大ダンジョン時代クロニクル   作:てんたくろー

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戦闘開始!

 ──無数のモンスターの群れに、そのまま車が突撃する。鋼鉄の塊が猛スピードで体当りしてくるのだ、たとえ大型の猛獣であれ、多少は怯む衝撃がある。

 しかして相手は規格外の化け物達。追突されてもどうしたことか、まったく怯むどころかまるで意にも介さず、飛んで火に入る夏の虫と言わんばかりに次々に車体へと襲いかかる。

 

「《鎖法》──鉄鎖乱舞!!」

 

 だが、それこそが目論見通りだった。車に向けて一目散に集るモンスター達に、ルーフから窓から何まで車体ごと吹き飛ばして鉄鎖の大輪が咲いた。

 ヴァールのスキル、《鎖法》による先制攻撃だ。パーティメンバーのなかでも随一の範囲を誇る無差別乱舞攻撃が、次々に敵を貫き仕留めていく。

 

「っしゃあ! 行くぜ教授、決戦に向けてのウォーミングアップだぁッ! 《剣術》、アサルトスラッシュブレイカーッ!!」

「ずいぶん派手だね、ウェインくん──《拳闘術》、スネークジャブ・ワイルドハント!!」

 

 放たれた鎖に乗じて二の矢を放つのは、ヴァールの弟子たるレベッカと妹尾。それぞれにすさまじい闘気をも発しつつ、果敢に敵の群れ、貫かれずに済んだモノ達へと襲いかかる。

 大剣を担ぎ、巨体にそぐわぬスピードで巨躯に見合ったパワーある斬撃を加えるレベッカ。12年の間に研鑽を続け、戦闘において十分な殺傷力と正確性を誇るようになったジャブを無数に放つ妹尾。

 

 ともに並み居るモンスター複数匹をまとめて始末していける威力だ……そうして先陣切って道を開けば、今度はさらに彼らの弟子世代が二人の出番である。

 シモーネ・エミールとトマス・ベリンガム。それぞれ槍と鞭とを振るっての大立ち回りだ。

 

「私だって、私だってやれるんだーッ!! 《槍術》、バーボン・ダブルロックッ!!」

「気負うな、シモーネ! ──《鞭術》、ローズ!!」

 

 直前までの会話もあり、過剰に気合いを入れて槍を振るうシモーネ。その冴えは勢いのあるものだが、反面いつもより粗雑で荒々しいものとなっている。

 それゆえに生まれる彼女の隙、技を放ち終えた直後のそれをフォローするためトマスの鞭が唸った。空気の壁をいくつも叩き、モンスターを強かに打ちのめす技の発動。

 

 噛み合った連携だが、これはシモーネというよりはトマスの合わせ方が巧みなところはあった。元より彼は補助役、コンビネーションにおけるサポートなりフォローなりを担うのが得意分野の探査者である。

 師である妹尾でさえ肩を並べて頼りにする若き英才は、同年代で放っておけない脆さを持つシモーネを支えるに十二分の実力と経験をすでにこの時、積み重ねていたのだ。

 

「もう一度鎖を放つ! エリス、上から行くので横合いから合わせてくれ。いくぞ! 鉄鎖乱舞、収束ッ!!」

「はい! 《念動力》、ナイフよ────当たれぇーッ!!」

 

 レベッカと妹尾が切り開き、シモーネとトマスがさらに討ち取る。それだけでもかなりの数のモンスターをまとめて始末できていたのだが、ダメ押しとばかりにそこで再びヴァールの出番だ。

 天高く飛ぶ彼女が、身を翻らせながら無数の鎖を地上へとばら撒いた。しっかり狙いを定め、残るモンスター達を丁寧に仕留めるための鉄鎖乱舞だ。

 そこに、指示を受けたエリスが即座に動きを合わせていた。スキル《念動力》。己の意志一つで物質を意のままに動かす力をもって、懐にしまっていた数本のナイフを撒いたのだ。

 

 何の変哲もないナイフだ。安物でモンスターの素材も使われていない完全なる市販品で、もっと言うならばエリスが普段使用しているエネルギーブレードとしてさえ使われていない。

 だがそれでも良かった。これはエリスが数カ月の間にヴァールやレベッカ、妹尾の薫陶を受けるなかで編み出した新たな戦法の一つだった。

 

 すなわち、ナイフ複数本を自在に動き飛び立たせて敵を狙い撃ちする遠距離広範囲、そして精密複数一斉射撃。急所を的確に狙うことで一撃必殺を意識するそれらナイフ数本が、ヴァールの鎖に貫かれたモノ、貫かれずとも足止めされて動きを止めたものを次々に仕留めていく。

 

「ぐわぴょあああああっ!?」

「めけえええぇれ、めけええええぇれっ!!」

「上出来だエリス! この調子でお前は随時、味方の攻撃により動きを止めたり弱ったりしているモンスターを攻め立てろ!」

「はいっ!」

 

 断末魔の叫びをあげて光の粒子となっていくモンスター達に、改めてこの数ヶ月を経ての実力の向上と成長を感じるエリスとヴァール。

 他の仲間達も問題なくモンスターを確実に減らしているのだ、問題なくこのスタンピードも対応ができているだろう。

 

 とはいえ油断大敵とばかりに慢心なく周囲を見るヴァールは、飛び出した空から地上へと降り立つ間際だ。

 そんななか、一つの影がモンスターとモンスターの間からエリス目掛けて躍り出るのを視認して──咄嗟に彼女へ、危機を呼びかけた!

 

「────エリスッ!! 左だ、何か来る!」

「っ、まさか、火野源一ッ!」

「いかにもだァァァッ、モリガナァァァ────!!」

 

 その声にエリスが即座に振り向く、その視界には。

 左右に刀を持った二刀流の剣士がいて、満面の笑みを浮かべてエリスへと迫ろうとしていた。

 因縁の宿敵。能力者解放戦線メンバー、火野源一である。

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