大ダンジョン時代クロニクル   作:てんたくろー

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戦闘後の合流

 放たれた鎖が、僅か残っていたモンスターを瞬く間に一網打尽に貫く。無数ながら一本一本が必殺の威力を持つ、世界に一点ものの超レアスキル《鎖法》の技の冴えである。

 同時に開いたワームホールから姿を見せる者、WSO統括理事ヴァール。レベッカの弟子シモーネも随伴しており、そちらも槍を持ってモンスターへと突撃していた。

 

「助太刀します、レベッカさん! 《槍術》、スコッチ・ストレート!」

「来たかシモーネ! 助かるぜえ!」

 

 両手に持った細身の長槍で、レベッカのすぐ近くでスタングレネードの余韻に未だ怯んでいるモンスターを突き刺す。

 師匠であるレベッカの薫陶を受けているだけあって鋭い一撃で、しかも突き刺し後にすぐさま刃を引き抜く"戻し"の動作も早い。

 

 シモーネ・エミール。探査者としての彼女はメイン武器に槍を選択して用いており、称号も槍使いにはありがちな《ランサー》を獲得している生粋の専門家だ。

 同時に護身術として体術を習ううちに《格闘術》のスキルも獲得しており、能力者としてのレベルこそエリスよりいくらか上という程度ではあるが近距離・中距離戦闘においては総合的に彼女に軍配が上がるという実力者であった。

 

 

 名前 シモーネ・エミール レベル138

 称号 ランサー

 スキル

 名称 槍術

 名称 格闘術

 名称 気配感知

 

 称号 ランサー

 効果 槍を使った攻撃の威力に補正

 

 スキル 

 名称 槍術

 効果 槍を使った技の習熟速度に補正

 

 名称 格闘術

 効果 体術の習熟速度に補正

 

 名称 気配感知

 効果 周囲のモンスターの気配を感じ取る

 

 

 ステータスを獲得し、レベッカに師事し鍛え上げた四年間の実力は上記の通り。

 エリスの《念動力》やヴァールの《鎖法》のようなレア物スキルこそないものの、質実剛健で地に足のついた実力派若手探査者なのである。

 

 その自覚と誇りを宿し、シモーネはひたすらに槍を振るう。敵モンスター、ゴブリンの上位種とされるラージゴブリンの肩口をまずは一刺しし、次いで横薙ぎを左、右と入れて最後に石突で側頭部を殴りつける!

 

「スコッチ・シングル──ダブル──ハイボール!! 見たか! これがシモーネ・エミールのコンビネーション!!」

「がぐぎゃああああっ!?」

「っし、目も耳も戻ってきた……! っシモーネ合わせろ! 《剣術》ヘビースラッシュ!」

「はい! 《槍術》スコッチ・トワイスアップ!!」

 

 ようやく閃光弾の影響を脱したレベッカも剣を手に取り加勢する。すでに満身創痍のラージゴブリンに、もはや為す術もあるはずがない。

 力任せを極めて技として消化させた大斬撃、ヘビースラッシュを放つレベッカの横合いから、シモーネが長槍をしならせて勢いよく柄で叩き伏せる。

 

 左袈裟と右袈裟、両側を同時に襲った攻撃はあっけないほどにモンスターの身体に食い込み、引き裂き、致命傷となった。

 光の粒子と変じていくラージゴブリン。周囲を見れば他のモンスターもまとめてヴァールの鎖に仕留められており、もはや敵らしい敵など一匹もいない。

 静寂を取り戻した自然公園が残るばかりだ。

 

 戦闘終了──ひとまず目的達成。

 能力者解放戦線のメンバーらしき男には逃げられこそしたが、その者が引き起こしたと思しきスタンピードについては見事、自然公園内にて鎮圧することができたのだった。

 

「無事かエリス、レベッカ! 現地の探査者達も多少、負傷しているようだが!」

「レベッカさん、ご無事ですか!? 何があったんです、モンスターがあそこまで近くにいたのに気づけなかったなんて」

「め、面目ねえぜ……ついさっきまでやり合ってた野郎にスタングレネードかまされてな、目と耳をやられてるうちにまんまと逃げられちまった。っていうかそうだ、エリスちゃんッ!!」

 

 駆け寄ってくるヴァールが、エリスとレベッカや他の探査者達を気遣う。特に膝をついて疲労困憊の様子のエリスをひどく気にかけており、彼女に近づいてはしゃがみ込み、命に別状がないかを確認している。

 シモーネも師であるレベッカの安否を確認する。この北欧最強の師匠があそこまでモンスターが近くにいるのになお、手をこまねいていたなど考えられない事態だ。

 

 それにはレベッカもすぐさま答えつつ、しかしやはり、気にするのはエリスの状態だ。

 《念動力》で自身を救った代償に、ひどく消耗してしまっているのだと慌てふためき彼女はまたも叫んだ。

 

「どこか痛いところはねえか、エリスちゃんっ!? 済まねえ、私が下手こいたばっかりにアンタに、そんな目を見せちまって!!」

「ぅ……わ、私もどうにか、大丈夫です。き、気になさらないでください、レベッカさん。ご無事で良かった、少しでも力になれて、良かった……」

「…………エリスちゃんッ! オオオオエリス・モリガナッ!! アンタほど健気な子はいねえよッ!!」

 

 不可解なタイミングであるものの不意を突かれ、あわや致命傷を受けるかという瀬戸際で命懸けのサポートをしてくれたのは、紛れもないエリスだ。

 その結果ここまで消耗させてしまい、あまつさえ閃光弾の威力をも無防備なところに食らわせてしまった。そこにレベッカは強い罪悪感を抱いていたのだが……逆にエリスから、ねぎらいの言葉さえ向けられてついに両目から滂沱の涙を流した。

 

 かつて、ここまで健気な少女をレベッカは見たことがない。元より正義感と使命感の高さには驚かされていたが、それに加えて慈愛と慈悲の心さえ驚くほどに備えていたのだ。このエリスという少女は!

 すっかり心打たれ感動しきりのレベッカ。エリスをその巨体で抱きしめ、彼女は心からの感謝と敬意を体いっぱいで表現している。

 

「ちょ、ちょっ……!? れべ、レベッカさん!?」

「なんだと言うんだ? レベッカ……何かあったのか、エリスと。仲が良くなったのなら、連携的にも良いことだが」

「れ、レベッカさんが、エリスをあんなに……!? え、えええ?」

 

 そんな姿に驚くのは、やはり何も知らないヴァールとシモーネだ。

 何かしら、戦闘中にあったのだろうとは思うがそれにしてもこの変わりようは異様だ。

 

 ひとまずはスタンピードや怪しい男についても含め、一連の経緯を聞かねばならないだろう──ヴァールはそう、軽く息を吐いてから提案したのであった。

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