見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます!   作:蒼天 極

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お泊まり会をするらしい……へ、俺も参加していいの?

「ん〜♪」

 

「おいしい?」

 

「うん!」

 

 普段両親がパン屋で家を空けている為、日中は我が家に入り浸っているひなちゃんにお手製のクッキーをご馳走していた。

 今回はメープルシロップを試してみたけど、ひなちゃんの反応からしてかなり高評価っぽいね……。

 

「なのはちゃんの作るクッキーとどっちが美味しいかな?」

 

「なのちゃん!」

 

「…………」

 

 読者のみんな……作ってくれた人にそれはないだろうってひなちゃんを批判するのはやめておくれ…………。ひなちゃんは生粋の正直者……嘘がつけない子なんだ。

 

 それに海外で本格的に修行したパティシエール、桃子さんの娘のなのはちゃんはクッキー……と言うかお菓子作りが非常に上手でお店で出せるレベル。勝てないのは当たり前なんだ。

 

「でもひなはれお君のクッキーも好きだよ。この間の飴入りクッキーはなのちゃんのよりも美味しかったもん!」

 

「ほんと? あれ相当拘って作ったから嬉しいなぁ」

 

 気に入ったのならまた作って……いや、毎回クッキーだと飽きるだろうし次は新作プリンでも挑戦してみようかね……いや、マドレーヌも捨てがたい…………。

 次にひなちゃんに食べさせるお菓子は何がいいか考えていると、美味しそうにクッキーを頬張っていたひなちゃんが思い出したかの様に口を開く。

 

「ほーいえはほんほね〜」

 

「ひなちゃん、まずはクッキーを飲み込んで? お行儀悪いよ?」

 

「モグモグ…………そう言えば今度ねぇ、みんなでお泊まり会するんだぁ」

 

「え、俺誘われてない件について……」

 

 いや、待て待て落ち着け……どうせ女の子達だけでやるに決まってる。うん、きっとそうだ。きっと枕投げした後に恋バナとかできゃっきゃうふふするに違いない。

 

「それで、誰と泊まるの?」

 

「なのちゃんとリサちゃんとすずちゃん」

 

 ほら見ろ。どうせそんなことだろうと「と一緒にヤマト君のうちにお泊まりするの」……あいつのオリ主人生、ほんと絶好調だなぁ。

 

 と言うかヤマトは誘われて俺はハブられたのか…………ってショックを受けてどうする。立場を弁えろ踏み台その2!!

 おそらく今回はアリサちゃんかすずかちゃんがヤマトと仲を深めるために企画したって感じだろう。そしてヤマトの事は友達も思いつつも異性として全く意識してないひなちゃんは、言っちゃなんだが仲間外れにしたら可哀想ってことで入れただけ。

 でも流石にお泊まり会という花園に男……ましてや踏み台の俺を誘えなかったのだろう。

 

 そう言う事ならしゃーない。今回はみんなで楽しんでくると良いさ。俺はデバイスを弄り回しながら今頃みんなは何やってるんだろ〜って思いを馳せているからさ。

 …………悔しかなんてないからな!!

 

「それでね、れお君もおいでーってすずちゃんが言ってたよ」

 

「もしもしすずかさん? 君ねぇ、せっかくヤマトと仲を深められるイベントなのになんで俺誘っちゃうかな?」

 

 思わずすずかちゃんに連絡してしまった。

 いや、仲間外れにされてなかった事は嬉しいんだよ? 嬉しいんだけどさ……せっかくの好感度イベントを俺という異物を入れて台無しにする意味がわからない。

 だが電話の向こうのすずかちゃんは困った様な口調で話し出す。

 

『あはは……じ、実はヤマト君と二人きりでお泊まりしようって考えてたんだけど、ヤマト君がアリサちゃんとなのはちゃんを誘っちゃって……』

 

「……」

 

『多分レオ君とひなちゃんも誘うだろうし、もういっそのことみんなでお泊まりしちゃえー! って。……なんかごめんね』

 

「すずかちゃんは悪くないよ。諸悪の根源はあの鈍感野郎だ」

 

 予想の左斜め下に酷かったでござる。

 

 今更だがヤマトはメチャクチャ鈍感だ。なのはちゃんは達が幼いながらの方法で必死にアピールをしても友達がスキンシップしてるだけって思い込んで、なのはちゃん達の好意に全く気づかない。

 全く。オリ主と言う恵まれた環境にいるのにけしからんやつだ。こうなればニコポナデポという禁じられた力を悪用して俺がオリ主になってやろうか。

 

「……いや、俺のニコポナデポは逆効果か…………」

 

『……なんか悪いこと考えてる?』

 

「微弱な悪意に気がつくとは流石だねぇすずかちゃん。いやね、ヤマトのやつをどうしてやろうかと思ってさ」

 

「ほどほどにねぇ」というすずかちゃんに詳しい日時と必要なものを聞いて電話を切ると、財布と家の鍵をバックに投げ入れる。

 

「ひなちゃん。お泊まり会用のお菓子買いに行くよー」

 

「はーい。ひなの好きなの選んでいーい?」

 

「もちろん。でもなのはちゃん達も食べるんだから好きなのばっかり取っちゃダメだよ?」

 

「うん!」

 

 ヤマトの鈍感さが原因とは言えひなちゃん以外とお泊まり会するのは何気に初めてだ。せっかくだから俺も楽しませて頂こう…………。

 

 

 ◇

 

 

 学校から帰宅後、素早く私服に着替えて前日のうちに用意していたお泊まりグッズを手に取るとそのまま玄関へ…………

 

「あれ、ガスの元栓って閉めてたっけ? あと、戸締りも確認しておかないと……」

 

 数分後、元栓の確認と戸締りを済ませた俺は、ヤマトの家ではなくひなちゃんの家へと向かう。一緒に行く約束をしてるのだ。

 ひなちゃんの自宅は駅前の商店街の中。喫茶翠屋の三軒隣のパン屋、モモザキベーカリーの二階にある為、そちらに向かうと既に準備を済ませて新しいひなちゃんがお店の前で母親の羽鳥さんと向き合ってた。

 

「いいひな? あんまり我儘をいってヤマト君やみんなを困らせちゃダメよ? あと、夜はちゃんと九時には寝ることいい?」

 

「はーい、それじゃ行ってきまーす。いこ、れお君!」

 

「……本当に分かってるのかしら? ごめんね、レオ君。ウチのひなちゃんをよろしくね」

 

「はい、了解です」

 

 羽鳥さんにはこう言ったが、お泊まり会の醍醐味は夜更かしだ。なのでひなちゃんが夜更かししようとするのならば俺は止める気はない。

 それに初めてのみんなとのお泊まりって事でテンション高くなっているのに注意をするのは興醒め。酷すぎない限りはひなちゃんの自由にさせる腹づもりでござんす。

 

「……なんかれお君に頼るのも不安になって来たわ」

 

「あれぇ?」

 

 なんでこの街の方々はこんなにも鋭いのだろうか?

 

『マスターが分かりやすいからではないですか?』

 

 俺ってそんなに単純なのかなぁ?

 その後歩いてヤマトの家に向かうと既になのはちゃん達が揃っていた。チッ、なのはちゃんがいなければ鈍感な件について一言言ってやろうと思ったが命拾いしたなぁオリ主……。

 

「あ、ゲームある! ねぇねぇヤマト君、これやってもいーい?」

 

「こらひな。それよりも先に宿題するって言ってたでしょ?」

 

「え〜……」

 

「今頑張っておけば後で何も気にせずに遊べるから頑張ろ?」

 

 と言うわけでヤマトの家に来て一番最初にやることは宿題だ。

 明日から三連休ということもあり宿題は多い。だからこそ今日さっさと終わらせておいて残り三日は悠々自適に過ごそうと話し合ったのだ。

 

「う〜……ヤマト君国語教えてほしいの」

 

「ひなも教えて〜」

 

「うん? あぁ、ここは……」

 

「百字帳ってすでに漢字覚えてる私達にとっては、ただの手の運動よねー」

 

「そうだね。でもアリサちゃん書くの早いよね」

 

「ふふん、まぁね。……ねぇアンタ、アタシより書くの早いくせに字も達筆って喧嘩売ってんの?」

 

「納得いかねぇ!」

 

「アリサちゃん、流石にそれは横暴すぎるよ……」

 

 字が上手いのは上司のパワハラの一環で過剰なまでに綺麗な字じゃないと読んでくれないから必死に綺麗に書く練習をした血と涙と努力の結晶なのだが、その件で喧嘩を売るなんてなんて娘だ。親の顔が見てみたいね。

 

「そういえばレオ君もヤマト君も、家ではシャープペンシル使ってるんだね。大人なの」

 

「そうか? 普通だけど」

 

「お前は俺たちが異端であると自覚しろ。因みに俺の場合は鉛筆は削りカスが嵩張るし、鉛筆は削るたびに重心が変わって書きづらくなるからだよ。それに比べてシャーペンならゴミは少ないわ重心は変わらないわでいい事だらけなんだよ」

 

「学校がシャーペン禁止じゃなければ学校でも使うんだがなぁ……」

 

「へぇ〜。……ねぇねぇれお君、それちょっと貸して?」

 

「いいよ」

 

「ヤマト君、なのはにも貸して欲しいの!」

 

「あ、なのは抜け駆け! アタシにも貸して!!」

 

「私も」

 

「いやシャーペン足りなくなるって! 誰か一人レオから借りろよ「無理!!」なんでだ!?」

 

 その後興味を示した四人娘にシャーペンを貸したのだが、思った以上に気に入ったようでシャーペン買うと決めたようだ。シャーペンの世界へと誘惑するなんて俺達も罪な男だよ。

 

 その後宿題も終わった為、ひなちゃんがやりたがっていたゲームをみんなで対戦していたのだが、ぐううぅ……っとひなちゃんのお腹が鳴る。

 

「ヤマト君、お腹すいた〜」

 

「ヤマト、ひなが夕飯をご所望よ。今晩何?」

 

「え、あー。もうこんな時間か。今晩はピザで良いよな?」

 

 出前かよ。

 そう言えばヤマトって料理出来ないから普段コンビニ弁当か出前って言ってたな…………料理出来ないからってこんな幼いうちから栄養の偏った生活するんじゃないよ。将来生活習慣病になってもおっさん知りませんからね!?

 

「ピザ!」

 

「ピザはお母さんが焼いてくれたのは食べたことあるけど、出前のは初めてなの!!」

 

「ちょうどピザハットのピザって気になってたのよね!」

 

「楽しみだね」

 

「あら、女子組は中々に乗り気っぽいですな……」

 

 考えてみればなのはちゃん家とひなちゃん家は桃子さんと羽鳥さんが料理に関して手を抜く人ではないし、外で食べるよりも家のご飯の方が美味しいタイプだろうから外食とかは少ないのだろう。

 アリサちゃんとすずかちゃんはお嬢様で、出前を頼むなんて選択肢がそもそもない。そう考えると出前も貴重な体験なのか。

 そして俺も転生してからは外食は翠屋くらいでしかしてなくて、出前は高いから基本とってはいないわけで……

 久々のピザだぜひゃっほう!!

 

「ひなウインナーのピザがいい!」

 

「あ、ヤマト君これなんてどうかな?」

 

「オレは肉系ならなんでも良いぞ」

 

「ばっかお前、ピザは野菜とバジルのやつがうまいんだよ」

 

「アタシは海鮮系が気になるわね」

 

「サイドメニューも注文しちゃう?」

 

 みんなで相談した結果、肉系、野菜系、海鮮系を一枚ずつ注文して分け合って食べたのだが、久しぶりに食べたピザは特別美味しく感じたのだった。




 〜おまけ〜

「そう言えば気になってる事があるんだが少しいいか?」

「どーしたのヤマト君?」

「レオの家に遊びに行くといつもひながいるけどさ……もしかして二人って同居してんの?」

「えぇ!? ちょ、ひなちゃん、レオ君! 流石にそれは早すぎるの!!」

「落ち着いてなのはちゃん。同居はしてないから」

「パパとママがパン屋さんやっててお家に誰もいないから、お手伝いするとき以外はれお君の家に遊びに行ってるだけだよ〜」

「え、それってほぼ毎日遊びに行ってるって事じゃ…………」

「確かにお店の定休日以外は毎日来てるし、ひなちゃんの私物が増えてきたから我が家の空き部屋一つひなちゃんに貸したけどさ…………あ、そう言えばあの部屋散らかって来てるからそろそろ片付けないとね?」

「え〜、まだ綺麗だよ〜」

「ダーメ。お泊まり終わったらお片付け会するからね」

「ぶー……」

「……アンタらそれほぼ同居じゃないのよ…………」

「もしひなちゃんがヤマト君のこと好きだったら、一番厄介なライバルになってたかもしれないね……」
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