ソフィア・チェーホワ率いる対第二次モンスターハザードチーム。その最後の一人たるシェン・ラウエンと合流したことでパーティは盤石の体制へと至った。
非戦闘員のラウラを除いた7人の探査者で、このスタンピードを乗り越えて最終決戦の地、ノルウェー北部はノールノルゲへと至るのだ。
「最後ン戦いに向けてのウォームアップだ! ぶちかますぜ《剣術》、ハードスラッシュ・ハートブレイカーッ!!」
「まずはストックホルム、ひいてはスウェーデンから能力者解放戦線の影を取り払う……《拳闘術》、スネークジャブ・ミリオンダラー!」
12年前からの英雄二人、レベッカと妹尾が残るモンスターを薙ぎ払い、殴り抜けて活路を開く。
すでに身体能力的にはピークを迎えつつある彼らだが、反面蓄積された戦闘経験は熟練の境地に達している。続く若人達へと敵の中枢を仕留めることを託すかのような、見事なサポートである。
そうして切り開かれた道の先にあるのは、アンデッドモンスターを率いるリッチ。しかしなおも行く手を阻むかのように、次から次へとモンスターがなだれ込んでくる。相当に数を減らしてもなお、7人で相手取るには厳しい数。
火野が、ヴァールへと化物達を差し向けるべく使用した炸裂弾の効果は絶大だということだろう……すっかり彼女めがけて進軍してくる一団に、今度は若人達が果敢に挑む。
「よしッ!! やるぞットマス殿、シモーネ殿ッ!! 星界ィィィ天狼ォォォ五神脚ゥゥゥゥゥゥッ!! しぇぇぇぇっりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃああああっ!!」
「はーすっげぇ叫び声と威力……シモーネよう、こりゃひと働きしねえといよいよ俺ら、ふがいない弟子扱いになっちまうぜぇ? 《鞭術》、《剣術》、剣鞭一体──ジェニファー・アンド・キャスリーン!!」
「分かってるよ!! 何が、この……! 私だって負けるもんか、私はシモーネ・エミールッ!! レベッカ・ウェインの一番弟子なんだっ!! 《槍術》、スコッチ・ダブルストレート!!」
すなわちソフィアの三弟子達の後継者。シェン・ラウエンの蹴りが炸裂してトマス・ベリンガムは剣と鞭を多彩に操り周囲のモンスターを切り刻み打ち据え、そしてシモーネ・エミールは槍を繰り出しモンスターを的確に刺し貫く。
やはりラウエンの実力こそ図抜けているものの……同世代で比較してみればトマスもシモーネも十二分に、若手世代のトップ層と言える実力者達だ。
そんな三人が、師匠格の二人が開いた突破口をさらに掘削してモンスターを激減させる。ここまで来ればいよいよリッチも目の前で、ゆえに残るわずかなモンスター達の反撃も過激なものになっていく。
最後の一押し、ダメ押しの後続が必要だろう。そしてここに至るまでの5人はすでに、その後続達への連携を成し遂げている。
一直線に作られたリッチへの道標。ストックホルムを混乱の渦に陥れたスタンピードの本命、中枢への道筋。
──まっすぐに駆け抜けるのはまさしく英雄二人! それぞれ手にした力を振るい、ただひたすらに目標へと走る!
「《鎖法》────ギルティチェイン・インピーチメントッ!! リッチの周囲、残るわずかな壁をも貫けっ!! そしてっ!!」
「《念動力》ッ!! ストックホルムを、スウェーデンを危機に晒したモンスターよ。今こそその行いに、我が刃にて終止符を打ちますっ!」
「ぎ!? ぎぎぎ、がががががっ!?」
駆けながら放たれる、ヴァールの《鎖法》の真髄ギルティチェイン。その派生技。前方のリッチを守る壁のようにそびえるモンスターの群れを、寸分の狂いなく無数の鎖で貫き消滅させていく。
チェックメイトだ。これをもってリッチを残しすべてのモンスターが消滅した。堪らずうめき声をあげたリッチの、動揺があからさまに見て取れるほどに敵を追い詰めたのだ。
そして、最後の一撃を決めるは《聖女》の刃。
この第二次モンスターハザードにてその莫大なる素質を開花させ、今やソフィアやヴァールと並んでパーティを牽引する探査者ともなった美しい少女の、想いを込めた粛清斬撃。
エリス・モリガナ。
己の命をも込めたエネルギー・ブレードを力いっぱいに振りかざして今、彼女がリッチに肉薄していた────
「ぎぎぎっ!? ががっ! ががががががっ!!」
「エリス・モリガナ、参ります────犯した罪に! 等しき罰をっ!!」
「がぎ、がぎゃあああああっ!!」
逆手にしたナイフの刀身を、はるかに凌駕して伸ばしたエネルギーの刃が奔る。リッチの頭蓋骨の頂点から、縦一線に真っ二つにするように。
なんら抵抗すること能わず、その斬撃はクリーンヒットした。元よりリッチ自身に戦闘力など皆無、ソレはモンスターを操り率い軍勢とする点こそが厄介なのだ。
であれば、単身となったリッチなど今のエリスにはもはや敵ではなく────
呆気ないほどに断末魔の叫びをあげながら、ストックホルムを襲ったモンスターの最後の一人にして中核は、光の粒子となって空中に飛散していったのだ。