大ダンジョン時代クロニクル   作:てんたくろー

235 / 236
武と武、力と力、ラウエンと武虎

 ラウエンが合流してから数日後。岐阜県内の自然公園にて。

 今年に入ってはもう何度目かになるかも知れないスタンピードが発生し、その鎮圧のために光太郎は出動していた。

 

 最近になっては完全にいつも通りとなったメンバー、鎮圧グループの面々での戦いだ。

 すなわち権藤武虎、その娘である華との三人組だったのだが……今回からはそこにもう一人、特別な助っ人が加わっていた。

 いわずもがなシェン・ラウエンである。

 

「しぇぇぇぇあぁぁぁぁぁっ!! 星ィィィ界ィッ!! 龍ゥゥゥ撃拳ンンンッ!!」

「ウグァァォォォォッ!?」

 

 吹き飛ぶモンスター。断末魔の叫びをあげながら光の粒子へ変わっていくのは、他ならぬラウエンの拳法によるものだ。

 星界拳。蹴りを主体とするシェン一族特有の拳法であり、とりわけそのなかでも脚技による斬撃を得意とする彼の一撃はまさしく、鉄をも切り裂く斬鉄脚の様相を呈していた。

 

 何しろ戦闘が始まって数分、すでに5体ものモンスターが飛び込んでいったラウエンの華麗かつ圧倒的な技にて切り裂かれ吹き飛ばされているのだ。

 これには光太郎や華はもちろん、中部地方に冠たる英雄・武虎さえも唖然としてしまったのだから相当なものだろう。

 

「す……すごい、すごいすごい!! これがシェン・ラウエンさん! これが我流拳法・星界拳かあ!!」

「も、モンスターが蹴られる度に消えていく。こ、これは……」

「むう……! シェン一族の名は覚えていたが、星界拳とはこれほどのものか。これほどの暴れぶり、果たしてこの武虎の大魂道でもできるかどうか。ぬぅぅぅぅっ!! はぁっ!!」

「グゲギャーッ!?」

 

 事前にヴァールや妹尾、またラウエン自身からも軽く話を聞いていたものの。いざ実戦で目にすればあまりにも壮絶な技の数々に光太郎はすっかり圧倒されていた。

 まして武虎など、超能力・大魂道を用いての徒手空拳が主となるスタイルなのだから嫌でも意識せざるを得ない。自身でも柄でもないと思いつつ負けん気をもって発動した緑の風で周囲のモンスターを蹴散らせば、こちらもこちらですさまじい暴虐の嵐と言える。

 

 一方でそんな武虎にラウエンもまた、目を剥いて驚きを隠せないでいる。

 彼も一通りの説明をヴァールから受けるなかで、武虎という英雄について、その力については耳にしていた。

 各々が持つ魂から力を引き出す超能力。その一種と言える技、大魂道──しかしそれが、よもやここまでのものとは!

 

「これがスキルでないのが恐ろしい! 本来ならば《風魔導》などの領分であろうに。しかしこの力を星界拳にも取り入れられたならば……あるいは……!」

 

 戦慄を覚えながらも、ラウエンはしかし大魂道に微かなシェンの明日を夢見る。超能力とヴァールの言う、魂から生ずる力。それを星界拳士も使いこなせるようになればあるいは。

 以前から考えていたことだ。シェンの星界拳の行き着く先、いつの日にかヴァールと交わした約束の果てに輩出される"完成されしシェン"とはなんなのか。

 ラウエンはそれを、あるいは星界拳士として星界拳を使いつつしかし、スキルのような力をも併用できる存在ではないのかと思っているのだ。

 

 魔導系か、魔法系か。あるいはそれ以外にも何かしら、星界拳の補助的な役割を果たしてくれるスキル。星界拳を踏み台にしてその力が主体となるのは望まない、それはもはや星界拳士ですらなくなる。

 難しい問題だ……一生かけてでも考え、それでもきっと答えの出ないだろう問い。

 だがここに、武虎の大魂道は一つのインスピレーションをラウエンに授けてくれたのだ。スーパーパワーと体術の相乗効果、その一端を実例として見せてくれているのだから。

 

「魂の力、超能力……! スキルでなくとも、人は特別な力を持ち得る。ならばそれが星界拳と噛み合う可能性も、あるというのか……! 見事だ大魂道、見事だ権藤武虎っ!!」

「まだまだ行くぞ、ラウエンは見事なれど私も権藤武虎だ!! ────大魂道ッ!! はぁぁぁぁっ!!」

「ミギャアアアアアアッ!?」

「ピギギギギぎっ!?」

 

 緑を纏い、緑を放ち、すべてを薙ぎ倒す暴力嵐と化した権藤武虎は、彼こそ見事だとラウエンをして思わせる。

 見たところ、単純な体術や格闘術、武術の領域においてはラウエンのほうが数段上手だ。武虎は言ってしまえば大魂道の破壊力と範囲をもって暴れているに過ぎない。

 

 けれど。それでもその姿はたしかに武技と超能力の兼ね合いだ。ならばより洗練されている星界拳に、どうにかしてこの手の力を身につければ……あるいは上手く噛み合うスキルを習得していければ、それは!

 

「いつか現れよう"完成されしシェン"の、大いなる一助となりえるか魂の力、スキル! 我らシェンには、まだまだ可能性があるな、これは!!」

 

 始祖カーンから始まり、二代目ラウエンも未だ追い求め始めたばかりの"完成されしシェン"。その完成形、理想形の朧気ながら輪郭が見えた気がする。

 天をも覇するシェン。いつの日にかヴァールが持つ"弐式・救世技法"を受け継ぐシェン。そしてその暁には断獄なる、謎のモンスターを彼女に代わって討ち取る大役を担うシェン。

 

 それが現れた時、きっとそこには自身の星界拳のような──

 あるいは武虎の大魂道のような──

 しかしてそれらをはるかに超えた、比べ物にならないほどの武術も超力も兼ね揃えた天才なのではないか。

 そう、思えていたのである。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。