「....いやいや、消えたりしたわけじゃないから良かったよ!あのまま完全にいなくなったらどうしようかと思ったからね!また改めてよろしくね!」
「....っ」
咄嗟に手を握られて、その手を引っ込めてしまった。この小さな手を壊してしまいそうだと感じて、冷や汗をかいた。
心の準備もせずに不意に体、特に腕に触れられるのはまだ少し慣れない。膨大なエネルギーを前に性質を抑える事はそれなりに技術がいる。
今のは握手......だったのだろうか?
「あれ、びっくりさせちゃった?」
「んん....反射でつい......ごめん.......」
失礼な事をしてしまった。
「す、すみません、少しよろしいでしょうか....?」
ユズが何かを尋ねてくる。
「あ、あの.....あ、足が....まだ....」
ああ、足の事か。
「足なら今はこの義足で....」
「い、いえ、その....そっちじゃなくて....」
「.....?.....ああ」
ユズが切れて放置されている足を指差している。
あれの処理をどうするかという事だろう。
後でくっつけるだろうし一旦置いておくか。
包帯で包んで隅に配置。見てくれが不穏過ぎる。
「えっそれでいいんだ.....」
「それじゃあ見学生の君!早速メカ・フットのテストをしようか。アリス達はこちら側においで」
ウタハがそう言った。安全面の為に動作チェックは必須だ。
俺は余裕のあるスペースに、彼女らは端の方の移動する。
「その義足は君の脳信号を読み取って動くんだ。だから君の本当の手足のように動かせるはずだよ。まずは垂直に飛んでみようか。」
「分かった。」
筋肉に力を入れるようにしてみる。足先の感覚は既に無いが、問題なく動いた。単純に義足を断面にくっつけた訳ではなく、膝や腿などの部分をサポートする機構もついている。だから脚の動きは全て極小の力で動かす事が可能になっているようだ。
膝を曲げ、そして勢いよく伸ばし、跳ぶ動作を行う。
〈ガシャン〉
「わっわっ」
確かにいつもよりも高く跳べた.....だが1.3倍どころではなく1.6倍ほど跳躍力が上がっているのは大丈夫か?
「問題なく動作しているようだ。ただ想定していたよりも高く跳躍しているみたいだね.....君の体重が軽い....というだけではないかもしれない。元々、君自身の体が機敏な動きをするためにできていたからかもしれないね。」
「アリス分かります!『すばやさ』のステータスが高いということですね!
知らない内にそういう発達もしていたのだろうか....?
確かに防御力のない自分にはとにかく素早い動きが要求される。
もしかしたら体が自分の要求に応えて造りを変えていたのかもしれない。
この肉体は自分の思い通りになる....のか?
「もう何回か跳んでみてくれ。データの収集は繰り返しが大事だからね。」
「了解。」
また何度か跳躍する。
とても高く跳べる....だがもっと高く跳べそうだ、そんな気がした。
「少し“別のエネルギー”を加えてみてもいいか?」
「別のエネルギー.....?一体なんだい?」
“性質”の応用、いつも脚部に運動エネルギーを加えて跳ぶのと同じように鋼鉄の足に運動エネルギーを加える。
〈ガシャン〉
「な、なんだあっ!?」
体全体に強い重力がかかるのを感じた。そして天井が既に目の前に。
天井にぶつかりそうになったので空中で半回転し、体を逆さまにする。そのままクイックターンの容量で天井を蹴り、元の地面に帰還した。
「び、びっくりした....」
「そんなアクロバティックな動きできちゃうの!?」
蜘蛛糸を放つ赤いスーツのヒーローみたいに着地した。
腰にとんでもない負荷がかかる。
「驚いたよ....!メカ・フットにここまでの動作を可能にする機構は無いはずだが.......一体どうやったんだい?」
「気になるか?」
「ああ、もちろんさ。何をしたんだい?」
少し溜めをつくってから言う。
「魔法だ」
「!」
アリスが少し反応したように見えた。
「なるほど、魔法か。それで、実際は何なんだい?」
かっこつけて言った冗談は相手にされなかった。恥ずかしい。
「..........」
全く触れられない訳でもなく、少し冗談に反応してからすぐに流されたのが余計に辛い......
ただ説明しようにも....難しい
「.....“性質”を応用したんだ。単純に特別な力だと思ってくれていい。正直なところ具体的な原理は俺も分かってないんだが......」
「とにかく、外から運動エネルギーを加えたんだ。」
「君に宿る特別な力か......非常に興味深いね。」
この応用は筋肉を強化していると言うより....外から身体によらない力、外力を“性質”によって加えていると言った方が正しい。なので機械であっても問題ない。
体に蓄えられているエネルギーは様々なエネルギーへの変換が可能....らしい。漠然としたエネルギーに力の強さと向き、そして体のどの位置から作用するかを指定しているだけなのでやっている事自体は非常に単純なのだ。
何もない場所から運動エネルギーを発生させる....一種の自然否定だ。
“性質”はとにかくひたすらに大雑把。未だに扱い切れず、いくらでも改良の余地がある。
「次は別のテストをしてみようか。アリス、向こうにダミーがいくつかあるんだけど、取ってきてもらえるかな?」
「分かりました!」
アリスがテストに使うらしいものを取りに行ったが....一人で大丈夫か?
あんな小柄な子に荷物運びなんて.....
「......えっ」
「持ってきました!」
な、なんだあっ、一人で5体ほど死人のような顔をしたマネキン人形を担いで運んできたあっ
あのマネキンは見た目に反して軽いのか?発砲スチロールのように軽量なら不可能ではない話だとは思うが....
「それじゃあ並べてもらえるかな。」
「はい!」
均等な距離感でマネキンが並べられて行く。
マネキンは一人一人が銃の模型を持っているようだ。
少しマネキンを一体、持ち上げてみようとした。
「ああ、表面はプラスチックでできているけど内部はゴムでできているから重いよ。」
なんで?
まさかアリスも“性質”を扱えるのか?
実のところ、アリスから感じる“気配”は他の生徒達とは異なっている。少し自分に似ているのではないかという奇妙な疑念さえ覚えた。
あの少女は何者だ?
「終わりました!サイドクエスト完了です!」
「ありがとうアリス。それじゃあ見学生君はそこに立ってもらえるかな?」
「分かった。」
指定された位置まで移動した。
ウタハが続けて説明をする。
「元々この義足は“蹴る”というより“斬る”という感覚を追求したくて作ったものでね、斬撃のような蹴りを再現する事にさせてもらったよ。その結果、まずは“斬撃の蹴り”から入ることにした。」
形から入ってみるのも一つの手だろう。
「そのメカ・フットは君の脳信号を読み取って鋼鉄のブレードを出す事ができるんだ。やってみてくれるかい?」
とりあえずブレードの位置を探ってみる。
体に本来ない部位も動かせるのだろうか....?
〈ジャキッ〉
「おおっ」
足先から刃状の金属片が出た。引っ込めたりすることもできる。
「上手く行ったようだね。それじゃ、ダミーの一体に向かって蹴りを入れてみてくれ。まずはブレード無しでね。」
言われた事を実行する。跳躍し、胸に跳び蹴りを喰らわせた。
義足の機構が働いたのか、とんでもない威力が生まれてダミーが吹っ飛んでいった。
「すごいね.....」
この破壊力にブレード付き....殺傷力が高すぎないか?
殺したい相手でもいるのだろうか。
「威力は申し分ないようだ。次はブレードを出してモデルガンを“切断”してみてくれ。」
銃を切断......足を高く上げ、横薙ぎに振り払う。
モデルガンが真っ二つになった。
その威力はまさに人間の骨なんて一太刀で切断する“バルディッシュ”の斬撃
「上手く行ったね。相手の攻撃手段を無くしてしまえば交戦できなくなると私は考えたんだ。これ以外にも切断という特性は幅広く扱えるだろうから覚えておいてほしい。」
「ともかく....これも問題なし....と.....」
戦う手段を奪ってしまえば無益な争いを収められる....確かにそうかもしれない。
「これで最後なんだけど、そのブレードは“射出”できるんだ。ダミーの一つに向けて放ってみてくれ。」
最後のテストを実行する。
足先をダミーに向けて狙いをつけ、脳信号を流す....
〈バシュッ〉
〈バチン〉
ブレードが真っ直ぐ飛んでいき、ダミーの首を刎ね飛ばした。
「なにっ」
恐ろしい威力だ。だがキヴォトス人に対しては銃弾とそう変わらないだろう。上手く使えば遠くにある武器を破壊する事ができそうだ。
「ブレードは複数枚収納されているんだ。これも問題はなさそうだね。」
「これでテストは終わりだ、作ったの良いけど私達じゃ上手く扱えなかったから助かったよ。有用なデータも取れたし、もし君が良いのならそのメカ・フットは君にあげるよ。」
「えっ良いのか?でも流石にタダじゃそっちにメリットが無さすぎを超えた無さすぎじゃないか?」
多分材料費もそう安くはないはず。いくら良心から来る提案だとしても引っかかるものがある。
「私達がこのまま持っていても宝の持ち腐れだ。道具は使われる相手がいた方がいいからね。」
「んん....そうか....」
少し悪いような気もするが.....
「分かった、頂く事にする。」
折角の良心を無碍にするのもよろしくない。ありがたく頂こう。
しかしここである問題が浮上する。
「じゃあ結局こっちの元の足はどうするの?」
モモイに尋ねられる。
元の足か、今は『メカ・フット』があるから
......もう繋げる必要もない、これの処理はどうするか。地面に埋めておけば勝手に分解されるだろうか。
もったないような気もする。
包帯に包まれたそれを見る。地面に染みた血を徐々に吸収しているようにも見えた。
「なあ」
ウタハに問いかける。
「なんだい?」
「少し機材を使わせてくれないか?」
「何か作りたいのかい?だったら私に言ってくれ、使い慣れている私がやれば危険も少ないからね。」
「......いや、一部は使える。知らないのもあるが....なんとなく分かるんだ。それに....多分今から使う材料はあんたに“触れさせる”わけにはいかない。」
「申し訳ないがそれは容認できないんだ。何をする必要があるか説明してくれるだけでいい。」
「....分かった。」
自分の一つの望みを伝えた。
「すまない、何を言っているのか良く理解できなかった。もう一度言ってくれないかい?」
「だからさあ、足の皮、肉、骨を繊維にして服に混ぜ込むんだよ。」
「一体何を言っているんだい?」
「ほら、俺の体は脆いだろ。撃たれればすぐ血だるまになって服を汚しちゃうわけだ。」
「だが俺の肉体はすぐに再生させられる。その際に血を吸収する事もできるんだ。」
「だから“服を自身の肉体の一部”にしてしまえばいい。」
「何を言っているんだい?」
「だからさあ、イチゴ味のプロテインがあるんだよ。」
「何を言っているんだい?」
今彼女に説明した通りだ。俺の肉体の性質はエネルギーさえ維持できていれば性質もそのまま維持される。
だからこれで服を改造すれば良い。
「いや、言っている事は分からない訳じゃないんだ......ただ.....」
「倫理的な問題か?俺の体だ、気にしなくていい。」
「そう....だね.....でも、とても正気とは思えない.....」
「確かにこの作業は相当ショッキングな絵面になる。だから俺にやらせてくれ、場所道具も借りる立場で何言ってんだって話だと思うが....」
「変な話、作りたいって思ったんだ。ロマンと呼べるほど高尚なものじゃないがな。」
「........」
ウタハは悩ましいと言わんばかりの仕草をしている。
「.......君の考えは分かった。ただし」
「ただし?」
「設備の使う時は私が監修する。これは絶対だ。いいね?」
怪我をさせたくない、という事だろう。
彼女なりの“責任”がある。
結局は見せる事になるのか.....
「分かった。」
正直避けたい事だったが俺の立場上この条件は断れたものじゃない。
「あ、あと俺の無茶な要求を聞いてくれて助かる。」
礼を忘れてはいけない。
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道具を使って切れた足を解体する。
アリス達は作業室から出てもらった。良ければ後でゲーム開発部の部室に来てほしいとのこと。
血を抜き、皮を剥ぎ、肉と骨を分ける。むせかえるような鉄臭さが充満する。ふと郷愁に駆られた。
作業を進めて行く。
「やけに手慣れてるね.....」
「こういう作業はしょっちゅうだったからな。」
もはや慣れたものだ。スムーズに進めて行く。
「慣れてしまっているんだね......君は.....こういうものを怖い、恐ろしいとは感じないのかい?」
「........」
「少なくとも私は........不安を感じるよ。」
言葉通り不安を覚えた目でこちらを見て来る。
「..........最初は恐ろしかった。当然血なんてもの見れば不安を覚えた。」
そうだった、最初は。俺は人間だ。誰がなんと言おうと。
倫理観の欠如した怪物なんかじゃない。
感情の欠落した機械ではない。
人の形をした化け物じゃない。
痛みが分かる、苦しみが分かる、辛さが分かる。
“恐怖”が分かる。
人並みの倫理と常識を備えて俺は生まれてきた。そう自覚している。
血や死体を見るだけで胸の奥がざわつく、そんな感覚があったはずだ。
「......生きる内に慣れていった。」
暴力、略奪、虐殺、あらゆる非道が非日常ではなくなっていた。
血を血で更に汚す日々が日常になって俺は慣れた。
「.......辛くはなかったのかい?そんな環境で生きて」
「苦痛の日々だったさ。」
「でもな、人ってな生きてる環境に適応できるんだよ。生きる意志があれば多分誰でもな。」
どんな善人でも悪人のド屑になれる。
どんな悪人でも潔白な聖人のフリができる。
生きる意志は“在り方”を変えて行く。
「ある時、俺は外敵に攻撃されて左腕がもげた事がある。痛みもあったし、当然怖かった。」
あれが最初にした大怪我だった。常に警戒しなければならなかった忌まわしい自然の脅威すら、今は過去の事。思い返す事しかできない。
「仲間が大怪我をする事もしょっちゅうだった。やむを得ず知り合いを見捨てる事もあった。自然には抗えない、そう自分を納得させてきた。」
集落でずっと安全に暮らせていたわけじゃない。そこでも生きるために様々な仕事をする必要があった。それに加え、自分達の目標を達成するための探究もしなければならなかった。だからこそ、きっとあの時代は本当の意味で“生きて”いた。
「そうしてボロボロになって血まみれで骨も折れてもなお、生き残り続けている仲間と自分の体を見て思ったんだ。」
何度も見てきた光景を思い出す。
自身の胸から黄ばんだ色の白い枝が突き出し、吹き出す紅い流体が天から差し込む微かな光に照らされ、鈍く輝く。一瞬、痛みを忘れて目を奪われた。
「なんて美しいんだろうってな」
あの時見た剥き出しの心は絶えず鼓動していた。
「美しい?」
「だって考えてみろよ、そんなどうしようもなく傷付いても生きてるんだ。すごいだろ?」
薄い皮膚の下、綿密に集まった筋繊維、紅い燃料を送るパイプライン、腹の中で働く袋、全体を支える白い鉄骨
それらが俺達を造っている。
それに気づいた時、生物の精巧さを、生命の素晴らしさを知った。
「大怪我した後はいつも思ってたんだよ。ああ、俺達は生きてるって。」
俺の生への執着の由来はきっと代え難い価値を見つけたからだ。そしてこの価値を知る者は俺だけじゃない、きっと過去に居た“人間”も皆知っていたはずだ。どれだけ傷付き汚れようと生き足掻く、最高に諦めの悪い存在こそ“人類”だ。
「必死に生きようとする姿ってのは尊いんだ」
俺は血みどろの中に鈍く光る炭素の塊を見つけた。俺にとってのダイヤモンドはそれだった。皮肉にも苦痛の世界で、生に歓びと価値を見出した
「.....なるほど確かに分からない話でもないね。」
「きっと君は自分が好きでいられたからそこに美しさは見出す事ができたんじゃないかい?」
肯定も否定もしない、今があるから。
でも確かにあの頃の俺は“生きる事”に誇りすら覚えていた。
「.....よしっと後は混紡すれば良いか。」
最先端の設備のおかげで作業の進みが良い。
「後はこの繊維を使って服を修復していけばいいんだね?」
「ああ。」
「あっ、今脱ぐから待ってくれ」
上着を脱いで修復作業に入った。
「このコート.....こんなにボロボロになるまで着たままでいたって事は相当大事なものなんだね?」
「分かるもんなのか?」
「まあ、君と話していたらそんな気がしたってだけなんだけどね。」
会話しているうちにコートは修復された。
最初に見た時のように、新品同然。どんな砂嵐にだって耐えられる。手に持っていると神経が繋がっていきそうな奇妙な感覚を覚えた。
「できたっ」
コートは完成したが意外と繊維が余ってしまった。まだまだ使えそうだ、もう一着修理できそうな具合には。
「後はズボンもやっとくか。」
「えっ」
「ちょっと待ってくれ、ここで下も脱ぐのかい!?」
「安心してくれ、ちゃんと履いてるし配慮はする。少し向こう向いててくれ。」
素早くズボンを脱いだ。一応包帯で隠されてあるがその上に修復したコートを巻いて体のラインが分かりづらいようにした。多分凹凸が見えてしまうのは落ち着かないだろうから。
そうしてまた修復作業に入る。
「全く....心臓に悪いよ.....」
「そんなにか?」
「一応私も一人の乙女、実物で殿方の“ありのままの姿”を見た事なんて無いわけだから当然驚いてしまうよ.....」
「......それは....申し訳ない....」
別に下は隠してあるし気にしなくていいだろうと反論しようとしてやめた。立場は弁えなければならない。
「大体君は人に自分の生まれたままの姿を見られる事に抵抗はないのかい?」
長期間全裸で過ごしていた期間があったせいかそうした抵抗感は完全に消し飛んでしまった。これもきっと一つの適応だったのだろう。
「んー.....今はもう無いな.....まあこれも適応だ適応」
「ならまたもう一段階適応してほしいね」
作業は続く。
やはり直せるのはとても良い。やり直しとは違うが、壊れてもまた使えるという安心感が芽生える。道具は壊れても直せば良い。
ふと思った。人が壊れた時、それは“直せる”のか?
「そういえば....この二の腕の傷....いや痣....?これは治さないのかい?」
「ん?これか?」
自身の両方の二の腕に左右非対称についた縫い目のような痣とかつて切断されていたかのように入っている切り傷を見る。腿にもこれと同じような物がある。
「なんでかは分からない、なぜかこれだけ治せねえんだ」
また“俺”として目覚めた時からあった。いくら時間が経てどもどういうわけか消えず、意識的に再生させようとしても反応が無いどころか痛む。その内にこの傷を無意識のうちに忌避するようになり、考えないようにしていた。
「そうなのかい?少し奇妙だね.........治し方が分からないのかい?」
「それはそうだな......どうすれば消えたもんか....」
これからこれを消す方法を探してみようかと考えた。
これが治る時、それは何を意味するのだろうか。
「本当に君は不思議だね.....背中に羽のようなものも付いているし....外の人にはこんな身体的特徴もあるのだね。」
「......えっ?」
「どうしたんだい?」
「羽?羽ってなんだ?」
「羽って....ほら、背中に生えているじゃないか。」
「え?いや、そんなわけないだろ?」
「嘘だと思うならそこにあるモニター見てみると良いよ。」
指し示されたモニターを覗く、自分とウタハの後ろ姿が映っている。
「ほら、あるだろう?」
自身の背中に画面がズームアップする。
「なんだこれ....」
黒ずんだ羽のようなものが背中から生えている。まるで千切れた翼の付け根のようだ。
「まさか知らなかったのかい?」
「ああ、全く知らなかった....」
いつからあったんだ?普段背中を見る事なんてないから全く気付かなかった。
......もしや“最初”からあったのか?それともどこかのタイミングで生えてきたのか?
不治の傷、突如発覚した珍事実、疑問が増すばかりだった。
-------------------
新たに得た装備を纏う。新鮮な気持ちと懐かしい気持ちが入り混じる。
「忘れ物はないかい?」
「ああ」
汚れないどころかいくらでも直せる装備を手に入れた。望み....と言って良いか分からないが一つ達成できた。
次はゲーム開発部の部室に向かわなければならない。
「本当に助かったし、色々見れて面白かった。ありがとうな。」
「礼には及ばないよ。少し奇妙だけど貴重な体験ができたんだ、だからこちらこそ」
互いに礼を済ませた。出口へと足を進める。
「見学生君」
去り際に声をかけられた。
「君なりのロマンが見つかるといいね」
こんな激励されるとは思わなかった。それも今日で初対面のはずの俺に。どんな表情をすれば良いか分からず、振り返れなかった。
ただ後ろ向きに右手で返事をして部屋を出た。
(タフネタと真面目シーンの虹色列車になってるけど)
どないする?
まあええやろ
今回の話はなぜ彼が生きる事に執着するかという事にフォーカスを当てた回ですね。彼は生きている事に美学やプライドを持っている人物なんです。割と自己肯定感が高いんです。不潔、極貧で濁った地獄のような世界で生きていた彼が、望んだ豊かな世界であるはずの透き通った世界で過去の事ばかり考えてしまう。今と昔の欲求の入れ違い、そんな矛盾を上手く書いていきたいですね。