見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます! 作:蒼天 極
「……ん」
目を覚ますと知らない天井。ゆっくりと身体を起こしてフカフカなベッドから脱出。
まるで自分のものではないような身体で立ち上がると目線がかなり低くなっていた。身体つきはだいぶ幼いし髪も伸び切っている。あ、髪の毛白い。
「……本当に転生したんだ……ってメチャクチャ声高い。まるで女の子のような……」
いや、これくらいの背丈の男の子と女の子の声の違いって分からないだろうけど、これはどこからどう見たって女の子の声なんだよな。
髪は伸び切っていて女の子のような声という事でまさかと感じた俺は、鏡を探して俺の新たな容姿を確認する。
どれどれ〜……おおう。
「あら可愛い……。芸能界デビューしたらすぐに売れっ子の子役になれるレベルの顔やんけ。将来が楽しみすぎる……」
鏡に映っているのは将来が楽しみな美幼女。紫色の右目と黄緑色の左目、そして女の子のように長い白……いや銀髪で幼いながらも整った女の子のような顔。
え? 俺性転換してないよね? 性転換するのはまどマギの世界だけだったはずだけど……ちょっと確認確認……ちゃんとある。つか前世よりも大きい。
『おはようございます。我がマスター』
「ん?」
股間の前世とのギャップに前のが小さすぎただけなのかと軽く凹んでいると、近くでiPhoneのSiriのような機械音声が聞こえる。
えっと……声のした方を探してみると、机の上には銀色の星型のエンブレム。
…………これが女神の言っていたサポートAIかな?
『私は神により作られた超高性能AI……あなたの人生を適当にサポートさせていただきます』
え、自分で超高性能って言っちゃうの? ……というか適当って、誠心誠意サポートしてくれね?
製作者が製作者ならば作られたものもそういう性格になるのかと内心不安に感じながらも、これから長い付き合いになるという事で手に取って改めて自己紹介しておく。
「あの女神から聞いてると思うけど俺は宮坂麗央、よろしく。えっと……君名前は?」
『ないです。私のことはどうぞご自由にお呼びください』
「分かった。それじゃあよろしくデバ子『おい?』じょ、冗談冗談」
やべえ今のやり取りだけで、将来このデバイスに尻に敷かれるんじゃないかって不安になってしまった。
しかし名前かぁ……せっかくならカッコいい名前にした方がいいんだろうけど、お世辞にもネーミングセンスは良いものではないんだよなぁ……。
無難に神話に出てくる武器から頂けば間違いはないかな?
「……よし、ならアスカロンって呼ばせてもらおうかな。愛称はアスカとカロンどっちがいい?」
『どちらでも構いませんよ』
「じゃあ間をとってスカさんで『はぁ?』……ご、ごめんなさい」
どうやらこのAIには冗談が通用しないらしい。
全く、嫌になっちゃうよやれやれ。
『今あなたが考えてることについて徹底的に追求したいところですがまぁ、いいでしょう。マスター。我が創造主から伝言があります』
こ、コイツ……AIの癖して察しが良いのかよ。
もしかしたらこのAIを世間に公表したら凄まじい技術転換起こるんじゃないか……?
一瞬このAIを売っぱらってしまおうかと邪念にかられてしまったが、せっかく女神がくれたものだからやめておくか……。
そんな事を考えていると、『恐ろしいこと考えますねマスターは……』と人工音声特有の抑揚のない、しかし呆れたような声でため息を吐きながらアスカは続ける。
『貴方は今4歳。2年後に私立聖祥大付属小学校に入学することになります。また、この家には貴方以外いません。両親は管理局員で数日前に事件に巻き込まれ死亡したという設定になっています。ママのおっぱい吸いたかったと思いますが残念でしたね』
「は、何言ってんのアスカ? 親なんていない方がいいでしょ? 前世の記憶持ってたら揉めるだろうし、そもそも親っていう生き物は自分の下らないプライドや都合で子供の人生を好き放題蹂躙する存在なんだから寧ろいなくてせいせいするよ」
確かにこの身体での一人暮らしは不便かもしれないが、親の存在に足を引っ張られるくらいならその程度大した問題ではない。
これに関しては女神に感謝しなければならないだろう。本当にありがとうございます。
『あ、親って言葉は地雷っぽいですね。ドス黒いオーラ出ちゃってますよ、前世で何があったんでしょうか……。こほん、お金については創造主によって親戚からの援助という体で二十歳になるまでは毎月百万円ずつ振り込まれます』
「毎月百万!? 豪遊し放題じゃん!!」
百万あれば美味しいもの食べて好きなもの買ってやりたい放題できる。
……いや、待てよ? 敢えて今は我慢して今までの生活水準を上げずにしっかりと節制すれば、二十歳になる頃には莫大な貯蓄となっているはずだ。さらにプラスアルファで管理局で20年程度働いたらもう働かなくても食っていけるだけの貯蓄になるはずだ。
『ですがあまりに素行が悪い場合は支援額を少なくしていくため、出来るだけいい子でいるように。それでは第二の人生を楽しんで。とのことです』
どうやら素行が悪いとお金は減らされていくシステムだったらしい。一ヶ月で生活するにはあまりにも貰い過ぎだしこの程度のペナルティは当たり前か……。
でも生活できなくなるまで支援額を減らされるなんて余程の事をしない限りないだろうし、毎月全部使わずしっかり貯金しておけば最悪支援を打ち切られても数ヶ月は生活できるだろうし問題はないかな?
「それでアスカロンはどんな性能なの?」
『私はサポートAIですがデバイスに頼らない簡単な魔法の講義と、時空間転移魔法でミッドチルダへ貴方を移動させられるくらいしか出来ませんよ。無能すぎて笑えますよね?』
自嘲気味に吐き捨てるアスカだが、別にそんな事ないと思う。魔法の講義は魔法の世界においては重要だろうし、ミッドチルダに転移出来るならばデバイスの材料が必要なときに充分重宝しそうだ。
『もっと機能が欲しければ創造主から賜ったチートを駆使してデバイスを作るんですね。話はそれからです』
「そうか……まぁ確かにせっかくのデバイスの知識のチートを持ってるんだからしっかり活用しないとな」
……しかし待てよ? せっかくの女神特製の超高性能AIなんだし、アスカを核にしたインテリジェントデバイスもそれに見合う性能にしたいところだよな。
この際、デバイスの知識だけじゃなくて色んな知識を勉強してぼくのかんがえたさいきょうのデバイスにするのも悪くないかもしれない。
「原作始まるまでにあと5年もあるんだし、アスカロンはゆっくりと強化していけばいいか。……あれ? 原作って5年後だった? でも5年後って9歳だしいくらなんでも早すぎるだろ。だとしたら早くても中学生くらいに原作が……でも違うような。あれれ?」
『原作知識を失っているので何が起きたなども忘れてしまっているのですよ。しかし今回だけは特別に教えてあげましょう。魔法少女リリカルなのはの一期はあなたが三年生の頃に始まります』
「そ、そうか……」
原作知識を無くすっていつ何が起きたとかもド忘れしてしまうものなのか……。
ちょっと流石に不安だな、紙とペン探してきて今のうちに微かに覚えてる範囲で何が起こるかを紙に残しておいた方がいいかもしれない……。
「それに原作が始まるまでの5年間の間にアスカロンのインテリジェントデバイス化に、ある程度戦えるように鍛錬もこなして……案外やる事多いな」
『多いっちゃ多いですが、それをこなせば原作を生き抜けるかと。踏み台になる気ならば止める気はありませんが、私のマスターになった以上無様を晒さないように鍛えさせていただきますよ。泣いても逃さないのでせいぜい覚悟を決める事です』
「スパルタかよ……でも心強いや。これからよろしくな、アスカ」
口は悪いがしっかり質問した事に答えてくれる上に、俺を鍛えてくれるらしい星型のエンブレムを優しく撫でたのだった。
『あ、イケメンっぽく撫でないでもらえます? いい歳したおっさんがそれは痛すぎます痛い痛い! ちょ、私の身体は繊細なんだからそんなに強く握らないで下さい!! やめ、あー! あー!!』
……この性悪AIは売っぱらってしまおうかしら?