見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます!   作:蒼天 極

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(なのは視点)わたしのお友達は天使さんなの

「なのは、今日なのはの家にお邪魔していいか? 個人的にユーノに聞きたい話があるんだ」

 

「え、うん! 分かったの、ユーノ君と三人でおやつでも食べながらお話ししよ」

 

 下校時間になってフラフラとお家に帰っちゃったレオ君とお稽古のあるリサちゃんとすずかちゃんを見送った私は、ヤマト君と一緒にお家へ帰る事にした。

 本当はレオ君にも声をかけたかったけど、ヤマト君曰く用事があるから終わるまでは合流できないらしい。用事ってなんなのかな?

 

「なのちゃん、なのちゃん! ひなも遊びに来ていい?」

 

「え、ひなちゃん!? あ、えっと……そのう。今日はちょっと……困るっていうかなんというか……」

 

『なのは。ひなにも昨日あったこと教えた方がいいんじゃないか?』

 

『そういえばひなちゃんも魔法少女なんだよね。いつもの姿を見てると全然魔法少女っぽくないんだけど』

 

 ひなちゃんが魔法を使えることを知っている。一緒に公園で遊んでいるときに、転んで膝を擦りむいちゃった事があったけどひなちゃんは魔法で治してくれた事があるの。

 ひなちゃんは性格的に一見全然強くなさそうだけど、わたし以上のかなりの力を持った魔法使いだとヤマト君は言っていた。ならばひなちゃんにも協力してもらったら百人力なの。

 でも……

 

『……ごめんねヤマト君、ひなちゃんには昨日のこと内緒にしてて。巻き込みたくないの』

 

『そうか、分かった』

 

 いくらひなちゃんが魔法を使えても、甘えん坊で泣き虫で……でもいつもニコニコ笑ってて一緒に遊んでくれる優しいひなちゃんを昨日みたいな危険な事には巻き込みたくなかった。

 ひなちゃんの分までわたしが頑張れば大丈夫。だからひなちゃんには平和な世界で笑顔で生活してて欲しいの。

 

 そんな事を考えていると念話に集中し過ぎてしまい反応がないことに首を傾げていたひなちゃんが突如納得したような表情を浮かべた。

 

「あ、そっか。なのちゃんはこれからヤマト君ともっと仲良くなりに行くんだね!」

 

「「え?」」

 

「れお君がヤマト君がなのちゃん、すずちゃん、リサちゃんの誰かと二人きりでいるときは、もっと仲良くなろうとしようとしてるから、邪魔しちゃダメだよって言ってたよ!」

 

「レオ君…………!」

 

 レオ君のおかげですっかり勘違いをしちゃったひなちゃん。わたしがヤマト君の事好きなのを察してるのは良いけど、余計な気を回してくれたレオ君とは明日にでもしっかりとO☆HA☆NA☆SHIしておくの。

 

「なら今日はレオ君も遊べないって言ってるし、ひなはママのお手伝いでもしようかな〜。それじゃ、二人でもっと仲良くなってね〜! バイバーイ!!」

 

「あ、待ってひなちゃん。誤解だよぉ!!」

 

「……この二人はなんの話をしてるんだ? 全然ついていけないんだけど…………」

 

 ぼくねんじんなヤマト君の事は放っておいて、誤解を解くために屈託ない笑顔を見せながら走って帰ってしまったひなちゃんを追いかけるわたしであった。

 

 …………ぼくねんじんの使い方ってここであってるよね?

 

 

 ◇

 

 

「ハァ、ハァ、ひなちゃん足速すぎるよぉ……」

 

 数分後、わたしは商店街の真ん中で必死に息を整えていた。

 すっかり勘違いしちゃったひなちゃんの誤解を解く為に後を追いかけていたけど、お世辞にも運動神経がいいとはいえないわたしと、クラスでも上位の……なんなら全国クラスのひなちゃんでは勝負にもならなかったの。

 

『ヤマト君、置いて行っちゃってごめんね。ひなちゃんに追いつけなかった』

 

『まぁ、ひなは足速いし仕方がないさ。オレは先になのはの家に向かうな?』

 

『うん。今日はお兄ちゃんがいるはずだから────っ!?』

 

 直後、なんとも言えない不思議な感覚が辺りを支配した。

 それはすぐに消えて、いつも通りの商店街に戻ったけど、何、この嫌な感じ……?

 

『ユーノ君、これって……』

 

『新しいジュエルシードが起動している。すぐ近くだ!!』

 

『それは不味いな、すぐに向かおう。オレがユーノを連れてくるからなのはも現場に向かってくれ。場所は分かるよな?』

 

『うん、分かったの!』

 

 ジュエルシードが起動しちゃったらまた昨日みたいに街に被害が出ちゃう……。急いで向かわないと…………!!

 

「ゼェ……ゼェ……ゼェ……」

 

「あ、なのはちゃんや〜。……って顔紫色になってるで!? なんでそうなってるかは知らんけど無茶し過ぎや! いっぺん走るのやめぇ!!」

 

 うぅ〜、ひなちゃん追いかけるのに体力使い過ぎちゃったの…………。

 

 

 ◇

 

 

「みゅ? なんだろうこの感じ……ちょっと行ってみよ! ママ〜、ごめんだけどお手伝いまた後で〜、ちょっと遊びに行ってくるね〜!!」

 

「お客さん少ないからいいけど、遊びに行くなら口に咥えてるメロンパンをちゃんと食べてからにしなさいね?」

 

「そうですよ。お行儀悪いです」

 

「はーい」モキュモキュ

 

 

 ◇

 

 

「なのはちゃんついたで!」

 

「ごめんね、ありがとうはやてちゃん!」

 

「ええよ、ええよ〜。私はこれから特売やからもう行くけど、なんでそんなに神社に急いでたのかはまた今度聞かせてな」

 

「え!? う、うん……そ、そのうち話すの……!!」

 

「あ、これ教えてもらえないパターンや…………まぁええわ。それじゃあまたね〜」

 

「うん、本当にごめんねはやてちゃん。またね〜!」

 

 その後わたしを見かねたはやてちゃんが車椅子に乗せてくれて、反応があった神社まで送ってもらった。

 うぅ……まさか車椅子で二人乗りをする事になるなんて……と言うかはやてちゃんなんで車椅子なのに車と同じくらいの速度で走れるの……?

 そしてはやてちゃんと入れ替わりでユーノ君だけがやってきた。

 

「なのは!」

 

「ユーノ君、ヤマト君は?」

 

「ごめんなのは。昨日の金髪の子に絡まれてそっちの対応に追われてる!」

 

「もぉ、リュウヤくーん!!」

 

 なんであの人はいつもいつも余計なことしかしないのだろうか?

 銀髪オッドアイだけど常識人……常識人かなぁ? まぁ、良識はあるし本気で嫌がる事はあんまりしないし、したらちゃんと謝るレオ君を見習ってほしいの!!

 

「ヤマトもちょっとしたら来るはずだ。行こうなのは!」

 

「うん!」

 

 はやてちゃんのおかげで休憩できて体力もある程度回復したため、神社の階段を一気に駆け上がって鳥居を潜るがそこには誰もいない。しかし獣のような鳴き声が聞こえて咄嗟に鳴き声のした鳥居の上を見ると、そこには獣の姿の黒い影がいた。

 

『グルルルルルル……』

 

「ハァ、ハァ……ユーノ君あれって……?」

 

「まさか現住生物を取り込んだのか……!? 実体がある分手強くなってる。それに今回はヤマトの援護も受けられない。気をつけて!!」

 

「大丈夫なの……多分」

 

「多分って……まぁ仕方ないか。なのは、レイジングハートの起動を!」

 

「ふぇ? 起動ってなんだっけ……」

 

「えぇ!? ほ、ほら昨日唱えたあれだよ!! 我、使命を受けし物なりから始まる起動パスワード!!」

 

 ふえぇ……確かレイジングハートを起動させるためのパスワードを言ったのは覚えてるけど、流石にあれは長すぎて一回では覚えられないよぉ!!

 

「えっと、えっと……星は月に……空は天に……いや違う。えぇっと……天は東に……だったっけ?」

 

『グォォオオオオオオオッ!!』

 

「なのは危ない!」

 

「え? きゃ!」

 

 起動のパスワードを思い出そうとしていると、黒い獣が鳥居から降りてきてまっすぐわたしに襲いかかって来た。なんとか避けられたけど黒い獣はまたわたしを攻撃しようと飛びかかって来て…………!!

 も、もうダメ……避けられない…………!!

 

「ふぅ、登り切った〜! ってなのちゃん!? 起きて、()()()()()()()。セットアップだよ!!」

 

『了解です、ひなちゃん! セットアップ!!』

 

「エンジェルウイングー!!」

 

 ……あれ? わたし……なんともない? っていうか私の目の前を真っ白なふわふわしたものが覆っている……?

 何、一体なんなの?

 

「なのちゃん大丈夫!? 怪我してない?」

 

「え、ひ、ひなちゃん!?」

 

 聞き慣れた声に背後を振り向くと、ピンクのフリルの衣装に身を包んで背中から翼の生えているひなちゃんの姿。彼女はわたしを背中に生えた純白の翼で黒い獣からの攻撃を守ってくれていたのだ。

 

「うわぁ、ひなちゃんその服可愛いの! それに翼が生えてるの!! ひなちゃんって天使さんだったの!?」

 

「えへへ〜、凄いでしょ! エンジェルウイングっていうひなの魔法だよ!!」

 

『グォオオオオオオオッ!』

 

「なのは、話は後! 襲ってくるよ!!」

 

「だいじょぶだよ! この程度、どおって事ないんだから!!」

 

 まるでプリキュアのような姿のひなちゃんに興奮しながらも、なのはもこう言う服をイメージしておけば良かったと内心後悔していると、また黒い獣が襲いかかって来た。

 だがひなちゃんはユーノ君を肩に乗せてわたしをお姫様抱っこすると天高くへと飛びあがり黒い獣の爪を回避。

 

「へへーん、ワンちゃんもここまでは来れないでしょ! でもワンちゃんをやっつけるのは後、まずはなのちゃんを安全な場所に逃さないとね!!」

 

「待ってひなちゃん! なのはも戦うの!!」

 

『スタンバイレディ、セットアップ』

 

「ほぇ……なのちゃんの右手が光ってる!?」

 

「え、レイジング……ハート……?」

 

 直後、わたしの手に握られていたレイジングハートが輝き始める。まだ起動パスワードを唱えていないどころか覚えてすらいないのに……一体どうしちゃったの!?

 その直後、レイジングハートは赤いビー玉の姿から昨日のような杖に姿を変える。

 

「起動パスワードなしでレイジングハートを起動させた……!? い、いや、驚くのは後……なのは、防護服を!」

 

「うん! お願いレイジングハート!」

 

『バリアジャケット展開』

 

 直後わたしの身体が光り始めたと思うと、昨日のようなバリアジャケットを着込んだ魔法使いの姿へと変身した。

 

「え? なの……ちゃん?」

 

「にゃはは、驚かせちゃったよね……。実はなのはは昨日魔法少女になっちゃって…………」

 

「す……すっご〜い! ひなとお揃いだねぇ!!」

 

 凄いハイテンションではしゃぐひなちゃん。お互いに杖とか服とか見せ合いたい所だけど、でもまずは黒い獣をやっつけてジュエルシードを封印するのが先だよね……?

 ひなちゃんに地面に降ろしてもらうと二人で黒い獣と向き直る。……なんでだろう、さっきまであのバケモノをやっつけられるか不安だったのに今はもう負ける気がしないの……!!

 

「ねぇねぇなのちゃん! せっかくだから、名乗りをやっちゃおうよ!」

 

「ふぇ、名乗り? それってプリキュアみたいに?」

 

「うん、それじゃあひなから! ……大空の魔法少女、ひな!!」

 

 そう言ってまるでプリキュアみたいにポーズをとって名乗りをあげるひなちゃん。凄いカッコいいの……!!

 ひなちゃんに見惚れていると、ひなちゃんはなのはをジーッと見つめる。……あ、やっぱりなのはもやるんだね…………。

 でもどうしよう、急に名乗なんて言われても……えぇっと、えぇっと…………よし、これで!!

 

「不屈の魔法少女、なのは!!」

 

「チーム名は考えてないから省略! 街を荒らす悪いワンちゃん、ひなとなのちゃんで懲らしめちゃうんだから!!」

 

『グォオオオオオオオッ!!』

 

 名乗りが終わるまで空気を読んで待っていてくれた黒い獣がわたし達に襲いかかる。

 だがそれに動いたのはひなちゃん、黒い獣の攻撃をなのはを抱えて危なげなく回避すると、そのまま翼を羽ばたかせて凄まじい風を発生させる。

 

「エンジェルウインドッ!」

 

『グォオッ!?』

 

「隙だらけだよ! エンジェルフェザー!!」

 

 そして風に吹き飛ばされて仰向けで倒れた黒い獣にひなちゃんは翼から無数の羽を飛ばすと、羽で獣を地面に縫い付けてしまった。これでもう動けないの!!

 

「今だよなのちゃん!」

 

「うん! 封印ってのをすればいいんだよね……レイジングハート、お願いね」

 

『了解です。シーリングモード』

 

 直後レイジングハートが光り輝き、黒い獣の身体を桜色の光が絡めとる。

 光の拘束から逃れようと黒い獣は必死に暴れるけど、ひなちゃんの羽のおかげで動けず、獣の額にローマ数字の16が浮かび上がった。ジュエルシードはそこにあるんだね?

 

「リリカルマジカル、ジュエルシードシリアルナンバー16……封印!!」

 

 わたしの封印の掛け声ともに黒い獣は断末魔をあげてジュエルシードに戻ると、そのままレイジングハートの中に吸い込まれて行った。

 よし、今回も無事に回収成功なの!!

 

「やったねなのちゃん! イェーイ!」

 

「イェーイ!」

 

「悪い遅れた! ……え、ひな?」

 

 一緒に戦ってくれたひなちゃんとハイタッチしていると、ようやくヤマト君もやって来た。悪いのはヤマト君の邪魔をしたリュウヤ君だから責めるつもりはないけどちょっと遅かったね。

 

 

 ◇

 

 

 その後、流石に隠しておくわけにもいかなくなったため、ひなちゃんに素直に昨日会った事やユーノ君の正体なんかを打ち明ける。

 

「ふむふむ、ユーノ君……ユー君が見つけたジュエルシードが事故でばら撒かれちゃって、街のあちこちで悪さしてるんだね」

 

「ごめんなさい。僕のせいで」

 

「気にしないで、わざとじゃないならしょーがないよ。でもそーゆー事ならもっと早く言ってほしかったな……」

 

「う、ごめんなの……」

 

「うぅん、いいよ! それじゃ、これからはれお君が合流するまでは三人で街を守っていこ!!」

 

「流石はひな、そう言ってくれると思っ「ダメなの!!」うぉっと!?」

 

 今回はひなちゃんのおかげで封印できたし、ひなちゃんがとても強い子なのは分かった。……でもやっぱり危険な事には巻き込めないよ。

 でもひなちゃんはわたしのそんな思いを無視して無邪気に笑うと、わたしの手を優しく握りしめる。

 

「危険なのはなのちゃんも一緒でしょ? だいじょーぶだよ、ひな強いもん。それに一人より二人で、二人より三人で戦った方が危険も少ないと思うな。そうでしょヤマト君?」

 

「ひなの言うとおりだな。大丈夫、何かあればオレが守るよ。それに万が一俺に何かあっても、ひなの身に危険が迫ればひなのお兄ちゃんが助けに来るだろうし」

 

 あれ? ひなちゃんって一人っ子だったよね。ひなちゃんのお兄ちゃんって……ああ、レオ君の事だね。

 確かにレオ君はひなちゃんのお兄ちゃんのポジションを確立してる。もしひなちゃんに何かあったられお君が守ってくれるだろう。

 

「……そうだね、分かったの! ならひなちゃん、力を貸してくれる?」

 

「もちろんだよ! 任せておいて!!」

 

「よっしゃ、それじゃあレオが合流するまでの間は三人で街を守ろう!」

 

「「お〜!!」」

 

 取り敢えずレオ君には明日学校に来たときにでも、ひなちゃんが手伝ってくれる事を教えておいたほうがいいよね……。

 

 だが翌日からレオ君は学校へ来なくなってしまった。




 エンジェルウイング──ひなが神様から与えられた転生特典の一つ。背中に生えた翼でひなの身を守ったり羽で相手を攻撃したり、翼を羽ばたかせて素早く飛んだりできる、攻撃と防御と速度を兼ね備えたレアスキル。かつて魔導師であった母親の羽鳥のレアスキルであったが遺伝で受け継いだと言う設定。


 〜おまけ〜

「神社に行きたいんやな。よっしゃ、私が送ってあげる! 乗ってなのはちゃん!!」

「ふえぇ!? 乗ってと言われましても……確かにはやてちゃんの車椅子ならなのはが走るより速いけど、車椅子の二人乗りは流石に危ないよ! ……と言うか乗るところないよぉ!!」

「私の上があるやないの。なのはちゃんは軽そうやから全然余裕やし、なんならひなちゃんをいつも乗せてるから大丈夫や!!」

「ひなちゃんはまた今度お説教なの……」
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