灰は龍炎に惹かれて   作:ジルバ

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まえがき

ナイトレインを遊び尽くし、一段落!…などと考えていた俺はお笑い者だったぜ

アークナイツ・エンドフィールド…凄いゲームだ
エンバーさんメッサ好き(隙を逃さぬ自己語り)

特大剣を振ってきた自分の性分にピッタリなんですよ。彼女が。エンドフィールドはフロムゲーだった…?

そんなエンバーに出会わせてくれたハイパーグリフに“感謝を!”

しかしアレでサンクタってマジ?異端すぎるだろ……



幕間:鼠の王

龍門。

炎国に属するその移動都市にして経済の中枢にあるそこは高層ビルが立ち並び、高度な交通網整備された大都会だ。

そして龍門に住まう市民は快適で安全な日常を治安と正義をを司る“龍門近衛局”によって保証されている。

全ては、この都市の主たるウェイ・イェンウの先見の明ある統治の賜物である。

 

 

 

……だが、

 

ドカッ!

 

「うっ…」

「このクソガキが!薄汚いナリで足元を駆けずり回りやがって……この服幾らすると思ってんだァ!?」

 

バキッ…!

 

それは発展した都市部だけの話。貧民や日陰者達の吹き溜まりとなっているスラム街はその限りではない

 

都市に生きる人々が商店街で買い歩いたり、催されるミュージックコンサートに興じているのと同時に、スラムに住み着いた者たちは醜く争い、人知れず死んでいる。

 

龍門は光と闇が陰陽のように入り混じった都市なのだ。

 

 

しかし、だからこそ……

 

「ごめ…んなさい…!」

「謝って住むほど世の中甘く──あ?な、なんだこりゃあ…?」

 

闇に底は無く、全てを許し受け入れる。故に──

 

「……獅子心中の虫をもこうも容易く入り込ませる」

 

「なんだよこの黒い霧!?俺の足が……身体が…嫌だァァ----!?」

襤褸纏いの騎士──アッシュの足元から這い寄る黒い瘴気が肉を腐らせ、マフィアの男を白骨死体に変貌させる。

 

彼は龍門に侵入に成功した。

 

「…同胞達よ」

彼の声に応え、周囲に漂う火の粉が薪の王へと転ずる。

 

「“剣”を突き立てよう。作戦が始まるまでに」

首肯した魔術師や騎士たちはすぐさまその場を走り去っていった。

その場に転がっていた髑髏を踏み砕き、アッシュは何が何だか分からないといった様子のウルサスの少女へと近寄る。

 

そしてその手に握る螺旋の剣を彼女の目の前に突き立てた。

 

BONFIRE LIT

 

「…あ、ありがとう」

「礼はいらないよ…早く親の元へ戻りたまえ。ではな」

 

「お母さん……もう、いない。私のいた街、変な仮面をつけた人達に壊されて…」

 

少女に背中を向けて立ち去ろうとしていた足を止める。

その場で固まったように動かなかった彼だが、直に動き出し、足元にある白骨した暴漢の死体の服を弄り始める。

 

「“ウルサススラング”…服が高いとかほざいていた割には大して持っていないではないか…」

彼がそこから抜き取ったのは青色の紙幣──龍門幣だった。

 

「コレを元手に食い繋げ…そして直ぐにこの街を離れるのだ」

「どうして?せっかくここまで来たのに…」

「──この龍門も君のいた街と同じようになってしまうからだ。…君の未来が明るいものであることを祈る。ではな」

 

 

 

火が一つ、また一つと灯り、繋がっていく。

 

 

「こちらJ、担当地区での任務を完了した」

「協力感謝する。そのままファウストと合流してくれ」

「了解した」

僅かなやり取りを念で交わし終え、アッシュはだだっ広い空き地の真ん中に先ほどのように剣を路地裏に突き刺し、火をつける。

 

これでこの貧民街でするべきことは終わった。

 

(スカルシュレッダー達が直に来る……さっさと退散させて──)

即座にアッシュがその場から飛び退く。するとそこから竜巻が起こり周囲に砂が巻き上がる。

 

竜巻は瞬く間に勢いを失くし消失。明らかに人為的な……恐らくアーツによる攻撃だ。

 

「ほう、今度のは少しはやるようだな」

アーツを放ったらしき何者かへの反撃として“封じられた太陽”を放ち、眼前を爆炎が埋め尽くした。

アンディールなる者が編み出したというその呪術はイザリスの混沌の火と同等、下手すればそれ以上の火力を誇る代物だ。

 

過剰な火力を秘めた火球は避けられること無く着弾した。

 

しかし、そこでアッシュは気づいた。己の周囲を黄砂が流水のように宙を流れ、包囲していたことに

 

「手厚い返礼じゃのう。しかしちと熱すぎるぞ。少しは老体を労われんのか?」

“封じられた太陽”の余燼の向こうから再び彼の声が聞こえると同時に意思を持つかのように砂塵がアッシュへと襲いかかり瞬く間に彼の首から下を埋めてしまった。

 

(“ウルサススラング”!抜かったわ…!相手は何者だ…!?)

拘束から脱しようと試みるが砂の拘束は固く、それを許さない。兜の内で舌打ちしつつも、冷静に会敵した相手の姿を睨む。

 

レユニオンの一味である自身を問答無用で攻撃するなど近衛局くらいだが、それなら何故“都市の”警備部隊である近衛局の者が何故このスラムにいる?それと事前に知らされた情報に無い全く別の勢力か?

 

カツン、カツンと杖をつく音が鳴り、煙の中から小さな影が浮かび上がる。

 

ネズミだ。やけに貫禄のある風体をしたネズミがそこにいた。

 

──何だコイツ!?

──キエェアー!?ネズミガシャベッタァ!!?

──喋る鼠……王を自称していた偉そうなドブネズミを思い出すな……

(……すまん、少し黙っていてくれ)

 

「…先に攻撃したのはそっちなのをお忘れか?ご老公」

このテラの人類は例外こそあるが概ね獣人の姿をしている。角や獣の耳、そして尻尾を生やしているのが当たり前のようだった。だが獣人と一言に言っても獣度合いの違いもある。生物の象徴的な部位だけでなく肉体の全てがソレそのものとなっておる者もいるのだ。

 

目の前のザラックのように

 

(同胞たちが悉く殺されて私の元に還ってきた…おそらくこの老耄の仕業だな)

戦いに明け暮れた不死の旅路で培われた感覚が警鐘を鳴らす。この老人は強いと

それは正しかった。

 

──リン・グレイ

アッシュが知る由もないことだがこの老鼠は龍門の影の支配者とも言えるマフィアの首魁である。

 

 

この世界は強者がゴロゴロといる。それも己では到底叶いそうに無いような、幾度も死なねば倒せないであろう連中が

 

そう、倒せはするのだ。何度も死ねば嫌でも相手の手練手管を知り尽くせる以上は

 

だが、それではダメなのだ。

近い未来で、私は想像の及ばぬ程の強敵と相対することになる

避けることは叶わぬ。

…彼を越えねば私はタルラの元に至れない

 

たかが己を圧倒する実力者ごときに不覚を取るようではダメなのだ

 

(…我が道を阻み、そして破れし者たちよ)

 

─毒を以て毒を制す

極東にはそんな言葉があるらしい。要はバケモノにはバケモノをぶつける理論だ

相手が強者ならば…此方も類稀なる強者の力を以て臨もうではないか

 

 

「…ふむ?」

バチッ…バチバチッ!!

風が吹きリンの髭を撫でた。風はアッシュを核に渦を成し、渦中に黄金の火花が爆ぜる。

 

敗者としての責務に則り──その力を我に寄越せッ!!!

 

凄まじい破砕音が起こり、耳鳴りと共に凄まじい速度で襲いかかる砂塵を前にアーツを行使して防壁を作り出すことで防ぐ。

 

目眩しの後に奇襲、ありがちな手だ。そう予測しての行動だった。故にこの砂の盾は彼の卓越したアーツによって堅固に仕上がっていた。

 

その筈だった

リンが上半身を捩り、彼の目の前を迅雷が切り裂く。

生成した防壁には大きな風穴が開いており、先の一撃が必殺を狙ったものであることが伺える。

砂の煙が切り裂かれ、その奥から牙を剥く金色の刃を最低限の体捌きで避け続けるリン。

 

「チィ!」

アッシュがスタミナ切れを起こした隙を逃さず激しい流砂で押しやり、懐から引き剥がす。

 

(此奴…)

空気…いや、気配が変わった。

荒れ狂う雷嵐を纏った“竜狩りの剣槍”で空を切り裂き、仕損じた標的に切先を向けるアッシュ。

得も言われぬ威圧感を放つ彼の雑念があったその目には今やただ眼前の敵を屠る一念の殺意だけがあった。

 

「ッハ!今のは肝が冷えたの」

「やはり貴公…強いな。だが、だからこそ試金石に相応しい!」

アッシュの周囲に薪の王達の得物が顕われリンへと襲いかかるが、対するリンはより大規模な防壁で何なく受け止めて見せる。

 

「このワシを試金石とするか……身の程を知れ」

リンが腕を振るうと武器の弾丸に貫通することすら許さなかった防壁がボロボロと崩れ、宙に砂が舞う

壁を構成していた砂が凝縮され細く鋭い針の如き姿となった。

 

「お返しじゃ」

リンが突いていた杖の石突をアッシュへと向け、砂の小針達を彼の武器の弾幕へのお返しとばかりに群がらせる。

 

今までに無いような凄まじい密度の集中攻撃。避けるべきか?それとも防御?

 

──いや、どれも違う

アッシュの脳裏にかつて…燃え盛る村の前でコシチェイと対峙した時の情景が蘇る。

己に、そしてその後ろにいたアリーナたちに向けてタルラのアーツが解き放たれようとしているあの瞬間。

 

 

あの時、私は何を使い、どう動けば良かったのか。

 

 

答えは──

 

アッシュは剣槍を左手にやり、空いた彼の右手に新たに握られた一振りの白き剣──“ロスリックの聖剣”を天に掲げる。

 

白光の羽根が空を舞い、剣へと集約し、極光は巨剣を成す。

 

「消し飛ばせ!“ロスリックの聖光”!!

──敵を滅する圧倒的な力だ。

 

「これは…!?」

振り下ろされた聖剣から放たれし光の奔流。それに呑まれた砂針は瞬く間に消滅し、光がリンへと迫り──

 

 

その時そこから立ち上った純白の光柱は龍門に住まう多くの者たちの目に留まった。

 

龍門で最も高い高層の摩天楼の執務室にて、朱き龍がその鋭き眼を細めていた。

 

 

 

 

「……よもや、アレを一身に受け止めて防ぎきるとはな」

アッシュは思わず苦笑する。何せ“ロスリックの聖光”を留め続けた防波堤が崩壊し、その向こうで貧民窟の鼠王は無傷であったのだから。

 

「ゼェ…ゼェ…!」

とはいえ、余裕綽々といった様子であったザラックは今や息も絶え絶えだ。彼の聖光はこの魑魅魍魎ののさばる世界で通用することを示していた。

アーツは不死者(我々)の使う魔法と同じように精神力を使うものだ。故に術を練るために必要な気力が尽きれば、まともに出せなくなる。それが強力無比な代物ならば尚のこと。

 

──王手だ。

 

「…っと…!一瞬の油断も命取り…か」

彼の目と鼻の先まで砂の散弾が迫る…が急速に弾速が衰え、彼の纏う風によって吹き飛んだ。

 

「チッ……忌々しい風よ」

「……貴公は卓越した術師と見える。現に大層な壁を一瞬で作り、私の全霊を凌いできた。だが、自衛の為には些か規模を大きくしすぎでは無いかね?」

「……お前さんと違ってな。ワシにはあるのよ……護るべきモノがな」

 

「何?」

「コレだから若造は……周りを見んか」

「周り?…これは………」

不意打ちの隙を作るための戯言かと思い聞き流そうとした。しかし、無数の視線を感じ彼はようやく目を周囲に向ける。

 

「なっ…」

視線の正体はこのスラムの住人たちのものだった。住処に土足で踏み込んでいる余所者であるアッシュに向けるソレ敵意を帯びている。

だが、彼が驚いたのはそれが理由ではない。

 

先程までド派手に暴れていたにも拘らず周囲の構造物に全たくといっていいほどに被害がなかったのだ

 

 

「まさか貴公……私を相手取りながら周囲に被害が及ばぬように立ち回っていたというのか…?」

「ここに住む者たちは例外なくワシの良き隣人なのでな。困るのだよ、ワシのシマを……彼等の唯一の居場所を荒らされては」

「────」

そういって呼気を整え、リンは杖を構え、僅かな砂塵が周囲に浮かぶ

その眼を前にアッシュは理解する。このザラックの老人はその小さな躯体にそれ以上の大きく、多くのモノを背負っていると。

──護るべきモノがあるのだと

 

 

(あぁ、なんてことだ……気分が悪い)

聖剣の穢れなき白刃が鏡のように映している己の姿を黒蛇に錯覚してしまった。

 

彼等は道を阻んでなどいない。寧ろ私が害を与えている。

関係の無い他者を害してまで……私は──いいや、これでいい。

 

誓っただろう。幸せになると。火守女の為に…!

 

ほんの一瞬生じた今まで決して起きることのなかった決意の揺らぎ。

 

 

 

その瞬間、

 

「ガァッ…!?」

アッシュの両腕に激痛が走り、現実に引き戻される。見れば、己が腕が半ばから硝子によって貫かれていた。

またも不意打ちを許してしまったことに激しく自責する。

 

(……硝子?砂ではなく…?)

 

 

「はぁーっ!!」

頭上から飛来した硝子の凶刃をローリングで避け、乱入者の姿を認める。

 

艶やかな黒の衣装と桃色の髪をたなびかせ、粉々に砕け散った硝子の中で此方を睨む乱入者はこれまたザラックの女だった。

 

「!?ユ、ユーシャ!何故ここに…!?」

「先に行けって言ってからもう30分、探しに行こうとしたらここから光の柱が見えたの。そして来てみたら……この有り様」

(新手か……面倒なことに…なった)

この女と老人は親子のようだ……年が離れすぎている気がするが……いやそんなことはどうでもいい

 

「もう年なんだから激しい運動は控えたほうが良いわ。休んでて」

老いてなお凄まじい戦闘力を持っていた老鼠の娘……駄弁っているその佇まいは隙だらけに見えるが、奇襲をしても手痛い竹箆返しが帰ってくると己の不死の勘が告げている……この女も強い

己が肉体から引き抜いた硝子を握り潰し、ユーシャを値踏む

 

砂塵舞う中で女が硝子の剣を、アッシュは“骨の拳”を構える。

 

刹那の静寂……女が動く。

その細指を動かすと、アッシュの周囲に異変が起きる。

辺りに舞う砂粒が凝縮し、金剛石かと見紛うほどの刺刺しい硝子の塊に変貌したのだ。

この女、どうやらあの老人と同じように砂を操るようだ。

 

だが、

 

「……無駄だ」

形が変われどやろうとしているであろうことは先の老人と似ている。ならば同じように対処するまで

 

アッシュが右足で地面を強く踏み込み生じた一陣の嵐が彼を取り巻くガラスと砂を外野においやった。

 

これで相手にできることは精々自身の周囲にある砂を使って飛び道具を飛ばすか、突っ込んでくるか──

 

 

──その両方

 

ザラックの女が周囲に浮かべた数本の硝子の剣を伴ってアッシュへと突撃する

 

 

彼目掛けて飛来する硝子の円陣をアッシュの嵐の暴威が阻む。

鼠王の二の舞になる。そう思われた。

 

「ぐっ…!?」

しかしそう高を括っていた彼の身を嵐の壁を突破した硝子が貫く。

 

思わぬ被弾に動揺し、纏っていた風のベールが解けてしまう……が、直ぐに持ち直し二の腕で頭部を守るように防御を取った次の瞬間に女の強烈な回し蹴りの衝撃が来る。

 

女の苛烈な猛攻に防戦一方なアッシュに容赦なく更なる追撃を見舞おうと女が接近し、剣による刺突を放つ。

……ずっと思っていることだがこの女と言い、タルラやエレーナといい、力を込めて握れば容易く手折れてしまいそうな細い身体のどこにこれほど凄まじい力を秘めているのだろうか?

 

 

さて、切り返すとしよう

彼の取った迎撃策は至極単純────

 

 

 

「フン!ハァッ!!」

「なッ…!?」

──強靭に任せたゴリ押しだ

 

アッシュは戦技「踏み込み」のように力を強く大地を踏みしめ、ザラックの渾身の一刺を己の体で受け止める。

文字通りの肉を切らせて骨を切るその行動にはさしものリン・ユーシャも虚を突かれたようでだその“グンダの手甲”による殴打を許してしまう

 

手痛い反撃を受けた女、とはいえようやく一撃見舞わせただけ、まだまだピンピンしているようだ。

それに対し、私は……少々被弾し過ぎたか。

それに道草も食い過ぎた

 

(まだやるべきことがある……退くか──)

 

「貴方の今考えてることを当ててあげる。逃げようって思ってるでしょ」

「……ご名答。腕試しのつもりでここに留まったが…藪蛇だったと後悔しているよ」

「そう──でも貴方はここで終わりよ、レユニオン。お散々皆の居場所で好き勝手して…お父さんをこんなにして生きて帰す訳ないわ」

ユーシャが手に握る剣を指揮棒のように振るえば、操られた砂流が空を流れアッシュを取り囲む。

今までのアーツ捌きからして、この娘は父からアーツの手ほどきを受けたのだろう。並の相手、あるいは初見では凌ぐことすら困難であることは明白。

 

 

「二度も同じ手は──」

しかし、この攻撃はもう身をもって知った。砂塵を一掃せんと、アッシュが嵐を呼ぶ。

 

シャリーン…!

「…!?しまっ──」

アッシュの失点はリン・ユーシャという人間の精神性を見くびっていたことだ。

彼女は偉大な父の後を追いかけるだけの人間では決してない。

 

取り巻く砂群はアッシュに群がることなかった。この攻撃が自分の予想の物とは違うと気づいた時には既に遅く、彼の足元から硝子の監獄を瞬く間に作り上げ、アッシュを吞み込んでゆく。

 

 

「王手よ。他のレユニオンへの見せしめとして……死になさい」

王手、壮麗な硝子のオブジェの完成だ。

 

「……ふぅ。お父さん、無事?」

「舐めるな。お主がおらんでも起死回生を決めて勝っとったわい」

「……灰尾の人達はどうしたの?」

「娘とのショッピングの邪魔だからの。シマの“掃除”に行かせた」

灰尾とは彼から直々にアーツの教えを受けた精鋭部隊のことである。今この瞬間にも彼らの手によって貧民街で活動していた薪の王たちやレユニオンは掃討されていることだろう

 

「でもあの“龍門スラング”達は日に日に増えてるわ。……禍根を完全に断つにはやっぱりあの人に従うしか───」

 

 

 

 

 

ジュゥゥゥ…!

ユーシャのの丸い耳が異様な音を捉える……まるで何かが熔けているときのような、そんな音が

 

「ユーシャ、ワシの後ろに!」

彼女がが作りあげた巨大な硝子細工は見るも無残に熔解していたのだ

 

ガチャリ……ガチャリ!

熔け落ちる硝子の中から開けられた風穴から溶岩を溢しながら、騎士は再起を果たす

 

其れは全てを焼き熔かす──混沌の炎である

硝子の牢獄から解き放たれたアッシュが手を掲げると 突き立てた篝火の剣が動き出し彼の手中に戻った。

 

「……思い出したわ。アイツはあのイカれた感染者集団の幹部よ…!」

「ほう、有象無象の群れの中にもこれほどの玉石がおったとはな……気張るぞ」

ある程度体力を取り戻したグレイがユーシャに並ぶ。一方、二人が全力で臨ませる程の威容を見せつけるアッシュの心中は──

 

(……帰るか)

二対一。それも一人ですら油断すれば足元を掬われかねない手練れだ。そんなのを二人同時に相手取れるわけあるモノか。

 

……あぁ、そうだ

 

「……ザラック達よ、貴公等の寄る辺を侵してすまなかった。ここから我々は手を引く……詫びと言ってはなんだが一つ忠言を贈ろう。」

「忠言ですって…?」

「遠くない未来、龍門に戦が起こる……なるべくこちらでも防ぐ努力はするが降りかかるであろう火の粉からここに住む者たちを護れるように備えておけ」

 

裏で糸を引く黒幕気取りなあの黒き蛇の謀によって引き起こされたチェルノボーグの惨劇をこれ以上増やさぬように、

 

──お母さん……もう、いない。

元はといえば私が強ければこんなことにはならなかったのだ。贖罪として……何としてでもこの龍門で終着にしなければならない。

 

(……最悪な奥の手を使ってでもだ)

カアスの娘に穿たれた“穴”があった胸に手を当て、アッシュは覚悟を再確認する。

 

……我々は決して物語に出てくるような無敵の英雄ではない。この都市を、そしてここに生きる者たちを守り切ったうえで完全勝利……なんてことは叶わないだろう

だからせめて取りこぼす命を少しでも減らせるように篝火を灯してきた。

 

だが……少なくともここに住む者たちには要らぬ世話だったようだ

 

ここはこの強きザラックの親子に任せるとしよう

 

「……さらば」

「っ…!待ちなさい!」

察したユーシャが地を蹴るがアッシュの頭上から一筋の雷が落ち、彼女の目が眩む。

 

視界が正常になった時には炎を纏った黒騎士の姿はどこにも見当たらず、冷え固まった硝子が地面に広がっているだけであった。

 

 

「チッ!まんまとしてやられたわね……お父さん…?」

「……ハハッ…護れるように、か」

グレイの顔は無力感に満ちていた。

敵を逃したことにではない。

 

アッシュが後に大いに後悔をすることになる。彼の選択が無意味で、誤っていたことに

 

 

 

──既に裁定は龍門の赤龍によって下されている。年老いた小さなネズミ一匹と未熟な娘にできることなど、何もないのだ……

 

 

 

 





あとがき
幕間……幕間?本編にしたほうが良かったかもですね
駄菓子屋やってたり、隣人の同年代仲間と遊んでたりしてスローライフ送ってるグレイおじいちゃん良いですよね

ただ娘におじいちゃん要素が無さすg(流光炸裂

前書きにも書きましたエンドフィールド。皆さんはやってますか?
ドクターが“咽び泣く”してしまいそうな要素も散りばめられてて素敵だ……
しかしまさかアークナイツの世界でも血晶石マラソンの類をやることになるとはこのリハクの目を以てしてもry


??「これだから面白いんだ、アークナイツってヤツは!」

筆者はこれからもアークナイツを応援しております
「私も恥じない戦い(執筆)をするまでだ!」

次回……The worst encounter

タイトル通り、最悪な初対面です。約束してもらったのにね


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