呪いの王が生まれ変わるのは間違っているだろうか 作:名無し
賛否両論あると思いますがどうぞ。
「デカいな。まぁ古事記通りのサイズではない分マシか?」
時計の長針が二回転する程度の時間をかけた宿儺が『戦場』に到着したのは奇しくも八つの首を有する漆黒の蛇竜と同時だった。
戦場に選ばれたのは巨大な隕石でもぶつかって生じたクレーターのような盆地だった。草木も生えていない険しい岩山に囲まれたその場所は『ヤマタノオロチ』の大長躯の半分が収まるほど深い窪地があり、ダンジョンの『階層主』を歯牙にもかけない
囲む岩山の一部を引き潰して窪地に収まった『ヤマタノオロチ』はそれ以上進まず動きを止めていたが、それには当然理由がある。
「裏梅を俺達のずっと後ろで待機させておいて、奴の匂いに引き寄せられて動く『ヤマタノオロチ』を
道案内として宿儺に無理矢理連れてこられた挙句、神々の刺客である漆黒のモンスターを引き寄せる囮として待ち構えさせられたのだ。『ヤマタノオロチ』が襲ってこないのは裏梅に意識の大半が向けられているとわかっていても怖いものは怖い。神威で興味を引くような真似をするなら猶更。
道案内の間、彼は「無理だ」「自殺よりも愚行」「勝てる訳がない」と泣き言を零しており、一秒でも早く、一歩でも遠くに逃げたくて仕方なかった。確認を取りながらも既に逃亡の準備に入ったスサノオの肩にポンッと手が置かれる。
「逃げるな。お前にはまだやってもらうことがある」
「は? まさかお前の最後を見届けろとでも?」
「教えんでもすぐにわかるさ」
肩だけじゃない、胴や足にも腕が回されて担ぎ上げられる。全身に力を漲らせた宿儺の
「まさか……まさかまさかまさかっ……う、嘘だよな!?」
――スサノオに生涯で最大の悪寒が走る。その悪寒を人類は『死の予感』と呼んでいる。
「俺を、『ヤマタノオロチ』に殺させるつもりかぁああああああああ!?」
天界への送還ではない本当の死を前にした神は見苦しいほど取り乱した。
「察したか。お前の最後の役目は永劫その口を開かんことだ」
「ふっざけんな!
「どこまでも五月蠅いゴミだな……せめて散り様で魅せてみろ」
「ああぁぁああぁああぁ!? いやだぁああああああああやめてぇええええええあああああ!!!」
理性を手放してしまった武神が手足を振り回して抵抗するが、常人並みの肉体で技も使わず暴れたところで何の意味もない。思いつく限りの泣き言と恨み節と罵声を喚きたてるスサノオを、宿儺は全力で投げ飛ばした。
対する『ヤマタノオロチ』は投げつけられた神に向かって顎を開く。使命感など微塵も持たずに近くに食べられそうな獲物が来たという反射的な行動で食らいつく。
「げびゅっっ」
齧られたのは
近しい殺し方をした時も『
ほんの一瞬で全体が一気に黒ずみ泡を吹きながら腐った。『魔石』を砕かれたモンスターが辿る
「これが真に神を殺した折に発生する現象か。見るものは見れたな……さて」
本当の意味で死を迎えた神がどのようになるのかを見届けた宿儺は上機嫌に頷くと、先程まで焦点が合っていなかった計十六の瞳に殺意を宿して見下ろしてくる『ヤマタノオロチ』に殺意を込めた視線を返し、剝き出しの刀身と僅かな持ち手しかない青銅色の儀式剣――クサナギを『精霊武器』に変化させた『草薙の剣』を構える。
「……行くぞ」
この世界に生まれ変わってから感じる初めての緊張に強張る身体を動かし、四つ腕の鬼神は八岐大蛇に挑みかかった。
己が認めた者にしか力を貸そうとしないクサナギの意識が組み込まれているせいか、『草薙の剣』は契約者に『
風を操り空中に点在する『面』を捉えずとも宙を自在に駆けられるようになった宿儺は凄まじい勢いで飛び上がり、『ヤマタノオロチ』が何かするより先に二○○M離れた中央の首を目掛けて【解】を放った。視認することの叶わない不可視の刃はそのまま首に届くように思われたが、
『『ハァアアアアアアアアッ!!』』
左右の最も外側の首二つが紅の霧を吐き出し他六本の首を包み込む。不可視の斬撃は
(『魔法』の威力を著しく減衰させる
無詠唱で叩き出せる限界射程と出力の斬撃を無効化されて少しだけ目を見開きながら地上に落ちていく宿儺に向かって、今度は
間を置かずに放たれたのは二条の蒼炎。少し前に着地しようとした場所から大きく離れた宿儺にも伝わってくる熱気で彼の肌に汗が滲む。放たれた炎は直線上の全てを焼き尽くすほどの熱を持ち、岩肌の上でも関係なく燃え続ける飛び散った炎の特異性に気が付いた故の冷や汗かどうかは本人にしかわからない。
――もしオラリオの冒険者がここにいれば何の冗談だと震えあがっていたことだろう。
何故なら今の『ヤマタノオロチ』の攻撃はダンジョン下層域の
そして『ヤマタノオロチ』の首は八本。半分が『アンフィス・バエナ』と同じ
「近付くところから始めねばならんか」
宿儺が選んだのは『アンフィス・バエナ』に対する冒険者達と同じ接近戦。そんな彼に迫るのは視界全てを覆いつくす大蛇の蛇腹。大質量の振り下ろしは全てを吹き飛ばす極大の鉄槌である。
炸裂した大破壊。凄まじい亀裂が走り抜け、地盤が狂い、大地が上げる悲鳴は衝撃の津波に呑み込まれる。
「ヂィッ!!」
地上にいれば振動で立つことすらままならず、衝撃で下手をすれば死ぬ。そう判断して空へ逃げた宿儺に襲い掛かったのは衝撃波と岩の散弾。衝撃を風で和らげ、散弾は斬撃で切り払い、弱くなったものは体で受け止めたがそこまで。眼前で斬ってくれと言わんばかりに横たわる首に目もくれず、即座に身を翻す。
上空から更に
(横に避けようが被弾は免れん……ならば!)
自ら迫りくる蛇腹の壁に突っ込む。掠るだけで死に至る竜麟の隙間を神懸かりな体捌きと風の操作で突破した宿儺は、
吐き出されたのは紫紺の息吹。最低限の風で逸らした息吹が左上腕を掠り、そこから腐食が始まったのを察するなり即座に自切。左下腕が握る『草薙の剣』が操る残りの風で『魔法』に対する鎧である
「【解】!!!」
身じろぎ一つでも人を殺す巨体に触れて刻む【捌】では
『――――――――――――――ッ!?』
切断面から噴き出す血がまるで大瀑布のように下の方へ降り注ぐ。声なき悲鳴を上げて悶える首を庇うように他の首が襲い掛かるも、それを予期して欲張ることなく回避に移っていた宿儺は難なく攻撃を躱しきり、残っていた足場に着地するなり切断した腕や細かい傷を治していく。
(持っている
――思考を回して『ヤマタノオロチ』の攻略を楽しむ宿儺に対して、怪物は
眼下の
故に『ヤマタノオロチ』は決断する。全力で、この敵を排除することを。
「……なんだ?」
宿儺が見上げる先で『ヤマタノオロチ』の八本ある首の内、
困惑するのは宿儺。まさか目眩しのつもりか? それとも俺が攻撃のために接近した時の位置を探る『
なら何のために――意味を理解しようとする宿儺の視線の先で広がっていた毒々しい
脳裏で最大の警鐘が鳴り響くより先に、宿儺は全力の回避を行っていた。
直後。
「がっっっ!?」
「【捌】!」
盛大に粉塵を巻き上げながら切り刻まれる大地。斬撃の衝撃で浮かび上がった岩石の隙間に潜り込んだ瞬間、宿儺の上を色の付いた何かが凄まじい速度で通過していった。
「やってくれたな!!」
視認することが叶わずとも、千切れていた右腕の残りを切り落としながら宿儺はその正体に見当をつけていた。
山を越える巨体を持つ『ヤマタノオロチ』の動きは緩慢であり、小回りが利かない。
しかし、ここで『ヤマタノオロチ』は広範囲を攻撃できる利点を捨て、速度に特化させてきた。音速を超える『穿血』でも躱せる宿儺だが、あくまで5Cにも満たない『点』での攻撃。規格外の体格を有する存在の『点』の攻撃は小さな者にとって『面』の攻撃と相違ない。
(『腐食』以外の残りは『麻痺』『睡魔』『倦怠感』か……業腹だが、『草薙の剣』がなければ死んでいるな。そしてこいつ、俺を
宿儺の推測は正しい。
『ヤマタノオロチ』の
蛇が捕らえた獲物をじわじわと絞め殺すが如し。『ヤマタノオロチ』は毒によって全てを殺す陸の王者『ベヒーモス』、荒れ狂う津波によって万物を海の藻屑にする海の覇王『リヴァイアサン』にも劣らぬ怪物である。
宿儺は称えられるべきだ。
たった一人で『ヤマタノオロチ』に本気を出す敵と認められたのだから。
「……」
宿儺は何も言わない。
ただ、最後まで戦い抜くことをその身から滾らせる『魔力』で示した。
「【龍麟】【反発】【番いの流星】――チィッ」
三時間三十四分。宿儺が一人で戦えた時間。
詠唱を終えて放たれたのはただの威力が高いだけの斬撃。『魔石』がある胴体に向かう斬撃は
目鼻口から血を垂れ流し、全身を駆け巡る魔力によってあらゆる血管と神経が破壊され、それでも魔力を操作するために燃えそうなほど脳を酷使する宿儺は限界を迎えていた。
――
『
確かに宿儺は【御廚子】等の再現に成功している。だが、それ止まりだ。
『魔法』も『魔力回路』も自身に適合されていない宿儺は身体強化をしている間、常に『
そんなたらればに縋らず、今の宿儺に勝つ方法があるとすればそれは――
「がっっっ――」
遂に『ヤマタノオロチ』の攻撃が宿儺を捉えた。
数々の
尾と体の間に構えた『草薙の剣』が破壊され、交差させた腕はへしゃげて、全身の骨に無数の罅が生まれた。それでも宿儺の肉体が断裂しなかったのは『草薙の剣』が砕けても残っていた最後の風のおかげ。
空を切り裂く肉の弾丸となった宿儺は一里を優に超える距離を飛び、大地に叩きつけられるなり盛大に血を吐いた。四つの瞳から急速に光が失われていき、その体は動かなくなった。ピクリとも動かなかった。
『『『オオオオオオオォ……』』』
ようやく大人しくなった敵の元へ『ヤマタノオロチ』は這いずっていく。放っておいても死ぬかもしれないが、確実にトドメを刺しておくべきだと本能が告げていた。敵が飛んで行った場所まで五分とかからない。
戦いは終焉へと近付いて行った。
「よっ」
「あ゛?」
前世の記憶にある空港。いつの間にかそこにいた宿儺に声をかけたのは彼が生涯忘れないと誓った男――五条悟。
・宿儺の魔法使用状態について
宿儺は魔力回路が二つあります。レフィーヤは一つしかないけど『スキル』によって疑似的に『魔法』を二つ発動させていますが、宿儺は全く同時に『魔法』が使えます。
そんな宿儺ですが身体強化を使っている間、魔力回路が一つ埋まります。理由は強化魔法のイメージが呪力強化に引っ張られ、使う魔力の量によって倍率が変わるものになっているからです。付与魔法であれば発動した後は魔力回路も使えました。
そのため、身体強化を行っている間は【御廚子】【反転術式】【領域】を一つの魔力回路で切り替えて使わなければなりません。更に領域に関しては神業も神業なので負担も凄まじく、使ったら身体強化の倍率は著しく下がる上に精神力も領域展開中はバカみたいな勢いで減り、使用した魔力回路は一時間以上使えないというデメリットがあります。唯一の利点は魔力回路が二つあるので連続で領域展開できるくらい。
世界を断つ斬撃も脳の処理能力の限界で再現できていませんでした。
通常の魔法でも『魔力暴発』が頻発するのに、それより扱いに難がある先天系魔法でここまでできる宿儺は普通に化け物です。『神の恩恵』を授かった状態でやれば余裕でLv.6~7に到達する偉業です。
あと今後の展開は決めてますが、アンケートの協力をお願いします。次の話ではヤマタノオロチの強さとかも解説したい。
黒閃ってあり?
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あり
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なし
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作者の自由