呪いの王が生まれ変わるのは間違っているだろうか 作:名無し
精霊を探す上で最も効率が良い方法は神を頼ること。神の分身と呼ばれる精霊であっても『
半月ほど
見つけた、のだが……。
(ええ……いや、えぇ……)
宿儺が! 温泉に入っている!
明らかに人の手が加えられていない源泉に! 裏梅の氷でちょうどいい温度にして入っている!
(ここまで太々しいとどう反応したらいいのかわからん)
星の瞬く済んだ夜空の下で優雅に入浴している宿儺を見たスサノオの頭上でハテナマークが
精霊の力使って温泉で寛ぐ時点で意味わからん。下界の住人達にとって精霊って普通敬うものじゃない? 軽薄な神々と違って荘厳な雰囲気してる子が多いし。
しかもその精霊に羽根団扇を煽がせていることに留まらず、よく冷えた氷菓子や牛乳を用意させてる。ついでに着替えも。エルフが精霊の要望に応じて貢物をするならわかるけど、逆は見たことない。
姿を見た時点で分かっていたことだが、普通のエルフとは根本的に違うようだ。
ただスサノオが宿儺の姿を見て抱いたのは「悍ましい」「異形」「醜い」といった上辺しか見ない者とはかけ離れたものであった。
一般的なエルフは魔導士であり、武術に通じた者は魔法剣士になる。前者の目指すべきは【ロキ・ファミリア】の【
しかし魔導士は近付けば無力となり、魔法剣士の多くはどっち付かずの半端者になることが多い。何よりエルフの魔法はどれだけ強力だろうと三つ以上手札があろうと使えるのは一つだけ。詠唱によって心肺に負担をかけながら魔力というじゃじゃ馬を扱うエルフは欠点が多かった。
宿儺の背丈は二Mを超え、全身には均等に無駄なく筋肉が付いている。これだけでもエルフの力と耐久性の低さを補っていることが見て取れる。
濁ったお湯と湯気で見えないが腹部にある口。あれが詠唱をできるなら……その上で心肺に負担がかからないのなら、並行詠唱しようが『魔法』をノーリスクで運用できる。リスクを背負えば二つ以上の『魔法』の行使も可能だろう。
四つの腕。エルフが『魔法』以外で得意とする弓を使いながら剣や杖を持てる。二つの手を埋めようともう二つの手が空手となる。
エルフの戦士と魔導士が求める全ての要素を兼ね備えて、大精霊の加護をも授かっている。しかし、エルフの矜持の拠り所である美しい容姿だけは得られなかった異端。
だからこそわからない。宿儺の動きがスサノオのイメージとズレている。
宿儺が多くの神の送還に関わっていることは確かだ。人だって大勢殺している。人肉を食らったこともあると聞いてる。それは間違いない。
だが、調べられた限り宿儺は自分から殺戮を行なっておらず、送還した神も山賊や野盗をまとめているか、地方で戦乱を巻き起こしていた邪神に該当する神のみ。食人についても極東では貧富の差が激しく、追い詰められた者が死んだ人間やモンスターを食らうのは日常茶飯事だ。
宿儺の見た目から受ける迫害や境遇を考えたら
にも関わらず、こうして視認できる距離まで近付いても世界への復讐者特有の空気や匂いが感じられない。それがスサノオにとって不気味な要素だった。
とりあえず宿儺の入浴が終わるのを待つスサノオ。宿儺が入浴中に会話に応じてくれるとは思えなかったのもあるが、仮に会話に応じられたらフルチンの大男と話さないといけなくなるのが嫌だっただけである。
(エルフの森の大聖樹……バベルの塔……ロンギヌスの槍?)
余談であるが、風呂上がりの宿儺の体の一部が目に入り放心状態に陥ったスサノオが正気を取り戻した頃には宿儺も裏梅もその場からいなくなっていた。
「まだいたのか」
秘湯で汚れと疲れを落とし、拠点として勝手に使っている山小屋で眠り、朝日が昇るとともに目覚めた宿儺達が外に出るなり見たのはガタガタと震えながら膝を抱えて座り込む上品な衣に身を包む男神。
昨晩入浴している時からこの神の気配には気付いていた。何なら夜中に小屋の前で熊のようにうろうろしていることも察していた。こちらから声をかけてやる義理もないので無視していたが。
「……気付いてたんなら言えよ。風邪ひいたらどうする。そっちの精霊が看病してくれるのか? お粥をふーふーしてあーんしてくれるのか?」
鼻水を垂らして見上げてくる
普段なら神など捨て置く宿儺だったが、目の前の神の正体に見当がついていたため口を開く。
「貴様は『朝廷』の遣いだろう。俺の入浴と眠りを妨げなかったことに免じて話だけは聞いてやる。言ってみろ」
神に対して不遜な態度。最近の子供は神に対して敬語も使えないのかよ。喉元まで数々の文句がせりあがるもアマテラスの無茶振りで耐性ができてしまったスサノオはそれらを嚙み殺す。
地面に座っている状態から膝立ちへ姿勢を変え、許可なく見上げるな等の理不尽な怒りをぶつけられないよう下を向きながら要件を告げる。
「俺の名はスサノオ。お前が言ったように『朝廷』の主であるアマテラスの命でここに来た」
「神が神の走狗か。世も末だな。それで、何の用だ」
「……お前の横にいる
「そうか、死ね」
躊躇なく飛ばされる斬撃。肉を断つ生々しい音が響き、鮮血が地面を赤く彩った。
「――率直に言ったのも、代わりの精霊を用意するのも最大限の誠意だったんだがな。お前が力こそ全てみたいに振る舞うならこちらもそうしよう。下界の悲願が果たされようとしている今の時期に一人の我が儘に振り回される訳にはいかない」
スサノオの全身から荒々しい神威が溢れ出す。かつて葬った邪神とは比べ物にならない威光に裏梅が膝から崩れ落ち、少しだけ驚いた様子で斬られた胸部から滴る血を掬って眺める宿儺の前で本来は喧嘩っ早い武神は立ち上がった。
「言い方を変える。
やれ。
スサノオが腕を振るとそれを合図に凄まじい暴風が宿儺を包み込む。余波だけで小屋を破壊した突風に抗う間もなく彼の体は木々を薙ぎ倒しながら彼方の方へ吹き飛んでいった。
その場に残された裏梅が歯を食いしばりながら顔を上げると、そこにいたのは鎧に身を包んだ若い風貌の大男。その身から溢れる人知を超えた魔力と裏梅の本能が同じ存在――大精霊であると告げてくる。
「俺が昔下界に送った
「……!?」
「運よく
クサナギと呼ばれた大精霊が土埃を巻き上げながら宿儺が飛んで行った方角へ姿を消した。そのクサナギを上回る力を有しているにも関わらず神威に縫い付けられて動けない裏梅の横に悠々と座り込むスサノオ。
「このまま連れて行ってもいいが、ごねられても面倒だからな。奴の敗北を見届けろ。力こそ全てって思っていそうな奴に従っているんだ、宿儺が負けたらこちらの命令に従ってもらうぞ」
(……すく、な、様!)
呻吟の音すら漏らせぬ裏梅に許されていたのはただ主の名を胸の内で呼ぶことだけだった。
姉の神殿に脱糞する神だったのに人のために怪物退治する神なので、スサノオはこれくらい態度がころころ変わる神だと思いました。
ちなみにクサナギはアマテラスがスサノオにバレないよう隠してました。
黒閃ってあり?
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あり
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なし
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作者の自由