見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます! 作:蒼天 極
練習試合終了後、試合で借りたユニフォームを返却した後、翠屋の外の席でケーキを堪能していた。というのも助っ人に入っただけでなく勝利に貢献してくれたとして、士郎さんがケーキをご馳走してくれたのだ。
「はぁ、サッカーで疲れた身体に砂糖が染み渡る……やっぱケーキといえば翠屋だよなぁ……」
「だな、やっぱり海外で修行したっていう桃子さんの腕は凄まじい……」
「うんうん、翠屋のケーキ大好き」
「アタシも翠屋でケーキ食べてからは、もう他のケーキじゃ満足できなくなっちゃって……」
「そうだねぇ。私もいろんなケーキを食べてるけど、やっぱり翠屋のケーキが一番好きだなぁ……」
「にゃはは。そう言ってくれたら、お母さんも喜ぶの」
おっと、翠屋のケーキもいいけど俺何気にユーノ君とちゃんと向き合うのは初めてなんだよな。
ただ今この場にはアリサちゃんとすずかちゃんがいるからか、こいつフェレットの振りをしてやがるし………………よし、遊ぶか(ゲス顔)
というわけでごく自然を装いながら現飼い主であるなのはちゃんの方を向く。
「ねぇねぇなのはちゃん。ひなちゃんから聞いてたけどこの子がなのはちゃんの保護したオコジョのユーロクなんだよね?」
「フェレットのユーノ君なの! え、ひなちゃんどういう説明をしたの!?」
「え、ユーノ君ってオコジョじゃなかったの!?」
驚いたような表情のひなちゃん。
そう。実は以前ひなちゃんにユーノ君を保護した経緯を聞いた際に、この子ったらユーノ君のことをオコジョと勘違いしてしまっていたのだ。ユーロクについては純粋に聞き間違えたと言うことで。
「え、フェレットだったの? だとしたらこれから本格的にこの子を飼うなら、しっかりと去勢はしないとマズいよ?」
「キュ!?」
「なんで去勢しないといけないの? 去勢したら赤ちゃん出来なくなっちゃうんでしょ?」
ユーノ君がフェレットの癖して青い顔をして数歩下がる横で、なのはちゃんが純粋な顔で尋ねてきたので博学的に答えてやる。
「フェレットは発情期に入ると体臭が強くなったり、凶暴になったりするんだよ。以前テレビで見たんだけど凶暴化したフェレットに噛まれた飼い主が狂犬病を発症して亡くなった事例があるらしくてね」
「…………」
「………………キュ〜!!」
「うぉっと、よしよし怖かったな〜」
なのはちゃんが深刻な顔でユーノ君を見つめる。
一方ユーノ君もダラダラと冷や汗を流しながらなのはちゃんからゆっくり距離をとっていたが、やがてヤマトの肩の上へと避難した。
「こらレオ君、嘘ついちゃダメだよ! 日本ではしっかりとした検疫をしてるから日本の動物からは狂犬病を発症しないんだよ?」
「あら、バレちゃいました?」
博学なすずかちゃんに見事看破され、参りましたと言わんばかりに両手を上げる。
すずかちゃんの言う通り日本の動物から狂犬病は確認されなくなったけど、外国の動物に噛まれたら普通に発症する上にフェレットもしっかりと狂犬病にはかかるから注意は必要だよ。
「う、嘘だったの!? もう!」
「キュー!!」
息ぴったりで俺に批判的な視線を向けるなのはちゃんとユーノ君。そりゃそうだ。
だが俺は揶揄ってると思われないように敢えていつものような無表情を浮かべて、真面目な雰囲気でなのはちゃんに話す。
「でも体臭が強くなったり凶暴化するのは本当だよ。特になのはちゃん家は飲食店だからペットの体臭とかは心配なんじゃないかなぁ?」
「そ、それは確かにそうなの……」
「も、もうやめてやれ。動物病院の先生からはまだユーノは子供って言ってたし、今すぐ悩む問題じゃないだろう?」
ぐ……それを言われてしまうとキツイなぁ。
ヤマトの言うことも尤もなのでここは潔く引き下がる。……でももう少し揶揄いたかったなぁ。
「それにしてもこのフェレット、ほかとちょっと違わない?」
「院長先生もこの子はちょっと変わってるね。って言ってたね」
アリサちゃんとすずかちゃんの疑問に、ヤマトからの助け舟を出され安心していたなのはちゃんは再びギョッとした表情を浮かべる。
「だってユー君、まほ「あーまぁ、ちょっと変わったフェレットって事で!!」ムグムグ」
嘘のつけないひなちゃんがついつい魔法の件についてうっかり話しそうな所を、なのはちゃんはひなちゃんの口を押さえてなんとか誤魔化そうとする。
…………ニヤリ。
「確かにそう言われてみればユーノ君って既存のフェレットのどの種の特徴とも当てはまらないよね。…………ねぇ、コイツもしかして新種なんじゃないの? なのはちゃん、ちょっとこいつ動物専門の研究機関にでも連れて行こうぜ! こいつを研究すればきっとフェレット業界に嵐が巻き起こ「よーし! ちょっと向こうでお話ししようかレオー!」ちょ、ヤマト待って、取れちゃう! 首が取れちゃう〜!!」
流石にユーノ君を研究所に連れて行くわけにはいかないと思ったのか、ヤマトに頭をガッチリホールドされて翠屋の裏手に引き摺り込まれてしまった。
「ゲホッ、ゲホッ……流石に力強すぎだって。この馬鹿力が」
「事情を知ってるのに引っ掻き回すからだ馬鹿野郎。ユーノの正体知った上でやってるからタチが悪い……アリサ達にバレたらどうすんだ」
いや、バラすためにやってたから別にジュエルシード云々がバレた所でなんら問題ないんだけどな。
この際ヤマトも仲間に引き込んでユーノ君を盛大に怖がらせてやろうかと考えていると、ヤマトが「まぁそれはどうでも良いとして……」と続ける。いや、どうでも良いんかい。
「お前が合流できないって聞いてから毎晩研究の進捗を念話で聞こうとしてたけど、お前念話全部無視してたよな? 開発に集中するのは分かるが、せめて念話くらいは返答してくれないか?」
「念話? んなもん届いてなかったけど……あ! この間の授業中のなのはちゃんとテメェのイチャイチャボイスがクソうるさかった上に、踏み台の俺まで巻き込もうとしてたからヤマトとなのはちゃんの念話を完全ブロックして俺に届かないようにしてたんだった」
「馬鹿野郎!」
「アベシッ!?」
こ、コイツ、自分が悪い癖に殴りやがった……! 俺の頬を、グーで!!
おいおいそりゃいくらテメェがオリ主だとしても許せませんわ……。
「痛えな。てか、どうしても俺に話しがあったなら電話するなり、ひなちゃん経由で伝えればよろしかろう!? 他にあった複数の手段を使ってないのに殴るなんて酷いやつだな! それでもオリ主か!?」
「ひなに頼んだところで、あいつ伝言忘れてお前と雑談するだろ? それに電話だって電話代高いから念話にしろって言ったのはお前だろうが。手段を一つに絞ったくせして偉そうに語ってんじゃねえ殴るぞ!?」
「もう殴ったやろがい! もうキレた絶対許さねえ! 今日という今日こそはお前ぶっ転がしてオリ主の座を強奪してやらぁ!!」
「やってみろ踏み台が!! 所詮踏み台はオリ主に勝てないってことを身をもって味わわせてやる!!」
「「死ねぇええええええ!!!!」」
こちとらテメェに勝つ為だけにずっとずっと努力して来たんじゃ! あの頃のように三秒でぶっ飛ばせると思ったら大間違いだぞコラァ!!
◇
「……で? なんでアンタらは喧嘩になったのよ?」
ヤマトとの全力全開の殴り合いは互いに進歩している事もあり、お互いに一歩も引かない互角な激戦であったが、騒ぎを聞きつけてやって来たアリサちゃんによって正座させられ今に至る。
「「だってこの馬鹿(リア充)がー…………ああん!?」」
「だから喧嘩すんなっての!」
「「ぐへぇ!?」」
胸ぐらを掴み合って再び一触即発状態に陥った俺とヤマトは、アリサに二人仲良く殴り飛ばされた。
こ、これこそ喧嘩両成敗……ウイスキーピークで喧嘩していたルフィとゾロが仲良くナミに殴り飛ばされたときのルフィ達の気持ちが分かったよ。
「ほら、なんで喧嘩してたのよ。理由を言いなさい! ほら、ヤマトから!」
「それはこいつが電話代勿体無いから話があるなら念話にしろって言って来たくせに、念話を届かないようにしてたからです!」
「念話ってアンタ達魔法使いが使える遠距離通信のことよね? 次、レオ! なんで念話をブロックなんかしたの!?」
「このオリ主授業中になのはちゃんと念話で喋っててイチャイチャうるさくて授業に集中できなかったからです!」
「ちょ、ちょっとレオ君、聞こえてたの!? というかしー! しーだよレオ君!!」
「アンタ、アタシと絵しりとりしてたでしょうが、なに優等生ぶってんのよ。…………結論、どっちも悪い! まずレオ!!」
「はいっ!」
「うるさくてブロックするのは分かるけど、後でちゃんと着信届くようにしなさい!! 重要な連絡が届かなくなったらどうするのよ!?」
「そうですよね、サーセン!!」
確かにアリサちゃんの言う通りだ。万が一ヤマトが金髪が馬鹿やったせいで動けなくなった場合に動くことになるのは、ひなちゃんと俺なのだからアイツとの連絡は授業が終わった後にでもブロック解除しておくべきだった。反省反省……
「あとヤマト! 授業中になのはと念話なんてするんじゃないわよ! なのはだけずるいわよ! 魔法使えない私達への当てつけの……ちょっと待ちなさい。レオ、アンタ今なんて言った?」
「そうですよね、サーセン」
「いや、それより前よ」
「はいっ! 「もっと前!」……このオリ主授業中になのはちゃんと念話で喋っててイチャイチャうるさくて授業に集中できなかったからです! …………あ」
よく考えたらアリサちゃんとすずかちゃんの二人はなのはちゃんが魔法を使えるようになったこと知らないんだったっけ?
自らの失言に気がつくがもう遅い。アリサちゃんはギギギギと首から古い人形のような鈍い音を鳴らしながらなのはちゃんの方を向く。
「なーのは、アンタ魔法使いじゃなかったわよねぇ? なのになんで念話なんて使えるのかしら…………?」
「ふぇ!? え、えっと……それは…………そのぉ……」
「……あと魔法繋がりだし、ひなもアタシ達に隠し事……あるんじゃないのかしら?」
「ひ、ひな知らないよ! オコジョのユー君が発掘したジュエルシードがこの街にばら撒かれちゃって、封印のお手伝いをしてることなんて知らないからね!!」
「ちょ、ひな全部言ってるって! あと僕オコジョじゃなくて、フェレットだから……あ」
うん、ひなちゃん。全部言っちゃったね。そしてユーノ君、アリサちゃんの前で喋っちゃったね。
「なるほどなるほど……つまりユーノはフェレットはフェレットでも、ひなん家のリニスみたいに魔法由来の生き物で、アタシ達が知らない所でこそこそ何かやってたと。ふ〜ん……」ゴゴゴゴゴゴゴ
アリサちゃんの身体から赤黒いオーラが吹き出す。
やべぇ、これ完全にキレちゃってるよ。ぶっちゃけ俺はまだギリギリ蚊帳の外の人間だったし、どっちにしろ今日アリサちゃん達に事情を話すつもりだったとは言え、この流れでバレてしまったら俺も同罪……クソォ、ユーノ君で遊びすぎたのが仇となってしまったか…………!!
だがしばらくするとアリサちゃんから赤黒いオーラが消えてニコリと笑った。
「なのはとひなもヤマト達の隣に正座しなさい。あ、あとフェレットの振りをしてたユーノもね。ちょっと色々と聞かせてもらうわよ?」
「「「「「…………はい」」」」」
こうなってしまってはもう誤魔化すのも不可能と察したヤマト達は、素直に今まであったことをアリサちゃん達に説明するのだった。
「なのはちゃん達が隠してることを聞き出すアリサちゃんの背後には鬼が浮かんでたよ……」とアリサちゃんの後ろで説明を聞いていたすずかちゃんは後に語ったのだった。