大ダンジョン時代クロニクル   作:てんたくろー

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都市部での戦い

 武虎の相手はエリスに任せ、ヴァールはワームホールを潜り長野市へと帰還した。即座に放つ《鎖法》。

 モンスターか山のように群れるそのなかへ放った鉄鎖は、瞬く間に10体以上を貫き光の粒子へと変えていく。当世の探査者にあっては威力も範囲も桁違いの、彼女専用のスキルの威力が発揮されたのだ。

 

「鉄鎖乱舞ッ!! ──モンスターは引き受ける! 動けるものはすぐに避難し、探査者達は避難者を誘導しろ! 負傷者の運搬もしっかりやれ、目についた人間は誰であれ助けろ!!」

「え──と、統括理事!? いつの間に!?」

「言ってる場合じゃねえ! 良いから言うとおりにするぞこりゃシャレになんねえ、おおい動けるやつはこっち来い、避難場所まで連れてくぞーッ!!」

「負傷者がいるなら担架! ああ医療系スキルを持ってるのがいたわね、すぐ呼んで! でもちょっとくらいの怪我なら悪いけど後回しよ、とにかく逃げなさいっ!」

 

 唐突に現れたヴァール──対外的にはソフィア・チェーホワの姿に驚く探査者達だが事態が事態だ。とにかく指示通りに人々の避難を誘導し保護すべく動き始める。

 その間にも町を焼き人を襲った化物達が群れて襲いかかるが、そこはヴァールが食い止めていく。彼女がここに来たからには、もはや何人たりとて傷つかせない、脅かさせない。

 そんな強い意志の下、鉄鎖は縦横無尽に放たれ続けた。

 

 当然、それを見る人々も絶望のなかに希望を見出していた。誰もが知っている世界の英雄、WSO統括理事が来てくれた。来てくれて、この地獄をどうにかすべく戦ってくれている。

 であるならばこの隙に逃げるのだ、生き延びるのだ。怪我のない者は自力で、怪我をしている者は助けを借りて。各々が必死の勢いで、自治体にて定められた避難場所へと逃げようと惑っている。

 

「鉄鎖乱舞! 収束、一閃!! ──ギルティチェイン・インピーチメントッ!!」

「ぐげげげぎゃあーっ!?」

「ピギギャギャギャギャギャギャッ!?」

「よくもここまでのことを、反能力者連合だとか吐かしたが……! こんなことを、ここ以外にも各都市に引き起こしているのか!? まずいぞ!」

 

 鉄鎖を振るいながら叫ぶヴァールの焦燥。現地に来てみれば予想以上に絶望的なモンスターの群れであることに、彼女は怒りと焦りを禁じ得ない。

 ヴァールやエリスクラスならば、単独でもこの程度のスタンピードならばどうとでもできる。だが他の探査者達はそうはいかないのだ。

 

 ましてやこの地の探査者達ははっきり言って練度が低く、最近になってようやく協調性を身につけ始めた程度の連中でしかない。

 そうなるきっかけとなった地元の英雄、そして裏切者である権藤武虎とその父、平之助を思い返して……ヴァールは自分達が完全に騙されていたことを認めた。

 

「地元のパトロンだと、地元の英雄だという肩書きに惑わされた……! あるいはこの地の探査者達の有様も、昔からの仕込みだったのか!? やつら、一体どれほど昔からこんなことを画策していたのだ!!」

「グギョギョギョギョギョーッ!」

「くええええええええーっ!!」

「そしてあの樹海の拠点、スタンピードを引き起こすためのアジトか……! ダンジョンから誘き出された貴様らとて被害者やもしれんが、この地上に貴様らの居場所などないっ!!」

 

 恐るべき長年の野望。おそらくは能力者大戦前後から張り巡らされていた中部地方での悪辣な計画。

 権藤平之助の好々爺らしい顔の裏側に潜んでいたおぞましい悪意に、気づけなかったことがヴァールには悔やまれた。

 

 スタンピードを引き起こしているのも、反社会的勢力を取りまとめているのも。そして現地探査者達を15年もかけて極端な連中にさせたのも。すべてはこの時のためだったのだ。

 対策を練りつつ鉄鎖を振るう。まだ数は多いがそれでも相当数減らしている、このままでも殲滅は叶うだろう。

 

 だがそこに、さらなる援軍が現れた。

 今現在の彼女の仲間達、すなわち早瀬光太郎、妹尾万三郎、シェン・ラウエン。そして権藤華と相田ひとみ、鮫島弥助である。

 

「ヴァールさん! 戻ってきてたんですね、長野に!!」

「早瀬か! それに妹尾、ラウエンも!」

「おかえりなさいと言っている間もないですね……! ヴァールさん、今現在中部地方の都市部にて、ここと同様のスタンピードが同時多発しています!」

「各地の探査者達も応戦したようですが、新潟、福井、石川、愛知、富山は戦線を維持できず都市から後退! 山梨、岐阜、静岡もどうにか拮抗状態ですが鎮圧には至れていません!!」

「そうか……!!」

 

 明らかに彼らもこのスタンピードに対応すべく戦ってきたのだろう、誰もが多少負傷している。何より危機感に満ちた表情と必死な雰囲気が、事態の深刻さを物語っているだろう。

 今しがた裏切りが発覚した武虎の娘、華や付き人の鮫島も同様の様子で、今回の件に関与していたようには見えない。

 

 武虎が言ったことが真実ならば、この二人は反能力者連合とは関わりがないのだろうが……いや、早計は禁物だ。ヴァールはとにかくこの都市を解放することを最優先にし、指示を出した。

 

「数は減らせている、一気に叩くぞ! 殲滅後は消防や救急、警察を呼んで各地の火事対応等にあたる! ……こちらもこちらで掴めたことがあまりに多い。これを片付けた後、まずは現状把握と情報共有をするぞ」

 

 まずは目の前の危機を乗り越える。そしてそこから、仲間達や探査者達と情報を分かち合い、今後どうするかを考える。そのプロセスが必要だと訴える。

 光太郎達にももちろん否やはない。それぞれが得物を構え、迫るスタンピードへと立ち向かっていった。

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