紅い空の下を走る。
あまりいい気分にはなれない。
この車は、自分の知っているような車ほど速くはない。
スクラップから作られている事を考えれば、むしろ上出来なぐらいだろう。おまけに走るのは舗装された道路ではなく、凸凹の砂地だ。時には遠回りせざるを得ないこともある。
だが、間違いなく歩くより楽だし、色々運べる。それだけで十分だ。
そうして走ったり、食料や資源を収集したり、野生の脅威や追い剥ぎ集団と戦ったり、砂嵐が起きればその場に停滞したり……。
そうしているうちに、街から離れて三年ほど経過した。
長期間の放浪などしょっちゅうだった自分達にとっては、もはや慣れたものだった。
元々、東の集落と呼ばれる場所を目指していたが、その場所も何が起きているか分からない者しかいなかった。よって今は更に東を目指している。
あの街は、多分、今もあまり変わっていないだろう。
……しかし、何か“妙な”感覚がする。
視覚でも嗅覚でも聴覚でもない、“何か”を感じる。
「なあ、妙な気配……?を感じないか?」
[ケ配、電磁波の事か。]
「いや、なんていうかこう……“神秘的”な……」
「いや、一種の勘かもしれない。」
[コの状況だ。無理もない。が、あまり気を張るな。]
あまり疲れている自覚はないが、疲労が溜まっているのかもしれない。
「おイっ!あれ見ろっ、死体があるぞ!持ってるモン剥いでいこう!」
砂漠の道のど真ん中で、ボロ雑巾のような死体がうつ伏せになっている。
水分不足で野垂れ死んだのだろう。
こうした死体はよく見かける。その都度、持ち物はもらっていく。
あまり聞こえは良くないかもしれないが、こちらも決して楽な生活をしているわけではない。
街で寝床が確保できたとしても、貧しいことには変わりない。誰もが生きるのに必死なのだ。
この世界に起きる“奇跡”はなく、差し伸べられる救いの手もない。
神はとっくに死んだのだろう。
死体に近づく。思ったより小さい。俺よりは大きいかもしれないが、この辺りの獣人と比べると圧倒的に小柄だ。
アンドロイドだろうか……?
よく見ると、何かを手にしている。これは……。
「なア、コイツが持ってるって銃じゃないか!?」
確かに銃だ。
だが、ここらでよく見かけるパイプ製の粗末な代物じゃない。かなり出来がいい。というか、どう見ても最先端の小銃だ。
しかもストラップのようなアクセサリーが付いていたり、ステッカーが貼られていたりと、妙にデコレーションされている。
(……逆に高く売れそうだな……)
そんな事を考えていた、その時。
[マて、コイツは死体じゃない。”脈”がある。]
「脈?アンドロイドじゃないのか?」
マルムがうつ伏せになったそれを裏返し、フードのように被っていた布を剥ぎ取る。
「なっ……!?」
「なニっ……!?」
[コいつ、獣人じゃない。お前のような肌を持っている。おそらく人間だ。]
毛の生えていない白い肌。
薄い紫色の髪。
現れたのは、人間の女性の顔だった。
微かに、だが確かに呼吸をしている。
「人間?外にも居たのか?それに……地上の人類は滅んだんじゃなかったのか?」
[トもかく、この”異変“との関連性があるかもしれない。]
[カプラエ、水筒を寄越せ。コイツを蘇生させる。]
「……っけほっけほ」
目の前の人間が激しく咳き込んだ。しばらくして、ゆっくりと瞼が開く。
(かなり荒い方法だったが)どうやら蘇生には成功したらしい。
「おい、大丈夫か?」
[アンタ、目は見えるか。]
「……私は……何を……」
意識は戻ったようだが、言葉が続かない。記憶を探るように、かすれた声で何かを呟いている。
だが先ほど感じていた妙な感覚が、はっきりとこの女性から伝わってくる……
「ん? 何だ? この浮いてるのは?」
同時に、彼女の頭上に“それ”があることに気づいた。
「何だ、これ……“輪っか”? いや、“紋章”?」
映像の投影みたいに、宙にうっすらと浮かび上がっている。幻覚……にしては妙に輪郭がはっきりしている。
無意識に、その“輪っか”へと手を伸ばした。
「熱っ!?」「ひゃうっ!?」
触れた瞬間、指先に走る熱。
いや……それだけじゃない。何かが流れ込んでくる感覚……指から肘のあたりまで、血管が脈打つようにざわつく。
これは……“エネルギー”……?
「……!? 何っ!? 誰っ……!?」
[オち着け、殺すつもりはない。]
その声で、ようやくこちらの存在に気づいたらしい。
彼女は反射的に立ち上がろうとして、体勢を崩し、そのまま尻餅をついた。
それに連動するように、“輪っか”もわずかに揺れて動く。
……本当に人間なのか?
「なあ、アンタ何者なんだ? 人間かと思ったが、違うのか?」
「……? 私は人間ですけれど……? それよりも、あなた達は誰なんですか?」
思ったよりもしっかりしている。倒れていた時間は、そこまで長くなかったらしい。
[コの“異変”の原因を探っている。西の塩湖の集落から来た、と言えば通じるか。]
「西の……集落……? その場所の地名などは知ってませんか……?」
「ユタ州、ソルトレイクシティの跡地って言えば通じるか?」
「ユタ州……? ごめんなさい、聞いておいて何ですが、知らない地名です……具体的に『キヴォトス』のどの辺りでしょうか?」
[『キヴォトス』……あのオートマタも話していたな。ここではない場所の名だったか。]
「ここではない……?」
塩湖の街にいた、あのオートマタのことだろう。
だとすると……彼女もまた、“事故”的な何かに巻き込まれて、こちらへ来た可能性がある。
[ハっきり言おう。ここは地球だ。『キヴォトス』ではない。]
「えっ、待てよ……そんな、いきなり言わなくても……」
こいつ……実際に感情があるのかは分からないが、他人の気持ちをあまり考慮しないところがある。
「『キヴォトス』ではない…………そう……ですか……」
[モうすぐ日没だ。お前達は野宿の準備をしろ。]
[ソしてお前はここに居ろ。まだ聞きたいことがある。]
「…………」
事実を受け入れきれていないのか、彼女の表情は沈んだままだ。
……まあ、気の毒ではある。
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野宿の準備が整った。金属のパイプやジープの車体を支柱にし、ブルーシートを被せただけの簡易的なテントだ。風が弱い時はいつもこうしてきた。
異変が起きてからは嵐もなく、数日おきにこうして体を休めることができた。
[デは、問答を始める。まずお前は何者だ。]
「名前は……
聞き慣れない苗字だ。少し不安そうにこちらを見てくる。とりあえず頷いてやる。
[ドのような方法でここに来た。覚えている事を話せ。]
「ゲヘナ自治区……いえ、私の住んでいた地域で姉と友人達と居たところまでは覚えています……ですが、気づけば既にこの砂漠にいました。ですからどうやって来たかと聞かれても分かりません……」
[
「……彼女らも同じ場所にいました……」
「連絡もつかず、ここがどこなのかも分からない中、私は姉にある提案をしました……」
「一つの方角を決め、進み続けることを……」
「ですが所詮は無謀な賭けに等しい行為でした……」
友人達は次々に倒れ、私も倒れた。その辺りの記憶は曖昧で、正確に伝える事は出来ない。
「そうして今に至る……と?」
「……違います……」
「わ……私は……」
「逃げて……来たんです……」
[ニげて来た? 何からだ。]
「……みんなから……」
「そうです……私は逃げて来たんです……」
突然、何かに気づいたように、彼女の表情が強ばる。
「みんな……そのアンタの姉と友達……であってるか? しかし、逃げた?」
[ナぜだ、言え。]
「私は……倒れて、死んだんだろうと思っていました。次に目を覚ました時には、空が紅く染まっていました……」
「そして見たんです……姉が……友人が……村を破壊し、住民を……ころしているところを……」
彼女の声が弱々しく震え始める。
『キヴォトス』とは、強盗や殺人があまりない地域だったのだろうか。どうやら俺の全く知らない場所らしい。俺の記憶にあるごちゃ混ぜの情報では、どれも殺人や暴力に関するものばかりだった。
「私は……彼女らがこの環境に耐えきれず、狂ってしまったのかと思いました。ですが、彼女らは前と変わらず話しかけ、気にかけてくれるんです……」
「もう、何が何だか分かりませんでした。自分は本当は死んでいて、地獄にいるんじゃないかと、そう考えた方が楽でした……」
「そうして長い間、虐殺を繰り返す彼女らに追従してきました……」
「……もう耐えられなかったんです……」
「私は……もう……何も見たくなかった……気が狂ってしまいそうだった。自分の中で大事な何かが、無くなってしまいそうだった……」
「だから逃げて来たんです……ただ、全てを投げ出したかった……」
彼女は泣いていた。長い間、心に溜め込んでいたものを言葉にすることで、それが溢れ出した。
啜り泣く声がテント内に静かに響き続ける。気の毒だ……。
[コの異変の原因は分からないままか。]
マルムが少し肩を落としている。多分、彼の感情は原始的で素直なものなのだろう。他人が悲しんでいても、あまり気にしている様子は見せない。
しばらくして、彼女の泣く声が次第に収まった。
「……す、すみません…..こんな取り乱しちゃって…..」
「まあ……辛い目に遭ってきたんだろ? そうなるのも仕方ないんじゃないか。」
実のところ、気の毒だと思うが、どう声をかければ良いか分からない。人間関係や慰めの言葉の記憶は、酷く曖昧だ。
「なア、腹減った。なんか食おうぜ。アンタもなんか食えよ。」
カプラエが少し間を置いて、まるで空気を読まないかのように言った。彼は何より食事が好きだ。どんなに苛立っていても、食料を差し出せば落ち着く。もしかすると、彼なりの配慮なのかもしれない。食事をすればどんな時も元気が出る、そう思ったのだろう。
正直、俺もかなり空腹だった。しかし空気が空気だったため、なかなか声を出せなかった。だからここは流れに身を任せることにした。
「ええと…..アテナ……だったか、あんまりうまいものは無いけど、どうする?」
「頂きます」
……食べるんだ。
「……それでその姉さんはどんな人なんだ?」
「姉さんは私にとって何よりも大事な存在なんです!」
飯を口にしながら、アテナは色々なことを話し始める。
「私は元々孤児だったみたいなんです。」
「孤児? 向こうでも苦労してたのか……」
「幼い頃であまり覚えていません。ですが、行く宛も無く彷徨う私を受け入れてくれたのが姉さんなんです!」
どうやら彼女の言う“姉さん”とは血の繋がりのない義姉のような存在らしい。アテナは“姉さん”を中心としたあるグループに所属していたという。身寄りの無い者同士、幼いながらも互いに助け合い、生きてきたらしい。その中でアテナは最も“姉さん”との付き合いが長く、本当の妹のように扱われていたという。
「私はトリニティの生まれのようで、ゲヘナに本来いてはならない存在でした。そんな私を姉さんは受け入れてくれた、だから私は彼女を尊敬しているんです!」
自信に満ち、誇らしげに語るアテナ。その表情にはどこか現実逃避の色も見える。トリニティとゲヘナは非常に仲が悪く、国のような存在だろうか。ということは、彼女は不法移民のような立場にあったのかもしれない。
さらに、彼女ら“キヴォトス人”は出身地によって特徴的な形質を持つことが多いらしい。例えばトリニティでは羽毛の翼、ゲヘナでは角を持つ者がいるなど様々だ。トリニティ生まれのアテナは、ゲヘナでは自分の姿を公にできなかったため、普段は着込んでいた。最初に倒れていた時に人間かどうか分からなかったのもそのためだ。
……いや、トリニティ特有の形質を持っている?
「つまりトリニティ生まれだって分かる形質がアテナにもあるってことか?」
「そうですね……」
「私には白い翼があるんです……」
「ほンとか!? 見せろっ!」
「うわあ、急に会話に食らいついてくるなっ」
ホント唐突に食い付いてくるなと思いながらも、興味を隠せない。
「うーん……」
「すみません……今までずっと隠して来たものなので少し抵抗があって……」
「だってよ。また次のタイミングに期待しな。」
「えェ」
「……そういえば、あなたは……その人間……であってますよね?」
「多分そうだけど、それがどうしたんだ?」
「(多分?)……いえ、ここで初めて人型の方に会えたもので……」
「それは俺も同じなんだけどな。自分以外で生きてる人間は初めて見た。」
「……?それはどういう……?」
少しだけ、彼女に身の上話をした。自分達の生い立ちと、この世界の状況について、今までに分かっていることを端的に伝える。
「……つまり、ここは“地球”という惑星で、私達のような“人”は他には居ない……ということですか……」
「あくまで俺達がそう思ってるだけだけどな。」
「それで、俺達はその『キヴォトス』って場所に至る方法を探っていたところだったんだが……」
「突然、上空を覆っていた雲が晴れ始めて、今みたいな赤い空が姿を現した。」
[ドう時に、不可解な電磁波に酷似した何かが検知された。精神に影響を及ぼす程ではない。だが我々は、今起きている現象を解明しなければならない。故に、発生地と思われる東を目指している。]
「そう言って、もう三年も経つけどな。」
「三年……そう……ですか……」
「こんな形で“大人”になるなんて、思ってもいませんでした……」
「“大人”?」
「その話が本当なら、私は今年で二十になるんです……」
「変……ですよね……だって、現状も飲み込めないのに、もうお酒が飲める年齢になっていたんですから……」
「年齢、か……」
年齢、生きた歳月。その言葉に引っかかるものがあった。
「俺って、いくつなんだ?」
マルムに問いかける。
[チ下に残った人間は、私の管轄していた階層より更に下の区画で“私の知らない技術”を用いた研究をしていた。故に、正確な情報は存在しない。だが肉体の成熟度から推測するならば十八だろう。そして数年前から、お前は変わっていない。成長も老化も、そのどちらの変化も見られない。]
言われてみれば、確かにそうだった。今まで深く考えずに過ごしてきたが、成長も老化もしていない。
「あなたが“多分”と言っていたのには、そういう理由があったんですね……」
「そうだ。俺は人間に見えるだけで、定義から外れまくってるらしいし、結局自分のことはよく分からない。」
「俺が『楽園』を目指していた主な理由は単なる好奇心だが、一応、こうした経緯で他の人間に会ってみたかったって理由もあるな。予定より早く、他の人間には会えたわけだが。」
「『楽園』?『キヴォトス』のことでしょうか?」
[正確には違う。我々の目指していた『楽園』は、その『キヴォトス』とは別の領域だと聞いている。]
「でも現に、アテナみたいに『キヴォトス』から飛ばされて来た存在がいる。だから俺達は、違う領域への移動手段を探るために『キヴォトス』を目指している。」
「そうだったんですか……」
「『楽園』……本当に、そんな場所があるんでしょうか……」
「さあな……」
「ぶっちゃけ、楽園なんてあっても無くてもいい。」
「ええっ?そうなんですか?」
「正直、俺にとっては目指す場所があればそれでいい。行き着いた先が楽園と呼べない酷い場所でも、興味が湧くような未知に溢れていれば十分だと思ってる。」
「それに……」
「それに?」
「俺達で“透き通った青空”を見る。それだけでも、目標としては十分だ。」
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夢を見た。久方ぶりの感覚だ。これは……“明晰夢”を見ている時のものに違いない。
(“予知夢”?いや.....しかし、何故だろう……)
自分の意識は鮮明だ。しかし視界は漆黒に覆われ、何も見えない。
(もしこれが“予知夢”なら、一体何を意味しているのだろう)
暗闇の中、一筋の光が差し込み、何かがかすかに姿を現した。長くのび切った黒髪、痩せ細った人型の存在。
(この人物は……一体、誰だろう)
少女のようでもあり、少年のようでもある。だが、私はこの人物を知らない。この場所も、どこか見覚えのない闇である。
(これは未来の出来事なのだろうか……)
場面が移り変わる。彼らは“白山羊”と出会い、続いて“ブリキの人形”とも邂逅する。何やら言葉を交わしているが、正確には聞き取れない。
次に、彼が大きな扉の前に立つ光景が現れた。裸の彼らは、奇妙な装束を纏っている。
[イまより、我らは共に『
かろうじて、『楽園』という単語だけが耳に残った。どうやら、彼らは楽園を目指しているらしい。
『
“第五の古則”。楽園に辿り着いた者は帰還しない。ゆえに、楽園の存在を証明することはできない。
かつての私も、このことを嫌というほど思い悩んだ。しかし、ある人物の導きにより、「楽園の存在を信じ続ける」ことが唯一の結論であると知った。証明できないなら、信じ続けるしかないのだ。
彼らもまた、同じ行為に身を投じるのだろうか。『楽園』などあるかも分からない目的地を目指し、無謀な旅路を踏み出す姿……その光景は、確かに始まりの一幕を見せていた。
旅は決して容易ではない。極限の状況を切り抜け、予期せぬ出会い、自然の脅威との死闘.....それはまるで、一篇の物語を観るかのようだった。
暗く、陰鬱で、救いのない世界の中で、『楽園』を目指す物語。彼らは互いにまったく異なる存在だ。だが、間違いなく信頼を共有していた。利害の一致の上にあるものの、疑心を抱くことはなく、ただ互いを信じる自然な姿で結ばれた彼らの関係を、私は羨ましく思わずにはいられなかった。
突然、場面が移り変わる。
かつて目にした、忌まわしい赫い光景が、視界に広がる。
「(これは.....まさか、『色彩』?)」
だとするなら、今の状態は極めて危険だ。再び身体や精神に異常をきたす可能性がある。だが、目覚めることはできない。意識だけが、否応なくこの夢に縛り付けられている。
「(そもそも……ここは、一体どこなのだろうか)」
見知らぬ砂漠。荒れ果て、文明の痕跡すら失われた末の世界。終焉を迎えた後のキヴォトスではないか――そんな推測が脳裏をよぎる。しかし、思考を重ねるうちに、ひとつの仮定に辿り着いた。
「(ここはキヴォトスの外……つまり、“別の世界”なのではないか?)」
確かに私は、予知夢によって終焉の一端を垣間見たことがある。だが、この夢に映るものは、どれも私の知識には存在しない。
「(これは、『色彩』によって“沈んでしまった物語”……?)」
もし、そうなのだとすれば。今、私が視ている彼らに待ち受ける未来は――。
「(終焉.....)」
『奇跡』は起きず、『救世主』も現れない。不条理だけが支配する世界。彼の辿る結末は、哀れなものにしかなり得ない。
そんな私の思考など意に介さず、場面は再び移り変わる。三人は、ある存在と邂逅していた。その存在だけが、なぜか滲み、輪郭を結ばない。だが、確かに女性の声が聞こえた。
全体に霧がかかったような、不鮮明な夢。その断片の中で、“彼”の言葉だけが、はっきりと耳に残る。
「正直、俺にとっては目指す場所があればそれでいい。行き着いた先が楽園と呼べない酷いものでも、興味が湧くような未知に溢れていれば、それで十分だと思ってるんだよな。それに.....」
「俺達で“透き通った青空”を見る。それだけでも、目標としては十分だ。」
なぜ、彼はここまで前向きでいられるのだろう。過酷で、死と隣り合わせで、なおかつ緩やかに終焉へと向かう世界だというのに。
性格も、見た目も、まったく異なる。それでも、どこか『先生』に似たものを感じてしまう。
もし彼が、かつての私と同じ立場にいたなら。あの手詰まりの状況を、どのように切り抜けたのだろうか。あの時の私のように、卑屈になることはなかったのだろうか。
「(私は……少し、君が羨ましいよ)」
「そこか」
そう思った瞬間、場面が暗転する。
今までとは異なる光景。屍が有象無象に転がる、紅く暗い砂漠。その中心に、一人ぽつんと“自分”が立っている。
誰かを俯瞰する視点ではない。これは、紛れもなく自分自身の視界だ。先ほどまでの夢とは違う――あまりにも異質な感触。
「(まさか……『色彩』?)」
色彩に観測されたのか。だが、あの時とは決定的に違う。
「み つけ た」
背後から、人の声に似た“何か”が聞こえた。あまりにも不気味で、身体が強張る。恐る恐る、振り返る。
「お前 は “俺” か ?」
二つの暗い節穴と視線が合った。
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悪寒とともに、意識が浮上する。目に入ったのは、見慣れた自室の天井だった。
「(あれは……何だったのだろうか)」
「(観測……された?)」
身体が小さく震える。夢の中で接触してきた、“異質な何か”の感触が、未だに残っていた。間違いなく、キヴォトスの外から来た存在だ。理屈では、そう断じられる。
しかしあれから感じ取れたものは、恐怖だけではない。必死に縋り付くような、切実な執着。そこには、あまりにも歪で、そして否定しがたい感情があった。
恐ろしさと同時に、私は“哀しさ”を覚えていた。それでも、全体を振り返れば、あまりにも現実味に欠けている。夢と呼ぶには鮮明で、現実と呼ぶには脆い。
「(……ただの夢、だったのだろうか)」
思考とともに、記憶が少しずつ薄れていく。
私は一体、何を見ていたのだろうか。
高落アテナ
身長は170cmほど。地球に飛ばされてから3年ほど経つ。
彼女だけは”免れた“ようだ。
哀れな少女は時には逆らえず、もう少女ではなくなっていた。
心はまだ子供のままであるというのに
百合園セイア
部分的に沈んだ物語の一端を見た。“未来視”は捨てたはずだが.....
同時に忌まわしき者にみ つか った
主人公
実はヘイローを識別できる。
行き倒れ死体
この世界のラッキーイベント。食えそうならなお良し。
ただし寄生蜘蛛が生き餌にしているパターンもある。つまりハズレあり。
-野宿
条件が揃わない限りは基本しない。常に砂の下でミイラ達が匂いを辿ってくるのでより安全さが求められる。