後輩のみんなと合流し、そのままシャーレのある地区へ向かう電車に乗り込んだ。
車内の揺れる音を聞きながら、みんな立ったまま何も話さない。
窓の外を流れる景色を眺めながら、私は頭の中で情報を整理する。
……まだ確かな情報は何一つない。
アヤネちゃんは通信端末を手放さず、何度も回線を切り替えている。
表情は険しく、正確な状況がまだ掴めていないことは明らかだった。
つまり先生の安否も、依然として不明のまま。
シロコちゃんは黙ったまま、モモトークの画面を見つめている。
短いメッセージを送っては、既読が付かない画面を見て、また送る。
返事は……来ない。
……分かってる。
こういう時、返ってこない理由なんて限られてることは。
神経がひやりと冷える。それでも私は表情を崩さないように努めた。
「まだ情報がまとまってないだけだよ~。事故の直後だし、確認に時間がかかってるんだと思う」
自分に言い聞かせるみたいに、落ち着いた声を心がける。
最悪の事態は頭の奥に押し込めた。そんな余計なことは考えなくていい。
今ここで私が不安を見せたら、みんなの不安は一気に膨らんじゃうから。
そんな中、ノノミちゃんがふと視線を泳がせた。
先生の安否を確認するために同行している、名無しの彼。
気づけば、顔を覆っていた装備を外している。
ノノミちゃんは一瞬だけ目を見開いた。
……彼の表情が、明らかにおかしい。
冷や汗が頬を伝い、指先がわずかに震えている。瞳孔も開いて痙攣しているように見えた。
それは、これから起きる未来を恐れているような表情のようにも見えたけど……私にはもっと別のものに見えてしまった。
もっと別のもの。
そう。過去を思い出している顔だ。
もう一度、かつて見た光景が繰り返されるんじゃないか。
焼け落ちた瓦礫の上で仲間たちが倒れ、ただ悔しさと憎悪に震えながら立ち尽くしたあの記憶。
二度目の“最悪”を、ただ恐れているんだと思う。
ノノミは何かを察したのか彼に声をかけようとして、結局やめたみたいだった。
……そうか。
この人は“大丈夫だと信じてる”わけでも“最悪に慣れている“わけでもない。もう一度あれを見るくらいならいっそ何も起きてほしくないと願ってるのかな。
電車が減速し、次の駅に滑り込む。ブレーキ音が鼓膜に響いた。
……嫌な予感は、消えない。
思考のノイズとなってこびりつく。どうしてこういう時はいつも動悸が激しくなってしまうんだろう。
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電車を降りた瞬間、空気が張り詰めるように激変した。
シャーレのある地区一帯が、完全に封鎖されている。
規制線、警備、救急車両。
そして……人、人、人。
ざわめきが、重なって、渦のように声の濁流で情報が埋め尽くされている。
「立ち入り禁止、ですか……」
アヤネちゃんが小さく呟く。
通信は相変わらず混線していて、中の詳しい状況は分からないまま。
私たちは人だかりをかき分けて、少しでも前へ進もうともがいた。
でも前に行けば行くほど、逆に事実をここで確定させたくない思いにも駆られる。
その時。
規制線の向こう、シャーレの建物の中から、
数人の救急スタッフが出てくる。
押しているのは、担架……いや、車輪のついたストレッチャー。
「……」
瞬間、周囲のざわめきがすっと静まる。
運ばれている“それ”は黒く、焼け焦げていて人の形をしているのかどうかすら曖昧でぱっと見では分からない。
布に覆われているはずなのに隠しきれていない焦げ跡と褐色の滲み。
……何か。
そうとしか言いたくなかった。ただの何か、曖昧で確定しないままであってほしい。
足がぴたりと止まった。これ以上進みたくない。
セリカちゃんが息を呑む音が、やけに大きく聞こえた。
ノノミちゃんは、口元に手を当てたまま動かない。
アヤネちゃんは、画面を見つめたまま、完全に固まっている。
そして隣にいる彼が小さく、静かに呼吸を荒立てていた。不安定に空気が出入りしている。壊れたふいごのようにひゅうひゅうと。
私は、喉が張り付いたみたいに声が出なかった。
違う。
これは、先生だって決まったわけじゃない。
……決まってない。
そう、心でそう何度も繰り返すのに、脳が最悪の形を勝手に結び始める。
お願いだから。
違って。
誰も、それ以上前に進めなかった。
ただ、ストレッチャーが人混みの中へ消えていくのを黙って見送るしかできない。
シャーレの前は、時間が経つにつれてさらに人が増えていく。
生徒、住民、報道関係者。
あちこちで小さなどよめきが起きては消えていく。
「今運ばれてたの、誰……?」
「先生じゃないよね……?」
「爆発、想像以上に酷かったらしいよ……」
断片的な情報が耳に刺さる。
でも、どれも確かではない。
私たちは何もできず、ただ待つしかなかった。
通信は相変わらず不安定で、端末にも決定的な報せは入ってこない。シロコちゃんはトーク画面を開いたまま、画面を見下ろしている。セリカちゃんは私の少し後ろで、手を胸の前で組んだまま動かない。
やけに一秒一秒が長い。時が進まず黙り込むばかり。
短い電子音がその沈黙を破る。
〈ピコン〉
名無しの彼の端末が鳴った。
彼は一瞬だけ画面を見て、すぐに表情を硬くする。
ほぼ同時に、規制線の外側から数人の生徒が近づいてきた。
連邦生徒会の腕章。
「あなたですね」
事務的な声。
「シャーレに一時的に身を置いていた関係者として、こちらへ来てください。状況確認と保護のためです」
名無しは小さく息を吐いて、私たちの方を見た。
「……悪い。呼び戻された」
そうとだけ言う。
ノノミちゃんが、少しだけ前に出る。
「……気をつけて、くださいね」
「……ああ」
シロコちゃんは何も言わず、ただ一度だけ視線を合わせた。
アヤネちゃんは短く頭を下げる。
私も……。
いつもの調子を探して、口を開く。
「またね~。こっちは……大丈夫だから」
何が『大丈夫』なんだろう?
多分、嘘だってバレてる。
それでも言わなきゃいけなかった。
名無しの彼は何も言わず、そのまま連邦生徒会の生徒たちに連れられて人混みの中へ消えていった。
……残された私たちは、路上に立ち尽くす。
緊張感よりも沈んだ重い感情によって空気が淀み始める。誰も座ろうともしない。
時間の感覚は曖昧になっていくばかり。
夕方。
夜。
何時間経ったのか正確には分からない。
そして街頭モニターの一つが、切り替わった。
『速報です。本日発生したシャーレでの爆破事故により、同施設に所属する先生が巻き込まれ、現在、意識不明の重体で病院に搬送されていることが――』
———————
連邦生徒会から呼び出しを受け、理由も分からないまま施設へ連れていかれた。
窓のない車両、最低限の会話、目的地を示す言葉もない。外部刺激は歩いている足の感覚しかない。
爆破事故への関与が疑われてるのだろうか。
真っ先にそう思った。シャーレの爆発。タイミングも立場も、疑われるには十分すぎる。自分が関与しているのではないか、そう問い詰められるのだろうと覚悟を決める。
だが、施設の奥で現れたのは尋問官ではなかった。
首席行政官、七神リン。
淡々とした視線で俺を見ると、感情を交えない声で“こちらへ”とだけ言った。その一言に責めるような響きはない。それが逆に、肝を冷やされた。
案内されたのは、隔離された一室。
扉が開いた瞬間、鼻を突く消毒薬の匂いと、低く続く機械音が耳に入る。
そして……そこに、先生がいた。
爆発に巻き込まれたのだと、一目で分かる。
全身は激しく損傷していた。焼け爛れたのか、包帯が何重にも巻かれ、もはや人の輪郭すら曖昧。
生命維持装置に繋がれ、管とコードが身体から伸びている。規則的な電子音だけが、辛うじて生を主張していた。
意識はない。
装置がなければ生きてはいられない。そういう状態だった。
言葉など出るはずもない。この光景を見て何を言えと。
頭の中が真っ白になるでもなく、感情が爆発するでもない。ただ、呼吸を続ける。
ここにいる。
確かに、生きてはいる。
だが自分の意思で何かを語ることはもうできない、そんな姿で。
俺はその場から一歩も動けず、ただその“現実”を見つめることしかできなかった。
また異変が起きて、いつも通りが崩れ始めた。そして理不尽が始まる。
まただ。また始まる。
理解が実感へと変わってしまった。
しばらくの沈黙のあと、七神リンが口を開く。
「状況を説明します」
声は落ち着いていて、感情の起伏は感じられない。
だが、その語尾はどこか硬く、言葉を選ぶたびに僅かな間が挟まる。
「爆発現場から救助されたのは二名です。重体の先生と、シャーレに用事があって訪れていた連邦生徒会所属の生徒が一名」
状況を丁寧に説明してくれているはずなのだが、俺は視線をある一点から外せなかった。
ベッドに横たわるその姿から、目を逸らすことができない。
「他に負傷者はいません。軽傷者も彼ら以外では確認されていません。……重症者は……先生お一人だけです」
リンは一度だけ、ほんの一瞬だけ言葉を切る。
「現場の状況から判断するに、爆発の直前、先生は咄嗟にその生徒を庇った可能性が高いと見られています」
不意に、先生らしい納得のいく話だと思ってしまった。
「単に爆風を受けただけではありません。衝撃と熱によって、内臓にも深刻な損傷が確認されています。現在は生命維持装置によって、かろうじて状態を保っている段階です」
事実だけを並べているはずなのに、その一つ一つの情報が重く精神にのしかかる。
リンは淡々と説明を続けているが、手元のタブレットを握る指に、わずかな震えが走ったのを俺は見逃さなかった。
「……以上が、現在判明している全てです」
説明が終わっても、部屋の空気感は変わらない。
機械音だけが変わらず進む時間を示す。
ようやく自分の口を開いた。
「……それで、なんで俺はここに呼ばれた?」
疑問は、ずっと喉の奥に引っかかっていた。
事実を伝えるだけなら、俺である必要はないはずだ。
リンは一瞬、こちらを横目に見る。
その視線は鋭いが、どこか迷いを含んでいるようにも見えた。
「……この場では説明できません」
そう言って、彼女は踵を返す。
「別の部屋へ案内します。ついてきてください」
再び歩き出すリンの背を追い部屋を出た。
廊下を進み、エレベーターに乗り込む。
表示板の階数が、一つ、また一つと下がっていく。
「地下です」
リンは短く告げた。
施設は、地上とはまるで別物だった。
照明は落とされ、壁は分厚い。
彼女は冷静さを保っている。
だが、その内側で何かが限界まで擦り切れているように思えた。
エレベーターを降り、さらにいくつかの扉を抜けた先に、その部屋はあった。
地下の一室。
だが、研究室でも医療室でもない。
鉄格子。分厚い防弾ガラス。簡素なベッドと椅子だけが置かれた空間。
どう見ても独房だ。
「……これは」
思わず声が漏れる。
ガラスの向こう側には少女が佇んでいた。
連邦生徒会の制服。腕には白い包帯が巻かれているが、そう酷い怪我には見えない。
軽傷で済んだ生徒。
さっきリンが言っていた、その本人だろうと直感で理解する。
次の瞬間には彼女はベッドに腰掛けた。姿勢は落ち着きがなく、視線も定まっていない。
壁を見つめているかと思えば、次の瞬間には何もない空間を睨み返している。
「……彼女も、救助時は意識を失っていました」
リンが隣で説明を続ける。
「外傷は軽度です。命に別状はありません。ですが」
ここで一瞬だけ言葉が途切れ、間が生まれる。
「……意識が戻ってから、まともな会話が成立しません」
ガラス越しに、少女が小さく口を動かした。
声は聞こえない。それでも、何かを呟いている事は分かる。
「支離滅裂な言葉を口にします。時間、場所、人物の認識が曖昧で……時折、意味不明な内容を繰り返しているのです。」
彼女は視線を逸らさずにありのままの事実を述べる。
「まるで……現実と、何か別のものの区別がついていないかのように」
俺は喉の奥に引っかかるものを感じながら独房の中の少女を見続けた。
「……気が狂ったと?」
「現時点では、そう表現せざるを得ません」
相変わらず彼女の声は淡々としている。
その冷静さは、無理に保たれているものだとしても体裁は崩さないよう努めているのだろう。
「それで」
俺は視線をリンに向けた。
「俺を呼んだ理由は、こいつか」
リンは一拍置いてから頷いた。
「貴方の立場が複雑です。連邦生徒会にも、シャーレにも属しながら、どちらにも完全には属していない」
まるで書類を読み上げるような口調で彼女は続ける。
「だからこそ、彼女と接触しても政治的な問題が最小限で済む。そして……」
リンは、ほんの僅かに言葉を選んだようだった。
「……貴方なら、何か“分かる”かもしれないと判断しました」
ガラスの向こう。少女が不意にこちらを向いた。
焦点の合わない目。
それなのに視線だけは、なぜか真っ直ぐ俺を捉えている。
胸がざわめく。嫌な予感だ。生理的な嫌悪感といってもいい。。
この子は、何を見た?
そして何を“持ち帰ってきて”しまったんだ。
リンは扉の操作パネルに手をかけながら、低く告げた。
「接触は短時間でお願いします。何か異変を感じたら、すぐに中断してください」
扉のロックが、重い音を立てて解除される。
俺は一歩、独房の中へ足を踏み出した。
その生徒は確かに俺を見ていた。
だが、視線の焦点はどこにも合っていない。ただブレ続ける瞳でこちらの方向を向いていた。
喉の奥から、湿った呻き声が途切れ途切れに漏れているのが分かる。
最初は爆発に巻き込まれ、全身を焼かれたあの人のあの姿を目にしたことが原因で精神を病んだのだと思った。
だが至近距離で観察を試みたこの瞬間、その考えはすぐに霧散する。
またぞわり、と。
背骨を伝って、全身の毛が逆立つような悪寒。
そして嫌悪感。
それも生理的な拒絶であり、同時にもっと直接的で理屈を挟む余地のない恐怖。
知っている。
忘れたくても忘れられない感覚。
思い出してはいけないはずの“気配”。
この生徒から滲み出ているものは、それに酷似していた。
彼女は俺を認識した途端、呼吸がさらに乱れ始めた。
胸が痙攣するように上下し、言葉を吐き出そうとしては、空気だけを飲み込む。溺れているかのように。
「……ぁ……ぁっ……っ、あ……」
それに歯が噛み合わない音が混じる。顎の力を長く入れすぎたせいで歯肉の形状がへこんだのだろうか。かちかち、かちかちと。
「……あ、あの……ひと……っ……ち、ちが……っ」
両手で頭を抱え、爪を立てる。
「……会っ……た……んです……っ……」
声が裏返る。
「……め、めが……み……さま……っ……ぁ、はぁ……っ……!」
息が続かず、言葉が千切れる。千切れてバラバラのままの言葉がただ吐き出されていった。
「……白……い……っ、つばさ……でっ」
喉を掻きむしるようにして、必死に続ける。
「...ほほえん....で.......っ....わ、た.....し.....に....っ....」
突然、笑いとも嗚咽ともつかない音が漏れた。
「……あ……っひ、ひひっ……っ」
次の瞬間、表情が歪む。
「……ち、ちが……うっ……!ちがうん……です……っ」
首を激しく振り、涙を撒き散らす。
「……ごめ……っご……めんなさい……っ」
呼吸は完全に壊れていた。
吸う息と吐く息の区別すらついていない。
「……わ、わた……し……のせ……い……で……っ……!」
声が裏返り、喉が裂けるように震える。
「……あ、あっ……せんせい……あ、ああ……っ……!」
それ以上の言葉は、意味を成さない音へと崩れていった。
無意識に後ずさり、防弾ガラスを背に腰が抜けそうになってしまっている自分に気づく。ああ、指先が震えているじゃないか。
“女神”。
その単語が耳の奥で不気味に反響する。そんな言葉を俺は知らない。
だが彼女から漂うこの『気配』は、確かに“あの存在”を想起させた。
嫌というほど、覚えがある。嫌というほど。
「……お、ねがい……です……っ……」
次の瞬間、彼女が俺の腰に縋りついてきた。
反射的に突き飛ばす。思考よりも先に体が動いてしまったせいだ。
嫌な予感は事実となって目の前の現実に現れてしまった。
床に倒れ込みながらも、彼女はなお俺の方へ手を伸ばす。
「……この、まま.……じゃ……」
呼吸は荒いが、さっきまでの錯乱とは違う。
言葉を“選ぼう”とする理性が読み取れた。とても微弱で、微かな理性が。
「……わたし……おかしく……なっちゃい……そう……なんです……」
喉を震わせながら、必死に声を整えようとする。
「……だから」
一度、深く息を吸おうとして、失敗する。
「……わたしが……たし……じゃなく……なる……まえに……」
視線が初めて俺に合う。
狂いゆく自身への怯えと恐怖、そして自死の懇願。
「……お、ねがい……です……」
言葉を絞り出すように、彼女は続けた。
「……こ……ろし……て……」
震える声。
だが、そこに確かに救いを求める“意思”を感じてしまった。
狂気に呑まれながらも、それに抗うように。
最後の力で、自分自身から逃れようととするように。
その瞬間、俺は気づく。
彼女の頭上にある“輪っか”。
その色が、ゆっくりと……くすみ、歪み始めている。
それを視認するだけで心身への危機反応が全身を駆け巡った。
「……っ!」
「そこまでです」
その声で冷静さを欠く寸前に我に返れた。
「一旦、距離を取ってください」
リンはそう言って、俺の方へ一歩踏み出す。
「これ以上の継続接触はリスクが高すぎます。今は情報が足りません」
彼女は独房の中を一瞥し、即座に判断を下す。
「……まだ確認すべき点はあります。ですが、今はここまでです」
彼女は俺の目を見る。
「調査を打ち切るわけではありません。ただし、現状では」
言葉を選び、短く続けた。
「彼女の身がもたない」
彼女の口調は冷静だったが、そこには微かな焦りが滲んでいた。
「いったん部屋を出てください。後続の対応は、こちらで引き取ります」
扉が開き、控えていた職員が中へ入る。
俺は一歩下がりながら、まだ何か言おうとして口を閉じた。
独房の中で、彼女が何かを呟いている。
その声は次第に遠ざかっていく。
扉が閉まる直前、リンは低く付け加えた。
「……正直に言います」
一瞬だけ、事務的な仮面が揺らぐ。
「このまま続けていたら、あなたも“巻き込まれて”いたかもしれません」
その言葉の切れ目と同時に扉が閉まる。
完全な終わりではない。
だが、踏み込みすぎれば戻れない……その境界線だけは、今はっきりと引かれた。
廊下に立ち尽くしながら理解していた。まだ調べるべきことは山ほどあったはずだ。だがその時は、引くのが最適だったのだろう。
そして同時にこの時から気づいておくべきだった。
もうとっくに、取り返しのつかない状態であった事に。
[補足]
-女神?
生徒が口走っていたワードはこのように聞き取れたが……
一体何を見たんだろう