続いた
隕石を破壊して数日。
俺は、ある町に存在するたこ焼き屋。その地下の実験施設で怪人と戦っていた。
『今回の相手は、攻撃特化型、酸や毒の生成能力を高めた型、この前お前が持ち帰った電撃を使う怪人を参考にした型だ」
警告音と共に投入された三体の怪人は、どれも災害レベル:竜相当の化け物だ。
音を置き去りにした乱打を筋肉で流し、雷を受け止め、王水すら超える酸を喰らっても筋肉は溶けない。
『コレでもダメか...だが』
「あぁ。ジーナス。前回よりは強くなっていた。実際、酸でちょっとだけ火傷したぞ」
『今回はまだ実験体が残っている。気体で体が構成された型と、液体で構成された型だ』
今いる場所。地上部分はただのたこ焼き屋。
表向きはたこ焼き屋だが、その正体は「真・進化の家」...俺がいい感じに壊滅させた進化の家の後継団体にして、世界を守る上での俺の心強い味方だ。
ここから先の未来。ボロスや怪人協会と戦う上で、あまりにも戦力が足りない。そう思った俺は、なんとかして自分の勢力を拡大する必要があると思ったのだ。それも、ヒーロー協会に知られない形で。
ボフォイ博士に頼り切りの防衛機能、防諜対策ガバガバのヒーロー協会に見せている札は戦力になり得ない。だから、ヒーロー協会に知られていないS級相当の戦力、それに加えて、自分の強化に繋がるような「科学者」を探した。
ボフォイ博士は当然論外。駆動騎士も信用できない。童帝はまだまだ甘いところがある。ネオヒーロー関連者?同じく論外。できれば、原作最新話時点ではすでに物語から離脱しているような存在。その上で強力な味方が欲しかった。
いた。進化の家である。
阿修羅カブトを量産できるだけだけの能力がある上に、目的が世界征服とか人類殲滅じゃなくて、人類の進化。最悪裏切られても、人類の殲滅とか同化をする予定の怪人協会とか、街を破壊しまくりなネオヒーローズよりマシ。
(人類の進化、とか言ってる時点で多分瓦礫の上に立つような趣味はない、無駄な虐殺を好むタイプでもない。及第点...なのか...?)
被害を最小化しようと思うなら、進化の家は選択肢に上げられる。問題は交渉だが...なんか上手くいった。
(しかも上手いこと目的を「人類の進化」から「俺を超えること」にすり替えられた感じがする。...いよいよやってることヒーローというより悪役じみて来たなぁ...)
俺はいい訓練相手と、いざという時の戦力を。ジーナスは俺という研究対象と、資金援助をもらえてWin-Winの関係。できればいい関係を続けていきたいものだ。
『そういえば、クセーノ博士に提供した、耐酸コーティングの理論はどうだった?』
液化する怪人を、拳の風圧で消し飛ばし、気体の怪人は、そのナノより小さい核を撃ち抜いて消滅させながら会話を続ける。
災害レベル:竜の怪人なんてそうそう出ない。それが複数いる環境で戦える機会など滅多にない。それを毎日の様に享受できるこの環境は強くなるにはもってこいだろう。
本人は黙っているが、しれっと毒ガスは充満しているし、室内の温度も極寒だったり灼熱だったりその時々によって様々という極限状態。まぁ、それでも強くなっている気はしないのだが。
「あー、あれのおかげで、ジェノスが単騎で深海王とかいう怪人を撃破できたぞ。災害レベル:鬼の中でも上位の相手の使う酸だったが、問題なかったってよ」
『当然だろう。お前の体組織を参考にして編み上げた理論だからな』
サイボーグ技術に関しては専門でないため、ジェノスを作り上げた博士の技術を吸収するため、偶に俺を通してクセーノ博士と交流している様だが、まぁ致命的な技術は渡していないから問題ないだろう。
...まぁ、ゾンビマンに悪いと思わんでもないが、コレも人類の未来のため。目を瞑ってもらおう。
(本当にコレ、原作のクロビカリよりマシになってるのかね...?)
本人は気づいていないが、強化された阿修羅カブトを瞬殺できる以上、オリジナルのクロビカリよりは強くなっている。
そして同様に、ある事実にも気づいていない。
ボロスは。全宇宙の覇者は。
多少の努力でなんとかできる相手ではないという事実に。
♦︎♦︎♦︎
かつて「進化の家」という組織があった。
人類の種の進化を推し進めようとしたその組織は、S級ヒーロー「クロビカリ」の手によって壊滅した。...表向きは、だが。
その日、ジーナスは人類という「種」。その進化の可能性を見た。
「阿修羅カブトが...手も足も出ていない、だと...!?」
間違いなく、自身の最高傑作である「阿修羅カブト」。それが奥の手である「阿修羅モード」を発動してなお届かない存在。
それが、目の前にいた。
天井を蹴り、重力を乗せた全身全霊の踵落とし。阿修羅カブトの足が逆に砕ける結果に終わる。
秒間百発を超える拳の乱打。弾力のある大胸筋に弾かれ、全ての衝撃が吸収される。
噂には聞いていた。
「S級ヒーロー」最硬の男「クロビカリ」。噂通り最硬であり、そして噂以上に最強だった。
「...こんなものか?」
「だったら...今度はこっちから行くぞ?」
黒が動いた。
見えなかった。後に、施設に設置されたスローモーションカメラでも認識できないほどの速さで繰り出された拳は、一撃で阿修羅カブトの体を消滅させた。
「馬鹿な...阿修羅カブトが、一撃で...」
品性はないが、それでも何の怪人やヒーローを遥かに凌駕する性能を持っていたはずの阿修羅カブトが、一撃。
人類の進化の終着点を見せつけられた気がした。リミッターが外れた存在。それが彼だ。こんなものを見せつけられた以上、これ以上の研究に価値は──
「はは」
乾いた笑いが漏れる。
なんだ、こんな化け物が自然発生するなら、私の研究に価値はなかった。もうこんなことはやめて、静かに余生を過ごそう。
「諦めるのか?」
黒が囁いた。
「タツマキ、キング、ブラスト。世界には俺以外にも逸脱した力の持ち主は複数いる」
「発生原理すら不明な災害レベル:竜の怪人たち」
「突然この世界に現れる超越者。それは俺だけじゃない。複数例があるわけだが...再現性のない奇跡ではない。俺だけなら奇跡だが、複数例がある以上、それは再現性のある「科学」である可能性が高い」
「それに挑むことすらなく、お前は科学者を辞めてしまうのか?」
そういう問題じゃない。
ゴールのわかっている問いを追いかけることほど、つまらないことはない。だから、私はもうこの世界から降りることにしたんだ。
「俺が進化の結論だと。本当に?」
「俺は超能力を使えない。その点ではタツマキに劣るだろう。メタルナイトのような知能もない。あと、流石に宇宙空間での長時間の活動はできないだろう」
「まだ、進化の余地は残している」
「それを知りながら、お前は自分の夢を諦めるのか?」
黒がその手を差し伸べる。ヒーローであるはずの彼が、まるで悪魔のように見えた。実際、悪魔なのかもしれない。彼の手を取った後に知らされた、神すらも超えるという目標を聞いた後は、そうとしか思えなくなった。
「俺の肉体情報、これを投資しよう。その代わりに、ジーナス。お前は俺の下につけ」
最高の研究材料を示された。まだ夢への道が途切れていないことを知った。だから、その手を掴んでしまった。
「喜べ。お前の願いはようやく叶う」
ネオヒーローズ編、そこには無数の阿修羅カブトを従えるクロビカリの姿が──