見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます!   作:蒼天 極

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授業参観は誰に手紙を送ろうか……

 授業参観……それは小学生にとって特別なイベントの一つ。親が授業の様子を観に来ると言う低学年の頃は恥ずかしくも楽しみな、高学年になるとただの地獄な学校行事。

 

「は〜い、と言う事で初めての授業参観。最後にお父さんかお母さんにお手紙を渡してもらうので、お手紙をちゃんと書いて来てね〜」

 

「せんせーい、俺とヤマトの父さん母さんはとっくの昔に空の向こうなんですけどどないしたらええですか〜?」

 

「え……あ…………」

 

 直後、教室に静寂が訪れる。

 あらあら、ちょっと気になったから聞いただけだったけど、確かにこの歳で両親亡くして一人暮らしって側から見たら重い話だからなぁ。まぁむしろ一人暮らしは気に入ってるタイプだけど。

 

「…………宮坂君と豊田君はお世話になってる大人の人に感謝のお手紙書きましょっか?」

 

 

 ◇

 

 

 放課後、ひなちゃんがパン屋の手伝いをすると言う事で珍しく放課後一人になった為、甘いものを食べたい気分だった俺は単身翠屋へやって来ていた。そしてちょうどヤマトも来ていた為相席させてもらう。

 

「お前なぁ……授業中に言うもんじゃないだろ。オレまで同情的な視線を向けられたぞ?」

 

「悪い悪い、確かに授業終わった後に聞きに行けばよかったな。今回ばかりは考えなしだった」

 

「にゃはは……確かにあれはちょっとどう反応したらいいか分からなかったの……。あ、二人ともケーキとコーヒーなの」

 

 先ほどの自分の発言を反省していると、注文したケーキとコーヒーが丁度喫茶店の手伝いをしていたなのはちゃんによって運ばれて来た。

 今日はヒロイン達はお手伝いしたい気分なんだなぁ……と思いながらケーキを食べていると、ヤマトが話を切り出す。

 

「それにしてもお世話になっている大人か……誰について書けば良いんだろうな」

 

「お前は士郎さんとか桃子さんで良いだろ」

 

 コイツに聞いた話だが、ヤマトとなのはちゃんが出会ったのは転生した翌日と本当に早いタイミングだった様だ。

 

 当時、士郎さんがとある事件に巻き込まれてケガで入院中したらしく、喫茶店のマスターを失った事で翠屋が経営の危機に陥ったのだと言う。そして経営の立て直しに高町家が総出で尽力した結果、なんとか持ち直す事に成功したらしいが、その代償になのはちゃんは家族から愛をあまり与えられなかったのだとか。

 

 だがそこで登場したのが我らがオリ主であるヤマト。

 この野郎、公園で一人寂しくベンチに座ってたなのはちゃんに声をかけた様で、最初は「なんでもない」「ほっといてほしいの……」と拒絶してたなのはちゃんだが、金髪に絡まれていた所をヤマトに助けられてから話をする様になったのだと言う。

 

 そしてなのはちゃんの境遇を知ったヤマトは彼女を勇気づけて甘える事の重要性を説き、なのはちゃんが家族にハッキリと寂しいと言う機会を作ったのだ。その結果高町家からはなのはちゃんの友人として受け入れられ、高町家の面々が親がいないと言う事情を知ってからは生活のサポートなんかも受けて今では高町家の次男の様な立ち位置を確立してやがるのだ。

 

「……確かにオレにとっては士郎さんと桃子さんかなぁ。なのは、お前はどっちを書く予定なんだ?」

 

「どっちにするか悩んだけど今回はお母さんにお手紙を書くの」

 

「ならオレは士郎さんに書こうかな〜」

 

「俺がどうしたって?」

 

 噂をすればなんとやらと言うべきか、士郎さんがこちらにやって来る。

 どちらに書くかを決めるのは結構な事だが、なのはちゃん両親の職場である翠屋でするべき話じゃなかったね……。

 

「な、なんでもないの……! なんでもないからお父さんはお仕事に集中して!!」

 

「陰口ではないんで……はい!」

 

「なんだなんだ、怪しいなぁ……。レオ君、二人は何を話してたんだい?」

 

「士郎さんの入れるコーヒーのクオリティは凄いよねって話です。翠屋のコーヒー豆買って家で入れたりするけど、やっぱり士郎さんの入れるのと比べると天地の差があるなぁと。咄嗟に誤魔化すなんてどうやらお二人とも士郎さんに聞かれるのはなんだか気恥ずかしいみたいですねぇ」

 

「そうだったのか。まぁ、俺もコーヒーの淹れ方は随分と研究したからな」

 

 そう言って胸を張る士郎さん。どうやらうまく誤魔化すことができた様だ。

 俺の機転に助けられた二人から尊敬する様な視線を浴びていたが、士郎さんが仕事に戻ったタイミングで感謝の手紙の話に戻る。

 

「だとしたらやっぱりレオはひなのお母さんかお父さんにする予定なのか?」

 

「ん〜、それもありっちゃありだけど、俺は今回ミゼット婆ちゃんにしようかなって」

 

「え、もしかしてレオ君のお婆ちゃん?」

 

「うん。両親はいないけど婆ちゃん(自称)はいるから……。婆ちゃん仕事が忙しくて滅多に合わないけどせっかくの親戚なんだし、羽鳥さんとか鷲一(しゅういち)さん(ひなちゃんパパ)の前にまずは婆ちゃんに書いた方が良いかもって」

 

 それに授業参観の最後で来てくれた親に手紙を渡すのだが、いい歳したおっさんが感謝の手紙ってのもなんだか気恥ずかしいし、絶対に授業参観に来ることのない婆ちゃんにしておけば帰ってから渡すって事で誤魔化すことが出来るだろう。

 手紙も感謝の手紙と分からない様に封筒に入れて、帰ってから読んでって言って渡してしまえばいいしな。

 

 

 ◇

 

 

 その後ミゼット婆ちゃんに対して重役なのに頑張っているという尊敬とこれからもよろしくと言った内容で手早く手紙を書いて、万全の状態で授業参観の当日を迎えた。

 

「むぅうううう……」

 

「ひなちゃん頬膨らませてリスみたいになってるの……」

 

「まぁ、気持ちは分からなくはないけどね。でもお仕事なら仕方がないじゃない」

 

 どうやらひなちゃんの両親は急遽外せない用事が出来てしまい今回は来れなくなってしまい、授業参観を楽しみにしていたひなちゃんは絶賛ご機嫌斜めである。

 う〜ん、こればっかりはしょうがないよな〜……。

 

 すっかり拗ねてしまったひなちゃんをみんなで慰めていると、時間になったのか教室に一人……また一人と大人が入って来る。

 

 

「なのは〜」

 

「あ、お母さん!」

 

 

「来たわよすずか〜」

 

「……え、お姉ちゃん? てっきりお母さんが来るとばかり……と言うか高校はどうしたの?」

 

「サボったに決まってんじゃないの!!」(サムズアップ)

 

「胸を張って言わないでよ……」

 

 

「ヤッホー、アリサ! なんとか仕事を片付けられたわ!!」

 

「ママ! てっきり鮫島が来るとばっかり……」

 

 

「むぅううう……」

 

「まぁ、こればっかりはしょうがないと思うぞ、ひな」

 

「あぁ、俺ら親来ない組はゆっくり授業が始まるまであっちで駄弁って「すっかり拗ねているなひな」およ?」

 

 突如低い声が聞こえそちらを向くと、立派な髭を携えた紳士風の外国人の男性がひなちゃんを見ていた。それを見たひなちゃんは満面の笑みを浮かべると共にその男性に抱きつく。

 

「おじいちゃん! なんで? なんでいるの?」

 

「ハハハ、久しぶりだな。娘から連絡を受けたが丁度非番だったから駆けつけられたよ!」

 

 男性……ひなちゃん爺ちゃんは笑いながら彼女を抱き上げる。

 彼はギル・グレアム。ひなちゃんの母方の祖父でイギリス出身の方だ。そして時空管理局の顧問官という重鎮でもあるらしい。

 ひなちゃん家に遊びに行った時に偶然会った事があるが、紳士で孫想いの中々いい爺ちゃんだと思う。ただひなちゃんにお小遣いをあげすぎてしまうのが悩みだと羽鳥さんが言ってた。

 

「グレアムさんご無沙汰してます。まさかグレアムさんが来るなんて思ってもいませんでしたよ」

 

「あぁレオ君、いつもひなが世話になってるね」

 

「いえいえ……ひなちゃん良かったね」

 

「うん!!」

 

 まさかここでひなちゃんの爺ちゃんに会うとは思わなかったが、ひなちゃんもすっかり機嫌を取り戻して……と言うかいつもよりも機嫌が良くなったしこれで安心して授業参観を始められるだろ「レオさん、来ましたよ〜」…………は?

 

 どこかで聞いたことがある声が聞こえゆっくりとそちらを見ると、そこにいたのはミゼット婆ちゃん……。

 

「え、なんでここにいるの? 仕事はどうした!!」

 

「んなもん優秀な部下に押し付けて有給取ってやりました。仕事よりも孫ですからね!!」(サムズアップ)

 

「おい、それで良いのか統幕議長!!」

 

 なんてこった。せっかく直接渡す気恥ずかしさから逃げられると思ったのに、まさか来てしまうなんて……。

 と言うか授業参観のこと伝えてないのになんでここにいる……? あれか? 実は我が家に盗聴器仕掛けててアスカとの会話を盗み聞きしたとかそんな物騒なオチじゃないよな……?

 

『やっぱり授業参観の事は伝えた方が良いですもんね。なにせ家族なんですから!!』

 

「アスカ、犯人はテメェか……」

 

 どうやらアスカが独断で授業参観の日程を伝えやがった様だ。

 なんだ? 何も考えずに投げて無くしたせいで五日間外に放置されてた事に対しての仕返しのつもりか……?

 

「…………」

 

「どうしたのおじいちゃん?」

 

 今度はアスカをどうしてやろうかと考えていると、婆ちゃんの姿を見たグレアムさんがピシリと石のように固まってしまった。そして無言でひなちゃんを降ろすとミゼットさんに深々と頭を下げる。

 

「ご、ご無沙汰しております。ミゼット統幕議長……レオ君はあなたのお孫さんだったのですね…………」

 

「えぇ、娘の忘れ形見なんです。私の元だと狙われてしまう可能性があるため、この世界で身分を隠して生活してもらってるんですよ。それに彼も今の生活を気に入ってるのか養子縁組は断ってますし……。ところでグレアム顧問官、ここは職場ではないのでそんなに畏まらなくて結構ですよ?」

 

「分かりました!」

 

 婆ちゃんの階級は管理局の最高階級である元帥……婆ちゃんに取ってグレアムさんは……と言うか管理局勤めの人は全員部下の様な存在だし、グレアムさんがこう言う対応をするのもおかしくはないのか……。

 

「……ねぇ、あれってレオ君のお婆ちゃんとひなちゃんのお爺ちゃんだよね? 一体どうしたの?」

 

「あぁ、すずかちゃん。なんか婆ちゃんとひなちゃんのお爺ちゃん同じ職場だったみたい。それでウチの婆ちゃんその職場のトップ層だから……」

 

「それはあんな対応にもなるわよねぇ……」

 

「……と言うかレオにも裏切られたし、親来てないの何気にオレだけな件について……」

 

『心中……お察しいたします。マスター……』

 

 その後授業参観が始まり、授業の最後の手紙を渡す時間となる。

気恥ずかしいと言う感情を押し殺して潔く婆ちゃんに手紙を渡すと、手紙を読んだ婆ちゃんはすごく号泣してしまったのだった。




 リメイク前を読んでる人は知ってると思いますが、なんとひなちゃんはギル・グレアムの孫でした。

 桃崎家、家族構成

 祖父(母方)──ギル・グレアム

 祖父の使い魔──リーゼロッテ、リーゼアリア

 母──羽鳥

 父──鷲一

 娘──ひな

 娘の使い魔──リニス


 次回から無印行きます。
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