ワタクシがメス堕ちなんてする訳ないですの!   作:ペンギン3

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第七話 魔法の代償

 ワタクシと旦那さまは、あれから一夜を明かしましたの。

 

 ……こんな言い方だと、なんかえっちですわね?

 本当のところは、一晩中魔法の特訓をしていたのですわ。

 

 

『旦那さまは、イメージがよろしくなくて魔力が解けてしまうのですの』

 

『そう言われても……』

 

『ギュッと魔力を固める感覚からですわ』

 

『ギュッと……』

 

『こう、腹筋を触るイメージで』

 

『……余計にわからないんだけど』

 

『仕方ありませんわね、旦那さまだけ特別ですわよ?』

 

『何をって、なっ、何脱いでるの!?』

 

『婚約者割で腹筋触り放題キャンペーンですの』

 

『意味わからないし、急に脱いじゃダメだろっ! あと、きみ腹筋微塵も割れてないし!』

 

『そうなんですの。ワタクシのお腹、微塵もバキバキになりませんでしたわ……』

 

『今までにないくらい悲しい顔をしないでっ』

 

『……責任を取って、ワタクシのお腹触っていただけますの?』

 

『は?』

 

『えいっ』

 

『あっ、ちょっと! 無理やり手を掴むのは反則っ! ……あれ、思ってたより固い?』

 

『ワタクシ、皮下脂肪がだいたい筋肉ですの』

 

 旦那さまに、ワタクシの腹筋を触ってもらって魔力の固め方を学んでもらったり。

 

 

『魔力の圧縮に成功しましたわ! 流石ですの、旦那さま!』

 

『なんで成功しちゃったの……』

 

『えろの力は偉大ですわね?』

 

『い、言いがかりだ!』

 

『あとは固めた魔力をポンって変換するだけですわね!』

 

『……はぁ。それで、どんなイメージがいいかな』

 

『こう、脂肪を燃焼するイメージで』

 

『また訳わかんないこと言ってるし』

 

『それで分からないのでしたら……一説によると、お乳を触る感覚とお勃起する感覚を一緒に味わうと、違いが分かって変換しやすいらしいですわよ?』

 

『意味不明なこと言うなっ!』

 

『……それは、自分で触らしてなんて言えないから、ワタクシからお乳を献上して欲しいという意味ですの?』

 

『キレそう』

 

『……痔はお辛いですわよね』

 

『血管がキレそうなんだっ』

 

 そして、旦那さまは男のプライド的なものがあるらしく、ワタクシのおっぱいを触らせてくださいとは最後まで言えませんでしたの。

 

 ……正直、助かりましたわ。

 

 もし触りたいと言われていたら、旦那さまをEDにしてからでないと触らせられなかったでしょうから。

 

 ちゃんと我慢できた旦那さまには、代わりにお乳と似た感触だと定評のある二の腕を触っていただきましたの。

 

『どうですわ?』

 

『……なんで僕、こんなことしてるんだろって、心が虚無になっていってる』

 

『脱法お乳じゃなくて、本物じゃないと許せないって仰りたいですの?』

 

『なんで君にセクハラしなきゃダメなんだって、頭がおかしくなりそうなんだよっ!』

 

『旦那さま、真面目に揉んでくださいまし。これは魔法の特訓なのですわ。早く気持ち良くなって勃起してくださいまし。ワタクシ、人の勃起を笑う趣味は持っていませんの』

 

『するわけがないんだっ!』

 

 勃起しても、男の子だもんね? で済ませるつもりだったのですが、旦那さまは微塵も大きくする気配は見せませんでしたの。

 

 ……ワタクシ、やっぱり父性が大きすぎて、女の子としての魅力が足りてないのですわね。

 

『クッ、ワタクシが雄々しいばかりに、旦那さまを勃起させられなかったのですわね。誠に遺憾ですわ!』

 

『うるさい!』

 

 こうして特訓しているうちに、また旦那さまはツンツンとしてきましたが……。

 

『旦那さま、かくなる上はワタクシのパンツをお使いいただき、何とか──』

 

『ぼっ、僕の男性機能に拘りすぎてるの、意味分かんないよっ!』

 

『勃起したら、旦那さまのお一物様は逞しくなられるでしょう? 実質ムキムキですの、良いことですわ』

 

『──んなわけ、ないだろっ!!』

 

『ふぇ!?』

 

 旦那さまが叫ぶのと同時に、その手元で揺蕩っていた魔力が、別の物質……炎へと変換された。

 

 旦那さま、やったね!

 

『おめでとうございます、旦那さま! 遂に勃起立いただけたのですわね!』

 

『違うよ!? 何というか、ふざけんなって気持ちが限界まで来たら……なんか出来てた』

 

『どういうことですわ?』

 

『君にパンチして良いかなって思ったら、うまく行った』

 

『……パンチラではなく?』

 

 ワタクシの言葉に、旦那さまはクソザコパンチで抗議をしてきました。ポカポカポカって擬音が、あまりに可愛らしい拳でしたの。

 

『何でっ、今日のっ、君はっ! こんなにもセクハラ大魔神なんだ!』

 

『深夜テンションですわ!』

 

 そういう訳で、旦那さまはえっちな気持ちが天元突破した結果、無事に魔法を炎へと変換できたのですの!

 

 これで明日の魔法実習、勝ったも同然ですわね!

 おほほ、おーほっほっほっほ!

 

 

 時は既に、太陽が上り詰めつつあるタイミングでの習得でしたわ。

 

 

 

 

 

 結局、ワタクシたちは一睡もしなかったのですわ。

 最早、寮に戻る時間すらもなかったのです。

 

 

 ひそひそ

 

「ね、ねぇ、なんでカトリーヌ様、マルク様をお姫様抱っこしながら登校してるの?」

 

「……分かりませんが、目元にクマが浮かんでますね」

 

「二人って、確か婚約者だったよね? ……も、もしかして、そういうことかな!?」

 

「多分、違います」

 

「なんで?」

 

「カトリーヌ様の足取り、カクカクしておられないでしょう?」

 

「あっ、そっか。そういうことしちゃったら、女の子は生まれたての子鹿みたいになるって聞いたことあるもんね。……でも、カトリーヌ様だよ?」

 

「カトリーヌ様だからこそ、です」

 

「どゆこと?」

 

「……声量の大きい方なので、ことに及べば寮中にそのお声が聞こえるはずだからです」

 

「な、なるほど。……じゃあ、あれは?」

 

「マルク様を、トレーニング用具として用いている、のですか?」

 

「えぇ……」

 

 

 ひそひそ

 

「見てみろ。あのゴリラ女、枯れ枝マルクを抱き抱えてるぞ」

 

「……遂にやってしまったのか、こんなことになって残念だ」

 

「も、もしかしてあれ、死んでる、のか……?」

 

「気性の荒いラングセランと病弱なドラン、二人の間には圧倒的な筋力差がある。撫ぜただけで、背骨はへし折れるだろうな……」

 

「そうか……マルク、一度くらいは話しても良かったかもしらん」

 

「実家から、関わるなと言われてるだろう。……だか、心の中で偲ぶくらいは許されるだろう」

 

 

 ワタクシたちの登校に、周りのみんなはざわめいていましたの。

 

 ふふ、こんなにラブラブな姿を見たら、噂したくなる気持ちもわかりますわね?

 

 婚約者をお姫様抱っこしながら一緒に登校なんて、あんなに仲良しなお父様やお母様だってやったことないんですもの!

 

 これで、みんなに噂される登校が出来たってことですわね!

 

 みんなに噂されると恥ずかしいし、なんて悪魔みたいな常套句はこれで通用致しませんの!

 これから毎日、一緒に登校ですわぁ!

 

 

 

「どうして呼び出されたか、君はわかっているかね?」

 

「はい……」

 

 そうしてワタクシは、気が付けば指導課の先生に捕縛されていたのですわ。旦那さまとは、無念なことに引き剥がされてしまいましたの。

 

 悲しいですわね、まるでロミジュリですわ。

 

「では、理由を述べてみ給え」

 

「ワタクシが旦那さま…… マルク・ドラン様とラブラブな登校を行い、風紀を乱したからですわ」

 

 でも、学院は神聖な学舎。横暴だと感じても、やり過ぎると怒られるのは納得するしかありません。

 

 なのでワタクシ、殊勝に頭を下げましたの。

 なのに、帰ってきたのは大きめのため息でしたわ。……何故?

 

「全くもって違う」

 

「ほぇ?」

 

 では、いったい何だというのでしょうか?

 ワタクシ、心当たりなんて微塵も……。

 

 ……も、もしや、演習場で旦那さまにお勃起指導が、先生の耳に聞こえてしまっていたのですわ!?

 

 もしそうだとしたら、相当にまずいのですっ。

 どこをどう切り取っても、どセクハラな上に風紀を乱すどころか放火してる発言ですの!

 

 わ、ワタクシ、学院追放の危機だったりしますですの!?

 

「先生、先生っ、お聞きくださいまし! ワタクシは敬虔な筋肉のシモベにして清純で清らかな乙女でございますの。夜に何か聞こえてたとしても、それはハイピュイアか何かの鳴き声ですわ! 断じて、ワタクシの鳴き声ではありませんの!!」

 

「……確かにお前は鳥頭だが、そこまで言ってない」

 

「ワタクシが鳥頭!?」

 

 あまりに酷い誹謗中傷を受けてしまいました。教師がこんな発言をするなんて、許されても良いのでしょうか?

 

 確かに事実ですが、面と向かって言われるとワタクシも傷つくのですわよ!

 

「お前が鳥頭かどうか、なんてことは重要ではない。……気絶して白目を剥いているドランを抱きかかえて、異様な気配で登校してきたことが大事だと言っているんだっ!」

 

「あぁ、そっちですの」

 

 先生の言うことに、ちょっと安心しました。

 決して、ワタクシの淫口(えっちな言葉を口走ると言う意味ですわ!)がバレた訳ではなかったのです。

 

「今日は魔法実習ですの。ですので、マルク様がどうしても行かなくちゃと仰ったのです」

 

 昨日、というか地続きの今日でもあるのですが。お疲れ気味な旦那さまに、少しお休みしてもらおうとしたのです、最初は。

 

 ですが、旦那さまはいま意識を落とせば、一日中床の上になってしまうって主張いたしまして。

 

 ならばと、ワタクシは旦那さまをお姫様抱っこして、登校して来たのです。その間、旦那さまに休んでいただくために、首元をチョンってしたのは言うまでもないことでしたわ。

 

「お陰で人心が動揺しているのだが?」

 

「ラブラブすぎてですの?」

 

「遂に犯行に及んだかと思われてだ!」

 

「まっ」

 

 世の中には、色々邪推をなされる方が沢山ですわねー。

 

 ワタクシ、誓って淫行には及んでませんの!

 ……そんなの、恥ずかしくて今はできそうにないし。

 

「本当に、ドランに何の危害も加えていないんだな?」

 

「筋肉に誓いますわ」

 

「神に誓え」

 

「筋肉神に誓いますわ」

 

「……もう、それで良い。今度からは、マトモに登校してくるように」

 

「はいですわ」

 

 こうして、ワタクシに掛けられた冤罪は無事に晴れ、教室に戻ることができましたわ。

 

 旦那さまは、一旦保健室送りになっております。

 十分に休んで、午後の魔法実習を乗り切りましょう!

 

 

 

 

 

 そうして、ひそひそとワタクシと旦那さまのラブラブさの噂を皆さんしていたであろう午前を超えて、遂にその時は来ましたの。

 

 旦那さま、頑張っていらしたんですもの。

 ワタクシ、温かく見守っておりますの。

 だから、どうかその勇姿を目に納めさせてくださいましね?

 

「ふふ、ふふふふふっ!」

 

 おっと、いけませんわ。

 成長した旦那さまを見るのが楽しみすぎて、ワクワクが止まりませんの!

 

 

 ひそひそ

 

「おい、やべーって。ラングセランの奴、すごい笑ってるぞっ! ……やっぱりあの噂、本当だったんじゃ?」

 

「我らのクラスを手始めとし、最終的に本当に学園を乗っ取り、そこで手に入れた貴族の人脈で世界を自分の意のままに操ろうとしている。……本当だったのかっ!」

 

「俺たちは今、お国の危機に瀕している可能性が……?」

 

 

 ひそひそ

 

「ドラン、生きていたのか!」

 

「違うな、きっとあの世から戻ってきたんだ!」

 

「な、何だとっ、その根拠は!?」

 

「あいつの顔色を見てみろ、いつもよりも白い上にプルプルしてるだろ? きっと、死神に抗って戻ってるんだ!」

 

「ほ、本当だ! ドラン、まさかこんなに強い人物だったとは……」

 

「もう、枯れ枝とは呼び辛くなったな。大した奴だよ、あいつは……」

 

 

 すごく気分の良いお日和、最高の舞台ですわ!

 

「旦那さま、頑張りましょうね!」

 

「うん、折角手伝ってもらったから……失敗、したくないよ」

 

 演習場にやってきた旦那さまは、あまり調子は良くなさそうでしたの。一晩中魔法の練習をしておりましたし、魔力をたくさん使ってしまったのですから当然ですわね。

 

 でも、お休みになられて、魔力は結構回復なされてるみたいですの。……旦那さまの魔力量、もしかしてワタクシ並みにあったりするのでしょうか?

 

 ま、それは今は置いといて、ですの。

 ワタクシは、意気込んでいる旦那さまの手を握りました。

 

 肩肘張りすぎても、角張って窮屈なだけですもの。

 

「な、何してるの?」

 

「勝手に追い込まれないでくださいまし、旦那さま」

 

 緊張は適度に、力の入りすぎも抜き過ぎもいけないのですわ。

 

「ワタクシ、期待はしても無理はして欲しくありませんわ。訓練通り、全部やれば問題はないのですの」

 

 気負いすぎずにいきましょう。

 そう提案すると、旦那さまは少し考え込んで。

 

「訓練、通り……」

 

 そう呟いてから、ワタクシの顔を見つめました。

 何故だか、ジトっとした視線をしておりましたわ。

 

「だ、旦那さま?」

 

 いま、旦那さまの頭の中では、あの一晩の思い出が沢山よぎっているはずですの。一緒に乗り越えた、歩み寄れた一夜の思い出。

 

 ですのに、どうしてそんなお顔をされているのでしょう? まるで、一物が勃起しているのは、筋肉が盛り上がっているからではないと気がついた時みたいなお顔ですわ。

 

「そうだった、最悪なことを思い出した」

 

「何ですの、それは?」

 

 ワタクシの問い掛けに、旦那さまは"えいっ"とワタクシにデコピンを仕掛けてきましたの。

 

 な、何故に!?

 

「魔法を使うイメージ。君がとってもウザくて、うおーってなって出来るんだって」

 

 えっ、あの時言ってたの、勃起した照れ隠しじゃなくて、本当のこと!?

 

「ですわぁーーっ!」

 

 思わず、ワタクシは雄叫んでいました。

 もしかしなくてもワタクシ、旦那さまにとってゲロ不味いプロテインも同然なのかもしれませんわ。

 

 ……ウザくてごめんね、旦那さま。

 

 でも、出来れば僕をウザいって思うより、勃起するイメージで魔力変換してくれると、とっても嬉しいよ……。

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