大ダンジョン時代クロニクル   作:てんたくろー

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元凶

 光太郎達がひと時の宴を楽しんだ、その翌日。

 山梨県は青木ヶ原樹海にあると思しき敵組織のアジトを探すべく探索を開始したヴァールとエリスは、それと同時に思いもよらぬ事態に遭遇していた。

 

 まったく想定もしていなかったが、考えてみればあり得てもおかしくない異変が樹海に起きていたのだ──

 モンスターが大量発生し、樹海内での乱戦を余儀なくされていたのである。

 

「《鎖法》、鉄鎖乱舞! 馬鹿な、どういうんだこの数は……!」

「うげげげげげけけけけけえーっ!!」

「《念動力》、エネルギーブレード!! こんなことが……どうして樹海がここまでのことに!?」

「ぽんぎょろろろろ! ぽんぎょろろろろろっ!!」

 

 木々の合間を縫って襲い来るモンスターを、それぞれ圧倒的なまでの実力で次々光に変えていく二人。さすがは歴戦の猛者、モンスターハザードを乗り越えた英雄達だろう。

 しかしてその内心は混乱の極致であった。もはやほとんど巣窟と言ってしまって良いほどの数のモンスターが、そこに潜んでいたのだから。

 

 ここに至るまで青木ヶ原樹海に異変があったという報告は、実のところヴァールとて受けていなかった。そもそも中部地方全域にて頻発していたスタンピードだ、対応に追われて誰も気づけなかったというのもある。

 だがそれだけではないはずだ……続々と湧いてくるに等しいこの勢いは、町中で起きたスタンピードとは毛色が明らかに違う。

 

「これは……この数、勢い、まさか。まさか!」

「ヴァールさん!? 何があるんですか、この樹海に!」

「…………多少雑だが無理矢理拓くぞ! ギルティチェイン!!」

 

 あまりの不自然さに、半ば直感的にヴァールは真相の一端を察した。このモンスターの数と勢い、普段の町中で起きている騒動のそれと比較しての想起されることなど一つしかない。

 エリスが問いかけるのも構わず、ヴァールは最大火力で鉄鎖を放った。ギルティチェイン、彼女の切札でもある大技だ。

 

 右手から放つ細い鉄鎖とは異なる、左手から放つ特大の鉄鎖が真っすぐ、モンスターと言わず木々と言わず関係なしに突き抜けて撃ち抜いていく。強引に進路を拓く、まさしく雑な勢い。

 しかしそうしなければならなかった。ヴァールは続け様にギルティチェインを放ち、さらにまっすぐ、モンスターが湧いてくるほうへと何度も鉄鎖を射出する。

 

 それを妨害するように襲い来るモンスターの群れ!

 ────しかしてエリスが、あらゆるものからヴァールを護るべくその力を行使した!

 

「《念動力》ッ!! 何か分かりませんが掴んだというなら、ヴァールさん! あなたは私が守り抜きます、何がなんでも!!」

「エリス! すまないが今しばらくはこの身を預ける! 背中は任すぞ!」

「任されました────さあ、犯した罪に等しき罰をッ!!」

「ぐげげげぎゃああああっ!?」

「ピリピリピリピリピリピーッ!!」

 

 なんのつもりかは分からない。けれどヴァールがそうしたならば、そこには必ず意味がある、価値がある。己が身を挺してすべてから護るだけの、理由がある。

 無条件かつ全幅の信頼。ヴァールを、ソフィアを信じ抜くエリスであるがゆえに彼女はエネルギーブレードを振るい敵を切り裂き、サイコキネシスでモンスターの群れを止めた。

 

 自身に群がる敵を、自身に代わって壮絶な勢いで倒していくエリスの姿が、なんと誇らしく頼れることか。

 ヴァールは少なからぬ感動を覚えながらも、ならばこちらも全力でことに当たるとして引き続きギルティチェインを放っていった。

 

「おそらく、ワタシの予測は当たってしまっている……! 明らかに異常な今回の事態、あまりに多すぎたこれまでのスタンピード、モンスターの数! そのすべての起点が、おそらくは……ッ!!」

 

 この時点で推測はすでに、確信へと変わっている──今回の連続スタンピード事件におけるいくつかの謎の一つに、どこのダンジョンからモンスターが出てきているのかというものがあった。

 町中や近郊のダンジョン、いくつかからだけでは到底考えられないほどの数が度々、見受けられてきたのだ。

 

 考えられる可能性はいくつかあった。

 モンスターを引きずり出した後のダンジョンを丁寧にも踏破しコアを回収して消滅させたのか、そもそももっと離れたどこかから誘導してきたのか。

 その裏付けがここに来て取れそうだ。疑惑がひとつ解消したものの、彼女の顔は無表情ながらどこか険しい。

 

「モンスターの気配が、次々に発生してきている……その地点がおそらく、この騒動の元凶たる場所! ならば罪の鎖よ、今こそ闇に潜んだ邪悪の、罪を白日の元へと晒せ!!」

 

 気炎とともに一際意気を込めたギルティチェイン。一気に樹海を開拓して造った道の先にてとうとう、彼女らは"その場所"へと辿り着いた。

 ──高い木々のなか、広く拓かれた土地。そこにある白い建築物。さながら研究所のような施設。そして何より、施設前の堀のなかに無数に存在している、ダンジョンの入口!

 

 そこから湧き出るモンスター!

 ここが発生地点だ! ヴァールとエリスは驚きに目を見開き、戦慄とともに揃って叫んだ!

 

「やはりか……!! ここがスタンピードの発生源! 敵組織はここでダンジョンコアを再利用してダンジョンを創り、そこからモンスターを誘き出して町中へ誘導していたのだな!!」

「間違いない、権藤財閥の研究所……! やっぱり裏社会を取り仕切っていたのは、この地の探査者達のスポンサーである権藤財閥だった!」

「…………権藤財閥だと!? 馬鹿な、あそこが黒幕だとでも!?」

 

 これまでのスタンピードの起点。それこそはこの樹海のこの施設が本丸だった──

 ダンジョンを産み出すダンジョンコアの、地面に埋め込めば再びダンジョンを生成して再利用できてしまう性質を利用し、モンスターを何度となくここから引きずり出していたのだ。

 

 だがそれだけではない。エリスが告げた財閥の名に、今度こそヴァールは心底からの驚きを見せた。

 権藤財閥。中部地方の名士、権藤平之助を会長とする一大財閥。今や仲間である権藤武虎や権藤華も関係者である、組織。

 

 中部地方の全探組へ資金援助までしているというかの財閥こそが、裏社会を取り仕切り今回の事件を引き起こした黒幕だと言うのだ。

 思わずエリスを見るヴァール。そこに、第三者たる男の声が樹海に響いた。

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