呪いの王が生まれ変わるのは間違っているだろうか 作:名無し
ちょっと投稿ミスしてました、すみません。
凄まじい気流の音はまるで引き裂かれる空気の断末魔のようだった。
スサノオ達から1Kは優に離れた場所から現れたのは巨大な渦巻。根元から巻き上げられた大木や竹がまるで木の葉のように宙を舞っている。凄まじい切れ味の鎌鼬が風の渦の中から飛び出し木々と大地に裂傷を刻む。
掘り起こされた砂利や石礫を巻き込んだ竜巻は好奇心で触れようものなら凄惨な
異物が含まれていなかろうが乱気流で上下左右前後に引っ張られてバラバラにされそう。そうわかっていても触れたくなるこの気持ちが雨の日に増水した河川に近寄る子供たちの気持ちなのかな。そんなことを考えながらスサノオは巨大な竜巻を眺めていた。
(俺は見たことないけど『竜の谷』の『風印』ってこんな感じなのか)
クサナギが発生させた竜巻は攻撃ではなく逃がさないための『檻』。人類では再現できない精霊の『魔法』による力を見せつけておきながら、策も搦め手も地形を活かすこともできない限定された空間内で強制する真っ向勝負。
アマテラスは
極東には『試練』がない。『大穴』のあるオラリオから遠く離れた島国にLv.6に至れるほどのモンスターが生息している訳もなく、いたとしても昔日の英雄に討ち取られるか子孫を繁栄させて力を細らせていただろう。宿儺が天才だとしてもクサナギとの力量差を覆せるほどではない。意識してないのかもしれないけど、まるで弱いものいじめだ。誰に似たんだろうか。
(今の内に裏梅を連れていきたいけど……)
今すべき行動として正解なのは裏梅を連れていくことなのだ。一年か二年以内に行われると噂の三大
この国にある『封印』は特殊だ。普通なら精霊に協力してもらい力を振るってもらわなければならないが、ここでは精霊さえいればいい。
ここは極東。「ヒャッハァー! 首置いてけやぁー! 死ぬときは腹切って死ぬぜぇー!!」と殺しも死に際も派手な連中と、「同族が死んだ? ヨッシャ! 自分達の妖術を強める道具が作れないか試してみよう!」と邪神に唆された訳でもないのに、『殺生石』のような制作方法も使用方法もイカれた特級呪物を生み出す種族が住む修羅の国。
従わない精霊の利用法を考えない訳がない。精霊を魔力に分解して他の精霊の力に加える術などとっくに編み出している。自分達に健気に尽くしてくれた下位精霊や中位精霊を使って『封印』の強度を維持できることは確認済みだ。
泣き叫ぶ精霊達を容赦なく生贄に捧げるこの国の人間には天界でご飯をくれた相手を殺そうとしたり、嫌がらせに
閑話休題。
確かに生贄に捧げるだけでも問題ないが、自ら全てを捧げてもらった方が効果は高い。それにこれだけの絆を育んでいる精霊とその契約者だ。契約者が神に対して敬意の欠片もない糞餓鬼だとしても、こちらの都合で引き離すのだから少しでも後腐れをなくしておいた方がいい。他にも用はあるし。そう考えたスサノオは神威で裏梅を押さえつけながら決着がつくのを待つことを決める。
契約者の力を信じてる精霊の前でその契約者が叩き潰されるのを見届けさせようとするスサノオは人の心がなかった。
「……お前を連れ去ろうとしている俺が言うのもなんだが、これは奴にとっていい経験になる。とんでもない理不尽と覆しようのない力の差を味わうことは奴のような戦士に更なる成長を齎す」
拙い慰めの言葉。ただの侮辱でしかないことにスサノオは気付いてない。神威で這いつくばっている裏梅は歯が砕け散りそうなくらい食いしばっていた。
「それに考え方を変えてみたらいい……お前の献身があの糞餓鬼の命を助けるんだとな。正直英雄と呼んでいい人種なのか定かではないけど、英雄の助けになれるなら
生贄と言ったら悲観的で悪い行為に思われるからポジティブにとらえたらいいのでは? そう考えての発言だが、当事者からすれば馬鹿にしてんのかとしか思えない。裏梅の額に青筋が浮かぶもスサノオには見えていなかった。
「『朝廷』に行ったらアマテラスが煽り散らしてくるから耐えろよ。間違いなく『ねぇどんな気持ち? 神の命令ってだけで契約者を裏切るのってどんな気持ち? 見出した人類が英雄の器じゃなかった挙句、自分が犠牲になった世界で生を謳歌するけどどんな気持ち?』とか言ってくるからな。暴れても今みたいに神威で抑え込まれるから無意味だぞ」
スサノオとしては本気でアマテラスが言いそうなことを教えている。しかし、裏梅には他神の名を借りて煽っているとしかとらえられない内容だ。宿儺を糞餓鬼とか呼んでいた神が宿儺が負ける前提の話を垂れ流すだけで裏梅の殺意ゲージは毎秒単位で上限を突破していた。
そんな感じで時間つぶしがてら裏梅を説得しようとしていたスサノオは、何故か不機嫌になっていく目の前の精霊とは別の件で内心首を傾げていた。
(おかしいな。そろそろ出てこないと宿儺を倒したクサナギが戻ってくるのにまだ姿を見せない)
きちんと『
裏梅に聞くか。神威で喋ることもままならない精霊に口を開かせるべく、スサノオは神威を調整しながら裏梅の顎を掴んで持ち上げる。
「――あぇ?」
ピッ、と裏梅の頬が紅く染まった。裏梅の細い顎を無遠慮に掴んでいた手が離れ、
「――がぁああああああああああっ!?」
次の瞬間、なくなった
遠くの竜巻にいくつもの斬撃が走った。瞬く間に風の渦は勢いを失っていき、その巨大な姿を霧散させる。
徐々に薄れていく砂埃の奥から現れるのは――
「大精霊というからどの程度かと思えば……期待外れだな。これを裏梅の代替にするとほざいていたが、貴様の目が節穴なのか? それとも俺を舐め腐っていたのか?」
それを見たスサノオは信じられないような顔になり、痛みも忘れたように叫ぶ。
「ありえない……クサナギは『大精霊』なんだぞ! エルフの『魔法』で精霊の『魔法』に勝てるわけがない! さっきだってお前の『魔法』はクサナギにあっさり破られたじゃないか!?」
「貴様のようなゴミを殺すのに大した魔力は込めてない。あれで俺の底を見切ったつもりか? 不愉快だ」
宿儺の【御廚子】は先天系魔法によって構築されている。射程、威力、飛ばす斬撃の数、斬撃に付与する効果も全て宿儺が決めて使っているのだ。スサノオを殺そうとした時は付与する効果にリソースを割いていたためあっさり負けたが、そのリソースを割くだけでも精霊の『魔法』に迫る威力が出せる。
更に空気に存在する『面』――温度や密度の違いによって点在するそれを捉えられる宿儺にとって、魔力が込められた風の弱い箇所を突き止めることなど容易い。
そして何より――クサナギの風は宿儺が知る『無下限の引力』に比べれば弱すぎる。
「ただ風を操り、それを力任せに叩きつけてくるだけの木偶の坊。つまらんにも程がある」
「っ……だとしても! こいつは
「
己の風を破られたショックでクサナギは隙を晒し、罠だろうと潰すつもりで放った攻撃で動けなくなった大精霊に宿儺は萎えた。興味を失い、淡々と叩き潰して終わらせた。
「さてと。俺が
「……何をする気だ?」
宿儺が浮かべた陰惨な笑みを見てスサノオはやっと気付いた。自分が突いてはいけない藪を突き、蛇どころか鬼を出してしまったと。
「貴様等神々は人間と変わらぬ構造をしているな? 魚の活け造りのように内臓と肉をバラバラにしても死なんよう刻んでいってやる」
その宣告に嘘はない。血の気が引いていくスサノオの視界が大きな掌で埋め尽くされたその時――。
ドクンッ。
「今の揺れは……」
地震ではない。まるで生物の鼓動のようだった。もしこれが鼓動であるなら、その心臓を持つ生物は
「
スサノオが口を開く。今にも宿儺に殺されそうになっていた男神は責めるような目で宿儺を睨め上げていた。
「本当なら下位精霊や中位精霊で『封印』は保たれてた。三大
「原因は『神の送還』。この十数年で『
「トドメがクサナギの『風』。系統は違っても『大精霊』に執着している化け物が目覚めるには十分だ」
「古代の怪物『ヤマタノオロチ』――もう裏梅に『封印』してもらうしか手段はなくなった。オラリオから救援が来るより極東が滅びる方が早いからな……どう責任を取るんだ、糞餓鬼」
自分で戦う精霊ってほぼいないし、デミ・スピリットも想定外のことが起きるとすぐ混乱してたのでこうなりました。見下してた相手にあっさり魔法を破られたら動揺するよね。
自分が原因で裏梅が狙われていたことを知った宿儺はどう行動するのか。
スサノオの処遇に関しては二話目を見てください。
黒閃ってあり?
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あり
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なし
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作者の自由