ネオヤマト・コロニーでの穏やかな日々にも終わりが近づき、火星への出航に向けた準備が、着々と進められていたある日。
鉄華団の中でも、幹部格である年長組に属する団員たちに、団長のオルガから招集が掛けられた。
「今回集まってもらったのは他でもねえ。今後の見立てと、それを踏まえた、俺たちのこれからについてだ」
〈イサリビ〉内の会議室には、急な呼びかけだったにも関わらず、席が一杯になるほどの人数が集まっていた。
オルガの隣に座るのはビスケット。長机を囲んでこちらに目を向けるのは、ユージン、シノ、昭弘、チャド、ダンテ、そして三日月といった、年長組の団員たち。
室内には彼らに混じって、雪之丞とメリビットの姿もあった。二人には大人の視点からの助言に加え、議論が変な方向に転がった際は制止してくれるようにと、前もって頼んであった。
「俺たちは初仕事で名を上げた。クーデリアみたいに、俺たちの力を借りてえって奴も、これからどんどん出てくるだろう。ハーフメタルの交渉はまだ終わってねえが、上手くいけば火星は今よりずっと潤う。俺たちにとっても追い風だ」
ここまでは、今更話すまでもない前提である。
オルガはそこで一呼吸置いてから、再び口を開いた。
「そして、少なくともこの先数年間、火星の治安は確実に悪くなる」
この予測は、地球を発つ前に蒔苗から得た情報に基づくものだ。
皮肉な話だが、これまではギャラルホルンが圧政を敷いていたがために、火星に蔓延るならず者たちも押さえ込まれていた側面があった。
だが今や、抑圧者たるギャラルホルンは弱体化し、力の空隙が生まれた。燻っていた数多の組織は、この機会に行動を起こすだろう。
それこそ、鉄華団の姿を見て、後に続こうとする者たちも現れるに違いない。
また、晴れて火星にハーフメタル利権がもたらされれば、それを巡る縄張り争いが激化することも予想される。地球で詰めの交渉にあたっているクーデリアもまた、向き合い続けてきた問題だ。
「幸い、俺たちは荒事には慣れてる。当面は護衛や警備の仕事、海賊やギャングどもを狩った報酬や、そんときに出る鹵獲品の転売なんかで食っていけるだろう──だが、これだけじゃ、いずれやってけなくなる。それが俺とビスケットの結論だ」
「……何でだ?」
この場にいる団員たちの、ほぼ全員が抱いたであろう疑問。
それを代弁したのは、意外にもチャドだった。
「変な言い方かもしれないけど、ドンパチが増えれば、その分俺たちの仕事も、稼ぎだって増えるんじゃないか?」
確かに、チャドの言うことにも一理ある。
しかし、オルガは小さくかぶりを振った。
「そいつは『勝ち続けられたら』の話だな。うっかり負けちまったら、そこで終わりだ──まあ、もちろん負ける気は無えが、勝てても被害は出るし弾も減る。長い目で見りゃ、割に合わねえ」
「それに、ならず者だって、無限に湧くわけじゃないからね」
ビスケットが、オルガの言葉を継いで補足した。
高額な鹵獲品や懸賞金が期待できる相手は、その分だけ手強く、こちらの損害も大きくなる。逆に、取るに足らない弱小組織なら、見返りも雀の涙ほど。収入と損失を差し引きして、十分な利益を挙げられる
「そっか……勝ち続けても、いつかは稼ぎにならなくなる、ってことか」
「中には俺たちと、商売仲間になれる奴らもいるはずだ。そういう連中とは、できるだけ良い関係を築いていきたい」
オルガの言葉に、チャドも、他の団員たちも納得した様子で頷いた。
図らずも良い質問を投げてくれたチャドに、オルガは心の中で礼を言った。
「もう一つ、アーブラウから俺たちを軍事顧問として雇いたいって話も来てるが……こいつは一旦保留にしてある」
駆け出しの鉄華団にとっては喉から手が出るほど欲しい、安定した収入源となりうる仕事。だが、火星での基礎固めも未だ途上である鉄華団が、果たして地球まで手が回るかどうか。
この件については火星に戻ってから、改めて結論を出すつもりだ。
「──で、ここからが本題だが」
オルガは僅かに前屈みになって、この空間にいる、一人一人の顔を見渡した。
「俺は鉄華団を、いずれは真っ当な仕事だけで食っていける組織にしたいと思ってる。初仕事が終わった今なら、色んなことを試すチャンスだ。荒事以外で今の
静けさに覆われた室内で。
「──これから稼ぐってんなら」
真っ先に手を挙げたのは、シノだった。
「やっぱよお、ハーフメタルだろ!」
「ああ、俺もそいつに一票だ。ハーフメタル採掘は、間違いなくデカい商売になる」
同調したのはユージンだ。
火星の自主独立のために、クーデリアがもたらしてくれた果実。いや、正確にはまだだが、彼女は今なおその実現に向けて尽力し続けている。共に戦った者としても、一丁噛みしない手は無いだろう。
「ただ……」
ユージンの声のトーンが下がった。
彼の懸念は、オルガにも察せられた。
すなわち、費用だ。
大掛かりな採掘を行うためには、相応の設備が必要だ。それらを一から揃えるとなれば、かなりの出費を覚悟しなければならない。
そして、初仕事を見事成功させたとはいえ、鉄華団の懐事情が厳しいことに変わりはない。
「石運ぶとかならMWでもどうにかなるとして……掘るための機械を新しく買うってなると、どんだけ金が掛かるか……」
そう言って眉を落としたユージンに対し、シノが待ってましたとばかりに口を開いた。
「なら、とっておきの名案があるぜ──MSにスコップでもツルハシでも持たせて掘らせる! どうよ!」
「…………それだあ!」
ユージンが両手でシノを指差した。
シノの提案は突拍子もないように聞こえるが、実のところ、全く的外れというわけでもない。MSの手に工具を持たせて、作業用の重機として運用している例は幾つもある。例えば、コロニーでは外壁の補修などに、MSを使っている。
MSが採掘作業にどこまで使えるかはわからないが、少なくとも、検討してみる価値はあるだろう。
今の時点で、一つ気になることがあるとすれば。
「いや、名案だとは思うけど……良いのか、それで?」
ダンテが微妙な表情で、シノ以外のMSパイロット二人に尋ねた。
要は、自身の愛機が炭鉱夫になっている姿を受け入れられるか、ということを言いたいのだろう。
オルガは頭の中で、〈バルバトス〉がメイスの代わりに、巨大なツルハシを振るっている姿を想像した。
「……俺は構わん」
「せっかくMSがあるんだし、遊ばせとくより良いと思う」
「そ、そうか……」
昭弘と三日月の同意を得て、ひとまずダンテの懸念は解決したようだ。
シノがダンテの方を向いて、ニヤリと笑った。
「んじゃダンテ、次はお前の番だぜ!」
「お、俺!? んな急に言われても!」
全く予想外だったのか、慌てながら己を指差すダンテ。
オルガはフォローを入れてやることにした。
「この際、単にやりたいことでも構わねえ。できるかどうかは後で考えりゃ良い」
「ええー……そうだなあ……」
ダンテは渋い顔で腕を組み、しばらく唸ってから、絞り出すように言った。
「……機械弄りとか、モノづくり、とかか? ほら、MSの整備だってできるんだし」
「機械弄りか……良いなあ、それ」
「悪くない」
チャドがダンテに賛同し、昭弘も頷いた。彼ら元ヒューマン・デブリ組は、どうやらモノづくりに興味があるようだ。
機械にそこまで詳しいわけではないオルガは、専門家である雪之丞の方を向いた。
「……できるのか、おやっさん?」
「機械っつっても色々あるし、流石に一から作るってのは無理だぞ? まあ、車のちょっとした修理ぐれえなら、MWの応用で何とかなるかもしれねえがな」
雪之丞の指摘を踏まえて、オルガは考えた。
火星の庶民にとって、車は買ったら壊れるまで使い倒すのが基本だ。町外れに足を運べば、動いているのが不思議に思えるような、錆だらけのオンボロ車を見かけることも珍しくない。
買い替えられるだけの金はないが、それより安い修理費なら払える──そうした人々の需要に上手くマッチすれば、儲けを出すこともできるだろう。
まずは小さなことから始めて、少しずつ広げていけばいい。
「三日月は何か、やりたいことはある?」
皆の意見に耳を傾けていた三日月に、ビスケットが話を振った。
それについては、オルガも気になるところだ。三日月が鉄華団の、そして自身の将来について、何を思っているのか。
オルガが見つめる先で、三日月は表情こそ変えなかったが、まるで空を眺めるかのように、会議室の天井を見上げながら答えた。
「俺は、農場かな」
そういえば、火星にいた頃、三日月が語っていた。いつの日か自分の農場を持って、野菜を育ててみたい、と。
懐かしい記憶を思い出して、オルガは頬を緩めた。
そして、オルガは三日月の提案を受けて、密かに温めていた構想を口にした。
「農場か。なら、桜農園と一緒にやるってのはどうだ?」
桜農園。ビスケットの祖母である、桜・プレッツェルが経営している農場。
つまりはビスケットの実家である。
「えっ? それは──」
「良いね。桜ちゃんも喜ぶと思う」
驚きを露わにしたビスケットとは対照的に、三日月はすぐに頷いた。
「駄目か、ビスケット?」
「ああ、いや、どこかと提携するのは良いと思うけど、別にうちじゃなくても──」
オルガは戸惑うビスケットに向かって、小さく笑いながら片目を閉じた。
「俺たちも桜婆ちゃんには、昔から世話になってるからな。恩返しだと思ってくれりゃいい──な?」
オルガがそう言うと、ビスケットは照れ笑いを隠すように、帽子を深く被り直した。
その後も団員たちから、様々な意見が出された。地味ながらもやれそうだと思える案から、思わずツッコミを入れたくなるような素っ頓狂な案まで。
それらは全て、ビスケットの手の中にある、タブレット端末に書き留められている。
実現の可能性はひとまず脇に置いて、皆で叩き台を作ることが、この会議の目的だ。
「さてと、他はどうだ?」
流石にそろそろ、意見も出尽す頃合いか。
オルガがそう思っていると、視界の端に、控えめに掲げられた右手が映った。
「……では、私からよろしいですか?」
声の主は、これまで聞き役に徹していたメリビットだ。
「新規事業というよりは、組織作りの観点での話になりますが……」
「構わねえ」
まともな社会経験に乏しいオルガたちにとって、企業務めの経験があるメリビットの提言は、有益かつ貴重だ。
ときに彼女の小言を口うるさく感じることもある反面、その事実については、オルガも理解していた。
「団長さんもおっしゃられた通り、先の依頼が成功したことで、鉄華団の事業規模は大幅に拡大するでしょう。また、評判の広まりにより、入団希望者も多数に上ることが見込まれます」
やはりと言うべきか、メリビットの説明は理路整然としていて、声も聞き取りやすい。
皆の注目が、メリビットに集まっている。
「その際に問題になるのは、膨張した団の管理運営。言い換えれば、鉄華団そのものを維持し、動かすための人材です。特に、事務や経理を担当する人員の不足は──はっきり申し上げて、危機的状況にあると言えます」
言われてみれば、盲点だった。新事業の開拓にばかり気を取られて、組織の体制改善については、おざなりになっていた。
相変わらず痛い所を突いてくるなと、オルガは小さく唸った。
「ですから、ある程度の時間とコストを費やしてでも、事務や経理を担う人材の育成に、力を入れるべきかと。その……私個人の力にも、限界はあるので……」
「メリビットさん、今ほとんど
最後の方は目の光が消えかけていたメリビットに対し、ビスケットが申し訳なさそうに苦笑した。
現在火星で留守を預かってくれている、会計担当のデクスター・キュラスターを含めても
「人手が足りないなら、それこそ他所から集めるんじゃ駄目なのか?」
ダンテの疑問には、メリビットの隣に座る雪之丞が答えた。
「最悪そうするしかねえだろうが、財布を人任せにすんのはやめといた方が良いな。金の流れってのは、見る奴が見りゃ色んなことがわかるもんだ。そいつを任せるってのは、
雪之丞に今更言われるまでもない。
鉄華団を立ち上げる前、大人たちに散々虐げられていたオルガたちは、その下劣さと恐ろしさを、まさに身をもって実感している。
「けどよお。俺たち金勘定どころか、読み書きだって怪しいぜ?」
シノの指摘は、悲しいが事実だ。
団員たちはビスケットのような例外を除いて、そのほとんどが孤児であり、過去にまともな教育を受けてこなかったため、文字の読み書きさえままならぬ者も少なくない。最近はクーデリアの『授業』によって改善の兆しもあるが、その取り組みもまだ始まったばかりだ。
しかし、メリビットはそのことも承知の上だったらしい。子供を見守るような暖かい眼差しをシノに向けながら、力強く言い切った。
「もちろん、すぐにとはいかないでしょうが、皆さんは若くて吸収力がありますから。時間をかければ、きっとできるようになりますよ。私も、そのためのサポートは惜しまないつもりです」
そういうもんかあ、と呟いたシノを見ながら、オルガは休暇中に目にした、メリビットのある行動を思い出した。
「……なあ、もしかして、こないだ計算やら何やらのテキストをやたら発注してたのって」
「ええ。折角時間がありますから、帰りの船の中で、勉強会を開いてはどうかと」
即答だった。
目が、本気だ。
「あー……最初は優しめで頼む」
オルガの返答に、うげえ、と何人かが顔を歪めた。
彼らの気持ちもわかるが、避けて通るわけにもいかない。教育の重要さはオルガもわかっているし、いずれやらなければいけないとも思っていた。団員たちには苦労をかけることになるが、これも鉄華団のために必要なことだ──と、オルガは自分に言い含めた。
口を挟んだついでに、オルガは以前から、心に決めていたことを述べた。
「あとは……医者だな。俺たちはもう使い捨ての道具なんかじゃねえ。怪我や病気のときに治せる奴がいる──せめて、船医の一人ぐらいは欲しい」
行きの道中で、宇宙海賊の襲撃を受け、タカキが重傷を負ったことがあった。
元より、怪我をしたり病気になっても、まともな治療など受けさせてもらえなかったオルガたち。溢れ出る血を前にどうすれば良いのかわからず、ただ右往左往するばかりだった。
幸いそのときは、メリビットの適切な処置のお陰で事なきを得たものの、オルガは彼女から、手厳しく叱責を受けたのだ。
船医も乗せずに惑星間航行など、団長失格である──そのときの悔しさを、オルガは胸にしっかりと刻み込んでいた。
「こればっかりは、俺たちでって訳にはいかねえから、他所から雇うしかねえが」
「ま、そいつは俺の方でも、伝手を当たってみるか」
雪之丞の右足首が、曲げ伸ばしされて金属的な音を立てる。
雪之丞の両足は、膝から下が機械式の義足だ。彼曰く、過去に戦闘で負傷し、両足を切断する羽目になったらしい。今でも定期的に義足のメンテナンスを受けているというから、知己の医者がいるのだろう。
「頼む。──さて、他には何かあるか?」
オルガは更に尋ねたが、手を挙げる者はいなかった。おおよそ、意見は出尽くしたとみて良いだろう。
壁の時計に目を遣れば、会議が始まってから、既に一時間以上が経っていた。
「……まあ、叩き台としては、こんなもんか。どうだ、ビスケット?」
「うん、ざっとこんなとこだね。細かい部分は追々詰めるとして──」
「なあ──ちょっと、良いか?」
唐突に割り込んだ声。
この場にいる全員の顔が、一斉に声の主であるユージンへと向けられた。
「悪い。けど、せっかく集まってるから、言っときたいことがあってな……」
ユージンは臍の前で手を組んで、オルガや他の皆と目を合わせるようにしながら、訥々と語り始めた。
「初仕事は、上手くいったけどよ……俺たち、何つうか……色々と、オルガに頼りすぎだったんじゃねえか、って思ってな」
部屋の中が、水を打ったように静まり返る。
そんなことはない──と、口から飛び出そうになった反論を、オルガはぐっと押し留めて、ユージンの言葉に耳を傾けた。
「宇宙に残って指揮取ってたとき、すっげえ緊張したし……正直、ビビった。俺がミスったら、こいつらみんな死ぬんだって、ずっと考えちまって──なあ、オルガ」
ユージンが、オルガに体を向けた。
「お前、いつも、あんな気持ちで──あんなに重てえモン背負いながら、戦ってたのか?」
オルガはどう返すべきか躊躇った。
自分は鉄華団を率いる団長だ。だから、仲間の前では、頼れる団長でなければいけない。弱音を吐いてはならない。そう自らに課してきた。
けれども、その仲間に対して己を偽るのは、果たして、筋を通していると言えるのか──そう思ったとき、オルガの両唇は、勝手に言葉を紡いでいた。
「…………まあ、プレッシャー感じてねえ、つったら嘘になるな……最後の方は、ちょっと、おかしくなってたかもしれねえ」
オルガの視野の端で、チャドとダンテが顔を見合わせた。
地球への降下の際は、二人とも〈イサリビ〉の乗組員として、ユージンと共に宇宙に残っていた。オルガの代理として指揮を執っていたユージンを、間近で見てきただけに、思うところがあるのだろう。
「他の奴らだって、頑張ってんのはわかってんだ。けど……これからもっとデカくなろうってんなら、このままじゃ足りねえ。オルガ抜きでもやれるってぐらい、俺たちみんなで強くならねえと……!」
俯いたユージンの手に、一段と力が籠るのがわかった。
沈黙に包まれる会議室。
数秒経って、ユージンはゆっくりと顔を上げ。
──彼自身に向けられた視線、そこに宿る感情に気づいたのか、今更ながら狼狽え始めた。
「……な、なんだよ、お前ら」
困惑しているユージンとは対照的に、オルガには団員たちの思いが、手に取るようにわかった。
彼らが抱く感情は、反発の類ではない。
むしろ──皆、感心しているのだ。
「いやあ……ユージンがすげえマトモなこと言ってるから、びっくりしちまった」
「うるせえ! 俺が普段はマトモじゃねえみてえじゃねえか!」
冗談混じりに述べたシノと、即座に噛みついたユージン。
ある意味いつも通りの二人を眺めながら、オルガは口元を綻ばせた。
「みんなで強くなる、か」
団長としての重圧の中で、大事なことを忘れかけていたのかもしれない。
団員たちは使い捨ての道具でも、ただオルガに導かれるだけの存在でもない。皆がそれぞれ自分なりに考え、行動する、意志を持った一人の人間。
彼らと一緒なら、鉄華団は前に進み続けられる。
オルガは立ち上がり、力一杯、拳を振り上げた。
「そうだな! 俺たちはこれから、どんどんデカくなる! そんでもって、俺が楽できるぐらい、強くなってくれよ、お前ら!」
応、と部屋中から上がった声を聞き届けて、オルガは会議終了を宣言した。
緊張から解放され、普段の賑やかさが戻ってきた会議室の中で、ふと、ユージンと目が合った。
腕を組んで頷いたユージンに、オルガは獰猛な笑顔を返した。
「──けどなあユージン、さっきの俺抜きでってのは、ちょっと頂けねえな?」
「いや、あれは言葉の綾ってやつで──!」
ユージンが逃走しようとしたので、オルガはすかさず捕まえて、ヘッドロックをかましてやった。
「帰路編」はこれにて完結です。
次回より、いよいよ二期編に突入します。