呪いの王が生まれ変わるのは間違っているだろうか 作:名無し
ダンまちの世界って野盗と山賊、海賊が多いと思います。恩恵さえ手に入れば一般人より強くなるので。
あとこの作品の宿儺は裏梅には甘いです。ダンまちだからギャグもはさみます。ご了承ください。
山賊にとって山はホームグラウンド。目的の場所への最短ルートなんてすぐに思いつくし、闇夜の中だろうと昼と変わらず動き回れる。人の悪意を練り上げて作った罠やその性根を『
Lv.2も複数名いる彼等にとって今回の獲物はカモでしかなかった。異形の姿によって森を追放されたであろうエルフ。見目麗しいエルフが滅多に奴隷とならないのは『恩恵』なしでも使える『魔法』と同族意識の高さによる報復を恐れてのもの。『魔法』が使えず仲間にも捨てられ、ヒューマンと同程度の身体能力しか持たないエルフなど羽根をもがれた鳥も同然。『恩恵』を与えた神がいないのも確認済み。
主神や頭からそう聞いていた山賊等は縄張りの山で希少な動植物と鉱石を溜め込んでいたエルフを襲撃しーー。
視界に無数の線が走った後、少し間を置いて彼等は一人残らず肉片となった。最期まで自分達が実験のために誘い込まれたと知らなかったのは彼等にとって幸運だっただろう。
たった今生まれた凄惨な光景と臭いに毛ほども心を動かすことなく、それを作り出した張本人、宿儺は上げていた手を下ろす。
「……ふむ、【御廚子】も問題なく機能する。吠えて群れるが関の山の負け犬でも利用価値はあったな」
「お見事です、宿儺様」
「ふん、一度極めたものを取り戻すのに十年もかけたことを褒められても嬉しくない……が、その言葉は受け入れよう」
この世界に転生して十年。宿儺が真っ先に手掛けたのは【呪術】の再取得、もとい再現であった。宿儺を史上最強の術師、呪いの王としていたのは【呪術】があってこそ。それを求めるのも当然の話である。
故に彼等は使い勝手のよい神を見繕うーーことをせず、エルフに許された先天系の『魔法』の改良に目を向けた。
宿儺にとって『神の恩恵』など論外の代物である。『恩恵』を授かれば【呪術】を手に入れるのは容易い予感があったが、神がうっかり致命傷を負えば抗う術もなく力を封じられるのだ。神に生殺与奪の権を握られるなど冗談ではない。『魔法』のスロットが最大三つとかふざけてんのか、可能性縮めてるじゃないか。ちね。
であるのならば、自力で自分の潜在能力を引き出せるようにする。そもそも先天系の『魔法』も『古代』の人類が編み出せると証明した代物。やってやれないことはない。
そこから宿儺はひたすら試行錯誤を繰り返した。裏梅に命じて精霊のみ使える『魔法』を使わせ、無詠唱で『魔力』を別の力に変換する工程を瞬きもせずに観察し、付与魔法や治癒魔法を何度もかけさせた。
たった一度の経験や見聞で【呪術】の極みを習得する宿儺の集中力とセンスは凄まじく、数百年経っても長文詠唱が必須で威力も効果も情けない先天系の『魔法』から【身体強化】、【反転術式】、【御廚子】、【領域】という『恩恵』によって発現する『魔法』に匹敵する力を十年で編み出した。
ーーちなみに詠唱の省略や自分の満足する出来栄えに仕上げるのに時間がかかっただけで【御廚子】等の再現には半分以下の時間しか費やされていない。『古代』のエルフが聞けば発狂ものである。
「さて、大事の前の小事は済んだ。片付けておけ」
「……かしこまりました」
臓物と骨が混ざった血溜まりを避けもせず洞窟から出て行く宿儺。裏梅は慇懃に頭を下げて見送る。
付いて行けぬ己の不甲斐なさに歪みそうになる顔を隠して。
「【捌】」
「嘘だろおーい。マジかよおーい。本当に君エルフー?」
目の前で宿儺に触れられた人間が三枚おろしにされてもケラケラと笑うのは彼の半分にも満たない背丈の幼女だった。しかし、人間離れした完成した美貌、隠しきれぬ
「今君が殺したの、Lv3だぜー? ここがどこかわかってるー? 極東の田舎の山の中だよー? 来るエルフなんて変人かはぐれ者しかいないはずなのに、なんの冗談だよー?」
「貴様を見逃すのに一つ、条件を出そう」
ヘラヘラ笑う女神を無視して宿儺が口を開く。その身一つのエルフが近接戦で第二級冒険者を瞬殺したことが面白くて笑っていた彼女だが、次の言葉を聞いて表情を消した。
「『神威』を使いながら首を垂れて乞い願うといい。『この矮小で哀れな神を見逃せ』とな」
「……うーん、ちょっとカチンときちゃったかなー?」
ちょっとどころではなく彼女はかなりムカついていた。楽しげだった声から抑揚が一切なくなるほどに。
一目で眼前のエルフが悪に属する者であることはわかった。そんな奴が自分を邪神として正義の神に突き出すなんて天地がランバダを踊っても有り得ないし、もしやったら腹が捩じ切れるほど笑う自信がある。自分が捨て置かれるのは確定路線で、血生臭いし早く拠点変えたいと考えていたくらいだ。
それを「見逃してやる」ではなく「見逃してください」と頼めだと? この
よし、決めた。こう命令しよう。「『このオークにも劣る醜い面の私を貴女様のペットにして下さい。ブヒィ』と言いながら足を舐めろ」と。そんで、足を舐めようとしたらキモい汚い死ねと顎蹴って舌噛みちぎらせて、延々と罵って踏ん付けてやろう。そして私の眷属にしてやろう。そのまま死ぬまで『恩恵』を更新せずに煽り続けてやる。
幼女の体からドス黒い瘴気、いや『神威』が溢れ出す。宿儺と目を合わせながら彼女は口を開いた。
「命令だ。『このオークにも劣る醜い面のーー
ーー私ぃぃ?」
あれ、何でクソエルフの顔が遠ざかって私の上半身のない下半身が視界に入ってーー?
極東の山から光の柱が噴き出し天に突き刺さる。
こうして一柱の神が地上のゲームから脱落した。
十三回。宿儺が神を送還した回数である。
神は死なない。致命傷を負えば『
最初の神殺しは『神威』に屈しそうになる膝を殴り、歯が砕けるほど食い縛りながら辛うじて致命傷を与えた。三度目からは『魔法』を使えるようになり、七度目からはサイコロカットで殺せるようにもなった。
しかし、宿儺でも未だに神を本当の意味で殺すことができずにいた。
「今回もただの送還となりましたか」
「魂を斬ったはずだが、『
眷属が目の前で殺されればビビってどさくさに紛れて逃げるかもしれない。そう考えて山賊を誘い込む罠にした洞窟で宿儺は、最初の神殺しであっさりと膝を屈したが故について行けなかった裏梅の料理に舌鼓を打ちながら今日の話をしていた。
今度はより細かく刻んでやるか、それともより効果がありそうな部位を探すかと試行錯誤する宿儺は楽しそうだ。彼はやると決めたことは途中で投げ出さず、本当に成し遂げている。どれほど無謀な挑戦に思えても絶対に。
その姿を見つめることが裏梅にはとても辛かった。火にかけた鍋に映る自分の顔をあらん限りの憎しみをこめて睨みつける。
(宿儺様に比べて、私はどうだ……何をしているのだ……)
前世でもそうだった。主人を侮辱した五条悟には歯牙にもかけることなく一蹴され、決戦でも
今世でも同じ醜態を晒している。神の走狗に成り下がろうと宿儺様の従僕であると誓ったくせに、本物の神を前にすればあっさりと膝をついた。力も意志も命も王に捧げていなければ全身を焼き焦がす自責の念と羞恥で自害していただろう。
(『魔法』の開発もきっと自分がいなくても宿儺様なら多少時間がかかるだけで実現できた。料理だって、私にしか作れないという訳ではない。……私は、役立たずだ。こんな私の『加護』を宿儺様に献上するなど身の程知らずにも程がある)
延々と己への恨み言を心の中で垂れ流す裏梅。しかし、決して聞き逃せない主人の言葉が聞こえた。
「お前の王として相応しい力を手にするのもそう遠い話ではない。励めよ、裏梅」
あ、宿儺様、好き。
裏梅の呪術師じゃなくなったのに呪力を生み出しそうな負の感情は吹き飛んだ。
↓少し長めの補足です。
この話は原作開始のだいぶ前です。しかも極東スタート。
原作開始前の理由は強くなるためです。宿儺の性格上絶対に神から恩恵を授かるとかしないし、先天系魔法の開発も恩恵によって発現する魔法並の威力と効果と燃費を求めているのにその答えを欠片も知らないから難易度は激ヤバだと思います。
そして気に入らない神は絶対殺す。天界送還だと絶対に満足しない。
精霊の加護も精霊本体がやられたら消えてしまうと思いますが、宿儺は裏梅からの加護は受け取るつもりでいます。でも今は裏梅の方が絶対に強いので受け取ってないだけです。
賛否両論あるかもしれませんが、今の裏梅は宿儺より強いです。ダンまちでレベル5と中位精霊が戦う描写があったのですが、戦略も知らない子供みたいな性格で力を振るうだけでレベル5とそこそこやりあえていたので、裏梅みたいに経験あり、戦闘IQ高め大精霊はレベル7上位、下手すればレベル8に届くと思います。
ちなみに現在の宿儺は強化込みでレベル4〜5くらいの身体能力。でも今後に裏梅の加護ととある強化パッチが待ってるので心配いらないです。
あとこの日は暑くて裏梅はそばにいるよう命令されて精神は完全回復します。
あと一応殺す人間と神は選んでます。どんな基準かは次の話で。
黒閃ってあり?
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あり
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なし
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作者の自由