「.........」
「.......なア」
「......おイ」
「んん.....」
何かに揺さぶられている気がして、意識が覚醒する。
「....起キろよ」
「起キろ!」
「んん....なんだよ....」
「もウ明るくなったぞ!腹減った!メシを探しに行くぞ!」
いつも通り、夜が明けて朝が来た。見慣れた曇天が眼前に広がる。
.....相変わらず酷い濁りようだ。透き通った青空はいつ見れることやら。
「なんかちゃんと寝れた気がするな。意外と夜にしては寒くなかった気がすんだよな....」
それに長い夢を見ていたような.....
[
「
「分かった分かった....でもその前に飯だろ?」
「あタり前だろ!ガハハハ!.....」
そうだ、こうしていつも通り不味い飯を探しに行くんだ
ずっと腹が減って、ずっと暑くて寒い、ずっと痛みと苦しみが付き纏う、だとしても目標を目指すんだ
俺達は精一杯生きてる
こんな環境でも十分に生きれている
俺達は無敵なんだ
だからきっと、楽園にだって
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〈ピピピピッピピピピッ〉
「”.....んんっ....ふああぁぁ....“」
「”起きてぇ.....朝が来たよぉ.......ふわぁ.....仕事に行かないと.....“」
不快な音と共に目を覚ました。覚めてしまった。
あれは夢で現実はこちらだったらしい。
こうして眠ったのはいつぶりだろうか。
開けられたカーテンの向こうには見慣れたくない快晴。
透き通った青空が広がっている。
俺はずっとこれを求めていた。だが、それを手に入れてなどいない。
あれは違う。こんなものが欲しかったんじゃない。こんなものが望みであるものか。
「”早く朝ご飯食べないと....なんでもいいよね....“」
「..........」
「”ど、どうしたの?機嫌悪い?“」
「.....いや」
「なんでもない」
当たり前のように飯が出てくる。そこらじゅうに食えるものがある。
でもこれで腹は満たされない
味が無い、達成感が無い、無意味とも言える行動....
まだあの不味い飯の方が意味があった
豚に与えられるような残飯にも劣るゲテモノの肉の味の記憶に何故こうも懐かしさと寂しさを覚えるのだろうか。
今は苦しさよりも虚しさが強い。
出会いがそれを紛らわす事がある。だが拭いきれないものだ。
拭えぬ喪失感は付き纏う。
だからこそどん底から這い上がらければならない。
「”そろそろ行こうか。“」
支度をする。昨日と同じ。だが俺にとっていつも通りではない。そのはずだ。
そうして気付く。
これが“いつも通り”だと思いたくはない自分に。
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シャーレのオフィスに到着した。
「”......さて、何から手を付けようか....“」
仕事の準備をしながらある事に気づいた。
「今日はサオリは居ないんだな。」
「”ああ、連絡があったんだ。今日は来れないみたい。“」
「そうか......」
何故今、自分は落胆したのだろうか?
サオリが居ない事に?
自分は彼女に何を見出そうとしている?
当然、恋愛感情などでは無い。
裏に理解できない
俺は今、何が欲しいのだろうか?
欲しいもの....つまり.....
「望み....」
「“ん?今何か言った?”」
「......」
今求めているものはなんだろう。
すぐに思いつくはずのない。それを見つけるのが大きな課題となっている以上簡単には行かない。
もっと単純なものから探していかなければ
「....なあ、少しいいか?」
「“何かな?”」
「血が出ても汚れない装備が必要なんだが....素材が豊富に売ってる場所や技術に詳しい所なんか無いか?」
「“なるほど.....なら、都合がいいかも!今日はミレニアムに行く予定なんだ!もしかしたら要望を叶えられる部活があるかもしれないよ!どう?”」
ミレニアム....?雑多な記憶の中での聞き覚えがある。
「なんか覚えてる気がする......ミレニアム懸賞問題だったか?アメリカで出題された100万ドルの懸賞金がかかった7つの問題があり、内6つがまだ解かれていない.....そんな記憶があるんだが......それとは別で、ミレニアムって名前の場所があるのか?」
「“あっ......覚えてないんだ....”」
「....?」
「“そうだね.....ミレニアムサイエンススクールっていう学園なんだけど.....すごいねそれ、一応こっちのミレニアムでは7つの難題、千年難題と呼ばれるものはあるけど........単なる偶然かな....?”」
「”とりあえずどう?行ってみる?“」
「ああ、分かった。」
「”よしっ、そうと決まれば連絡しておかないとっ“」
ミレニアムサイエンススクール、通称ミレニアムと呼ばれる学園に向かう事にした。
学校に行くのは初めてかもしれない。
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鉄道を経由してミレニアムに到着。
....どこか見覚えがあるような来たことあるような....
キャンパスに入り、様々なものを見る。近未来な内装と数々のロボットに少し胸を躍らせつつあった。
ここは技術の学園、生徒達は部活を通して日々様々なものを開発しているそうだ。
活気に溢れており、それぞれが精一杯に自分の仕事に励んでいた。
彼女らは時々苦戦しながらも仲間達と共に作業に没頭している。
その様子は自身の眼に眩しく映った。
「仲間....か........」
羨ましげに見つめていた所、先生が話しかけてきた。
「”いいよね〜こういうのを青春って言うんだろうね〜“」
「青春?」
「”そうだよ、青春。えっと...例えるなら、人生の春とか......希望や理想、あこがれに溢れた時期の事かな。“」
「”私はこの光景を見守るのが好きなんだ。なにせ人生で一度きりの期間だろうからね。私はそんな時期なかったけど......“」
青春....一度きり、二度と訪れない人生の春、か.......
馴染みのない言葉だ。
自分にこんな透き通った日常は無かった。
羨ましい、それでいて遠く、無縁に感じる.....
青春って、なんだろうな?
少しの間その事について考え耽っていた。
「”私はこれから仕事で会議に行かなきゃいけないんだけど........きっと来ても面白くないだろうから、ミレニアム内の部活を見て回ったらどうかな?もしかしたら求めているものが見つかるかもしれないよ!“」
「”あ、でもその前にこれを“」
何かカードのような物を渡された。首から下げておくための紐も付いている。
「”一時的な身分証みたいなものだよ。とりあえずそれがあれば一人でも怪しまれる事はないはず。“」
「そうか....分かった....」
「”それじゃ!また後で会おうねっ!“」
そそくさと行ってしまった。多忙さに同情はする。
「しっかし....」
部活を見て回れと来た。
「どうしたもんか....」
どうやって見て回る?このクソ広いキャンパスで?
〈ヒソヒソ....〉
「見て....あの人ってもしかして....」
「えっ...あれが....?」
周囲にいた生徒が自分を見て何か囁き合っている。
まあ....そりゃそうか....怪しまれるのも無理はないし俺がキヴォトスにとって得体の知れない何かである事には間違い無い。
そういう自覚があるからか、視線が少し痛かった。
この社会にとって少数どころか部外者の自分はいつか疎まれるのだろう。
「はーあ....」
無意識のうちに肺に溜めていた空気を押し出す。
....とりあえず外の空気でも吸ってこよう。自販機で何か飲み物買うのもいいかもしれない。
「あ、あのっ」
「ん....」
外に向かおうとする自分を誰かが呼び止めた。
知らない声だ。
振り返ると先ほど囁き合っていた生徒の一人だ。
何のために....?
「あなたは先生の言っていた”見学生“の方で合ってますよね....?」
「見学生....?」
「ほら....!その胸のIDカード....聞いた話が間違っていないならあなたがそのはずなんですが....」
何の話だ.....?いや....ああ、“そういう設定”なのか。
「多分....その見学生ってやつあってる...はず....」
「やっぱり....!そうですよね....!よかったぁ....人違いじゃなくて.....」
「あの....良ければ...私たちの部活.....『新素材開発部』を見に来てくれませんか....?」
新素材....!
「新素材....!それって合成繊維とかの研究もしてたりするか...!?」
「も、もちろん....!もしかして興味がありますか...!?」
「ああ、話を聞いてみたくなった。良ければ案内してくれるか?」
「はい!」
思わぬ好機だ...!
新しい装備の素材が見つかるかもしれない....!
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案内に沿って歩く。本当にこの学園は広い。
「—-なるほど、それで新素材に興味を......」
「ああ、それで今は血....というか水分や汚れを弾けるような繊維が欲しい。」
「確かに、外から来た人は私たちよりも大きな怪我をするって聞きますけど....そんなに大量に出血しても大丈夫なものなんですか?」
「俺は....まあ...慣れてるからちゃんと対処できるんだよ。」
「そういえば外の紛争地帯で育ったという話でしたっけ。だから怪我にも慣れてるんですね....それで服もそんなボロボロに.....」
「..........」
「まあ....そんな感じ....」
そういう設定で通ってるのか....
色々と都合の良い設定を考えてくれた先生にはとりあえず感謝すべきか。
いちいち面倒ば事を考えずに済む。
「いわゆる戦争孤児ってやつですよね....!?私初めて会いました!やっぱりここは発展してるなぁ〜とか便利だなぁ〜って感じますか...!?」
「ああ、うん.....そう思う....」
デリカシー、どこへ!!
一応、事実ではないだけまだマシなのだが....
.......もしかしたら割と孤児ってのも事実なんじゃないか?
「それで何ですけど.......私たちは最近『やわらかセメント』というものを開発しておりまし......」
〈ドガアアァァァンッ〉
突如、耳をつんざく爆音が鳴り響く。
「な、なんだ...!?」
距離は近い、テロか?それとも事故か?
「ああ、そんなぁ!こんな時に....!」
「すみません!!
「えっ.....あっ、おい」
“また”? ”ちょっとした“?
何を言ってるんだ?
その意味を考える間も無く爆発の方向へ走っていってしまった。
今日は走って去るやつが多いような.....
困った。置いてけぼりだ。
ここどこだ....?着いてきたのは良いが場所をいまいち把握できていない....
次は何をすべきか考える。
また、ちょっとした、という言葉からああいった事故はそこそこの頻度で起きているのではないかと推測する。
つまりあんな事故がしょっちゅう起きてる恐れがあるんだよね、怖くない?
彼女らは体が頑丈な分多少安全管理を怠っても問題ない....のだろうか...?
何故あんなに丈夫なんだろうか?
”生徒“という存在に対する疑問が次々に湧いてくる。
普通に考えれば俺や彼女らはどう考えても自然な状態で生まれたとか考えづらい。少なくとも自分に最初から備わっていた常識や知識を踏まえて考えた場合は違和感を感じる。
この常識や知識の外側で働いている奇妙な法則でもあるのだろうか?
「んん.....」
どちらにせよ....また別の部活などを探さなきゃいけない....
今度は自分から声をかけなければならないかもしれない。
.....心配だ。コミュ力以前の問題が多すぎる....
部活のリストが載ったパンフレットでもあれば興味があるところを見つけやすくもなるのだが....
パンフレットさえあれば......
「........あるじゃん」
あった。
「ふぅん.....」
ページをめくって内容を確認。
目的の部活リスト以外にもキャンパスのマップが載っている。
一通り目を通してみる。
AI研究部....さっきの新素材開発部....ダイエット部....古代史研究会?
保安部...野球部...トレーニング部.....メイド部...?なんだこれ....
結構幅広いというか多様性に富んでいるというか....
他にはゲーム開発部やエンジニア部などがある。
ゲーム開発部....どこか聞き覚えがあるような....?
....だがゲーム開発部に行ったところで今求めるものは無さそうだ。
エンジニア部を訪ねてみよう。少し興味がある。
もしかしたら良い発見ができるかもしれない。
マップを見ながら長い廊下に一歩、足を踏み出した。
「モモイ!モモイ!」
「.....アリス....?そんなに急いでどうしたのさ?」
「モモイ、聞いてください!アベルがいました!」
[補足]
-名無しから見た生徒
生徒の側面と裏側の隠れた恐怖の側面がどちらも見えてしまっている状態。実は最初にキヴォトス人に会った時には見えていなかった。
例えば先生や住民などが生徒を見た場合、生徒のテクスチャしか認識できないが名無しの場合は透視の如く恐怖が見えてしまう。恐怖は理解が追いつかない漠然とした概念のようなもの(あくまでこの二次創作における独自設定)であるため、彼にとっては不安を感じる対象。見えるといっても第六感に近い。
見え方を例えるなら、キャラクターの着ぐるみの中身の人が透けて見えてしまっている状態が近いかも....?これでは対象を純粋にキャラクターとして認識する事が難しい。
(作者のコメント)
良ければ読者さんの好きなキャラクターを感想で教えてくれよ