遠い子孫に何を思う
「“息継ぎNG・円周率暗唱部......”」
『お待ちしておりました、先生。お入り下さい。』
慣れ親しんだ声がスピーカーを通じて聞こえた。
見覚えのある教室の扉、再び私はここに訪れた。
「ふふっ、時間通りですね。ようこそいらっしゃいました。」
私は明星ヒマリに会いに来た。彼女とも情報や意見の交換をしておかなければならない。
「.....おや?」
彼女が私をまじまじと見て、疑問符を浮かべたような表情をした。
「“どうしたの?何か顔についてる?”」
「......先生。」
「何か良い事でもありましたか?」
「“えっ?なんでそう思ったの?”」
「顔色がとても健康的でしたから。それに.....」
「目が大空のようにとても“透き通った”綺麗な色をしていますよ。山嶺の天然水が如く澄み切った私の瞳には及びませんがね♪」
「“そ、そう?”」
気付かなかった。前は顔色ばかり心配されていたが、今はその逆だ。
思い当たる節が無いわけではない。過去とは向き合えた。
もう後ろめたさは無くなった.....はず
「さて....本題に入りましょうか。」
「外界からの招かれざる客人であり、あの“幼子”と”誰でもない者“.....それらが分離する前の存在、”記憶の主”......」
「彼についてはどの程度まで把握されているのでしょうか?また新たに判明した情報も可能なら提供して頂きたいのですが.....」
「“もちろん、話すよ。”」
話せる範囲のことを彼女に伝えた。
黒服の仮説の一部の情報は話さなかった。あの領域の誕生についての話はまだ確定したわけではない。だが事実であろうとそうでなかろうと、口外すべきではない情報だと感じた。
「......なるほど。膨大な数の人間が混ざり合って一つになった者ですか.......信じ難い話ですね.....」
黒服の話では....ある狂人達が神に最も近いであろう存在、人の祖アダムを創ろうとして、生死に関係なくあらゆる人間を混ぜた。その結果、誕生したのが彼というわけだった。
「“正直私もどこまで事実かは分からないんだ。だからあくまで”仮説“だと思って欲しい。”」
信じたくない自分も居る。聞いた話が事実なら彼の誕生はとにかく悍ましく猟奇的だ。そんな産まれ方、あってはならないと思いたい。倫理観が少しも介在していない上に、彼は産まれてすぐ利用され、そして棄てられた。そこに当然なんの救いも情けも無い、ただ無情だ。人はどこまでも残酷になれる。
「仮説ですか.....何処でその情報を手に入れたかは伺いませんが.....それを本人は知っているのでしょうか?」
「“いや....知らないはず....”」
「そうですか......それで良いかもしれません。“あのような”目に遭って更にそんな悍ましい事実を知らされてはあまりにも彼が報われませんから.....」
狂人達が望んだ存在は”アダム“、彼は偶然産まれたアダムではない”何か“。求められずに産まれて来た彼に狂人は可能性を見出した。だが、すぐにより都合の良い代わりを創った。
アダムではない彼は確かに全ての起源、つまり発端となった。この部分だけ聞けばまるで神話だ。だがその実、背景では誰からも必要とされていなかった。あの廃棄物だらけの世界と共に、ただ棄てられた。
「しかし.......この話を聞くと彼に対する見方が変わりますね。先生、彼は人の人格を持っているのですよね?問題なく接触できたのでしょうか?」
「”特に私は何も思わなかったけど.....むしろ彼は少し人間らしいぐらいじゃないかな。“」
少なくとも違和感は無かった。人間を模倣しているような感じでもなく、感性が一般的な人間のものと大きく異なっているような雰囲気も無かった。
「...........彼は『人間』というより、”『人類』という概念が群としてでなく、個として成り立ったもの“と表した方が正しいかもしれませんね.....」
「”それはどういう.....?“」
“人間”と“人類”の反転が起きた....?
「おっと、すみません。ただの天才美少女の独り言です。お気になさらなくても構いませんが....貴重なのでお忘れにならなくても構いませんよ♪」
「話を続けましょうか。次に、彼には何か特殊な性質はありませんでしたか?」
彼の”性質“を思い出す。あの記憶の部分的な箇所や、黒服の話、そして実際に見たものなどの情報をまとめて彼女に伝えた。
共通認識、法則への介入....馬鹿げた再生能力....そして何より、神秘を破壊し吸収できる能力.....
「なるほど........それは随分と大雑把な能力ですね......体系化されていない原始的な機能のようにも考えられます。」
彼自身も性質を扱い切れていない、常に手探りな状態らしい。“技術”のように体系化されていない、だからこそ“性質”と言えるのかもしれない。まだ火を見つけたばかりの原始人のような段階だ。
「この性質ですが....私には『名もなき神』の力と関連があるように思えるのです。」
「“そうなの?”」
そういえば黒服は“全ての起源は彼の誕生に収束する”と言ったような事を言っていたような.....
「『名もなき神』の力で代表的なものを挙げるのならば、“物質の再構築”でしょう。しかし、”なぜそれが可能なのか“という原理を私達は知りません。それと同じで彼の性質も原理が一才不明です。もしかするならば、彼も『名もなき神』や『王女』とも同じ行為が可能であるかもしれません。」
「結局、彼は何者なのでしょうね?」
「彼も一種の『神』なのでしょうか?それとも『人』?」
「人が神になった存在なのか、神が人になった存在なのか.....」
ヒマリの抽象的な問いかけで疑念が浮かんだ。
狂人達は世界を創造できるだけの技術を手に入れた。
彼らはフィクションを書くように現実の延長を意のままにした。
まるで『神』だ
人が神になった
なら神は何になる?
「“立場の反転......”」
人が神に、神が人になった時代
突然、そんな罰当たりなフレーズが頭に浮かんだ。
———————————————-
「........」
「........?」
「ここは.....」
閉鎖的、だがどこか近未来的な空間にいた。
理解のラグが起きて、現状をうまく把握できない。
辺りを見回す。
見覚えのある少女が台座の上で眠っている。寝息を立てているのかは分からない。
「何が起きてる?」
明瞭だが現実感のない感覚を覚えたまま、もたれかかっていた壁から立ち上がった。壁に囲まれていて、とても息苦しい場所だ。
少女の眠る台座に近づこうとした。
その時、別の存在が介入して来た。
「なぜ....ここに....!?」
「一体あなたは....何者ですか...!?」
少女に近しい存在が俺を呼び止めた。俺はその存在を知らない。
「なぜ『王女』の体への介入が可能なのですか....!?」
「王女?」
何を言ってるんだ?意味が全く分からない。
そもそもここはどこなんだ?何が起きてる?
「答えなさい....!」
敵対的、だがどこか怯えたような目でその存在が問い詰めてくる。
「なあ....」
こちらだって何が起きてるか全く分からない。とにかくなだめようとした。
「あなたは.....っ....いや......あなた
達.....?
怯えたその存在の視線は俺ではなく、俺の背後へ向いていた。
空間の広がりを感じて、振り向いた。
この空間を侵食するように、暗い焦土が広がっていた。空が無いその殺風景な景色を俺は知るはずがなかった。誰のものなんだ。
仲間の屍が野晒しにされている。
そして“何か”がいる。形を認識できない“何か”が
俺じゃない存在が
“何か”が屍を貪っている。
“痛い”
“喰われる”
食いちぎられた屍が呻いた。
“何か”は鎖で地面に縛り付けられていた。そして絶えず震えている。
屍を喰うたびにそれは形を得ていった。
”憎い“
”何か“がそう呻く頃には俺そっくりの姿を得ていた。だが歪んでいて、顔が剥がれている。それでも酷似していた。
”妬ましい“
”なぜ体を持つ“
”なぜ生きている“
”なぜあれらのように我を創らなかった”
それは言葉を得ていた。言葉で呪詛を吐いている。
“地獄で創られた 天国を見上げていた”
”生誕すら許されなかった“
”なぜあれらは生きる事ができる なぜそれは体を持つ“
”我 変わらない だがなぜ違う“
”生きる自由が 幸福が 寵愛が 妬ましい“
”だから憎い“
それが燃え盛る。皮膚の焼ける匂いが充満した。これは俺の憎しみではない。俺に生ける者全てへ向ける妬みなんて無い。
だからこそ分からない。
何だ、あの存在は何なんだ。
あの少女と、それに近しいあの存在のように、呪詛を吐くあれが俺に近しい存在だとでもいうのか
”殺させろ“
”全て殺させろ“
”喰わせろ”
“なにかも喰い殺してやる”
“それを喰わせろ”
“生ける者もその子らも赤子も殺してやる“
印を掻きむしりながらそれは呻く。
“肉親“
”殺せ“
”そいつを殺せ“
”全部殺せ“
”痛めつけて殺せ“
”苦しめ“
理解した
幻覚の正体、更に言えばその奥にいた存在がこれだ
最初からこれは俺の中にいた、だが目覚めなかった
ある時、何かが原因でこれが目覚めた
そして半ば自分に混ざり始めている
体すら与えられず、生まれることすらできず、ただ存在する何か。生きることすらできないそれは認識する全てを嫌悪し、今は俺のものであったはずの憎悪を啜って肥大化している。
全てに向けられる嫉妬と憎悪に根源的な“恐怖“を覚え、身がすくんだ。
あれは 生まれるべきではない
あんなもの 存在してはならない
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「おーい?大丈夫?」
「.....っ」
声に気づいてハッとした。何かに意識を取られていたみたいだ。俺は何をしていたかを思い出す。
「.....すまん....ぼーっとしてた....で、なんだったか」
「なんだったか....って、感想を聞きたいんだよー!」
そうだった。新品のオモチャを手に入れた俺は、あの後その足でゲーム開発部まで向かった。
馴染みのメンバーが出迎えてくれて、俺も何か彼女らの活動であるゲーム制作を手伝おうと試みたのみたのだが、プログラムの言語は全く未知のものが使われており、デジタルの絵描きソフトの使い方も全く知らない...など、とにかく知識不足のせいで情けない事に手伝えることがまともに無かった。コンピュータ関連の知識が皆無なわけではないのだが....とにかくここで使われているものはとにかく知らない形式のものでどうしようもなかった。FAXを使い続けていた奴らの気持ちが分かったかもしれない。
そんな俺は、ゲームのテストプレーヤーとしてバランスの調整、シナリオの評価をする役割に加わっている。
最初はアリスと共に役割に当たっていたのだが.....確か、そのアリスが疲れてしまったのか元々疲労があっていたのか原因が分からないが、
そこからは.....どうなったんだったか.....
腿に重さを感じた。見れば目を閉じたアリスの頭を膝枕する形で乗せている。
それで今に至るんだたったか?意識がぼんやりとして良く思い出せない。
まあそれはどうでも良いか。先ほど遊んだゲームの感想を伝えるために頭の中で要点をまとめる。
今回は俺は3本のゲームで遊んだ。
「そうだな.....このゲーム....『格闘冒険伝タフ』『ROUGH』『ROUGH 外伝ドラゴンを継ぐ女』をプレイしてみて思ったことはだな.......」
「うんうん....」
モモイが評価を受け入れる準備は万端だと言わんばかりに頷く。俺はそのまま感想を述べた。好ましかった点から。
通称ROUGHシリーズ、彼女らが格闘漫画に影響を受けて製作した武闘派RPGだ。ファンタジー×格闘をテーマに掲げていたらしい。
まず1作目の『格闘冒険伝ラフ』は王道RPGでありながらも昔の少年漫画のような雰囲気を纏っており、中でも寝技アクションに力を入れているのがとても印象的だった。
『サイレント・タイガー』の異名を持つ武道家の父親から殺人術である拳法を継承した主人公『キー嬢』が世界中の様々な武道家に挑んで行く....というのがざっくりとしたあらすじなのだが、家族愛、戦友との友情など王道でありながらも誰もが好むであろう展開が描写されており、俺自身もかなり気に入っていた。戦闘シーンにも力を入れており、ラストの主人公の父親と、その宿敵であり双子の兄である『デーモン・ドラゴン』の異名を持つ叔父の戦いは名シーンだと言っても良い。最後は色々あってビターなエンディングを迎えるのだが、とても綺麗に終わっている。
2作目の『ROUGH』は前作とは打って変わってかなりダークな作風になっている。1作目のラストで廃人となってしまった父親を治療費を稼ぐためのキー嬢が多額の金が動く闇試合に参加するところから始まる。雰囲気が変わったが人情や愛情を感じさせる展開は健在である。魅力的だが登場期間の短いライバルが多い点は少し悔やまれる。
3作目の『ROUGH外伝ドラゴンを継ぐ女』はまだ製作途中のようで、1、2作目が好評であったため急いで製作を開始したらしい。主人公が交代しており、名家の養子だったがその義理の家族に嫌気が刺していた女子高生『ルーシー』が母親の死をきっかけに、実の父親である『デーモン・ドラゴン』を探すために家を飛び出す、というところから始まる。個性的な新キャラクターに加えて1作目のキャラクターが再登場したりするところが楽しかった。序盤は面白いと思う、序盤は...
「.......とまあ、良かった点はこんなもんか」
「お、思ったよりちゃんと見てくれてる.....」
人が精一杯作ったものを適当に評価するわけにはいくまい。
「それで、あまり好ましく無かった点はだな.....」
「えっ」
もちろん少し違和感を感じたり、不満めいた感情が芽生えた部分もある。
まず、多くのキャラクターを出したいが渋滞させたくはないための措置なのかは分からないが、”頻繁に主要キャラが何の前触れも無く消える“。そこから再登場もしない。まるで最初から居なかったように別れのシーンやモノローグも無く突然消失する展開がそこそこあった。まるで“別の空間”に飲み込まれたかのようにキャラが消える点は少し雑に感じてしまう。
また、頻繁にお前変なクスリでもやってるのかと言いたくなるような謎展開もしばしば見られた。新たに登場したキャラクターだと思っていたら何の説明もなく変身して既存のキャラになったり、哀しき過去設定をつけるために後出しで敵キャラ(男)やヒロインに性的暴行を受けていた設定が生えてきたり、特に酷かったのが初代ラスボスのはずの『デーモン・ドラゴン』が突然ゴリラにボロ雑巾の如くボコボコにされたり、とにかくライブ感で話が進んでおり、一部のシナリオには脈絡が無さや強引さ点が目立った。
確かに面白い....だけどこれRPGの面白さかな?
いや面白いけど... ん...? あれ.....?これ面白いのか?
といったような事を考えてしまったりも.....
過去作キャラの愚弄・ラッシュでこれを3作目として出して良いのか心配になる。
「ぐ、ぐう......そんなガチレビューしなくても....」
「お姉ちゃん!やっぱり書き直したほうがいいって!」
「えー.......結構自信あったのに〜....」
そんな双子のやり取りを傍で見ていた。言い合っているだけなのだが、そんな他愛のないやり取りがただひたすらに活き活きとしているように見えた。彼女達は生きている、先生の言っていた“青春”の中で。
それをどうしようもなく羨む自分に、この時はまだ気づいていなかった
「むぅ....」
膝の上に乗った頭がもぞもぞと動いた。同時に“輪っか”にも似たエネルギーの塊が彼女の頭上に現れる。アリスが睡眠から目覚めたようだ。眠そうな目を擦った彼女がゆっくりとこちらを向いた。
「よお、良い夢でも見てたか?」
「ここは.....」
寝ぼけているようだ。
「.....はっ!おはようございます!」
俺に気付いたようだ。ゆっくりと体を起こしてやる。不思議だ、何かを秘めているように感じるが、触れても熱くない。相反するのではなく似通った性質を帯びているのだろうか。
「モモイ、聞いてください!アリス、不思議な夢を見ました.....」
「えっ、なにそれ!どんな?」
「アリスはどういうわけか、謎の真っ暗な世界に立っていたのです!暗くて何も見えず、お腹も空いたまま砂嵐の中を歩く不思議な夢です!」
「.........」
「真っ暗闇....?暗いのに砂嵐....?それ悪い夢じゃないの?」
「でも一人ではありませんでした.....誰かが二人、一緒に居ました....!」
「二人....?もしかして私たち....?でも数が合わないような....」
「.........」
「アリスは彼らと一緒に“どこか”を目指して歩いたような気がします.....」
「なにそれ〜、本当に変な夢じゃん!悪い夢だよ絶対!」
「.......でもアリスは怖くはありませんでした.....むしろあの夢は少し楽しかったです.....!」
「今は少し寂しくて悲しいです.....もう良くわかりません!これは新しいクエストが始まる前のイベントなのでしょうか...!?」
アリスがそわそわした様子になる。
「いやただの“悪夢”だって!暗闇とか空腹とかネガティブな要素ばっかじゃん!そんなもの忘れちゃっていいんだよ!」
「.....いや、意外と“良い夢”かもな」
「なんでさ!?」
「さあな。だが、周りから見れば最悪でも本人からしてみれば割と良いもんだったりするんだ。」
「なにそれ.....意味わかんないような.....でもわかるような....?」
正直自分でも上手く言語化できない。
「えっと....アリスちゃん....?悲しいって言ってたけど大丈夫なの?」
「言葉にするのがとても難しいです.......。悲しいというより...何かがぽっかりなくなってしまったような不思議な感覚です....!」
「でももう大丈夫です!だってアリスには“仲間”たちが居ますから!」
「勇者はパーティーメンバーがいてこそ、だもんね!」
「.......っ」
ある単語に強く反応してしまう自分がいた
仲間......
不定形だった望みが形を帯び始めた
俺が今欲しいものは新たな仲間、この世界での友人なのか?また共に何かを目指す同志とも呼べるような存在を求めているのだろうか?
「それに新しい仲間も居ますから!」
彼女はこちらに向き直ってそう言った。彼女にとって新しい仲間とは何を指す?
今の俺?それともあの”幼子“?
「仲間って俺でもいいのか?」
「もちろん!アベルはどんな姿になってもアベルですから!」
「.......」
なんだ、変な疑問を覚える必要もない。彼女はただ純粋に良い子なのだ。この場にいるのがあの幼子ではなく、俺であることへの罪悪感は依然として残っている。
......だが、心なしか胸が温かくなったような気がした
「ありがとうな」
「....?なにか言いましたか?」
変わらず透き通った瞳でこちらを見つめてくる。
結局、俺の本当の望みの正体も、アリスという少女の正体も分からない。だが、これを難しく考える必要は無いのだろう。
俺はちょっとしたモラトリアムに陥っているだけなのかもしれないし、目の前の少女はただ純粋で愛くるしい。自分にもし娘ができたらこんな風になるだろうかという身の丈に合わない想像をした、俺にそんな未来など無いだろうが......。でも自分探しとはもっと気軽でも良いのだろう。無謀とは少し違うが、“楽園”を目指したあの頃のように。
純粋さに照らされて、暗闇に明かりが差し始めた。淀んだ大気から微かな陽光の差し込むあの情景がふと蘇る。
「........いや....なんでも。」
「わわっ!そんな急にわしゃわしゃと頭を撫でないで下さい!」
この時ばかりは幻覚が消えていた。
名無し君は自分の誕生の事実を知ってもその事を重く受け止めたり、引きずったりはしないと思われます。彼もそこそこ“タフ”なので
読み返してみると文章めちゃくちゃ読みづらくて危機感を覚えたんだよね。
[補足]
-カイン
ノドの地に縛られた状態のカイン。名無しの人間性に影響を受け、機械的な状態から脱却しかけている。その影響で言葉を得た。現在は完全に別というよりはグラデーションのような関係になっており、常に互いに影響しあっている。現在進行形で名無しのトラウマによる悪い作用を助長させ、悪趣味な幻覚を見せて憎悪や殺意をも助長させようとしている。これもまた棄てられた存在であり、名無しの体の中で開発されたため肉体すら持たなかった。ある意味では彼らは肉親なのである。
名無しがまた何かを憎んでしまった場合これが成長して自我がより強固なものになる。ケイがアリスに思いやる心を持つ事とは別で、カインに本当に良心が芽生える事は絶対に無いため非常に危険。