ちいかわ世界にちいかわ族として転生してしまった…… 作:嘘月あかり
目を覚ますと外、野原に寝転がっていた。俺に外で寝るような趣味は無い。酔っぱらって外で寝るような失態を晒すような真似もしたことは今まで一度だって無かった。つまりこれは……? どういう事なんだ?
「ここは……」
つぶやきながら立ち上がる。なんだろう、妙に視点が低く感じるというか、周囲の景色も見慣れた物とは少し違う。なんか……現実感がないというか、なんというか……
「ダメだな、言語化が出来ん」
五感と意識がこれは夢ではない事を如実に突きつけてくる。ならば一体ココは何処だというのだろうか。人にさらわれた? ならば縛られていたり、何かしら脅されたりとかリアクションがあるはずだ。こんな野原に放置なんてしないだろう。俺は芸人や配信者でもないし、ドッキリの企画でもないだろう。身内にそういうのを生業にしている奴もいないしな。
「移動するか……」
考えていたら腹が減って来たし、喉も乾いている事に気が付いた。人は水を飲まないと死んでしまうからな。とりあえず自販機でも探すとしますか。
日本は自販機大国ではなかったのか!?
悪態をつきたくなりながら、目を皿にして周囲を見渡し歩けども、自販機一つ見当たらない。もしかして……日本じゃないのか!? なんて、どうやって眠っている間に海外の野原に放置したというのか。大体目的はなんだ? そんなことしても何も得られやしないだろう。ならば何故俺はこんな場所にいるのか……
「お! あれは……」
歩いている先に湖のような物が見えてきた! そうか、湖か。湖かー……
現代日本で安全な水しか飲んでいないこの胃腸は果たしてろ過していない水に耐えることは出来るのだろうか? しかし喉は乾いている。でも下痢になったら脱水症になって動けなくなるかもしてないし、うーん……
ふらふらと誘われるように湖に近づいていく。まあ、綺麗で安全そうだったら飲めば良いんだよ!
湖を覗き込む。水は透き通っていて綺麗に見えるが、そんなことよりとんでもない事実に気が付いた。
「うぇ!!? これ……俺!?」
おれ、サンリオの世界に転生したのかもしれん……
水面に映る俺の姿が、どう見てもぬいぐるみみたいなサイズのハムスターなのだから……
こ、これが俺の姿……? でも確かに俺の動きに連動して水面のハムスターも動く。やはり俺はサンリオの何かしらのキャラクターに転生したって線が太いな。まあ、他の女児向けの可愛いキャラクター商売の世界に転生したのかもしれないが。
転生と言えばチート能力で無双してハーレム築くなんてよく聞くが、無双と言えど戦闘だ。命のやり取りだ。ならば命の危険がない世界に転生できた俺の方が幸せなんじゃあないか?
そう考えると少し心が軽くなった。これから友達が出来て、冷蔵庫のプリンを食った食わないのくだらない喧嘩とかしつつ、もしかしたら仲裁ポジになったりして、毎日幸せに生きていくのだろう。あれ? 最高じゃないか?
こんな可愛らしい見た目で戦闘するとかありえないしな! ワハハ!
先程まで一定間隔で近づいてきている地面の揺れが収まった。
考えないようにしていたんだ。変に揺れているなって。でも俺は自分の身に起きた出来事で精一杯で、無視してれば勝手に居なくならないかなって思っていたんだ。
真後ろにいる。
もしかしたら、この世界の案内役とかなのかもしれない。いや、絶対そうに決まっている。意を決して振り向くと、巨大な拳が眼前に迫っていた!
うおおあぶねええ!!
咄嗟にしゃがんで避け、一目散に逃げだす。背後からは追いかけてくる足音!
「ブンブンぶん殴り」
「ひぃいいいい!!!」
なんかヤバい事喋ってるよオ!?
こんな小さな体躯で敵うはずもないので、俺は今までの人生で一番全力で走って逃げた……
「ハァッ、ハァ……んぐ、し、死ぬかと思った……」
ずっと生きた心地がしなかった。とにかく必死に逃げて、茂みに飛び込んで身を隠すことで何とか撒くことが出来た。去っていったのを確認できたので、漸く一安心だ。
「しかしこの世界……もしかしてサンリオのキャラの世界じゃないのか!?」
じゃあ俺は一体どんな恐ろしい世界に転生してしまったんだ……