From outside Kivotos   作:ケトゥ毛

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皮肉にも空は青く、美しく、そして広い。


16話『透き通った青空』

 

不快な感覚と共に意識が浮上してくる。体中を生暖かい空気が伝う。

 

気管に空気が素直に通った。

 

何が起きてる?記憶が混濁している。知らない景色をバラバラに思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

......そして知っている景色も。

 

 

俺が()()か分かる。

 

何もかも覚えている。

 

 

 

体を起こす。

 

 

 

視界を動かさなくてもそこらじゅうにいる。

 

 

 

 

友人達がたくさん。

 

 

 

 

顔が半分欠けた死体が呻く。

 

“助けてくれ“

 

無数の焼死体(仲間)が縋り付いてくる。

 

”熱い痛い“

 

”頭がなくなっちまった“

 

”何も見えない“

 

”あいつらのせいだ“

 

”あいつらを殺してくれ“

 

”輪っか付き共を殺せ”

 

復讐はまだ終わっていなかった。

敵を殺すだけでは終わらない。

 

 

 

 

 

 

 

いや、終わらせられないんだ。

 

敵が居なくなったら、俺はどうしたらいい?

 

何を殺せば良いんだ?

 

 

 

 

「..............」

 

 

 

 

”殺せ“

 

”殺せ“

 

次の敵を探さないといけない強迫観念に駆られる。

 

もうそんなもの居ないというのに。

 

 

 

 

”探せ“

 

”そして殺せ“

 

「こちらヴァルキューレ、聞こえているなら応答して欲しい。」

 

 

「......」

 

聞き覚えのある声が一人増えた。

 

凝り固まった首を動かす。

 

 

男性が見える。

 

朧げに『小さな冒険』の夢を思い出した。

 

 

あの人物は.....確か.......

 

 

 

 

 

 

「聞こえているようだな。それでは幾つか質問をさせてもらう。そちらの音声はこちらに聞こえている。遠慮なく答えてほしい。」

 

「まず最初に、名前、年齢、出身地を答えてくれないか?」

 

 

ガラスの向こうで死体を踏んづけている”輪っか付き“に気付いた。

 

”輪っか“が目に入り嫌な記憶が何度も頭の中で繰り返し再生される。

 

顔を伏せる。

 

もうあれは見たくない。

 

 

”そこに居る”

 

“殺せ”

 

“食い殺せ”

 

“みんな輪っか付きが殺したんだ”

 

“輪っか付きに殺されたんだ”

 

 

瞼の裏には燃える街が映る。

 

目を開ければ損壊した死体の山(仲間たち)が話しかけてくる。

 

 

全てを壊したのは確かに輪っか付きだった。

 

だがあいつらじゃない。

 

 

“殺せ”

 

“殺せ”

 

“助けてくれ”

 

“苦しい”

 

“憎い”

 

 

 

 

耳を塞ぐ。雑音が減る事は無い。

 

目を開いても閉じても、耳を塞いでも塞がなくても、

 

ともだちが消える事は無い

 

 

 

 

あの日からずっと共に在る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かが仲間の首を踏んづけた。喉がぐしゃりと潰れた。

 

“痛い”

 

“息ができない苦しい”

 

“助けてくれ”

 

もげた頭だけで呻いている。

 

「.....なぁ......」

 

「....そいつを踏まないでくれ.....俺の友達なんだよ.....」

 

 

何かが仲間から離れて違う仲間を踏んだ。

 

“痛い”

 

埒が開かない。

 

 

 

 

 

 

「あなたを傷つけるつもりはありません。私たちはあなたの力になりたいのです。」

 

何かが話しかけてくる。気配を感じるから分かる、輪っか付きだ。だがそれが“本物”なのか分からない。

 

「........」

 

「ここは.....あんたらは.........本物か....」

 

ここが何処だか全く分からない。俺は夢でも見てるのか?

現実かどうか判別がつかない。

 

「はい。私たちはここに居ますよ。」

 

「......ここは.....何処だ.....」

 

「ここはD.U.の.....」

 

「“ここは『キヴォトス』だよ。”」

 

朧げな記憶の中で見た成人男性がそう言った。

 

小さな冒険の記憶は夢ではなかった。

 

ここが『キヴォトス』であるならそういう事になってしまう。

 

この男は『先生』だろう。

 

 

 

「............」

 

「.......夢じゃ.....なかったのか.....」

 

 

自分の状況が全く分からなかった。

 

ただ、あの黒い太陽を見た直後のようにも感じる。

 

しかしその時と今の間に合わない記憶が頭に混濁している。

 

あれからどれだけ経ったんだ?何があって今に至っているんだ?

 

 

 

”殺せ“

 

”輪っか付きが目の前にいる“

 

”殺せ“

 

”殺せ“ ”殺せ“

 

”殺せ“ ”殺せ“ ”殺せ“

 

「.......頼むから今は静かにしててくれ.....」

 

”おレたちは輪っか付きに殺された“

 

 ”許せない“ ”憎い“

 

”殺してくれ“ ”食い殺せ“

 

 

たくさんの友人が縋りつき、懇願してくる。

 

 

 

 

 

 

 

分かっている。

 

これは本物じゃない。

 

仲間達はもう既に死んでいるんだ。

 

 

死体が喋るはずないだろう。

 

本当は存在しない。分かっている。

 

でも消えない、消せない。

 

頭に、目に、耳に残り続けている。

 

「お前らはもう居ない頼むから俺の前に出てこないでくれ」

 

「もう.....終わったんだ.........」

 

復讐は本来ならもう終わっているはずなんだ。

 

敵は全部殺したんだ

 

なのに何故こうも捨てられないんだ?

 

 

 

 

 

 

 “殺せ”

 

   “殺せ”

 

“頼む 殺してくれ”

 

 

突如として熱いものが自分の手を掴んだ。

 

「.......!」

 

「私が分かりますか?私はここに居ますよ。」

 

エネルギーが流れ込んで来る。

 

目覚めてから始めて生きたものの感触を感じた。

 

「......あんたは....生きてるんだよな....?」

 

これは幻ではない

 

「はい。私は死体ではありませんよ。」

 

 

幻でない輪っか付きならば簡単に死んでしまうだろう。

 

“殺せ”

 

“そうだ殺せ”

 

このままエネルギーを吸い上げれば物言わぬ死体に変わるだろう。

 

しかしこの輪っか付きを殺せば”誰か“が悲しんでしまう気がした。

 

 

「だったら離した方が良い.........」

 

「そうですか....失礼しました....」

 

 

 

 

 

 

「“ええと.....何と呼べばいいかな....アベル....?”」

 

仲間の声に紛れて男の声が聞こえた。

 

この男は先生で間違いない。

 

「....あんたが....『先生』なんだな.....」

 

「.....俺は....もうそれじゃない....」

 

『アベル』という言葉には聞き覚えがある。夢の中でそう呼ばれていたような気がする。

 

だがそれはもう自分の名前ではない。そう強く思った。

 

 

 

「少しお顔を見せて頂けないでしょうか?」

 

輪っか付きが話しかけてくる。

 

「......無理だ.....()()()()()......」

 

言葉の意味は分かる。でも嫌だ。

 

見ればあの光景が何度も蘇ってくる。

 

そして見える死体の数が増える。

 

できる事ならばもう輪っか付きとは関わりたく無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生が遠くへ行った。

 

 

輪っか付きが残る。

 

 

“こいつを殺せ”

 

“頼む殺してくれ”

 

“オレ達は輪っか付きに殺されたんだ”

 

「.....でもこいつは違う....」

 

少なくとも仲間を殺したのはこいつじゃない。そんな事分かりきっている。

 

「視線はそのままで構いません。少しお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

輪っか付きが質問してくる。

 

 

「あなたが先程から会話されている方は一体どのような方なのでしょうか?」

 

”殺せ“

 

「..........」

 

答えた方が良いのだろうか

 

 

「......仲間だ.....」

 

「そうですか。どの辺りにいらっしゃるのでしょうか?」

 

「......そこらじゅうに....」

 

     ”殺せ“

”殺せ“

  ”殺せ“

 

「なるほど。どのような方なのか、どのぐらいの数いらっしゃるのかなど教えていただけませんか?」

 

「......死体だ......数えられない....」

 

”殺せ“

 

「....そうですか.....教えて下さり、ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

 

”殺せ“

 

 ”殺せ“

 

        ”殺せ“

 

 ”殺せ“

 

 

 

さっきから『気配』が近すぎる。

 

嫌な気分だ。記憶が思い起こされる。

 

 

「.....輪っか付き、俺から離れてくれ....」

 

「『輪っか付き』.....?」

 

「.......あんたが居るとこいつらがうるさいんだ........」

 

「......なるほど.....」

 

「分かりました。少し離れますね。」

 

 

 

 

”何故殺さない?“

 

 

”殺せ“

 

 

 ”殺せ“

 

 

“殺せ”

 

 

輪っか付きの気配が少し遠くなった。

 

それからは死体の声しか聞こえなかった。

 

 

 

————————————————————-

 

 

 

 

「先生、こちらです。」

 

「“ありがとう、カンナ”」

 

カンナに連れられて輸送車までたどり着く。

 

駐車場の真上に広がるのは透き通った青い空。

 

「“こっちだよ。”」

 

彼に声をかける。

 

彼は上を向いている。広がる空を眺めているようだ。

 

彼は今、追い求めていた青空の下にいる。

何を思うのだろうか。

 

「......一人じゃ....意味ねえんだよ.....」

 

何かを小さく呟くのが聞こえた。

 

 

「“大丈夫かい?”」

 

「.....今行く。」

 

車に乗り込んだ。

 

 

 

 

「”そういえば....聞いてなかったね。名前は何ていうの?“」

 

今更だが、どう呼べばいいか分からない。

聞いておかないと。

 

「......名前か」

 

 

 

 

 

 

 

「無い」

 

「”無い?“」

 

ナイ....?どういう事だ?

 

「無い。」

 

「”ええと......“」

 

「”そうだ....!何て呼ばれてたのかな?“」

 

「......お前とかチビ野郎とか.....」

 

蔑称?

 

「”うーん......他に何かない?“」

 

「碌なやつ無いけどいいか」

 

「“なんでそんなに.........普通生きてたら名前とかできてるものじゃないの?”」

 

「....あまり区別する必要が無かった。名前が無いやつはそこそこ多かった。名前の概念を知らない奴もいた。」

 

「“んんん.....”」

 

 

「先生はあなたをどう呼んだら良いか聞きたかったのだと、私は思いますよ。」

 

ため息混じりに補足してくれる。

 

「“ありがとうカンナ....”」

 

 

「.....あんたの好きに呼んだらいい、第一どう呼ばれたいかなんて分からない。」

 

「“ええと....じゃあアベルのままでもいいの?”」

 

「それで良いなら別に俺は構わない。」

 

アベル......

 

彼をアベルと呼ぶ....か.....

 

 

 

『せんせ、おはよ』

 

あの幼子の顔が浮かぶ。

もう会えない可愛い私の子....ではないけど....

 

....なんだか複雑な気持ちになる。

 

「“やっぱり無しで....”」

 

「“ううん......じゃあ...『名無し』...とか?”」

 

「先生、それは.....」

 

......我ながら酷いセンスだと思う。

 

「分かった、覚えておく。」

 

良いんだ....

 

 

 

 

 

 

 

「“そう言えば....さっきより落ち着いている気がするけど....大丈夫なの....?その......見えてるものは...?”」

 

セナは幻覚症状が見られると言っていた。

 

落ち着いているという事は今は幻覚は見ていないんだろうか?

 

「.....?」

 

「“ええと.....何か....言いづらいけど....見えているものは大丈夫?”」

 

こうした症状を持つ人との触れ合い方が分からない。

どう扱うのが正解なんだろう?

 

「あんたらにも見えるのか」

 

「“え.....?”」

 

「キヴォトスでは死人が見えるのが普通なのか」

 

「“それは良く分からないけど....”」

 

「..........そうか...」

 

「“今は大丈夫なの?”」

 

「........何が....」

 

「“その....ほら、君が見えてるものだよ。”」

 

幻覚という言葉を本人の前でなるべく使わないようにしている分、説明がしづらい。

 

 

「.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずっと居る」

 

彼が下を向きながら答える。ただ俯くのではなく、何かを見下ろすように。

 

「“ごめんね、変な事を聞いて.....”」

 

目も表情も虚ろのまま。

私には他の生徒などよりも少し心を開いてくれているようだが、まだ何かしてあげられた訳ではない。

 

これからの私次第だ。

 

 

 

 

「“もう一つ聞いてもいいかな?”」

 

「....?」

 

「“君は生徒たちをどう思っている?”」

 

とても大事な質問だ。

昔の事を思い出してしまったとはいえ私は先生だ。

逃避のために就いた職とはいえ“責任”は付き纏う。

 

もし生徒たちを憎んでいるのなら彼に対する扱いが更に困難になる。

 

 

 

 

 

「生徒........『輪っか付き』の事か」

 

「........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「できればもう関わりたく無い。言っちゃ悪いが見ているだけで嫌な記憶を思い出す。」

 

「情けない話、怖い。存在の気配を感じるだけで不安になる。」

 

彼がヘイローを持つ者に対する感情は憎しみ........それの変形したもの、“トラウマ”だった。

 

神秘の満ち溢れる地で彼は常に気配に晒される事になる。

 

それが幻覚に起因しているのではないか?

 

 

 

 

 

 

 

一つ疑問が生まれる。

 

「“その割にはカンナとは普通に喋れている気がするけど....”」

 

「カンナ.....」

 

「私です。」

 

「“ちゃんと紹介してなかったね。彼女は尾刃カンナ。ヴァルキューレ警察学校、公安局所属の3年生だよ。“」

 

「そんな名前だったのか.....」

 

把握していなかったらしい。

 

 

 

 

 

 

「.....言うほど話せてるか....?」

 

「”結構近くにいる割には落ち着いているように見えるけど....“」

 

セナが接近した時よりかは冷静なように感じる。

あの時は何と言うか....うわ言が多かった。

 

 

「.........」

 

名無しがカンナと顔を合わせた。

何気に生徒の顔をちゃんと見るのは今回が初めてである。

 

 

 

 

 

「......何故か分からないがあんたは怖くない気がする。」

 

「何でか分からない」

 

アベルとしては私の次に認識した人物に当たるのがカンナだった。

 

このアベルの時期に出会った人物なら多少不安が軽減されるのかもしれない。

 

 

「怖くない.....そうですか....」

 

彼女が複雑そうな顔をする。

 

「........別に舐めてるとかそういう訳じゃないんだ。気を悪くしないでくれ。」

 

「それは分かってますが.....」

 

アベルの姿が彼に重なって見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「局長、先生、もうすぐ到着します。」

 

「そうか、了解した。」

 

「”分かった。ありがとう。“」

 

外を見るとサンクトゥムタワーが間近に迫っている。

 

空にはヘイローもしっかりある。

 

 

「何で板が周りに浮いてるんだ?」

 

 

「”気になる?気になるよね?“」

 

「......?」

 

 

 

 

 

 

 

「”私にも分からない。”」

 

「????」

 

 

———————————————

 

 

 

 

 

 

「.....それで先生、その方がお話しされていた...?」

 

「“そうだよ、リンちゃん。”」

 

「誰がリンちゃんですか。」

 

彼女には一通り説明しておいた。

 

 

 

 

「彼.....で合っていますでしょうか?シャーレで保護するという話でしたが....」

 

「“そうだよ。いざとなれば私が責任を取るよ”」

 

「シャーレでの業務はどうされるのでしょうか?」

 

「“前みたいにやるよ。業務内容もいつものものに戻してくれて構わないよ。”」

 

「よろしいのでしょうか?でしたら後ほどまた調整した内容のものをお送りしますが....」

 

 

 

「...........」

 

「あの.....先ほどから具合が宜しくないように見えるのですが......」

 

彼のことだろう。

 

「“彼の事はこれから何とかしていくよ。”」

 

「いえ....彼だけでなく先生も含めてなのですが.....」

 

「“.....え?”」

 

私も?

 

「まだ疲労が溜まったままでいられるのではないでしょうか?騒動からまだそう時間は経っていませんし少し休息を取ってから業務に当たるべきだと思いますが....」

 

 

立て続けに生徒に体調の心配をされている。もう隠せていないんだろう。私はおそらく健康的な状態ではない。

 

「“でも休むわけには.....”」

 

生徒のためにも.......生徒のため.....?

 

ある疑念が生じる。

 

今まで私は休み無しで働いて来た。

 

もちろんそんな事はないとは思うが....

私に対して一種の依存のような環境ができていてしまったとしたら....?

 

 

 

将来的に私ありきの状態になってしまっては良くない。

 

それにこのままだとまた自分を蔑ろにしてしまう。

 

 

「“やっぱり1日だけ休暇を取ってもいいかな?”」

 

 

自分も労わりつつ、生徒と向き合う。

自分を大切にしない教育者が生徒にとって良い模範にはならない。

 

どうして今までこのような視点が生まれなかったのだろう。

 

疲労を隠そうとして来たせいで今まで生徒に余計な心配ばかりかけていたかもしれない。

私の自己満足が偶然にも生徒の役に立っていただけなんだ。

 

 

一つ、“気づき”を得た。

 

 

 

「先生、少し変わりましたね。」

 

「“そうかな?”」

 

変わった.....一歩踏み出せたのかも。

 

 

 

 

「............」

 

「“あっ....”」

 

彼にリンちゃんの紹介をしておかなくては。

 

「“彼女はリンちゃん。連邦生徒会の首席行政官で3年生だよ。“」

 

「リン・チャン......」

 

「誰がリン・チャンですか。」

 

「説明は正確になさってください.....私は七神リンです.....」

 

 

「連邦生徒会って何だ....」

 

「“簡潔に言うとキヴォトスの全行政を担う中央組織ってところかな。”」

 

「本当に学生が行政してるのか......それは何と言うか.....すごいな....」

 

「“私も最初は信じられなかったんだよね。話だけ聞くと嘘みたいでしょ?”」

 

「そう思われていたのですか....?」

 

「“だからこそ凄いって事だよ。リンちゃんもみんなも本当に良くやってるよ。いつもお疲れ様。”」

 

「.....いえ、私ではまだ.....」

 

こう言っても素直に受け止めていない。彼女なりの負い目もあるのだと思う。

 

「”もっと自分を認めても良いと私は思うな。“」

 

「.....それはお互い様では?」

 

「”あはは......言い返せないね....“」

 

それは私もか....自分を下に見る癖のせいで客観的に自分を見るのは苦手だ。

 

.....意外とみんな境遇が違うだけで似ているのかもしれない。

 

 

 

 

 

「......ん....何で急にイチャついてるんだ」

 

「”えっ“」

 

彼が顔を顰めながらそう言った。

 

「やめてください。怒りますよ。」

 

「”そうだよ、私なんかと....“」

 

「先生も!私”なんか“とご自身を卑下されるのは辞めて下さい....」

 

「”あっ.....つい癖で.....“」

 

この癖はしばらく抜けそうにない。

 

長い付き合いになるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




[補足]
-名無し
名前の無い存在。正確には自身を表す名をどれも自分の名前だと解釈していない。最初に詰め込まれた数々の記憶の持ち主の名のどれも自分に当てはまるものであると思えなかった。だから逆説的にどの記憶にも重ならない空白に“自分”、つまり“俺”を見出した。
名前が無い故に、呼ぶことができず存在しないものとは違い、彼は自認によって存在する。彼が自身を“名無し”と認識する限りは彼として在る事ができる。名前を与えられなかった訳ではない、名前が空白のままである事を望んだのだ。それはある種の不定形の名となったのだろう。
名前が無いからこそ、どうとでも呼べる。そして、どう在る事もできる。物語に異変が起きる前まではそうだったのだろう。





これから先生と名無しのダブル主人公的な書き方をする予定です。
適度に他人からの視点として書くことによって上手い具合にキャラの客観視をできるようにしたいですね。

好みの展開、表現を教えてください

  • 絶望、病的
  • 背徳、非道徳、インモラル的
  • 暴力、残酷、汚物、下劣など酷いもの
  • 曇らせ(晴らしアリ)
  • 全部好き
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