大ダンジョン時代クロニクル   作:てんたくろー

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異様なスタンピード

「《念動力》!! ──犯した罪に、等しき罰を!!」

「《拳闘術》スネーク・ジャブ・メドゥーサ!!」

 

 車から飛び出したエリスと妹尾が、それぞれの武器と技でもってモンスターの群れを駆逐していく。

 片やナイフから放つエネルギーブレード、片やボクシングスタイルの《拳闘術》。

 

 敵のモンスターはスケルトン、ゾンビ、グール、ソルジャーボーンなどのいわゆるアンデッド系がほとんどだ。二人にとってはまるで問題なく処理できる程度の、言ってしまえば雑魚ばかり。

 即座に猛烈な勢いでそれらが光の粒子に変じていく。ナイフと拳を振るう二人はしかし、そのなかで即座に違和感を覚えていた。

 

「教授! アンデッド系モンスターに比重が行き過ぎています、それに数も桁違いに多い! こ、これは!?」

「そうだね、あまりにおかしい。単なるスタンピード、ダンジョンからのべつ幕なしに引きずり出しただけでは実現しない光景だ」

「カタカタカタカタカタカタカタカタ」

「うげげげげろげろげろげろげげげげげ」

「良くないなこれは。ストレート・スティンガー! 私の予想が正しいのなら、この現象は!!」

 

 叫ぶエリスに応える妹尾。そう、いくらなんでもアンデッド系のモンスターで溢れかえりすぎている。

 バルト三国で対処していたスタンピードの、ゆうに倍以上の数の敵が町を蠢いているのだ。それほどの規模なのに、特定種のモンスターがほとんど大多数を占めているのもこれまでにない光景である。

 

 モンスター学の教授である妹尾は、まさかとの思いで愕然しつつしかし、すぐさまこの異常事態の正体に見当をつけていた。

 このスタンピードは能力者解放戦線によるものだ、それは間違いない。しかしその内実は……やつらの仕業にあらず!

 奴らが引きずり出した、とあるモンスターにあり!

 

「────間違いない、この群れの向こうにきっとリッチがいる。アンデッド系モンスターを多く従えて軍団として率いる、非常に厄介な怪物の王。能力者解放戦線がダンジョンから引きずり出したモンスターのなかに、そのリッチが混じっていたとしか考えられない!」

 

 妹尾が叫んだそのモンスター、リッチ。

 この時より80年近く経った頃の大ダンジョン時代においても極めて凶悪なモンスターの一体に数えられている、アンデッドモンスターを従えるモンスターだ。

 

 このリッチの大きな特徴として、やはりその支配力が挙げられるだろう。自身がいるダンジョン内の、全階層全部屋のアンデッドモンスターを支配し従え、軍勢として組み込み率いる異様な能力を持っているのだ。

 これによりリッチと戦うにあたってはまず、その前に無数にかき集められたアンデッドモンスターの群れを排除しなければそもそも辿り着くことさえ至難という有り様なのだ。

 

 ましてやそんな化物が、人の手によるものとは言えダンジョンから引きずり出された……率いる軍勢ごと。

 それが今、この未曾有と言っていいほどにストックホルムを埋め尽くす亡者の群れの真相だろうと妹尾は拳を振るいながらもエリスに説明していた。

 

「モンスターを従える!? そんな、それじゃあこのアンデッドの大群は、そのリッチが!?」

「一旦そう見るしかないだろう! エリスくん、どうあれ我々は眼前の群れを倒していくしかない! やるぞ!!」

「はいっ!! 伸びなさいエネルギー・ブレード!」

「モール・アッパー!!」

 

 戸惑いと混乱に陥ることも赦されない。陥ってしまえばその分、自分達だけでなく脅かされている人々が助けられなくなる。

 その想いでどうにかエリスは刃を振るった。どうあれやるべきことは変わらない、モンスターを倒して人々の平和と安寧を取り戻す。強固なまでの使命感、責任感が彼女の心を燃やしているのだ、迷っている時間などない。

 

 呼応して妹尾も拳を振るった。彼としてもモンスター学の第一人者、リッチなどという大物を前にしては研究心も疼こうものだが時と場合はもちろん弁えている。

 彼は教職や学者であるが、それ以前に探査者であり人々を守る使命に殉じる覚悟の者なのだ。はるか後進のエリスの気高い姿勢にも感化されて、なおのことモンスターを屠る拳は勢いを増していった。

 

 未だ圧倒的な敵の物量、しかして二人は一歩も退かず戦い続ける。

 ──援軍が来たのはそんなタイミングだった。二人がすでに戦っているなら、それに続いて仲間達も駆けつけるものなのだ。

 

「待たせたなエリス、妹尾! ──《鎖法》、鉄鎖乱舞!!」

「うおおおなんじゃこりゃ骨だゾンビだ死体ばっかじゃねえかッ!! 《剣術》、ハードブレイカー・スプレッドスラッシュ!!」

「うわわわ!? わ、わかってたけどすごい量! 《槍術》、スコッチ・ダブルミスト!!」

「ヴァールさん! レベッカさん、シモーネさん!!」

「ああ、来てくれましたか! この手の戦いではやはり、範囲攻撃ができるヴァールさんが何より助かります」

 

 放たれる鉄鎖が群れをまとめて薙ぎ倒し、続け様の大斬撃と槍の一刺しが打ち漏らしを排除していく。

 ヴァール、レベッカ、シモーネ──トマスを除いたパーティメンバーが、エリスと妹尾に追いついたのだ。

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