮上してくる感覚がした。
「先生、お目覚めになりましたか。」
見覚えのある救護衣装を着た人物が、静かな声で語りかけてくる。
「“……セナ?”」
「ご無事で何よりです。」
体を起こしながら頭を押さえる。私……一体何をして居たんだっけ……?
「強い衝撃を受けたようですが、幸いにも軽い打撲程度で大きな負傷はありません。安心してください。」
「“ありがとう……?”」
安心させようとしてくれるセナの言葉を聞きながらも、どこか決定的な何かを忘れているような焦燥感が胸を突く。
……なんで私は意識を失っていたんだ……?
あの街の崩壊、空中への浮遊、そして……。
「“……っ! はっ!!”」
弾かれたように飛び起き、ベッドの上でセナの肩を掴む。
「“セナ! アベルは……いや、誰か私の近くに居なかったか……!?“」
「先生が倒れていた現場の……ことでしょうか?」
「“誰か、あの白い髪の子供はーー”」
「先生、ご無事でしたか。」
重厚な足音とともに、凛とした声が会話に割って入ってきた。
「“……カンナ?”」
「何の事前連絡も無しに、たった一人で異常現象の中心部まで向かっていったそうですが……」
ジト目で睨みつけてくるカンナの視線に、私はぐっと言葉を詰まらせる。
「“……”」
途切れていた記憶のピースが、一気に頭の中で組み合わさった。
「“……すみませんでした……”」
「はぁ……まあ、ともかく無事で良かった。しかし、あれが何の考えも無しの無謀な行動だったとしたら先生らしくないですね……何か事情があったのですか?」
「“……”」
「“それよりカンナ、私の近くにアベル……あの時の白い髪の子供とかは居なかったか?”」
「あの子ですか? 残念ながらあの子の捜索はまだ続いており、見つかっていませんが……」
「救急隊の報告によれば、先生のすぐ近くには何一つとして衣服を纏っていない生徒……らしき人物が倒れていたそうです。」
全裸の生徒……? 一体どういうことだ?
「その死体……いえ、その方でしたら、先生の隣のベッドで寝かせております。」
セナが指さす方、すぐ隣の簡易ベッドへと視線を向ける。
「“……?”」
そこには、黒い長髪の人物が静かに横たわっていた。
「先生のお知り合いでしょうか?」
セナに淡々と問われるが、首を傾げるしかない。
「“誰だ……?”」
顔にかかった長い髪のせいで、素顔がよく見えないのだ。かろうじて女性的な華奢で整った輪郭は見えている。しかし、どこの学園の制服を着ているわけでもなく、身元を察する手がかりもない。
「“カンナ、この人の身元とかはまだ分かってないのか?”」
「その類の報告はまだ受けておりません。第一、私も今初めてこの人物をこの目で見ましたから……」
カンナが怪訝そうにその人物の顔をまじまじと見つめる。
「……っ!?」
次の瞬間、カンナの表情が驚愕に強張った。
「先生……一つ宜しいでしょうか?」
「“……何かな?”」
「あの子……あのアベルという子供の顔には、ほくろがありましたよね?」
「“うん。確か左目の下に泣きぼくろが……そして唇の下にもあったと思う。”」
「……この人物も、全く同じ位置にほくろがあるようなのです。」
「“なんだって……!?”」
カンナが意を決したように、その人物の長い前髪をそっと払いのける。私も咄嗟にベッドから立ち上がり、その顔を上から覗き込んだ。
息を呑むほど整った、とても綺麗な顔立ちだ。だが……確かに、どこかあのアベルの面影を残している気がする……。
「“……まさか……”」
よく考えれば、あの無垢な子供の姿はもうどこにも居ないはずなのだ。
もし私の選択とあの統合が上手くいったのだとしたら、記憶と人格が元の器に戻り……黒服の言う“彼”という存在に戻っているはずなのだから。
と言うことは……。
「“これが……アベル……なのか……?”」
正確には元アベルと言うべきなのだろうが……。
「先生? それはどういう……?“」
「“あれ……?”」
しかし、何かがおかしい。“彼”と言うからには男性ではないのか?
目の前に横たわっているのは、どう見てもしなやかな身体つきをした人物だ。頭の中が混乱でこんがらがってくる。
事実を確認するため、私は思わず布団の端をめくった。
「先生!? 何をしているんですか!?」
「待ってください、先生……! その方はまだ何も着ていらっしゃらないのですが……」
「”えっ? あっ、違うんだ! これにはちゃんとした訳が“」
まずい、セナとカンナから最悪の誤解をされてしまう。
「……っ!? 待ってください……これは……」
「……!!!」
「な、何ですか!? これ!?」
布団をめくった先、視線に入ったのは……あまりにも見慣れた、紛れもない立派な……アレだった。
「“あ……”」
急いで布団を被せ直し、隠す。
「“みんな……ごめん……”」
やはり男性で間違いなかったらしい。だが、あのアベルの時にはそんな身体的特徴は何も無かったはずだ。そもそも何もなかったはず……。
一体どういう変化が起きたというんだ……?
「おかしいですね。」
「“セナ……?”」
「私が最初に搬送手続きと状態確認をした時には、そのような器官は存在しなかったのですが……」
セナが眉をひそめて首をかしげる。
私が意識を失っているわずかな時間の間に、あの性別の概念すら曖昧だった子供の姿から、ここまで急速に大人の男性の身体へと変化したのだろうか?
「先生、何かこの人物についてご存知なのでは?」
「“……そうだね……”」
観念した私は、これまでの経緯と黒服から聞いた真実、そしてあの場所で私が何をしたのかを、彼女たちに一通り説明した。
「そんな……!? この人物が……あの、あの子なのですか……?」
「“私のやったことが上手くいっていれば……だけどね”」
「そ、そうですか……」
事情を聞き終えたセナとカンナは、あまりの奇想天外な内容に驚きを隠せていない様子だった。
「“……セナ、大丈夫?”」
「私としては……酷く複雑な心境ですね……」
セナの手をぎゅっと握りしめ、無条件で懐いてくれていたあの子が行方不明になった挙句、こんな全く異なる大人の男の姿で再会したのだ。困惑するのも当然だろう。
ふと、脳裏にあのアドバイザーの忠告が蘇る。
『そして戻ったとしても“彼”がどういう状態になるかは予測不能です。記憶から考えて、彼はヘイローを持つ者、つまり生徒に対して強い憎しみを抱いている恐れがあります。そんな状態の彼がキヴォトスで目覚めればどうなるでしょうか?』
「“……”」
胸の奥に冷たい嫌な予感が走る。
「“カンナ、セナ、一つお願いがあるんだが、いいかな?”」
「何でしょうか?」
「“彼を、もう少し安全で隔離された部屋に移せないだろうか?”」
「それはどうしてでしょうか?」
「“詳しい説明は省くけれど、もしかしたら彼は精神的にとても危うい状態で目覚めるかもしれないんだ。だから、万が一彼が暴れたとしても被害を最小限に抑えられて、迅速に対応できる場所に移しておきたいんだ。”」
「そういう事情なのですか。もちろん手配は可能です。今からでもすぐに移動させることができますが、進めてしまっても?」
「“ああ、頼むよ。” 」
私は、あの一瞬で選択をしたのだ。過去の惨劇から目を背けず、受け入れるという選択を。
この決断の先に、どのような未来が待っているのかは誰にも分からない。だが、思考の海の中に、一つの素朴な疑問がぷかりと浮かび上がっていた。
黒服は「どちらを選んでも良い結果にはならない」と言っていた。
あの言葉は、一体『誰』にとっての結果を指していたのだろうか?
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「崇高に至った絶対者が卑しい者に引き戻された。神性は封じ込められた。」
「この世界の再構築は失敗した。」
「だが問題はあるまい。本来の目的は”あれ“を用いてこの時空の運命を書き換える事。」
「色彩は既に“狂気の崇高”を吸収した。」
「この時空はいずれ蠱毒となる。」
「そして
「最後に忘れられた神々は滅びるのだ。」
「そして名もなき神々と同じ運命を辿るだろう。」
[補足]
-無名の司祭
『崇高』のためにキヴォトスから消えても影響の少ない生徒15人を拉致。地球で色彩と接触させた。終焉をもたらすための兵隊にでもするつもりだったのだろうが、卑しい者に1つを覗いて全て喰われた。が、後に色彩は卑しい者に接触し反転、分解させた。結果として、狂気の恐怖、殺人者、無垢なる子羊を得た。殺人者に利用価値が無くなった時、無垢なる子羊を用いて箱舟の運命を“死の神が顕現し、終焉を迎える運命”に書き換えた。
アベル
何よりも透き通った純粋な心を持つ。崇高に至る事のできる存在である。しかしこれは原初のものであり、本来ならば無名の司祭にとっては邪法に近い。正体は“彼”の失った本質であり、童心そのもの。皆、誰しも時が経つにつれ己の童心を忘れていく。だが決してなくなるわけではない。たまに原点に立ち返ってみるのも人生においては重要だろう。
オリキャラ周りがかなりダークな雰囲気になる可能性があるのですが、参考にしたいのでできれば......
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暗い。陰鬱な雰囲気は好き
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別にいいと思う
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あまり好きでは無い