呪いの王が生まれ変わるのは間違っているだろうか   作:名無し

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 ダンまちに宿儺みたいな存在がいたら面白そうだなと思いつつ、けどモチベーションがないし……と思っていたら、最終巻のエピローグを見て書かねばと奮い立った。




「つまんねー!! 丸くなりやがって!!」

 

 後ろから聞こえるのは三度だけ話した魂の形をいじくる呪霊の罵声。共に小僧……虎杖悠仁を嗤った奴が言うにはここは魂の通り道らしい。光源など欠片もなく一寸先も見えない道だが宿儺は躊躇うことなく進んでいった。

 

 隣には呪いの王の従者として仕えていた時の成人していた姿や現代の女に受肉した姿でもなく、宿儺が初めて出会った頃の幼い姿の裏梅がいた。涙を流しながら、それでも彼と繋いだ手を離さぬように。宿儺もその手を振り払うことなく歩幅を合わせて歩み続ける。

 

 時折過去を振り返るように会話をしていた宿儺は自分の意識がまどろみ始めていくのを感じた。それは裏梅も同じらしく、眠そうに目を擦っている。それでも彼等はつないだ手と歩みを緩めることは決してなかった。

 

 そして五感が感じられなくなり思考すらも覚束なくなった時、宿儺は――

 

「次があるなら、俺は――」

 

 それを最後に、宿儺の意識は永遠に途絶えた。

 

 

 

「――! ――!!」

 

 ……何者かが自分の耳元で叫んでいる。そのことに憤りを覚えるよりも先に聴覚が機能していることに宿儺は驚愕した。

 

(どうなっている? 俺は確実に死んだはずだ)

 

 まさか最後の一本である(すくな)の指に意識が移ったのかと考えるが即座に否定する。十五,六本の指が一斉に死んでも耐える自信はあるが、たった一本で十九本の指の消滅には耐えられない。呪術を誰よりも極めた宿儺だからこそ断言できる。

 

「――ま! 目を――、――な――!!」

 

 何者かの叫び声に導かれるように意識を覚醒させていく。やたらと重たい瞼に苦戦しながらも目を開くと、

 

「宿儺様……!!」

「裏梅……か?」

 

 視界に飛び込んできたのは見慣れた平安時代の頃の顔。しかし、宿儺に目の前の存在が裏梅であると断定するのを迷わせたものがあった。

 

 ――()()()()()。”天与の暴君”禪院真希のように全く呪力が感じられない。だが何も力がないという訳ではなく、呪力と似て非なる力が裏梅の中を巡っているのがわかった。

 

 

 周囲を見渡せば青々とした葉を茂らせる木々に囲まれており、隙間から降り注ぐ木漏れ日が暗闇を遠ざけている。どうやら森の中で眠っていたようだが、宿儺はある違和感を見逃さない。

 

 見たことのない植物があり、死んだはずの裏梅は謎の力を有して生きており、似たような力が自分の中でも巡っている――己に敗北を与えた虎杖悠仁の記憶から気まぐれかつ暇つぶしに読んでいた漫画の言葉を宿儺は口にする。

 

 

 

「転生……それも異世界転生というものか」

 

 

 

「輪廻転生、それも異世界にとはな! 非術師にとっての呪術がフィクションのようなものだったとはいえ、まさか俺が同じような経験をするとは思わなんだ」

 

 裏梅の案内でたどり着いた小さな泉の畔に宿儺の笑い声が響く。外国に転生した可能性も少しだけ考えていたが、宿儺は水面に映る自分の姿を見てそれらを一切否定した。

 

 容姿は大して変わっていない。双子で生まれる運命を覆した証である四つの腕と目、二つの口。変わっていたのは耳の部分。宿儺の耳は妖のように長く尖った形になっていた。

 

「宿儺様の種族はエルフでございます。魔法種族(マジックユーザー)と呼ばれるほど『魔法』に優れており、『恩恵』を授からずとも『魔法』が使えるだけでなく容姿が整っていることに加え人類の中で最も長命です。誇り高く同族意識も強い。ですが精神面は非常に醜く、他種族は下賤な連中であると蔑みながらもエルフが最も誇り高い種族と謳いながら森に引きこもる者が多いです」

「クハッ!! ならば俺は捨てられて当然だろうよ。むしろ森の中で植物のように年月だけを重ねて朽ちていくようにならなくて感謝してやってもいい」

 

 異形の忌み子など殺すよりも嫌悪感が勝って自然に死ぬことを期待したのだろう。生憎そんな期待に応えてやるつもりは微塵もないが。

 

「そして、私の種族ですが水の『大精霊』でして……『神の分身』とも言われています。神ほどではありませんが、人類を超える知識と力を持っています」

「ふむ……なるほど」

 

 その納得には様々な意味が含まれていた。エルフや精霊について詳しかったこと、呪霊の在り方を反転させたような感覚を受けたこと、自分の機嫌と反比例するように落ち込んでいく裏梅の気分についてなどである。

 

 頷く宿儺の後ろに侍っていた裏梅は唐突に跪いて頭を下げた。

 

「申し訳ございません宿儺様。宿儺様の従僕でありながら神の走狗に成り下がるなど……」

「よい。どんな種族になろうと俺は俺で、お前はお前だ。それにお前が神の走狗であるというなら、俺はなんだ? 人類を神が創り出したのなら俺は神の玩具に成り下がったのか?」

「……! 失言でした、如何様にも罰を――」

「冗談だ」

「えっ」

  

 思わず顔を上げる。えっ、天上天下唯我独尊の宿儺様が自分を貶めるような冗談(ジョーク)を口に? 裏梅は、混乱している! 

 

 目を白黒させる裏梅に宿儺はくそでかいため息を吐きながら体を向けた。

 

「聞いていただろう。次があれば生き方を変えてみるのもいいかもしれないと」

「……はい」

「その実験だ。俺は負けて死体も同然となった。死人に口なし、自分を貶められてもいいかどうかをな。……まぁあの類の冗談はもう口にせん。不快になるだけだ……虎杖悠仁(あのこぞう)に言われることを想像すれば臓腑が煮えたぎるが」

 

 まぁよい、と気分を切り替える。何の因果か再び異形の姿で別世界に生まれたのだ。生き方を変えてみる条件としてはこれ以上ないほど整っている。

 

「ついてこい、裏梅」

「――はい、宿儺様!」

 

 

 

 

 ――並んで歩く転生エルフと転生大精霊は知らない。この世界のエルフがどんだけやべー種族であるのかを。大精霊を従える異形のエルフがどんな風に思われるかを。




 多分大精霊って下界の基本的な情報は持ってるはず。神にそう作られて送り出されるし。

 快不快で生きてた人がそう簡単に生き方変えられるのかな……。子供の姿で転生することも考えましたが、なんか違うと思ったので大人の姿です。最初から大人なことに意味はないです。

 続けたい。

黒閃ってあり?

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