灰は龍炎に惹かれて   作:ジルバ

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まえがき

読者の皆様、あけましておめでとうございます


…………


許してくれ……許してくれぇ…!

忙しかった……し、ナイトレインで時間が溶けてしまいました。その上にシナリオを私の気まぐれというか俯瞰してみた後の私が修正した故です。

投稿が遅くなったのも、ナイトレインにかまけていたのも、全部俺の所為なんだ。誰か、俺に劫罰の大剣を刺してくれ!!(土下座





第19話:希望の痕跡

 

 

 

「何だ、貴様は」

不愉快そうに顔を歪め、アッシュは乱入者を睨む。

 

ACEにバックスタブを決めようとした同胞を飛来した閃光を放つクランタの女が弾き飛ばしたのだ。

 

「遅くなって済まない」

「へっ…ヒーローは遅れてやってくるってか。待ってたぜ!」

金色の髪をたなびかせ、その女は得物である戦鎚をアッシュへと突き付け、声高らかに己が名を名乗る。

 

「カジミエーシュの燿騎士ニアール、遅ればせながらここに参上した!」

 

(燿騎士ニアール…コイツもロドスの者か)

 

「やってくれたのう女ァ!」

バックスタブを妨害され、キレたらしき薪の王が“トゲの直剣”を放り捨てて“スパイクメイス”で殴り掛かる。

アッシュもまたソレに便乗し、生成した分身と共に二アールへと突っ込む。

 

この女も盾持ち、最悪の予想だがACEと同等の実力と考えての連携だった。

実質三体一だ。

 

「袋叩きか」

だが、テラにおいて外様の二人は知らない。

 

「その程度で私を討てると思うな!」

彼女が、耀騎士がどういう存在なのかを

 

 

「「!?」」

突撃する二人は驚愕した。二アールの背から光の翼が現れたのだ。

 

翼の放つ光輝に目が眩み、思わず目を細めるアッシュ達を置き去りに二アールは天へと飛び上がる

 

(上に逃げたか……ならば撃ち落とす…!)

アッシュは“竜騎兵の弓”の魔力の宿った連射を放つが容易く盾と鎚で弾かれる。

 

「何しとるさっさと退けェ!」

後方からの同胞の叫び声に矢を番えた手を止め、そこで気付く。鎚を引き絞った二アールの姿が徐々に大きくなっていることに

 

ドォォオン!

 

「クォ…!?」

二アールの落下攻撃間一髪避けたアッシュ。彼の立っていた場所に小さな光柱が登り、回避が遅れたアッシュの幻影が跡形もなく消滅したのがその威力を物語っている

 

 

新たに現れた強敵。しかし彼女だけに今注目すべきではないことに気付く。

二アールに率いられたらしきロドスの援軍が現れ、士気を取り戻したオペレーターに同胞たちが数に押され始めている。

 

(……形勢、逆転か…)

 

「アイツは妙な技を使う。気を付けてかかれよ!」

「望むところだ。レユニオンよ!生半可な小細工でこの私を……む?」

このまま制圧される、そんな可能性が脳をよぎる……がしかし、睨み合っていた二アールとACEが耳に手を当てる

 

「了解だドクター……二アール!」

「承知した。光よッ!」

二アールが鎚を地面に突き立てる。またも得体の知れぬ前動作だ。これに対し防御態勢をとった判断は間違いだった。

次の瞬間には視界の全てが真っ白になった

 

(これは…!?)

 

「今です!皆さん撤退しましょう!」

抜かったわ。この光は目潰しか…!

アッシュは自戒するが、幸い彼等が視界を潰した隙に取った行動は逃亡だった

 

(逃すと思うか?この程度の光、貴様ら諸共──!)

 

『もういいよ、おじさん。これ以上手札を晒す必要はない』

無線からイーノの制止が聞こえ、アッシュの蠢き、異形になりかけていた影が原型に戻る

 

「あいつらの進行方向の層を薄くした。彼らにはこのまま堂々の退場を決めてもらおうじゃないか」

閃光が薄れ、視界が回復すると、イーノの言う通りその場にはロドスの者達の姿は影も形もなくなっていた。

 

「良いのか?」

「……もう十分、遊んださ。お陰で少し鬱憤が吐けたよ」

「……そうか」

 

「アンデッド隊長、メフィスト隊長。ご無事ですか」

戦闘が終了し、例の軽装兵達が寄ってくる

 

ロドスと接触し、交戦の末に優秀な彼等は逃げおおせた。どうでもいいので放置していた、というよりは真面目にに見えるだろう。

 

「報告は済んだようだな」

「はい……メフィスト隊長が何やら激昂していたようですが何か──」

 

「もういい。下がっていろ」

「……承知しました」

元はといえばこの監視の存在のせいで我々は周囲を信用しきれないのだ。

いつも、どこにでもヤツの眼は潜んでいる。その前提で立ち回らなければならない

とはいえ、それもあと少しの辛抱だ。あと少しで──

 

 

「それにしてもアイツら存外強かったなぁ」

「……そうだな」

ドーベルマン、ACE、二アール。

この三人だけではない。一般兵クラスの連中も個々のチカラは同胞たちには遠く及ばないが強い結束力と統率力があった。

そして──

 

「ドクター……その名とは裏腹に指揮が上手かった……僕よりも」

堅実な指揮を取っていたドクターと妙な赤黒いアーツを使っていたあのコータスの娘。

 

あの二人は普通の人間とは何か違う。特別な存在のようだ。

 

「とはいえ……」

「うん、そうだね」

 

今の彼等を言い表すのは確かなんだったか?

 

「その方向に逃げたのは致命的だったかな」

 

 

 

 

 

 

──あぁ、思い出した。飛んで火にいる夏の虫だったか

 

アンデッドの目と鼻の先で炎の暴威にロドスが抵抗もむなしく蹂躙されている

 

あれから程なくしてアッシュ達を含めた幹部達がタルラの召集を受けた。

ソレに応じ、一足早く赴いてみれば辺り一面火の海だった。

 

我々の予想通りロドスはレユニオンの暴君に見つかってしまったようだ。

 

 

「お前達は、真に我々の側に立つべきだった」

 

 

「感染者が何をした?──無辜の人々が何をした?」

(よくもまぁ、心にもないことを……)

アッシュは今にもコシチェイに斬りかからなければという衝動を必死に抑える

既にこの場には多くのレユニオンの構成員を率いた幹部達が揃いつつある。たとえ同胞たちを全員顕現させ反旗を翻したとしてもレユニオンには敵わない……敵ったとしても、

 

アッシュは傍で歯を軋ませて怒りを耐えているイーノとサーシャの頭をポンと叩く。

 

──コシチェイを斃すだけでは私の願いは叶わない。誰も死なせるわけにはいかないのだ

 

だから、今は耐え忍ぶ時。

 

 

 

「お前たちに─口先だけの理想論者に何ができる…」

 

「想いは誰にも届かない。甘い夢は叶わない」

 

(……叶えて見せるさ)

友を嘲弄するようなその言葉も耐えるのだ。

 

 

「私の望む結末を教えてやろう」

何の感情も、感慨も無さげにレユニオンの暴君はロドスの部隊へと掌を向け、

 

──滅びよ

龍の息吹を放つ。

あれを受けた者たちは悉く焼き払われてきた。ロドスの末路を悟ったアッシュは静かに彼等の最期を見届け──

 

 

「──させません!」

(何だと…?)

しかし、彼の予期した未来は覆ることになる。

 

 

「私が皆さんを護ります!この体が砕けても…私は!!」

両の手のから赤黒い菱形の障壁を作り出し、鬼気迫る表情でアーミヤは満身創痍になりながらもあの龍炎を凌ぎ切って見せたのだ。

 

(あんな小さな娘が……防いだというのか…?)

タルラが理性というリミッターをかけていた赤龍の炎はコシチェイによってソレを取り払われ、地獄の業火のごときシロモノへと変貌していた。

 

だが、あの小さなコータスの少女が、ソレを防いだ。

 

(彼女は一体……?)

 

「うおおおおお!!」

未だに動揺していたアッシュをACEの雄叫びが現実へと呼び戻す

 

底知れない実力を持ったあの男が全力で得物を黒蛇に振り下ろす。しかし、それをヤツは避けることもせずただアーツでいとも簡単に弾き返す

 

……そうだ、攻撃を防いだだけだ。それだけで精一杯な有様では勝てはしない。

ロドスの戦士たちがコシチェイに立ち向かうが傷一つどころか近づくことすらままなっていない。

 

勝ち目は一切ない。

 

「総員、指示に従い撤退せよ!」

彼等もそれを理解しているようで撤退の指示を出している。

 

しかし、絶望的な状況の彼らに現実は非常にもさらなる苦難を課す

 

 

 

ゴォォォォ…!

この移動都市チェルノボーグは今日移動する予定だった。その都市が今、移動を止めたままになっている。

-

テラに生きている者ならこれがどういうことか分かるだろう

 

 

異様な音を耳にし、その場にいる者たちが空を見上げる。

 

 

──源石により、凶星の群れが都市へと降り注ぐ

 

隕石が着弾した先から火災が起こり、都市がさらにアカく染まってゆく。

あちこちから悲鳴と断末魔が木霊する。

 

「グアァー!?」

信じられるだろうか?この惨劇すらもレユニオンの計画の内だということを。レユニオンは非感染者を根絶やしにするためだけにこの世の地獄を作ったのだ。

 

「死にたくない……死にたくないッ!!」

私は嫌悪する。今まで虐げられてきた憤怒、憎悪、嘆き……ソレらをされた分非感染者に思い知らせるという愚かな復讐の生み出したこの光景を

 

──レユニオン・ムーヴメントを…!

 

 

 

皆さん!

混乱を極めたその場に決して大きくないはずのアーミヤの声が伝播する。

 

 

 

「私から離れないで下さい…この大きさが限界です…!」

アーミヤの黒いアーツが降り注ぐ天災から仲間を護っている。

優しいのだな、彼女は。

 

 

 

「タ、タルラ様──ギャアー!!?」

コイツとは大違いだ……

 

天災は平等に死を寄越してくる。ロドスだけでなく我々にも

 

直撃コースの隕石を“ゲルムの大盾”で凌ぎつつアッシュはちらとコシチェイを見る。

 

他の幹部連中も同様に迎撃して脅威から同胞を庇う中、暴君は自分に降ってくる隕石をアーツで破壊するだけで、周囲の仲間を庇う素振りを一切見せない。

この様を見てもまだレユニオンの救世主と崇められる程の“タルラ”のカリスマ性をコシチェイは有している。

 

盲信……とはまさにこのこと。ヤツの本性を訴えてもレユニオンの狂信者たちは耳を貸さないだろう。

 

「仲間を見殺しにするなんて…!」

「アーミヤ!大丈夫か!?」

「ピークは過ぎた。第二波が来る前に行こう!」

今にも倒れそうになりながらもドーベルマンと二アールに支えられたアーミヤ。

 

──隙だらけだ

アーミヤが防壁を解除した瞬間、暴君が攻撃を再開する。

 

「アーミヤの隙を狙ってやがった…!」

暴君の悪炎と天災がロドスの撤退を阻み、確実に追い詰めていく

死人も出始めた。この時点で彼等は平穏無事にこの都市を出ることは叶わない。

 

彼らは選択しなければならない

 

ここで皆仲良く骨を埋めるか、

 

「私が……タルラを──」

 

 

「──アーミヤ、ここは俺たちが引き受ける。ドクターを連れて先に行け……心配するな、すぐ追いつく」

 

誰かが、邪蛇の贄となって他の者たちを生かすか

 

「ダメ!ダメですACEさんッ!!」

「アーミヤ!」

余力を振り絞ってACEの元に走ろうとするアーミヤを抱えたドーベルマンたちが逃げていく。すると丁度天災が破壊した建造物の瓦礫が彼女らの通った退路を封鎖した。ここに来て天が味方するとは

 

ACEと彼の部隊の戦士たちが得物を握りしめレユニオンの暴君へと特攻を開始する。

 

彼は……彼等は分かっている筈だ。

 

一人、また一人と蛇の炎によって骸になっていく

追いつくことなどできやしないと。ここで死ぬのだと

 

無情に流れる時間、その末に……

 

 

 

 

残るはACEただ一人。炭化した腕を切り落とし、言い逃れようの無い程に死に体となって、

 

……それでも

 

(……何故だ?)

 

──それでも尚、彼は不敵に笑っていた

そんな彼にオペレーターを焼き殺し終えたコシチェイが不愉快そうに眉をひそめながら掌を向ける。

 

(何故、死を前にしても笑っていられる…?)

 

 

普通は、一度死んだらおしまいだ

元来人間とはそうであることをタルラが決起して間もない頃、冷たい凍土に埋めた戦友たちの墓標を見て思い出した。

 

…もしかしたら

 

──彼らも、この男たちも他者の為に一つ限りの命を投げ打って、満足なのか

 

 

共に苦楽を共にしてきた戦友たちがタルラの掲げた理想に──彼女自身に殉じたように、彼らもあのアーミヤとドクターなる人物が己が命を賭けるほどのものなのか

 

もし、そうなのだとしたら

 

アーミヤは蛇の炎を満身創痍になりながらも完全に防いで見せた。

ドクターなる人物も普通の人間にはない特別な素質があるのだろう。でなければ態々こんな死地に赴いてまで救出しに来るはずが無い。

 

(そうか、貴様も──)

この男はアーミヤとドクターの齎す未来の可能性に魅せられている。

 

──かつて、私がタルラにそうだったように

 

この時点でアッシュはどうするのか決めていた。彼は面倒ごとは嫌いだ。してからの後悔も極力避けたい。

 

暴君の掌の上で炎が渦巻き、凝縮される。このまま見殺しにした方が賢いのかもしれない

 

しかし、何もしなかった……できなかった時の後悔だけは二度としたくないのだ。

 

アッシュはACEへと手を伸ばす。だが彼とACEの間には埋められぬ距離があり届くはずが無い。

 

悪炎が解き放たれ、蛇を模ったソレがアギトを開き……ACEを喰らった

 

 

 

「覚えておくぞ、ロドス…!」

炎が霧散した後、ACEの立っていた場は灰すら残らぬ焦土となった。そこには溶解した盾と鎚が熔け広がっているだけとなっているだけだ

 

 

「……諸君、首尾を聞こうか」

「チェルノボーグの、制圧を、完了した」

「同じく」

「それは何よりだ」

戦闘が終了し、幹部たちがタルラに駆け寄る。

 

そんな中、

 

「おい待て、お前等!どこへ行くつもりだ!?」

人知れずその場から撤収を試みたアッシュ達だったがクラウンスレイヤー嚙みつかれ、思わずため息をつく。

 

「……次の作戦の開始までは自由にさせてもらう」

「右に同じく」「……」

「何を勝手なことを…!レユニオンの幹部として同胞たちに示しがつかないだろうが!」

 

……就きたくて、就いた立場ではないのだ。こんな轡のつけられた猟犬紛いの虜囚なぞ。

 

「同胞たちか……一つ訊こう。クラウンスレイヤー」

 

──感染者とは何だ?

何も私は古参ぶってレユニオンにおいて新参者の彼女らを毛嫌いして敵対視しているわけではないのだ。

 

「急に何を…?」

「虐げられる宿命を背負わされた者達だ…!だからその宿命を背負う必要のない私たちの為の世界を創るんだ!」

「……それがタルラの理想の世界か」

「そうだ…!」

その答えをアッシュは分かり切っていたようで落胆を露にため息をつく。

これだ。此奴等は自分たちのことしか見ていない。迫害されてきた自分達の復讐心を満足させるのにレユニオン・ムーヴメントの命題が都合がいいだけだ。

だから我々が説得しようと耳を貸しはしない。

 

何よりも……タルラの理想の世界はそんなものではないと私は知っている。今のレユニオンには賛同できない

 

(……貴公等も、そう思わないか…?)

アッシュはパトリオットとフロストノヴァを見る。

彼等はただタルラを見つめたまま立っている。二人なら彼女の豹変ぶりに違和感は覚えている筈、とはいえ付き従う姿勢を崩さぬのなら、

 

信用できる仲間たちだけで戦い抜くだけだ。

 

「……そうかよ。精々頑張ることだ。行くぞ二人共」

「おい!話は終わっていないぞ!アンデッドッ!」

背を向けて再び歩き始めたアッシュ達を引き止めようと動き出すクラウンスレイヤー、あと数歩進めば“綻び刀”が鞘から走り出そうとした時、

 

 

「──放っておけ、クラウンスレイヤー」

「だが!…チッ!消えたか……」

「……親友の男に対してそっけないな、タルラ。以前のお前とは大違いだ……」

「彼にはあとで私から言っておく。今は勝利を声高らかに告げよう」

 

レユニオンの暴君が剣を天へと掲げ、勝利を宣言する

 

「聞け、レユニオンの感染者たちよ!我々の奮闘によってこの都市は我らの手中に収まった。我らは勝利したのだ!!」

 

うおおおおおおおおおおおお-------────!!

 

勝利の歓喜の叫びがチェルノボーグに響き渡る。

 

故に、

 

人知れずACEのいた場所で原型を失った“黒騎士の盾”と“バモスのハンマー”が火花を散らして消滅した

 

 




あとがき

はい。

前書きにあった通り、今回で絶望を焚べる者さんに出番あったんですよ。そう、お蔵入りです。
まぁ……おいおい幕間か何か出します





次回、出立

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