※非常に品性の無い言葉が含まれます。注意して下さい。
いくら特例とはいえ、ここ最近は事務処理を疎かにし過ぎたためやらなければならない作業が溜まりに溜まっている。どっさりと積み上げられた書類の山....いつもの倍以上あるそれはもはや山脈のように連なっている。
普段ならここで失踪してしまいたくなるが....
「ここはこう操作したらいい。」
「こうか」
「そうだ。飲み込みが早いな。」
今回は二人に事務作業に加わってもらっている。
サオリはともかく、名無しの彼にも仕事を覚えさせなければならない。
現状、彼の扱いには困っているのは変わりない。
未だに外から来た詳細が不明の存在である事には変わりないわけだし、連邦生徒会に安全性を証明する必要がある。
彼自身は何か危険な思想を持っているわけでもないし、“一部の生徒達”のような危うい性格というわけでも無さそうだが、本人の意思に反した事態が起きるリスクもある。
安全ではない、キヴォトスにとって害を及ぼす存在だと判定された場合、おそらくかなり面倒な事になる。追放しようにも方法が確定しない。“処分”するとした場合、彼は大人しく死を受け入れるだろうか?それは無いと考えるべきだろう。どこかに閉じ込めておくにしろ、彼と閉じ込める役割の生徒の双方にシビアなストレス管理が要求される。
そしてこれらのどの方法も生徒にさせて良い訳がない酷なものばかりだ。基本的に残酷な行為とは行う側の人間も精神的な負荷がかかる。
少なくとも今は安全性を証明するのが最も理想的なはずだ。
私は、あくまでも彼は後天的に凶暴性を宿してしまったに過ぎないと私は考えた。あの時、発作を起こしてしまったのはきっと恐怖が原因だ。
トラウマは簡単に癒えるものではない。だがやはり、少しずつ生徒達に慣れてもらわなくてはならない。
生徒達は一癖も二癖もある者ばかりだが悪人ではない。
キヴォトスと生徒達の良さが理解されていない事にもどかしさを感じた自分もいる。
「先生、この辺りの書類は終わった。次はどうすれば良い?」
サオリがとても活き活きとした様子で報告をしに来る。
「”ありがとう、サオリ。次にやる事なんだけど....“」
彼女に次にやるべき事を説明する....
「私と彼で依頼を?」
「”そうだよ。“」
シャーレがやるべき事はもちろん事務作業だけではない。
生徒から来る相談、もとい依頼を受けて解決していかなければならない。
だが今はいつにも増して多忙だ。後回しにした重要な書類を私は片付け終わっていない。
そこで、私の権限が必要にならない依頼は彼女らに任せる事にしてみる。
彼につきっきりになりすぎるのも良くない。
万が一にも無さそうだが....私に依存した状態になってしまうのは良くない。適切な距離は必要だ。
多くの生徒に関わってもらい、人助けをする事で彼なりにキヴォトスでの居場所を見出してもらうことが目的だ。
彼の“危険性”についての話も考慮した場合、サオリなら色々と信頼できる。任せても大丈夫だろう。
「”今からやってもらうのは....迷子の猫の捜索!これを頼んでもいいかな?“」
「そうか。分かった、先生。是非とも任せてほしい。」
彼女は明るい表情で返事をしてくれた。忙しい仕事だが不満がないようなら何よりだ。
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先生からサオリと共にまた違う仕事に当たるように言われた。
どうやら“依頼”をこなせばいいらしい。
依頼主と待ち合わせする約束になっているようで今はその場所に向かっている。
「....でさ、そのヘルメットはなんなんだ?」
「これか?先程も言っただろう。私は....」
「指名手配だろ?それは分かってるんだけどな....」
「もうちょっとマシなのは無いのか?それじゃマジで不審者だぞ。」
一応、彼女は指名手配されている身である事は聞いている。
それで顔を隠すのももちろん妥当なのだが....
この黒いヘルメットを被った姿じゃ....かなり怖い....って言うかヤバい
「ヘルメット団とかいう輩もいるらしいし警戒されるんじゃ....」
「.....確かに否定はできないな。」
「これならどうだ?」
彼女は何かを取り出して顔に装着した。
あれは....マスクか何かだろうか?
「まあ....そっちの方が良さそうだとは思う。」
目元でバレる可能性も無いわけではないが....とりあえず今は仕方ない。
「おっあれじゃねえか?」
人が見えてきた。周りの建物の特徴が情報と一致している。そこが待ち合わせの場所で間違いなさそうだ。歩いて向かう。
未だ死体はそこらじゅうに見える。だが、少しずつ減ってきてるような薄れているような、そんな気がした。
「突然すまない、貴女が猫を探している人物で間違いは無いだろうか?」
「えっ...あの....あなた方は一体.....」
分かりやすく困惑されている。シャーレ=先生、という認識らしい。
「私達は先生の代理だ。シャーレに属している者という認識で構わない。」
「ええっとな.....これが証明だ。」
とりあえず事情を説明。証明になる書類や先生本人からのメッセージを提示する。依頼主が疑わしげに書類に目をやる。
「そ、そうなんですか....あなた方もシャーレの部員という事なんですね......先生に会えると思ったんだけどなあ....」
「何か不満があるのか?」
「い、いえっ、そんなことはありません!」
「そうか。それでは、詳細を教えてもらえないだろうか?猫を探せば良いのだな?」
話は円滑....?に進んでいく。
「はいっ....少し前から居なくなってしまって....」
「へえ。写真とかは無いのか?どんな見た目なのか知っておきたい。」
猫の見た目が分からない以上何も始まらない。
「もちろんあります!こちらです....」
端末には猫の画像が映っている。白と黒のツートン。当然だが首輪から飼い猫であることがわかる。
「しかし...猫が迷子に...か......室内、それとも放し飼いのどっちなんだ?」
「放し飼い....ですかね....たまに外に出て行くことはあったのですが...いつもなら日が落ちるまで戻ってくるはずなんですよ....」
「なるほど、最近引っ越しとかはしたか?」
「いえ、してませんけど.....」
「そうか.....分かった。」
「大まかは把握できた。見つけてみせよう。」
「ありがとうございます!じゃあ私は用事があるのでこれで失礼しますね。猫ちゃんが見つかったらここに連絡してください!それじゃ!」
「........」
「.........」
「なあ。」
「なんだ。」
「あいつ猫がいなくなったのを先生に会う口実ができたってぐらいにしか思ってないんじゃねえの?」
「.....今は依頼の事考えろ、いいな?」
「......」
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依頼主と分かれて仕事が始まる。
「はあ....やっぱ初対面生徒だとまだ少しキツイな....」
「まともに話せただけ上出来だ。あまり気にするな。」
まだあくまでもサオリの気配には慣れただけ。他にも耐性ができているわけでは無い。
とりあえず浮かんだ考えをサオリに伝える。
「放し飼いで脱走か.....だとすれば原因は3通りぐらい考えられるな。」
「そうなのか?」
「一つは単純に遠くに行き過ぎた。猫の帰巣本能は自分のテリトリーから
出ると効きづらくなる。これは人も同じで帰り方が分からなくなったってだけだな。」
「もう一つは発情期だな。パートナーを探しに行ってるのかもしれない。」
他にも家の居心地は悪くなったから、という推測もしたが、引っ越ししたわけでも無いのなら可能性は低そうだ。
「最後はな....」
「最後は....なんだ?」
「あまり考えたくないが.....交通事故に遭ったってやつだな。」
「なるほど....確かにそれは望ましくない状況だ。早急に探そう。」
「そうだよな。手始めに....野良猫のたまり場とか探してみるべきか?」
「ああ、そうしよう。」
野良猫のたまり場といえば....草むらや軒下....車の下なんかにも居たりする。室外機なんかが置かれてる路地裏を探してみよう。
サオリにその事を伝えて該当する場所に向かう。
人目につかない場所なら自分たちにとっても好都合だ。
都市の景観を見るのはとても楽しい。蔓延る気配不安さえ感じなければなお良かっただろう。建築様式は知っている気がするがこの都市自体は記憶には無い。新しく、とにかく新鮮だが、どこか懐かしい気もする。頭の中に何人も違う感性と記憶を持った人がいるみたいだ。何故こんな気分にさせられるんだろう?
走って数分、すぐに路地裏にたどり着く。細い道を奥へ奥へと進んで行く。
「....糞尿みてえな匂いがするな...多分もう近い。」
「ふ、糞尿....良くそんな事が分かるな....」
「あれ?分からないのか?」
「ああ。特に変わった匂いは感じられないが....」
キヴォトス人は鼻が効かないのだろうか?
....いや、逆だろう。自分の嗅覚が多少は優れているというだけだ。あいつらには敵わないだろうが....
「ん....?」
進んだ先からは野良猫っぽい匂いが強く感じられる。
だがそこには“気配”もあった。
「誰だ....?」
野良猫は居た。だが一人、何者かがそれらの前の屈んでいる。
「.....!あれは確か....便利屋の....!」
「知ってるのか?」
「ああ....一応だが....」
白と黒の髪、後頭部に生える角...?そして五角形が二つ重なったような“輪っか”を持つ生徒がそこには居た。猫と戯れているように見える。
「あっ....」
猫は自分の存在に気づいたと同時に逃げるようにその場から去ってしまった。
「......うん?」
ゆっくりと振り向く。彼女こちらに気づいたようだ。
「こんな場所でも誰か通るかもしれないとは思ったけど.........まさかそれが錠前サオリ、あなただったなんてね。それと....もう一人の方は....前に会った事あった?」
もう一人.....自分の事のようだ。
「いや、初対面だ。俺はその錠前サオリの仕事仲間って認識で良い。」
「そうなんだ。それにしても.....ヘイローが無い....まさか外から来た人?先生以外にも居たんだ。」
正直自分でもどういう経緯を追って
「まあ....多分そうだと思う。」
「なんだか曖昧な返事だね....それで、あなた達は仕事の最中?」
「すまない、そんなところだ。邪魔をしてしまっただろうか?」
「いや、気にしないで。あの子は結構人見知りだったから。」
あの子....?さっき居た野良猫の事だろうか?
「あの野良猫の事を知ってるのか。この辺の猫に詳しかったりするのか?」
「いや....そういうわけじゃないけど.......猫が良く来る場所を知っているからそれでちょっと覚えてるって感じかな。」
「へえ.....いや、待て....じゃあ猫のたまり場とかも分かったりするんじゃないか?」
「まあ一応知ってるけど....そもそも何が目的なの?」
「それはだな....かくかくしかじかで....」
一通りを説明する......
「....それで迷子になった猫を探すためにたまり場を知りたかったんだ。」
「そうだったんだ。」
「だから私達に場所を教えてもらえると助かるのだが....」
「うん、分かった。それなら私も協力するよ。一緒に行く。」
「それは助かるのだが....満足な分け前などは出せそうにない。問題はないか?」
確かに無償では向こうにメリットはない。どうしたものか。
そう考えていると彼女は少し虚をつかれたような表情をした後に言った。
「別にその必要はないし.....その迷子ももしひとりぼっちだったら放って置けないって思っただけ。深い理由はないよ。」
「そうか...さすがあの便利屋68.....度量が広いな.....」
サオリからは尊敬の念のようなものを感じる。
ひとりぼっち....孤独か....
自分はそれをよく知っている。
俺の”向こう“での人生は孤独に始まり孤独に終わった。
その全てが孤独だったわけではない。
出会いがあり、得た全てと予期せぬ別れを迎えた。
最初と最後、状況は違えどどちらも孤独だった。
そして今も
もう実物はどこにもない
「確かに、ひとりぼっちは放って置けないよな。」
その猫が何を原因の迷子になったのかは分からない。
飼い主に会えず、孤独を感じているのだろうか。
それとも、また少し違った孤独を拗らせていたから遠くに行ってしまったのだろうか。
どっちにしろ見つけに行くしかない。
関係が何であれ、友人....いや、猫が飼い主に二度と会えなくなっては遅い。
「聞いてなかったが....あんたはなんて名前なんだ?」
「名前は鬼方カヨコだけど。」
「分かった、カヨコか。よろしく。俺は......まあ何とでも適当に呼んでくれ。」
「適当って...そういうのちょっと困るんだけど...........まあ....とりあえずこちらこそよろしく。」
名前は...覚えた。こっちの世界で名前は重要だ。ちゃんと覚えておいた方がいい気がする。
カヨコの示す方向へ進む。
また”出会い“、“変化”を得た。そんな事を考えながら光の差し込む方へ向かった。
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「待て、止まれ。」
「な、なんだ?」
サオリに静止を促される。足を止めて息を潜めた。おそらく良くない何かが起きている。
「あれだ。見ろ。」
示された方向を見る。
黒塗りのバンが停められてある。近くでは住人が倒れおり、何人か死人のような顔をした不良....チンピラ?が捕縛された猫や犬などをバンに大量に詰め込んでいる。苦しそうだ。
「ヒャハハハ!人様のペット捕獲して売んのメチャクチャおもしろいでェ」
「清楚で気位の高い女から強盗する時ほど気持ちのええもんはないで」
「い や あ あ あ あ 『
強盗中のようだ。
「ん?あれ...見ろ!俺達が探してた猫じゃないか?」
車に詰められそうになっている小動物の中にあの画像と同じ特徴を持つ猫に気づいた。
「酷いね....まだこういう手法で稼ぐ連中がいたなんて....」
カヨコは心底不愉快そうだ。
実際にペットを誘拐して塗料を塗り、珍しい犬種だとか言って売るような事例があったような気がする。
「犬は早く犬を渡せよ」
「い....いやだ....」
襲われた住人のペットが奪われそうになっている。
「そうか....なら死ね!」
「っ!!」
野蛮人の手には刃物が握られていた。
全くの無意識というわけでは無い。だが咄嗟に体が動いた。
〈ガッ〉
「
「なにっ」「な、なんだあっ」
ナイフを突き刺そうとしていた手を掴んで止める。
「碌に作戦も立てずに突撃するなんて.......仕方ない、錠前サオリ、バンのタイヤは破壊できる?」
「問題ない。」
〈ダダダダダッ〉
サオリがタイヤ2つを正確に射撃、そして破壊した。あれでもう逃げられはしない。
「なんじゃあっ」
「あうっ い....いきなり始まるのかあっ」
相手は完全に予想外の出来事だったようでごまついている。
....ならばこちらに分がある。
ナイフ使いの一人は後ろに飛び退き、距離を取られた。
「けんど人を刺すことやったらワシは負けへんよククククク.....」
「.....!」
銀の光が視界を縦横無尽に舞った。
同時に身体中に鋭い感覚が走り、じわじわと熱い感触を覚える。
「なっ....」
瞬きをする間ない刹那、腕や足がズタズタに引き裂かれた。
自身の反射神経の鈍りになぜ気づけなかったのか。
「無事か!」
また強い痛みだ。サオリの声が朧げに聞こえる。
だがそれとは別の“声”が脳内を蠢く。
“痛い”
“殺せ”
“殺せ”
“殺せ”
“殺せ”
“殺せ”
“殺せ” “殺せ”
“殺せ”
「駄目だ!正気を失うな!」
曇る意識に自覚した。
またこれだ。何も変わっていない。
結局まだ囚われている。
俺はまだどん底だ。
少しも這い上がれていない。
〈バチン〉
自分の頬をぶっ叩いた。
曇っていた意識がはっきりする。
そして即座に行動に移す。
「なにっ」
即座にナイフ使いの頭目掛けて蹴り上げ、脳天にかかとを落とす。
「はうっ」
チンピラが床に叩きのめされた。
〈ダダダダダッ〉
「うげっ」
すかさず倒れたチンピラに追撃が入り、攻撃の主が自身の近くに移動する。
「理性を失ったか!?」
サオリが少し緊迫した様子で問いかけてくる。
「.....いや?」
「正気なのか?」
「ああ。今ははっきりしてる。」
正気を保ったままだ。いつまでも“失った”ままでは意味がない。
這い上がる努力するべきだ。
その一手が今打たれた。
「....殺さずに倒せばいいんだろ?」
「....!」
殺さずに鎮圧する。今はそれができれば上出来だ。
「戦えるのか?」
「なまっちゃいるがな。」
能力は少し落ちたかもしれない。
....だがそれが止まる理由にならない。
「そうか.....なら、」
「背中は任せる。いいな?」
「ああ。」
「ゴングを鳴らせっ戦闘開始だっ」
背負った鉈を引き抜く。
馴染んだ柄、かつての戦場を思い出した。
「コラ———-ええ加減なことぬかすと
〈ダダダッ〉〈ダダダダダッ〉
そう言い終わる前に大量に鉛玉が放たれた。
〈ガンッガンッ〉
この距離ならある程度は銃弾を避けられる。避けられない分は弾いてカバーする。
「なんじゃあっあれはっ」
「このチンカスが!足腰だけやないチンチンも立たんようにしたんどっこらあっ!」
銃撃を掻い潜り、一人目掛けて懐に入り込む。
相手の顔面に頭突き、体勢を崩した所で腕を掴んで組み伏せ、銃を奪う。
〈ダダダダダッ〉
「ぐへっ」
後頭部めがけて銃撃。相手は呆気なく気絶した。
どうやら“あの化け物共”とは違って耐久性はあれど数十発の弾丸で気絶するようだ。下手に“タフ”だと殺しかねないため助かる。
この短機関銃は軽い、片手でも扱えそうだ。
マガジンを奪い、リロードする。錆びていないため円滑に機構が作動する。快適だ。
「大変だあっ、田代さんがやられたあっ」
〈ダダダダダッ〉
銃撃は絶えない。
キヴォトス人は頑丈で銃弾を通さない。一度そのように“性質”を応用させて身体の表面を頑丈にする事など試した事はあったが非常に燃費が悪く、素早い動作が求められる自分の戦い方には合っていない事が分かった。
そのため、銃弾は避けるか受ける事に絞った。変に衝撃を受けて減速するより体を“突き抜かせて”しまった方がいい。
「なんだあっ」
「鉛玉が、かっ体を突き抜けてるですう」
脆い体を敢えてそのままに、傷付けばすぐに戻せばいい。
〈ガッ〉
「ふぐっ」
頭掴んでエネルギーを吸収、腕が熱い。久々の感覚だ。
「やばっこいつが三人に見えるっ」
〈バタッ〉
気絶して倒れたようだ。
「ウオオオ仲間を攻撃するなあっ」
〈ズドン〉
「あうっ」
逆上して攻撃しようとしてきた野蛮人は不意打ちを喰らって倒れた。
その背後からある人物が姿を現す。
「だ、大丈夫....?血まみれだけど....」
カヨコだ。カヨコが目の前に居る。
「大丈夫、すぐ塞がる。」
とはいえまた服を汚してしまった。攻撃を受け無いようにするのも課題かもしれない。
「先生と同じなら危ないかと思ったけど....いらない心配だったね。」
「えっあいつ弱いの?」
「弱いの?って.....まああの人の強みは戦う事じゃないから.....」
そういえば後方指揮してたような....
一旦その事は保留。周りを見る。
サオリは....まあ...何というか圧倒的だ。背中を守ってもらっているのは多分俺の方だ。
思ったよりも野蛮人が多い、助けを呼んだらしいが到着があまりにも早すぎる。
「ボクゥ?ちょうお兄ちゃんたちにつきおうてや」
すごい数の野蛮人が集まってきている....
「カヨコ。」
「何?」
「俺があいつらの注意を引く。その間にバンに乗せられたペットを奪還するのはできるか?」
「できなくはないけど....一人じゃ厳しいかな。」
「なら....やっぱり倒すしか無いか。」
まだ何人か残っている。カヨコは遮蔽物に身を隠した。
「キミに一万ドルをプレゼントするよ」
「ただし現金じゃなく一万ドル分の弾丸でね!」
〈ジャキッ〉
〈ダダダダダッダダダダダッ〉
「危ない!伏せて!」
とんでもない量の弾丸を土砂降りが如く浴びせられた。
だが、
〈ダッ〉
「なにっ」
「高く飛んだ....!?」
“性質”の応用、脚に力を集中させ、筋肉が壊れるほどに高く飛ぶ!
「今だっ!!」
そう叫んだ。カヨコには伝わったようだ。
真上と水平方向の挟み撃ち....!
相手は単純だったため全員の注意がこちらに向いており、カヨコを相手の懐に入り込ませる事に成功した。
〈ビシャッ〉
「な、なんですかあこれはァ目、目に変なものが入ったですゥ」
「目がじんじん痺れるッ」
血の目潰しだ。真上からならよく入る。
性質の薄い状態のものだ。深刻な被害をもたらすわけでは無いはず。
勢いを付けて相手の一人目掛けて膝蹴りを放つ....!
「なにっあれは...!」
「っしゃあ!コブラ・ソード!(変則テン・カウ)」
〈ゴッ〉
「あっ一発で飛んだッ」
(コブラ・ソードって何だよ)
そんな事を思いながら一人ダウンさせる。まだ数人いると思ったが.....
〈ズドンズドン〉
「こっちは終わったよ。」
既に仕留め終わっていたらしい。非常に優秀だ。
〈ダダダッ〉
「あががっ」
残っていた最後の一人はサオリが仕留めた。
「終わったな。増援を呼ばれた以上早くこの場から去るべきだろう。」
「一人が車のキーを持ってたよ。さっさと猫と他のペットを救出しよう。」
カヨコは既にバンの鍵を見つけていたらしい。
「分かった。」
ペットを解放、そして安全な場所まで連れて行く。
思いもしない事態が起きたが何とかなった。
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「先生、私だ。先ほどだが......」
『“ええ!?そんなことが!?待ってて、すぐに対応するからね!”』
安全な場所へ移動してから先生に連絡をした。
〈ピピピピピッ〉
便利屋の彼女にも着信が入ったようだ。
「社長?私だけど....別にちょっと知り合いの手伝いをしてただけ。すぐ戻るから.....」
〈ピッ〉
「ごめん。今日はもう帰らなくちゃ。後のことだけど...先生が居るなら大丈夫だよね?」
「勿論だ。とても助かった。恩に着る。」
「俺からも言わせてくれ。ありがとうな。」
「ううん、気にしないで。私が勝手に手伝ったまでのことだから。それじゃ」
「ああ、それでは。」
「またな。」
別れを告げて彼女が去っていった。
「....本当に無償で良いんだな....すげえ....」
「ああ....流石は便利屋だ.....」
やはり裏世界のトップ....寛大だ。
「俺の世界じゃ考えられないな。基本こういうのって互いにメリットが生まれなきゃ行動に移せないだろ?」
「そうか?」
いやまあそうだろう。彼の居た世界は知らないがどこでも基本は同じはず。アリウスでも力が全てであった。きっと似た世界だったに違いない。
「でも次また会ってこういう事になったらちゃんと報酬の分け前出さないとな。」
「そうなのか?」
「そりゃあこれから関係が続くんだったらWin-Winな関係にしないとダメじゃないか?人間関係ってのは互いにメリットがあった方が健全に続くもんだろ。」
「それは....そうなのだろうか...」
一重に否定はしきれないが....肯定もできない。
「あっ金銭関係だけがメリットってわけじゃないからな。言い方が悪かった、すまん。」
結局は人によるか......曖昧なままだ。
メリットとは、人間関係の利益とは、対等な関係とはなんだろうか?
「すまん、なんか俺変なこと言ったよな。忘れてくれ....」
「いや、気にしなくて良い。むしろそういった事も話すようになってくれて私は嬉しいぞ?」
「フォローされた....」
なんだかんだ言いつつ心を開いてくれてはいるらしい。これは良い傾向だ。
しかし...話すことか....
ふと今日の彼の戦闘を思い出す。
「それはそうと、だな....」
「なんだ?」
「お前の戦闘術に関してだが....あれはどうやって習得したものなんだ?」
「そりゃあ....自分で....考えて覚えて使ってきたって感じだが....」
「やはり自己流か。それ自体は悪いことでは無い。通常の人体では不可能な動作も取り入れているのはかなり強みになるだろう。だが邪道の習得方法と言うべきか.....少し、いやかなり動きにムラがある。また別のタイミングになるが、稽古をつけてやろうか?そうすればかなり改善されると思うが....」
「へえ.....なんか....すごいな.....よく見てくれてて助かる.....よ?」
「そうだろう。良ければ今からでも改善点を....」
「まあ....またそん時頼むよ。」
[補足]
-鉈
実際には鉈でも何でもない無骨な金属の塊。鉄板にも見える。
銃弾を弾けるぐらいに丈夫だが、その分重い。なんの特別な力も帯びてはいない、ただ鈍痛を与えるだけのものである。キヴォトス人に対する特攻があるわけでもないため殺傷する心配は無い。とはいえこれで打たれれば痛い。武器と呼べる代物ではない、ただ一度も折れた事のない道具。
-地球の治安
治安とか無い。他者と会った時点で互いにメリットが見出せない場合は必ず殺し合いになる。同じ種族であろうと基本的には自分以外食料にしないと生きていけない環境なので本当にクソみたいな世界。協力関係ができたり集落が形成されたりするケースは実はかなり稀。
-名無しとサオリの関係性
とてもプラトニックで友人的な関係です。多分これからもこういう関係で書くと思います。
好みの展開、表現を教えてください
-
絶望、病的
-
背徳、非道徳、インモラル的
-
暴力、残酷、汚物、下劣など酷いもの
-
曇らせ(晴らしアリ)
-
全部好き