大ダンジョン時代クロニクル   作:てんたくろー

228 / 229
それぞれの成果

「……それで、ものの見事に返り討ちに遭ったと。それで鮫島少年は落ち込んでいるのだな」

「も、申しわけありません……武虎様の威光を示すことができませんでした……」

 

 スタンピードを鎮圧した光太郎、武虎、華が全探組施設は会議室に戻った時、目に入ってきたのは対照的な光景だった。

 妹尾に教えを請う岐阜の探査者達と、講釈するヴァールを前に大人しく耳を傾ける相田と不貞腐れたように顔を背ける鮫島と。模擬戦にて結局、為す術なく完敗した二人がそこにいたのだ。

 

 何があったか、ここまで分かりやすい話もそうそうないだろう。

 さしもの武虎も呆れ返りながら、ともあれヴァールに向けて帰還を告げて後、指導グループの今日の成果を聞き出していたのだ。

 案の定だとつぶやく武虎に、鮫島が悔しげに頭を下げる。それを留めて、地方の英雄は厳かに言った。

 

「それはどうでも良い。謝ることでもなければそもそも示すことでもない。鮫島少年、君はやはり統括理事から大いに学ぶべきことがあるようだな」

「そ、それは!? しかし武虎様、僕は!」

「前々から思っていた。君のお父上から頼み込まれて面倒を見る形になっていたものの、君自身はと言えばあまり向上心が見られないと。私の背ばかり見て、私の威を借りて華に諂うばかりだとな」

「っ」

 

 尊敬する男からの、痛烈な批判。鮫島自身も自覚していた怠惰と卑怯を指摘され、彼は思わず顔を青褪めた。

 英雄の付き人という立場に収まり、そこで満足していた。なんならそこから華と結ばれることを夢見て接していたくらいで、後のことは他ならぬ武虎の庇護下にいればぬくぬくと過ごせていたのだ。

 

 そんな彼の姿勢を、他ならぬ武虎はしっかりと把握してしかし、これまで何も言わないでいたのは武虎自身の過ちでもある。

 そこについては認め、忸怩たる心地で武虎は、むしろ彼こそ申しわけないと眉を下げて付き人へと語った。

 

「それはそれで在り方だろうが、正直に言えば……心苦しい姿ではある。若き少年である君がそうなるには、あまりに早すぎるからだ。君はもっとまっすぐに進むべきだろう、それこそ光太郎少年のようにどこまでも己の夢にめがけて。彼からも君は学ぶことがあるはずだと私は思う」

「武虎様まで、そのようなことを……!?」

「光太郎少年の姿に目が覚めたのだ。君のお父上に気を遣って何もしないでいたが、それでは君自身のためにならないのだと。鮫島少年、もちろん遅いということはないのだ。今からでも心を改め、統括理事の教えを真剣に受け止め、今一度探査者としての自身を見直してみたらどうだろうか」

「武虎、様……」

 

 憧れの人にこうまで言われては、さしもの鮫島とていくらかでも目を覚さないわけがない。年頃の少年心に、こうまで好き放題言われることの反発心とて湧くが……

 彼とて貴族の末裔、頭が悪いわけではない。己の欠点を明確に突きつけられ、もはやこれまでとばかりに観念し、うなずくのだった。

 

 一方でその指導グループのリーダーたるヴァールもヴァールで、光太郎から鎮圧グループの戦いぶり、とりわけ武虎の戦術について話を聞いていた。

 とりわけやはり、度肝を抜いたのは武虎のスーパーパワー"大魂道"だと熱く語る少年に、ヴァールもまた微かに目を見開き、こればかりは驚いたと認めずにはいられなかった。

 

「"大魂道"……スキルではない、けれどモンスターを倒すことのできる力か。超能力者だったとはな、権藤武虎」

「超能力者!? や、やっぱりそうなんですかあの人、なんか大ダンジョン時代前から使えてたとかって仰ってましたけど!」

「であれば間違いないな。スキルとは別口の、しかし本質的には同系統の力。各々の持つ魂から引き出したエネルギーを、それぞれの形で現象として発現させる力だ。なるほど、それをもってこの地の英雄となったのだな」

 

 得心するヴァール。権藤武虎という男のレベルはたしかに大したものだが、しかし格闘術だけで英雄とまで呼ばれる暴れ方をしたのかという疑問はあった。

 しかしてそれも、ステータスに併せて超能力まで駆使していたのならば理解できる話だ。滅多にない例だが可能性としてはないこともないと、彼女はそのことをよく理解していた。

 

 超能力と言ってもいろいろ種類があり、特に武虎のそれは話を聞くにサイコキネシスの一種だろう。緑色の風とプラズマを巻き起こしてモンスターを殲滅したあたり、パイロキネシスの亜種あたりかと推測するヴァール。

 そんな彼女の隣で、探査者達への指導をひとまず終えてこちらに来ていた妹尾も興味深げにつぶやいていた。

 

「超能力かあ……! 3年前の第二次モンスターハザードの際、能力者解放戦線の首謀者だったオーヴァ・ビヨンドやイルベスタ・カーヴァーンは未来予知能力を持っていましたが。この日本でもそうした類の能力をスキルと並行して持つ者がいるのですね、ヴァールさん」

「ああ、さすがに驚かされたな。しかしこれはなおのこと心強い話だろう。それほどの実力者が今回、我々とともにこの地のモンスターハザードを食い止めるべく仲間になってくれているのだから」

「ていうか未来予知って……! そ、そんなのとも戦ってたんですね、ヴァールさんも妹尾教授も……!!」

 

 思い返すは3年前の戦い。あの時も未来予知能力を駆使する輩が敵だったし、もっと言えばことの発端でさえあった。

 しかし今回はそれと同種の力の持ち主が味方でいてくれるのだ。これは心強い話だとヴァールと妹尾は互いにうなずく。

 

 その傍らで光太郎も、かつてのモンスターハザードで起きた英雄的戦いの片鱗を察し……目の前の二人に対し、さらなる憧憬と敬意とを抱くのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。