見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます!   作:蒼天 極

35 / 68
この猫バカ、喜んでやがる……

 俺は今、すずかちゃんの自宅であるお屋敷の前に立っていた。

 前から言ってるが、彼女は巨大なお屋敷を持つ生粋のお嬢様。確か月村家は代々資産家なんだっけ? そしてすずかちゃんパパがその資産の一部を元手に月村興業って会社を設立して大成功して更に大金持ちになったとか……。

 

 ……最もそんな勝ち組な家系のすずかちゃんでもウチのグループの金持ちレベルは上から二番目。世界中に関連会社を持ち、もはや財閥と言っても過言ではない大企業の令嬢であるアリサちゃんと比べたら大したことはない。

 

 …………待てよ? よく考えたらそんなお嬢様二人を俺は魔法の世界に引き込んだんだよな? それが万が一二人のご両親とかにバレたら……ワンチャン俺バニングス家と月村家に消されるんじゃ…………。

 

 ガチャ

 

「……アンタさっきから玄関の前に突っ立ってるけどインターフォン鳴らさないわけ?」

 

「って、レオ君顔真っ青になってるけど大丈夫? 風邪ひいちゃった?」

 

「……アリサちゃん、すずかちゃん。お願いだからご両親に魔法のことは内緒ね。もしかしたら俺の首が飛ぶかもしれん。……マジでおねが……お願いします。なんでもさせていただくので、はい」

 

「いきなりどうしたのよ? ……というかなんでもさせていただくって言った? なら、何をお願いしようかしら……」

 

「もぉ、ダメだよアリサちゃん。ほら、レオ君もそんなに頭を擦り付けたら汚れちゃう!」

 

 月村家に入って来たのが窓から見えたのか玄関までやって来たアリサちゃんとすずかちゃんに土下座で頼み込んだ俺であった。

 

 その後、どちらにしても言える内容ではないと言うことで土下座をやめさせられた俺だが、今玄関にいるのは俺と出迎えてくれたお嬢様コンビの二人だけ。

 

「もしかして俺は二番目なのかな? それとも二人が出迎えてくれただけで、実は既にみんな集まってる?」

 

「アンタは二番目ね。なのはと恭也さんはいつもバスで来るんだけど、渋滞に巻き込まれたから少しだけ遅れそうって言ってたわよ」

 

「あらら、ヤマトとひなちゃんは?」

 

「二人はどうやって来るか聞いてないよ。ヤマト君にノエルに車出してもらって迎えに行くよって言ったけど断られちゃったんだよね」

 

「ちょ、すずか! またアンタ抜け駆けしようとして……!!」

 

 相も変わらずあのオリ主は今日もモテモテなようだ。……まだみんなが来てないなら俺は屋敷に入って待たせてもらおうかな。

「お邪魔しま〜す」と言いながらお屋敷にお邪魔しようとするが、その次の瞬間俺らの真上から見知った声が聞こえた。

 

「お〜い、すずちゃーん! きーたーよ〜!!」

 

「「おはようひな(ちゃん)、正座しなさい」」

 

 ひなちゃんったらよりにもよって変身して空から飛んで来ちゃったが、流石にこれは看過するわけにはいかない為、アリサちゃんと二人でお説教タイムの始まりだ。

 正座したひなちゃんを叱る側で、彼女の背中に乗って来たリニスも「だから言ったじゃないですか」とため息をついて……いや、もっとちゃんと止めてくれよ。アンタひなちゃんの使い魔兼家庭教師兼姉だろうが。

 

「もう飛んできちゃダメよ!? 街の人に見つかったら大変なんだから……!!」

 

「う、うぅ……ごめんなさぁい……」

 

「次やったらお尻ぺんぺん……は、セクハラだからダメか。お菓子抜き……は鬼畜すぎるし……どうしよう! ひなちゃんのお仕置きが思いつかない!!」

 

「甘すぎるよレオ君……でも、ひなちゃんも反省してるみたいだしもうやらないよね? だからその辺に「よっと。来たぞすずか」え──きゃああああああああ!?」

 

 足元から聞こえた我らがオリ主の声の直後、仲裁していたすずかちゃんが悲鳴をあげて尻餅をつく。

 咄嗟にすずかちゃんの足元を見ると、そこに浮かび上がった魔法陣からニョキっとヤマト君が顔を出していた。

 俺とアリサちゃんは無言でお互いの顔を見合わせて一度頷きあうと、ヤマトの頭に全く同じタイミングでツインシュートを蹴り込む。

 

「上がダメなら下からってか! どっちもアウトに決まってんだろアホォ!!」

 

「あんた今すずかのスカート覗いたでしょ!」

 

「ごふぇっ!?」

 

 俺とアリサちゃんの同時攻撃により盛大に蹴り上げられたヤマトは、蹴られた勢いで魔法陣の下に沈んでいた身体が一気に引き抜かれたかと思うと、綺麗に三回転した後に地面に叩きつけられた。

 

「全く、オリ主もオリヒロインもわざわざ来るのが面倒だからって魔法使うんじゃないよ。家からここまで歩いて来た俺を見習いなさい」

 

「え、レオ君の家から私の家まで四キロくらいあるよね?」

 

「だから歩いて来たって。四キロくらい一時間前に家出れば十分間に合うし」

 

「……普通にバスとかで来なさいよ」

 

 嫌だよバス代かかるし。お金を払って時間短縮するくらいなら、俺は歩く!!

 なぜならフレイムアイズとスノーホワイト作ったせいで今月は金欠だからだ(泣)。……まぁそれを言ったら色々面倒くさくなるから敢えて言わんけど。人間知らなくていい事というのはあるものだ。

 

「あ、みんなおはよー……ってヤマト君が死んでるの!?」

 

「……何があったんだ?」

 

 現在金欠気味なことを墓場まで持っていく決意を固めていると、予想以上に早く渋滞を抜けられたなのはちゃんと恭也さんもやってくる。

 これで全員揃ったため、気絶したヤマトを背負ってみんなで屋敷にお邪魔したのだった。……部屋に着いたら、こっそり魔力を変換した電気でも流して無理矢理起こすか。

 

 

 ◇

 

 

 その後部屋にたどり着くと同時に自然に意識を取り戻したヤマトに内心舌打ちをしながら、各々席に着くと月村家の……と言うか忍さんの専属メイドのノエルさんがやって来る。

 

「お茶をご用意しましょう。何がよろしいですか?」

 

「任せるよ」

 

「なのはお嬢様は?」

 

「わたしもお任せします」

 

 バッカ高町兄妹! 何でもいいって相手が一番困る返答じゃないか。……いや、だからこそ敢えてなんでもいいと言ってるのだろうか。なのはちゃん恐ろしい子!!

 

「ヤマトお坊ちゃまは何がよろしいですか?」

 

「あ、お気になさらず。水で充分です」

 

 お前のその返答も普通に困るからな!? ほら見ろよノエルさん。えぇ……って顔してんじゃん!!

 ノエルさん、もうコイツには何も出さなくていいっすよ。いや、マジで!!

 

「ひ、ひなお嬢様はいつも通りホットいちごミルクでよろしいでしょうか?」

 

「うん、お願いします!」

 

 この子はこの子で完全にお子様扱いされてるよ……。まぁ、俺らの年齢な普通にお子様だし、この年齢だと紅茶よりも甘いミルクって印象だけどさ。ある意味ひなちゃんこそが年相応と言えるだろう。

 

「レオお坊ちゃまは?」

 

「あ、ブラックコーヒーお願いします」

 

「あ、ノエルさんアタシダージリンおかわりで」

 

「かしこまりましたアリサお嬢様。ファリン手伝いなさい」

 

「はい、了解です」

 

 手早く飲み物の注文を聞いたノエルさんは、近くに控えていたノエルさんの妹ですずかちゃんの専属メイドのファリンさんと一緒に部屋を出て、その後に続くように恭也さんは忍さんに連れられ彼女の自室へ向かったのだった。

 おやおや、仲睦まじい事で。

 

「相変わらずすずかのお姉ちゃんとなのはのお兄ちゃんはラブラブよね〜」

 

「うん。お姉ちゃん、恭也さんと知り合ってからずっと幸せそうだよ」

 

「うちのお兄ちゃんは昔に比べてなんだか優しくなったかな」

 

 そう言いながら部屋へ向かおうとしている忍さんを羨ましそうに見る三人娘だが、その後にヤマトに視線を移すと同時にため息を吐く。

 

「……なのはちゃん達は大変だよねぇ、狙ってる相手がこんなんだと」

 

「「「うん、そうなんだよ(なのよ)」」」

 

「ん? どうしたんだ、俺を見て?」

 

「「「「はぁ……」」」」

 

「何でみんなしてため息ついてるんだよ」

 

「アインは可愛いねぇ、よしよし」

 

「にゃーん」

 

 それは自分の胸に聞いてみるんだねヤマト君。あとひなちゃん、リニスが何とも言えない顔してるから浮気は程々にするだよ?

 

 それにしても……恭也さんと忍さん然り、ヤマトと三人娘然り、俺の周りは青春してる子達が本当に多いよなぁ。

 みんながイチャイチャするたびに微笑ましく思うと同時にこう思うんだ。

 

 爆発しろォ!!

 

「……レオ、あんた今変なこと考えなかった?」

 

「変な事って? リア充どもは全員爆発すればいいのにとしか思ってないけど」

 

「しっかり考えてんじゃないの」

 

「いやさ、俺の周りって絶賛春な人達が多いから嫉妬の一つや二つ「うわぁ、た、助けてぇ!」うわっと!? ちょっとユーノ君、急に頭に乗るなら許可とって「ニャー!」わっぷ!?」

 

 だがその直後、なのはちゃんが連れて来ていたユーノ君が突如俺の頭に乗って来たかと思うと、ひなちゃんの膝に乗っていた猫が俺顔面に飛びつき、バランスを崩して椅子から落下。後頭部を強打してしまう。…………おい?

 

「ぼ、僕はネズミじゃないよ! た、助けてなのはぁ!!」

 

「あ、ユーノ君!」

 

「あ、アイン、ユーノ君を虐めちゃダメだよ!!」

 

「リニス! アインを止めて!!」

 

「分かりました。ほら、アイン止まりなさい!!」

 

 ひなちゃんの指示を受けたリニスが猫を止めようと追いかけ始めたことで、猫がフェレットを追いかけ、ヤマネコが猫を追いかけるというなかなかシュールな光景となった。

 そして当たり前かのように俺の顔面を踏んでいく三匹。…………だから、おい?

 

「お待たせしましたー。クリームチーズクッキーとみんなの──って、わ、きゃあ!?」

 

 飲み物とお菓子を持って来たファリンさんが開くと同時に、三匹はファリンさんの足元に追いかけっこの舞台を移す。

 三匹を踏まないように必死に回避していたファリンさんだが、やがて彼女は目を回すと、フラフラとこちらに移動してきてトレーを俺の顔面に落として来た。

 

「ファ、ファリン! 大丈夫!?」

 

「うきゅう……ハッ!? うわ〜、レオ君ごめんなさ〜い!!」

 

「……いえ、大丈夫っす」

 

「よくやったわレオ! アンタの頭がクッションになったおかげで、お茶とクッキーは無事よ!!」

 

「……キレそう」

 

 

 ◇

 

 

 その後また室内で暴れられたら困ると言うことで、広い中庭にお茶会の舞台を移すことになった。

 すずかちゃんの部屋にも猫は沢山いたが、中庭はその比ではない。

 

「もういっそ月村家は猫カフェに改築すればいいと思うんだ」

 

「分かるわ。本当に猫カフェが出来そうなほどの猫天国よねぇ」

 

「それにこの猫達は全部元々は野良猫なんだろ? そんな子達がこんなにもすずかに懐いてるって事は相当愛情を持って察してるんだな」

 

「そ、そうかなぁ。えへへ……」

 

 顔を真っ赤にしながらも嬉しそうに頬をかくすずかちゃん。またコイツは人たらしを発揮して……と思うが今回ばかりはヤマトに同意だな。

 月村家の猫は元々あちこちで拾って来た子達らしく、それをここまで人慣れさせるのは至難の業だ。きっと忍耐強く猫達と向き合って来たに違いない。

 

 すずかちゃんの陰での努力に感心していると、リニスと一緒に席を離れて猫と戯れていたひなちゃんが何かを感じたのか草の茂みの方を見ていることに気がつく。

 

「ん〜?」

 

「どうしたの?」

 

「なんかあそこに光るものがあるような…………あ、ジュエルシードだ!!」

 

「「「「「え?」」」」」

 

 すずかちゃん家にジュエルシード!? そ、そりゃあすずかちゃん家はとても広いけど……。

 とっさにひなちゃんの視線を追って茂みの方を向くと、草木の中に確かにジュエルシードが落ちていた。

 

「起動する前にさっさと封印しちゃいましょ!」

 

「そうだね、ひながやるよ! いくよ、ホープ……あ!」

 

 一番近くにいたひなちゃんがすぐさまジュエルシードを封印しようとホープを取り出す。しかし次の瞬間、ひなちゃんと戯れていた子猫の一匹がジュエルシードに気がついたかと思うと、走ってそちらに向かいなんとそれを咥えてしまったではないか!

 

「あ、猫ちゃんダメだよ!」

 

「メイ! 口に咥えてるジュエルシードを──」

 

 飼い主のすずかちゃんとひなちゃんが大急ぎで駆け寄ろうとするが時すでに遅し。

 ジュエルシードは光り輝き、思わず目を閉じてしまったが、光が止んだのを確認してから目を開けると……そこには文字通り巨大化した子猫の姿だった。

 

『にゃーん』

 

 ………………。

 

「た、多分猫の大きくなりたいって願いを正しく叶えたんだと思う」

 

「解説サンキュ。ユーノ」

 

 巨大化してしまった猫が森の方へとどすんどすんと歩いて行ってしまったのを見て、大粒の涙を流しプルプルと震えるすずかちゃんの姿。

 ……すずかちゃんはこの家にいる猫に最大限の愛情を注いでいる。そんな大切にしている飼い猫がジュエルシードによって巨大化したとなったら泣いてしまうのは無理ないだろう。

 

「すずか! 大丈夫だ。オレ達がすぐに猫を元通りにしてやる!!」

 

「えぇ、すずかは今日は休んでいて。アタシ達で助けてあげるから!!」

 

「大丈夫なの。あの子に怪我は絶対にさせないから!!」

 

「よーし、それじゃあメイ救出作戦の「大きくなったね……メイ」……ほぇ?」

 

 いや違った、この猫バカは純粋に大きくなった事に喜んでやがる。

 いや、確かに見た感じ他の取り込まれた動物と違って今回は大きくなっただけで、化け物化してないから無害なのは分かるけどさ……それでいいのかアンタ?

 

「こうしちゃいられない! どれだけ大きくなったのか大きさ測ってメイの成長日誌に書いておかないと!!」

 

「ひなもいくー! おっきくなったメイを思いっきりモフモフしたい!!」

 

「あ、すずか、ひな、待ちなさい! ああもう、みんな行くわよ!!」

 

「「「ラジャ!」」」

 

「ここにいる猫達が巻き込まれないように私はこの子達を建物に避難させてから行きますね!!」

 

 この場の猫達の安全確保を買って出たリニスにここは任せてすずかちゃんとひなちゃんを追いかけることにした俺達であった。




 やめて! 麗央たちが集団でかかって来たら、6対1でフェイトちゃんは撃墜されちゃう!

 お願い、死なないでフェイトちゃん!

 あんたが今ここで倒れたら、プレシアとの約束はどうなっちゃうの?

 ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、なのはちゃんには勝てるんだから!


 次回「フェイト死す」デュエルスタンバイ! (嘘)



 〜おまけ〜

「みなさん、一列に並んで下さい。お家に避難しますよ!!」

「ニャ〜」

「ニャゴニャゴ!」

「ミ〜」

「わぁ、リニスの号令で猫が一列に並んだの」

「リニスとすずかの猫が仲良いの知ってたけど、こんな事も出来るなんて……」

「仲が良いんじゃなくて、リニスはここの猫達のボスなんだよ。過去にひなちゃんとここに遊びに来た時の話なんだけど、当時ここの猫達が二つの派閥に分かれて喧嘩してたときがあって、それを見たリニスは無所属の猫達を束ねて第三勢力作ってその喧嘩に参加したんだよ。そのしてその喧嘩を優勢に進めてたときにあそこの森にイノシシが来て二つの陣営のボス猫が飛びかかったんだけど……」

「長い長い! 結局は色々あってボス猫になったって事よね? 通りでエサをあげるとまずはリニスの所へ持って行くわけだわ。まぁあの子断ってその猫に食べさせてたけど……」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。