ワタクシがメス堕ちなんてする訳ないですの!   作:ペンギン3

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皆様のお陰でモチベが回復して来ましたので、のんびりながら更新再開いたします!


第十話 条件反射

 無事に魔法実習を乗り切り、頑張りすぎた旦那様が体調を崩して療養生活に入ってから数日。

 

 無くなっていた魔力が戻ってきて、真っ白だった顔色もやっと良くなってきた旦那さまは、相も変わらぬ僕っ子萌でしたの。

 

「ですわ~、ですわ~、なのですわ~」

 

「ですわに戻ってる……」

 

「僕は期間限定のお父さんで、ラングセランの令嬢は勿論ワタクシの方なのですわ~」

 

 ジトーっとした目でワタクシを見ている旦那さまは、僕っ子禁断症状を起こしておりました。

 父恋しい年頃なのでしょうが、残念ながら父離れも必要なことなのです。

 

「何で一々父親振るんだ。大体、君の場合は父じゃなくて母だと思うけど」

 

「……筋肉ではなく、お乳が良いと言うことですの?」

 

 旦那さまは、もしかするとお義母様が恋しいのかもしれませんでした。

 

 思えば、お義父様のことを話す時もあまり良い顔されておりませんでしたし、唯一親しく思っているのは亡くなったお義母様のみ、ということなのかもしれません。

 

 ……ワタクシ、人肌脱いで差し上げた方が良いのでしょうか?

 

「ワタクシのお乳、吸われますか? 目を潰してからなら、多分受け入れられますわ」

 

「代償が重すぎるし、そもそもそんなことは一言すら言ってないっ」

 

 ちょっと恥ずかしいけど、旦那様のためならばと思い提案したワタクシのお胸は、旦那様にとってはお胸に非ずとのことで却下されてしまいましたわ。

 

 ……胸筋を鍛えても、おっぱいは大きくなりませんでしたの。仕方のないことですわよね?

 

「旦那様、ワタクシのお父様はとても立派な胸筋をしていますの。ですので、ワタクシでは無理でも、何とかなっちゃいますわ。ガッカリなさらずに楽しみにしておいてくださいませ」

 

「何で君の父上からお乳を貰うことになってるんだっ。出るわけないだろっ!」

 

「牧場の牛さん達からは、お父様の身体はおいしいと大人気です」

 

 お父様が牛さん牧場に訪れると、オスやメスを問わず、牛さんが大挙してお父様を囲みますの。そのまま、ぺろぺろと全身舐められてしまうのですわ。

 

 特に夏場、牛さんも塩分不足なのですわね。

 

「胸の話ですらなくなってる……」

 

「いいえ、お胸のお話ですわ。お父様のお乳は、ママの味ではなく塩味らしいですの」

 

 恐らく、旦那様はおっぱいよりも雄っぱいが好きなのですね。男らしくて、とっても素敵だと思いますわ。

 

「ですので、お父様とお会いした時には、是非お父を吸って甘えてくださいまし。新しい家族が増えて喜ぶと思いますし、きっとお父様も旦那様を想って差し出してくださいますわ」

 

「何で君は、執拗に自分の父の乳を吸わせようとするんだ!」

 

「親子の盃ですわ!」

 

「盃が胸板の訳ないだろ、いい加減にしてくれ!!」

 

 旦那様は、学校に復帰初日からとっても元気でした。久しぶりに登校できる喜びで、ウキウキが抑えられませんのね。気持ち、わかりますわ。

 

 ワタクシもワクワクするタイプですし、お兄様もお祭り前日にはムキムキが抑えられなくなってますもの。やっぱり、テンション上がるとそうなりますわよね。

 

 ですが、旦那様。

 病み上がりでそんなにはしゃぐと、また体調を崩しますわよ?

 

「旦那様、復帰できて嬉しいのは分かりますが、もう少し落ち着いてくださいまし」

 

 旦那様は現状、筋肉が足りず、されども鍛えられる状況ではなく、お姫様並みにか弱い存在です。ですので、沢山の労りが必要な状態ですの。

 

 ……別に、侮ってる訳じゃないよ?

 魔法実習で頑張ってた旦那様、男の子の意地があって、すごく格好良かったし。

 

 でも、それと身体の状態は別だから。

 旦那様にまた何かあったらって思うと……心配、しちゃう。

 

 僕が付いてながら、この前の特訓では無理させちゃってたから。頑張りたい時は止められないけど、今度からは旦那様をもっと支えられる様にならないとだし!

 

 そんな僕の決意を感じ取ってくれたのか、旦那様はプルプルと震えてくれていた。まるでお兄様が、感動のあまり筋肉を躍動させてる時みたいなプルプル。

 

 思わずにっこりしちゃうと、旦那様は何故か突発的に叫んでいた。

 

「き、君のせいだろーーーっ!!」

 

「ですわーーーーっ!!」

 

 旦那様の叫びを合わせて、ワタクシもシャウト致しましたの。

 

 大丈夫ですわ、旦那様。

 ワタクシ、理解がありますの。

 

 ワタクシが大好きお父さんすぎて、そうなってしまっているのですわよね? 全部受け止めて差し上げますので、沢山思いを吐き出してくださいましね!

 

 

 

 

 

「旦那様ったら、ワタクシのこと好きすぎでしてぇ」

 

「まぁ、そうでしたの」

 

「お互いに隔たりがない関係、素敵です!」

 

 お昼休み、旦那様がファザコンでワタクシ好き過ぎることを、イザベラさんとステファニーさんに吐き出していましたの。

 

 旦那様が可愛らしすぎて、自慢せずにはいられなかったとも言いますわ。世の親バカになる人たちの気持ち、分かってきちゃいましたの!

 

「ツンケンしてますけれど頑張り屋様でぇ、一生懸命努力できる方でぇ、なのに別にそんなことないけどってソッポ向くのが可愛いすぎましてぇ!」

 

「うふふ、カトリーヌ様ったらベタ惚れなのですわね」

 

「ステファニーさんったら、ワタクシを好き過ぎるのは旦那様の方ですわ!」

 

 確かにワタクシ、旦那様のこと大好きですけれど、それはこう……家族愛的なものでして。父親が割りの側面が強いものです。なので訂正すると、二人揃ってクスッと笑って。

 

「カトリーヌ様も、お可愛らしいですわね」

 

「はい、私も今、胸にキュンって来ました!」

 

 なんか、困った思い込みをなされているみたいでしたの。

 

「お二人とも、からかわないでくださいまし!」

 

 この状況では流石に、ワタクシの親心が恋心と勘違いされていると察することができましたわ。

 

 むぅ、婚約者的にはそう思われて悪いことはないのですが……。ワタクシの僕の部分が、僕お父さんだから! と力強く主張しておりましたの。

 

 家族愛ですわね、家族愛。

 

「でも、本当に良かったです。あの噂は、やっぱり噂に過ぎなかったんですね!」

 

「……ウワサ?」

 

「い、いけませんわ、イザベラさん!」

 

「あっ」

 

 イザベラさんがにこやかに告げた言葉に、ステファニーさんが慌てて止めに入って。イザベラさんも、ハッとした顔をしてからワタクシの方を確かめて、小首をかしげると少し気まずそうなお顔をしましたの。

 

 ……何か、またワタクシ関連で、ありもしない流言飛語が飛び交っているのでしょうか? 前はワタクシが授業を乗っ取って、参加生徒全員を手下にするつもりなんだって噂でしたわね。

 

 ……き、気になりますわね。

 

「イザベラさん、ちょぉっとよろしいかしら?」

 

「ぴぃっ、カトリーヌ様が捕食者の笑顔を浮かべています!」

 

「コワクナイデスワヨー」

 

 大切なお友達ですので、イザベラさんの手を優しく握ります。お友達でなかったのなら、肩を掴んでいたかもしれませんでした。

 

「ふ、ふふ、私、お先に戻っていますわね?」

 

「ひ、一人で逃げる気ですか、ステファニーさん!」

 

「逃げるだなんて、そんな……。本日のユニコーン係は私ですので」

 

「嘘つき!!」

 

 颯爽と席を立ったステファニーさんは、野うさぎを思わせる足取りでこの場を後にしました。まるで捕食者にでも出くわした、そんな素早さでしたわ。失礼ですわね?

 

 残されたイザベラさんは、プルプルと震えながらブロンドのショートヘアを揺らしておりました。まるで捕食者にでも捕らわれたかのような、そんな震え方でしたわ。

 

 ……ワタクシたち、お友達ですわよね?

 

「コワクナイデスワヨー?」

 

「お、お許しを、カトリーヌ様! この前はカトリーヌ様が揉み消してくださいましたが、こんな皆様に見られる場所でまた粗相をしてしまったら、私今度こそ終わってしまいます!」

 

「一体何の話ですの!?」

 

 イザベラさんはどうしてか涙目で、ワタクシに膀胱の危機を訴えてきたのでした。本当になんで?

 

「お、お花を摘みに行きたいと、そういうことですの?」

 

「そういうのじゃないんですぅ!」

 

「なかったのですわね」

 

 哲学的膀胱の話が始まり、尿道括約筋が突発的に不機嫌になるかもしれないという訴えを、イザベラさんは発信しておりました。このままでは、またあの時の悲劇を繰り返してしまうのかもしれません。

 

 ……もしかすると、そういう持病があるのかもしれませんわね。

 

「屋上で、お話ししましょうか?」

 

「は、はぃ……」

 

 かくなる上は、突如として不幸に見舞われた時のために、人目につかないところへと移動することにいたしましたの。

 

 イザベラさんは何かと戦うようにプルプルと震えて歩けそうにありませんでしたので、ワタクシがお姫様抱っこで屋上まで運びましたわ!

 

 

 ヒソヒソ

 

「マルクの奴が休んでいる間は大人しかったのに、急に発作を起こしたかの様に元に戻ったな」

 

「信じられないことだが、昨日まではしおらしくなっていたのか?」

 

「驚いたことにな」

 

「……ラングセランも女だったのか」

 

「多分、な」

 

「あぁ、多分だな、多分」

 

 

 ヒソヒソ

 

「な、なんでイザベラ様、カトリーヌ様にお姫様抱っこされてるの?」

 

「分からないけど、イザベラ様、なんか震えてるねー」

 

「あっ、ホントだね……。もしかして、カトリーヌ様はイザベラ様をダンベルに?」

 

「分からないかなー、それは」

 

「……村で一番賢かったアンヌでも、分かんないんだ」

 

「カトリーヌ様のことは、全然分かんないよ。だから、見てて面白いんだけどねー」

 

「お、面白いの、あれ?」

 

「少なくとも、酷い人じゃないっていうことは、分かり始めたからかな」

 

「でも、すごく変……」

 

「それはそう」

 

 

 

 

 

 そうして、ワタクシたちは屋上までやって来ました。イザベラさんの膀胱は、鍛えが入っていたのか全然お漏らしなんて致しておりませんでしたの。

 

 ……正直、助かりましたわ。

 今回ばかりは、良い言い訳が思いつきませんでしたから。

 

 頑張って庇おうにも、"ワタクシ、エクリン汗腺が発達しすぎて、ドバドバ汗が出てしまいますの! これが筋トレの成果ですわ!"なんて無茶に無茶を重ねた言い訳をするしかなくなってましたの。

 

 実際はそんなことはありませんし、手からおしっこなんて溢れだしませんから、皆様におかれましては心置きなく筋トレしてくださいましね?

 

「それで、イザベラさん」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

 青空の下、屋上は私たち二人だけでしたの(どうしてか、ワタクシが姿を見せた瞬間、屋上にいた生徒たちは皆退去しました、不思議ですわね?)。

 

 なのに、イザベラさんは未だに着信中のスマホみたいに震えていたのですわ。

 ……お友達、ですのに。

 

「怖がらないでくださいな、少し寂しくなりますわ」

 

 いくら鈍いワタクシでも、イザベラさんが振動で筋肉を鍛えているんだとは思いませんでした。お話しする様になって、イザベラさんがそんなことをする人でないと分かっています。

 

 ……怯えられてるというのが、伝わって来てきますから。

 

「す、すみません! でも、違うんです!!」

 

 でも、イザベラさんは思いっきり頭を振って、それを否定しました。そうではないと、怯えてはいないんだと。

 

「でしたら、どうしてそんなに、震えておられるのですの?」

 

「これは……」

 

 ちょっと逡巡してから、イザベラさんは一歩ワタクシから距離を取りました。反射的に、その距離を詰めようとしてところで……。

 

「カトリーヌ様、待ってください!」

 

「ワン! ですわ」

 

 待てと言われて、ピタッと静止しました。

 ワタクシは犬ではございませんが、待ては出来ましたので。

 

 すぅはぁと息を整えてから、イザベラさんはその距離のまま、理由を語り始めたのです。

 

「カトリーヌ様が何かをお聞きになる際、こう……ぐいっと距離を詰められますよね?」

 

「はい」

 

 事実ですの。

 主に距離感10cmくらいですわ。

 

「その勢いが凄すぎて、ビクッてしちゃうんです!」

 

「で、ですわ?」

 

 そ、そうなの?

 

「あと、カトリーヌ様の勢いで、あの日のことを思い出して身体が……」

 

「身体が?」

 

 イザベラさんは頬を赤らめ、逡巡しているかの様に小さくうめいて。それでも、何とか出したか細い声は……。

 

「──身体が、勝手にお漏らししなきゃって、そう思い込んじゃうんですよぉ」

 

「ですわぁ!?」

 

 泣き出してしまいそうな告白をして、イザベラさんはその場で崩れ落ちそうになりました。

 

 慌てて支えに入って、その背中をポンポンと撫でた。消えない傷を膀胱に抱えてしまった、そんなイザベラさんを慰めるために。

 

「大丈夫ですわ、イザベラさん。膀胱はお友達ですの、よく相談すれば言うことを聞いてくれるはずですわ」

 

「はぃ……」

 

 まさかの事態、イザベラさんのために僕も無理に聞き出すとか、そういったことを我慢する必要があるのかもしれなかった。

 

 ……僕のせいでそうなってしまったとか、そんなことはないよね? た、たまたま条件が重なって、そうなってしまっただけだよね?

 

 クスンクスンとしているイザベラさんを、お昼休みの終わり間際まで、僕は優しく背中をポンポンし続けたのだった。

 

 

 

「ご、ご迷惑をお掛けしました、カトリーヌ様……」

 

「ワタクシたち、お友達ですわ。迷惑だなんて、全く掛かっていませんの」

 

「そう、ですね。ふふ、カトリーヌ様、ありがとうございます!」

 

 そうして、もう休み時間がない中で、ようやくイザベラさんは落ち着いてくれた。正直ホッとした、何の膀胱事件も起こらず本当に良かったよ!

 

「それでカトリーヌ様、あの、噂話のことなのですが……」

 

「はいな」

 

 正直、イザベラさんが大変になってたことで、頭からすっ飛んでしまってた。けど、簡単に説明してもらえるのなら、さわりだけでも聞いておこうかなって気持ちで、耳を傾けて。

 

「──マルク様が、他の女性と懇意にしているという噂なんです」

 

「……ほぇ?」

 

 ただ、伝えられた言葉がうまく処理できなくて、こてんと首が45度くらい傾いてしまった。

 

 旦那様が、僕以外の女の子と、仲良しこよし筋肉談合してるって?

 

 いやいやいや、いやいやいやいや。

 旦那様、病弱だし草食系なんだから、ありえない話だよ!

 

「い、イザベラさんったら、いやですわ!」

 

「そ、そうですよね、やっぱりウワサはウワサで…………」

 

 急に、イザベラさんのお口が止まった。

 その視線が、下の中庭の方へと固定されてる。

 

 何かなって思って、同じ方向を見てみると……。

 

「だ、旦那、様?」

 

 ──旦那様が、女子生徒相手に朗らかな笑みを浮かべながら、楽しげに歩いてた。

 

 女の子の方が持っているのは、多分バスケット。

 一緒にお昼、食べてたんだ……。

 

「で、ですのーーーーーっ!!!」

 

「か、カトリーヌ様、お気を確かにーーっ!」

 

 僕は咄嗟に、ですわの咆哮を奏でてしまっていた。

 ……旦那様、ちょぉっとお話しよっか?

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