互いの紹介も終わったところで本題へと入る。ここ岐阜県へとヴァール達が訪れ、地元の英雄たる権藤武虎一行と合流した目的。
現地探査者達の教育指導と、並行して頻発するスタンピードの鎮圧対応および捜査を行うための話し合い、段取りと打ち合わせである。
ヴァール、光太郎、妹尾、相田。武虎、華、鮫島。
そこに岐阜県全探組の支部長、澤田という男が加わった8人で、変わらず会議室において話し合いは始まった。
老齢と言っていい澤田支部長が、代表して会議を進行する。
「岐阜県全探組支部長の澤田です、よしなに……それでは今般、頻発するスタンピードに対応すべくお越しいただいたチェーホワ統括理事と権藤氏の両パーティにおかれては、今後の行動について話していただきたく存じます」
「ああ。とはいえ話は簡単だ……合流して7人になったこのパーティを二手に分ける。現地探査者に指導するグループと、スタンピードの鎮圧と捜査を行うグループだ」
「現時点でメンバーの数が多すぎるからな。妥当な判断だろう」
「途中には中国からシェン・ラウエン氏も参戦しますからね。恙無く合流できれば実に8人パーティにもなる。さすがにそれは、分割したほうが無難ですからね」
さっそくの提案。ヴァールによるパーティ分割案には武虎も同意を示した。さすがに七人全員がひとまとまりで行動するのは、パーティ単位としては少し人数が多すぎる。
さらに妹尾も言うように、中国からはシェン・ラウエンもやって来る予定になっているのだ。そうなれば8人ともなり、いよいよ二分割したほうが良い数となるのだ。
他の面々も特に異論なく、方針としてパーティを分割して行動することが即座に決定した。
片や探査者達の指導、片やスタンピードの鎮圧だ……そこに際して、今度は武虎が挙手をして発言する。
「探査者達への指導はやはり、統括理事と妹尾教授にお任せするべきだろう。私はスタンピード鎮圧のほうにまわりたい。そちらのほうが性に合うしな」
「了解した。実のところワタシもそちらを頼みたく思っていたのだ、助かる。武虎、君にはスタンピード鎮圧部隊のリーダーを任せたい」
「任せてくれ、仕事はきちんとこなそう。あとは残るメンバーを、どう振り分けるかだな」
探査者の指導がWSOの目的の範疇に含まれている以上、スタンピード鎮圧はこちらに任せてヴァールと妹尾は指導に回るべきだとする武虎。合理的かつ好都合な発言であり、実際同じ提案をしようとしていたヴァールはすぐにそれに乗りかかった。
これにて事実上、二グループのリーダーが決まった。教育グループはヴァール、鎮圧グループは武虎と、元々二つだったパーティのそれぞれのリーダーがそのまま各グループを受け持つ形になる。
となればヴァールと同行する妹尾を除く光太郎、華、相田、鮫島をどちらに割り振るかが重要になってくるが……
そこで鮫島が前のめりになって発言した。彼にとっての姫君、華を横目で見てから堂々と胸を張っての主張だ。
「それならばこの鮫島弥助、もちろんスタンピード鎮圧のほうに参ります! 姫様もそうなさいますね?」
「え? ……え、ええと、その……」
「何を迷われるのですか! あなた様は武虎様の御息女、であらば父君と共にいるのが当然、そして私がお守りするべきなのは無論のこと! 違いますか!?」
「えぇ……?」
「なんか強引なやつなのよさ……」
華をどうしても武虎と自分の手元に置いておきたい。そんな意志がこれ以上ないほどにあからさまに見える鮫島の姿に、光太郎も相田も唖然として彼を見ていた。
対する華は戸惑うばかりだ。意思決定をする様子は見えないが、さりとて困ったふうに武虎、あるいは光太郎を見る。
なぜに自分を見るのか知らないが、それでもたまたま目があってしまった。光太郎は即座に挙手した。
可憐な少女だがそれは関係なく、助けを求めている様子なのだから誰であっても助ける心づもりの彼だ。何より、鮫島の強引さは正直なところ癇に障った──先ほど自身に向けた侮蔑だけなら見逃せたが、それと同じような侮りを華に向けるその表情から察したのだ。
そういうのは、人間として見過ごせないのが彼の質だった。
「あの! すみませんが、それは鮫島さんが決めることではないと思います! ヴァールさんと武虎さんが決めることじゃないかと僕は思うのですが!」
「なんだと、こいつ────」
「鮫島少年、弁えよ。光太郎少年の言うとおりだ、君が発言して良い場ではない」
「済まないが鮫島、個々人の好き嫌いを反映することはできない。ワタシと武虎はそれぞれのグループを受け持つとして、それ以外はこちらで決めることとしたい」
「くっ……失礼しましたっ」
あるいは今度こそ喧嘩になるかもなあ、と思いつつの発言。まあそれならそれでやってやるかあ! と半ば、開き直っての主張に、即座に武虎が賛同した。
いきり立ちかけた鮫島を鋭く制して、ヴァールともども彼の意見を却下したのだ。そもグループのリーダーが決めることであり、鮫島の意志はこの際優先すべきことでないと断言したのだ。
またしても光太郎に横槍を入れられた。
しかも尊敬する武虎にまで否定された鮫島が、怒りに顔を赤らめさせてそれでも黙り、その場に座る。
気に入らない──武虎の付き人、華の騎士を自認する彼にとって、突如として現れていきなり姫様を不埒に口説いた光太郎は。
武虎になぜだか気に入られているところまで含めてすでに彼にとってモンスター以上の敵だった。