大ダンジョン時代クロニクル   作:てんたくろー

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強襲

 合流したヴァール、レベッカ、シモーネは揃ってモンスターを屠りながらも顔をしかめた。

 妹尾から、このスタンピードにリッチが絡んでいるという断定に近い可能性を示されたのだ。そしてそれゆえにストックホルム市街にはこれまでにない規模のモンスターが氾濫しているのだとも。

 

 パーティ5人がそれぞれに連携を意識した動きをとる。ヴァールが群れに鎖を放ち、その間隙をレベッカと妹尾が突撃。

 エリスとシモーネも、三人が打ち漏らしたモンスターを各個撃破していくフォロー役だ……この半年間でいくつも編み出し練習したコンビネーションの一つ、スタンピードを想定した戦闘陣形はみごとにその威力を発揮していた。

 

「リッチとは厄介な! ……しかし考えようによっては、逆にソレさえ倒してしまえばこのスタンピードは著しく勢いを落とすということだろう!」

「ってこたぁ、とにかく群れぇ突っ切って奥にいやがりそうな大将首を仕留めりゃ良いんですね! 教授もなんかあるか意見!?」

「ないさ、さすがの御正論! いかにもこのアンデッドの光景を収めるならば、どこかで指揮をとっているはずのリッチを突き止めて倒せば良い!」

 

 ヴァールが鎖を振るいながら叫ぶ言葉に、長年の付き合いであるレベッカと妹尾が即応した。とにかくこのスタンピードは異様なものだが、それを生み出しているのはただ一つ、リッチというモンスターの存在の支配力だ。

 であればそれを落としてしまえば良い。モンスター学の権威たる妹尾の後押しもあり、三人はすぐにこの戦いにおける指針を示した。

 

 さらにエリスが、シモーネと背中合わせになって刃を振るいながら、ヴァールへと叫ぶ。

 こちらも見事な手際だ……《念動力》で手持ちのナイフを複数、自在に動かしながらもさらにエネルギーブレードを展開しているのだから。

 一つのスキルで複数の効果を同時行使する。これはヴァールはじめパーティメンバー全員を絶句させるほどの、異次元の才覚によるテクニックであった。

 

「リッチだけじゃありません、能力者解放戦線メンバーもこの街にいるはずです! ……それに先程から《気配感知》がおかしな挙動を掴んでいるはずです、みなさんにも分かりますか!?」

「えっ、戦いの最中にそんなこと……エリス、集中しなよっ!?」

「良いから! ここは請け負いますから、シモーネさんも御確認ください! 明らかにおかしいんです……北東の方角、モンスターの気配が異常なスピードで減っています!」

「な──!?」

 

 戦闘の只中に、《気配感知》による周辺のモンスターの気配にさえも気を配る。自分には未だそれを行うだけの余裕がないシモーネは驚きも露わにした。

 地味ながら、器用かつ熟達した探査者であれば可能な芸当だ。つまりエリスはすでにその段階に到達しているのか、自分でさえ至れていないのに。

 

 そんな場違いな嫉妬さえ抱きつつ、けれど言われるがままに戦線から一旦離脱して気配を感知する。

 ストックホルムの町並み、道に沿って相変わらず夥しい数のモンスターの気配だ。今シモーネ達がいる地点以外でも現地探査者達が応戦しているようで、着実にその数こそ減らしつつあるがそれでもすさまじい数と言えるだろう。

 

 ──そんななか、たしかにエリスの言う北東方面に異常が見られた。

 モンスターの数が、とてつもないスピードで減っている。まるで小動物が巻き散らかされた豆を食い漁るかのような、丁寧でしかし勢いのある駆逐ぶりなのだ。

 同様に戦闘中にもずっと《気配感知》を使用していたヴァールが、無表情のなかにも訝しみを込めてエリスに応える。

 

「────妙だ。たしかに妙だぞエリス。我々だけが対処しているわけでないのだから、ここ以外でもモンスターの数はもちろん減っているが、しかし」

「はい、それにしたって勢いがおかしいです……しかもこれを成している何者かは、こちらに向かってきています」

「シェン・ラウエンか? いや、たとえ彼がカーンを凌ぐ実力者だとしても単体でこれほどの勢いなど。複数人なのか? そんな話は聞いていないが」

 

 ヴァールからしてもたしかに、エリスの言うように北東方面の状況は異様だ。合流予定のラウエンによるものかと一瞬考えたが、それにしても探査者単独で成せる速度ではない。

 しかし彼が今、誰かと組んで行動しているという話は聞いていない。現地探査者と協力しているのだろうか? それも何か、得体の知れない違和感がある。

 

 嫌な予感。直感的なソレを感じつつもなおも敵を倒す。どうあれモンスターを減らしていけばその違和感の主、推定ラウエンとも合流できるだろう。

 件の北東方面のモンスターはどんどん、こちら側周辺のモンスターをも巻き込んで数を減らしていっている。

 

 直に、こちらに来る!

 やはり何かおかしな感覚だ、ヴァールとエリスは同時に叫んだ!

 

「……違うッ! ラウエンではない、イルベスタ・カーヴァーンッ!!」

「火野源一!! まさか、このモンスターの群れを突っ切って私達を狙いに!?」

「────そうだッ! ただそうだともッ、ソフィア・チェーホワァァッ!!」

「うひひゃははあはあははははぁァァァ!! ま〜た逢えたなぁ、モリガナァァァッ!!」

 

 モンスターの群れを突き抜けて襲来した者。それは決して味方ではない、むしろ敵そのもの。

 能力者解放戦線メンバー、イルベスタ・カーヴァーンと火野源一。不倶戴天の敵がまさかのタイミングで斬り込んできたのだ!

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