大ダンジョン時代クロニクル   作:てんたくろー

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モンスターを相手に

 光太郎のステータスを中心に、これからしばらく行動をともにするパーティ同士の現状を把握し合いながらも、一行は電車を降りて駅を抜け、ダンジョンへ向かう。

 時間的にそろそろ夕暮れということもあり、そう大規模ではないダンジョンだ。なんなら手早くやれば2時間ほどでモンスターを倒し切り、最奥の部屋にてダンジョンを形成しているコアを抜き取り帰還することさえ可能なレベルですらある。

 

 そうしたダンジョンに潜り、さっそく光太郎の修行は開始された。最初の部屋、出てきたモンスター・ウッドアーマー相手にまずは少年が一人で戦う。

 後方にはヴァールと妹尾が控え、彼を観察しつつも万一があるならばすぐさま割って入れるように態勢を整えていた。それぞれ《鎖法》とナックルダスターを備えているのだ。

 

「お二人の手は煩わせませんよ、こんなの相手にーッ!! うははははーっ!!」

「────!!」

「西洋騎士風モンスター! 修行開始の相手としては最高だなあーっ!! そらそらそらそーらぁーっ!!」

 

 雄叫びをあげて突撃し、身の丈ほどの槍を振り回す光太郎。突くより先に薙ぎ払う動作だ……まずは相手を強かに打ちのめし、追い詰めていくつもりなのだろう。

 1年近くも独学だったらしいが、それでも様になっていることにまず妹尾が感心した。先輩探査者の動きや戦いぶりを見て覚えたようで粗がある、我流ゆえの隙が伺えるものの迷いない動きはそれだけでもプレッシャーを相手に与えるものだ。

 

 実際、ウッドアーマーは振り回される槍を受けて流すのに必死だ。猛攻の勢いに完全に押し負けて、身動きが取りづらく後退するしかなくなっている。

 フィジカルは申し分ない。ヴァールもまた冷静に見立てるなかで、光太郎はさらに追撃へと移った。

 獰猛な笑みを浮かべ、槍をウッドアーマーへ投げつけたのである。

 

「っしゃあああぁ! 喰らえーいっ!!」

「何? 投げたのか、自らの得物を」

「────!?」

「うはははは、盛り上がってきたぁっ!! 隙ありぃああああっ!!」

 

 敵のみならず味方のヴァールさえ困惑する謎の一手。わざわざ有利な状況を、武器ごと投げ捨てるようにしたその動きの意図が読めないでいるのだ。

 実際、光太郎自身にも大した考えなどありはしない──ただ勢いのまま、がむしゃらに戦うなかでなんとなくこうしたい、こうすればいける、と感じたとおりにしているだけなのだ。

 

 はっきり言えばデタラメ、手当たり次第。

 しかして今回はそれが功を奏した。ウッドアーマーが少年の奇怪な行動に動揺して、槍を払った後に少しの間、硬直したのだ。

 それを見計らってすぐさま、光太郎が突進してくる! ウッドアーマーもろともに倒れ込んだ後、すかさずマウントポジションを取って、そして。

 

「鍛えに鍛えたこの拳、光太郎モンスター撲滅拳をば喰らえぇぇぇいっ!!」

「────」

 

 敵の両腕を脚で押さえつけ、胴体に跨って身動きを取れなくしてから、光太郎はとにかく勢いのままに握り拳の雨を降らせた! 満身の力を込めた鉄拳、両手でのそれを遮二無二放ちだしたのだ。

 レベルも50近く、非能力者の倍以上は強化された身体能力から繰り出される威力はそれ相応に高い。少なくともウッドアーマーくらいならば、少しずつでもその鎧を陥没させる程度には。

 

 己の槍を投げ捨てての突然の蛮行、凶行。これにはヴァールも妹尾も唖然とするしかない。

 セオリーからまったく外れていた……あの状況、確実に有利を取れていたのならば普通は確実に敵を消耗させていき、隙を突いてダメージを与えて倒すに至るのが通常の探査者だ。

 

 それを光太郎は、有利も不利も関係なくとにかく突っ込んでいったのだ。槍を投擲して突かなくても良い敵の不意を突き、そこから見ての通りの素手による乱打戦に突入している。

 妹尾が思わずして叫んだ。

 

「なんとまあ、無茶なことしますね彼。メイン武器すら囮に使って素手で殴りかかりましたよ!?」

「アレは……勝算あってのものではないな。おそらく衝動的な動きだろう。ある意味本能か、それゆえ誰にも読めんのだな」

「ウッドったらなんだっけ、木? 草? まー何でもいいやぁ、ぶっ壊れるまで叩ぁくっ!!」

「途中までは理性的な動きをしていたにも関わらず、それらを放り出して本能で殴りかかるのか。それでも追い込めているのは、さすがにセンスはあると見るがしかし」

 

 どうにも判断に困る戦法……とも呼べないがむしゃらな動きに、ヴァールは頭を抱えた。彼女にしては珍しく、少しばかりの不安が表に見えている。

 動きは良い。目も良いし勘も新人にしては大したものだ。ウッドアーマーをどうあれ好き放題蹂躙できるのは、探査者として戦士としてのたしかなセンスを感じさせる。

 

 総じて原石とは言えるだろう。ただしその根本の気質というか、姿勢に大いに問題があるが。

 途中まではそれなりにしっかりやろうとしていた気はするので、矯正の可能性は十分にある。この地方の他の探査者達も同様の気質だとすれば、やはり光太郎を探査者として一人前にすることがこの地方全体の探査者界隈を改善するための突破口となるか。

 

「驚かされるが……ふむ。初戦から問題点というか病巣は見えてきたな、幸先が良いとするしかない」

「不幸中の幸いですけどね、どこまでも。うーん、これは骨が折れそうだなあ」

「────っしゃあ勝ったあ!! ありがとうウッドアーマー、お前もまた強敵だったぜ、うはははー!」

 

 勢い任せで殴り勝ったのだろう、ウッドアーマーが光の粒子となって消滅していくのを見て、光太郎が勝鬨めいた呵々大笑をしている。

 その様に、前途多難さをそこはかとなく予感するヴァールと妹尾だったが……とはいえ早々に問題点が見えてきたことに、一筋の光明を得たと思うしかないと前向きに考えていた。

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