見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます! 作:蒼天 極
「あ、れお君おはよ〜……ってすごいクマだよ大丈夫!?」
「ん……ちょっと徹夜しちゃって…………」
「何やってんのよアンタは……」
「流石にそれは身体に悪いよ〜」
昨日は帰宅後に本当に徹夜で
でも徹夜で作業し続けたおかげで残りは最終調整というところだけ。この分なら1週間かそこら辺りには完成にこぎつけることが出来るだろう。
「おはようさんみんな」
「おはようなの」
「あ、ヤマトになのは。おはよう」
ヤマト達を待たせてるからこの際学校を休んで一気に仕上げてしまおうかと考えていると、ヤマトとなのはちゃんが教室に入ってくる。
二人ともどこも怪我してないのを見るに、昨日のバケモノにちゃんと勝てたようだ。……まぁヤマト一人で勝てるような相手に対して、初心者とはいえ凄まじい素質を秘めてたっぽいなのはちゃんが加わればイレギュラーが起きない限り負けることはないわな。
「あ、レオ君。昨日の事なんだけど……」
「昨日の事? 昨日は俺すぐに帰ったよ」
「そうじゃなくって昨日の……あ」
なのはちゃんが昨日のことがどうだと言い出したが、近くにいたアリサちゃん達を見て「な、なんでもないの……!」とそっぽを向く。
昨日の事と言うと夜の一件か。大方ヤマトが俺が手助けしたとか言わなくても良い事をほざいたんだろうなぁ。……と言うかなのはちゃんひなちゃんレベルではないとはいえ大概嘘下手よな。
…………ニヤリ
「昨日の……なんだって? なんでもないって聞かれても気になっちゃうな〜」(ゲス顔)
「ほ、ホントになんでもないの! お話しは後にするの!!」
「え〜? でもなのはちゃんが誰かと喧嘩した後、必ずと言って良いほど話さないと分からない事もあるって喧嘩相手に話に行って仲直りしてるよねぇ? 流石にそれはないんじゃないの。お話ししようよぉ〜」(ゲス顔)
「え……あ、あうぅ……」
「あれ〜、どうしてモジモジしてるのぉ? ハッ、もしかしてこの俺に惚れたとか……? もぉしょうがないなぁなのはは。このツンデレさんめ「……少し頭冷やそっか」え──おっごぉおおおおお!!?!!?」
興が乗って来たためニコポナデポが発動するのを承知の上で嫌らしい笑みを浮かべて踏み台っぽくなのはちゃんに詰め寄るが、流石にそれはアウトだったようで能面のような表情を浮かべたなのはちゃんのつま先が俺の股間に突き刺さり俺は床へと崩れ落ちてしまうのだった。
い、今のはなのはちゃんが本気の本気でブチギレたときのO☆SHI☆O☆KIモード……。まさかここまでブチギレるなんて……金髪ネタは逆鱗だったか…………。
「今のはアンタが悪いわよ……」
「そうだよ。流石にリュウヤ君の真似は笑えないよ?」
「そーだよ。なのちゃんに謝った方がいいよぉ?」
「ご、ごめんなさい。マジで申し訳ありません、調子乗り過ぎました……」
「よろしい」
非力ななのはちゃんでこれだけのの威力を出せるなら、金髪はこれよりももっと地獄の痛みを味わっているって事じゃ……だとしたら流石に可哀想…………ではないな。アイツ放置してたら本当に害悪なのは小学校入学直後で思い知ったし。
『お前なぁ……分かってて揶揄うんじゃねえよ』
『分かってねぇなぁヤマト……。今は揶揄うべきタイミングだったからやっただけだ。途中で踏み台っぽく振る舞ったのは反省するけど、揶揄ったこと自体に後悔はない……。何度生まれ変わっても、俺は同じ選択をし続ける…………!』
『バカか』
『大人げなさすぎるの……でも昨日はありがとうね。おかげで助かったの』
『どういたしまして』
流石にバレている上にここで惚けてこれ以上揶揄ったら、O☆SHI☆O☆KIされるのは目に見えているため素直にお礼を受け取っていると、ひなちゃんが「そういえば……」となのはちゃんの方を向いた。
「なのちゃん。昨日の話は聞いてる?」
「昨日の話?」
「昨日、動物病院の近くで車の事故かなにかがあったらしくて壁が壊れちゃったんだって……」
「フェレットが無事か心配で……」
「あ、えっとね。その件はその……」
とても昨日の事を言うわけにはいかないと言う事で、咄嗟になのはちゃんが上手に誤魔化してフェレットを高町家で保護したと伝えると胸を撫で下ろすアリサちゃん達。
まぁそれはどうでも良いんだよ。どうしても俺には一個分からないことがある。
「ひなちゃん。全っ然話についていけないんだけど、フェレット? 昨日何があったの?」
「実はねぇ……」
◇
俺にとって授業とはある種の拷問だ。
大学は出ていないにしても高校の勉強まではできる俺からしたら、小学校で習うものは当たり前すぎてつまらない。なんならデバイスの勉強をする過程で複雑な数式だったり、ミッドの言葉を覚えた事で英語も使えるようになって来たため今なら大学の範囲も余裕だろう。
だから今までは寝るか、並列思考を駆使してイメージトレーニングするか、こっそりデバイスの設計書をまとめたりしていた。そう、今までは。
この間の席替えでアリサちゃんと隣の席になったことで、一つ新たな楽しみができたのだ。
それは絵しりとりだ。
お互い授業を退屈に思う者同士、通じ合う部分がありなんとなく始めたのだが意外と白熱するのだ。それに先生に見つかるかも知れないというスリルもありたまらない。
……ふーん、コアラか。無難なチョイスをして来たな。ならこちらはアメリカとカナダのみを除外したアメリカ大陸をっと。
『それで、結局昨日のアレは何だったんだ?』
『ユーノ君が言うにはアレはジュエルシードっていう、ユーノ君たちの世界の古代遺物が原因なんだって』
「……はい」
「……マジか」
アリサから帰って来た紙を見て驚愕する。
か、カルノー図……だと? まさかラテンアメリカが分かったとでもいうのか!? というかカルノー図なんてよく知ってたな! くそならばこっちは……
『そうか。それでなのははどうするんだ?』
『え?』
『なのははまだ間に合う。今なら昨日の事を無かったことにして魔法を捨てて日常に帰ることが出来る。心配しなくてもこの件はオレらで解決できる。それでも本当にこの件に首を突っ込むのか?』
「……アリサちゃん」
「……そう来たか」
ふはははははは! お寺のお坊さんの言葉を聞いて涙するおっさんの絵を描いてやったわ。これは絶対に分からんだろう!
『……うん、わたしやるよ』
『昨日みたいに危険な目に遭うかも知れないんだぞ? 昨日は運が良かっただけで、もしかしたら大怪我をするかも知れない』
『それでもユーノ君と知り合っちゃったし放っておけない。それにね……ちょっとだけ嬉しいんだ』
『え?』
「……ん」
「……おおう」
なんだこれ、指輪? いや、なら真ん中の空洞を黒く塗りつぶさなくていいはず。……もしやダイヤモンドリング!?
バカな、随喜之涙は分からないと思ったのに! 心から喜ぶ様を表す絵が思いつかなくて、語源の方で描いたのがアダになったか……!
くそ、なら……
『ヤマト君と同じ魔法使いになれた。ヤマト君やひなちゃん達と同じ景色を見ることが出来る……これって素敵なことなの』
『なのは……』
「……ほれ」
「……ふぅん」
流石に難しい物を連想できず、グリコアルデヒドというありきたりな物を描いてしまった。だから今回は譲る。だが次のターンで勝負を決めてやる……“グ”以外なら返せる自信があるからな!!
『だからお願いヤマト君。わたしも手伝わせて、魔法を教えてくれないかな?』
「……レオ」
「……そ、そんな」
アリサちゃんが描いて来たのは合体ロボット。ドッキングだ。
こ、こいつまさか俺が“グ”から始まる難しい言葉を思いつかないと気づきやがった……!!
このまま“グ”じゃ完封されちまう。……でも負けるつもりはない。そっちがその気なら俺も本気で脳を動かして“グ”で始まる言葉を並べてやろうじゃねえか!!
耐久勝負といこうぜッ!!
『分かった。ここまで関わったからにはオレも当事者だ。できる範囲でだが手を貸すよ』
『ありがとうヤマト君!』
『あと、レオとひなにも声をかけておかないとな。レオは用事があるらしいから合流は先って言ってたけど、事情くらいは先に教えておいても──』
『アスカ、悪いけど念話をブロックして。さっきからウルセェし、今話しかけられたら気が散るわ』
『りょうかーい。……というかアリサちゃんもマスターも随分とハイレベルな戦いをしてますねぇ…………』
全く、帰ってから真っ先に念話のブロック機能を追加しておいて良かったよ。おかげで静かになった。さぁ……決着をつけようじゃないかアリサちゃんッ!!
◇
「れお君、今日一緒に遊ぼ?」
「ごめんねひなちゃん。俺今日はすっごく眠いから帰って寝たいんだ。また明日誘ってくれる?」
「うん分かったー」
普段は絶対にひなちゃんからの誘いは断らないのだが今日は特別だ。
徹夜に加えて絵しりとりでかなり頭を使ったしもう限界。なんなら少し気を抜いただけで夢の世界へ落ちてしまいそうだ。
さっさと帰ってコーラでも飲んでから寝よう…………。