見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます! 作:蒼天 極
リニスに他の猫達を任せた俺達は、何かが起きてもいいようにユーノ君に結界を張ってもらってすずかちゃん家の敷地内も森に被害が及ばないようにして、すずかちゃんとひなちゃんを追いかける。
しばらく森を進むと、仰向けに寝っ転がった巨大な子猫と子猫のお腹にくっつくすずかちゃんとひなちゃんを見つけた。
「はぁああああああああ♡ メイのお腹を全身で感じられて……最っ高♡」
「気持ちいいー。すっごいモフモフだよ!」
『ニャー♪』
…………いや何やってんだよ。見た感じ凶暴化はしてないんだからさっさと封印しなさいよ。でもモフモフで触ったら気持ちよさそうだよな。俺もちょっとモフらせてもらおうか……
いやいやダメだ! 危ないし早くこの子を何とかしてジュエルシードを取り出さないと。
「あー! いいな、いいな! わたしもモフモフするの!!」
「あ、なのはずるい! アタシも!!」
「コイツらがこのザマなら俺もいいよな! ヒャッホウ!!」
「お、お前らなぁ……」
猫のモフモフの魔力に必死に抗っていた俺であるが、早々になのはちゃんとアリサちゃんが陥落したため俺も屈服させてもらう。
何かあっても俺なら対応できるし、このモフモフを堪能するのもちょっとだけだから…………!!
モフ……
「あ、これダメなやつだ。こんなん味わったら封印無理だわ……」
「にゃ〜、気持ちいいの〜」
「はぁあああ……アタシ犬派だけど、猫もアリね〜……」
「…………そんなに気持ちいいのか? ならオレも……。あ〜……これいいなぁ……」
子猫のフサフサモフモフな体毛に屈服した俺達の情けないザマを見たヤマトも、猫に顔を埋めてものの数秒で陥落。
このモフモフの魔力には誰も抗えない……これはある意味今まで戦って来た敵の中で一番な強敵かもしれん。
「あ"〜……、生きててよかった。生まれ変わって良かった。あのとき死んでおいて良かった〜」
「なんか訳わかんないこと言ってるけど、これは最高ね〜」
『ニャ〜』
「あ、メイここがいいの? お腹撫でられるの好きだもんね〜。もっと前身で撫でてあげまちゅね〜、ウリウリウリウリ〜♡」
「すずかちゃんがキャラ崩壊してるの……」
ヤベ、モフモフが気持ち良すぎてなんだか眠くなって来た……。でも猫ちゃんも大人しくしてくれてるし、このままモフモフ天国を堪能しながら寝たら最高だろうなぁ。
…………ん?
『マスター』
『あぁ、結界に誰かが侵入した。まっすぐこっち向かってくる』
『金髪でしょうか?』
『そうかも。……ここに到着した瞬間に地面に引きずり落と──っ!?』
だが金髪が来たと思いこみ、こちらに来た後に対応すればいいと思い込んでいたのが不味かった。
金髪の代わりに飛んできたのは踏み台その1よりも鮮やかな金色のスフィア。完全に不意を突かれた俺はシールドの展開は間に合わずスフィアは猫に当たってしまった。
『にゃぁああああ!?』
「あ! だ、大丈夫メイ!?」
『ニャァアアアアアアアッ!!』
スフィアの一撃を受けた猫は俺らを振り払うように起き上がると、猫特有の凄い速さで森の奥へと逃げて行ってしまった。
そしてそれを追いかけるように金髪の魔法少女が俺たちの上空を素通りしようとして…………
「させるかよ! 暴風域っ!!」
「な……!?」
Wファンメランを展開すると、それを扇に変形させて思い切り振るう。直後、辺りに凄まじい風が吹き荒れた。
暴風域は簡単に言えば気流を乱す魔法。出鱈目に強い風を起こすことで、飛んでる魔法使いを地面に叩き落とす空戦魔導師泣かせの必殺技だ。
その威力は翼があることで空中制御が他の人よりも安定しているひなちゃんですら落っこちたほど。もう空を飛ぶことはできまいて。
金髪少女はしばらくの間、落ちないように必死に体勢を整えようとしていたが、やがて完全にバランスを崩したようで地面に落っこちてしまった。
だが地面に叩きつけられることはなく、綺麗に着地するとこちらに斧型のデバイスを向けてくる。
「……あなたは風の使い手か」
「風だけじゃないけど……それにしても不意打ちとは、本当に金髪には碌な奴がいないな!!」
「レオ後で屋上来なさい。……でもすずかの飼い猫に酷いことするなんて、絶対許さないわ!」
「そうだよ! ひな、怒っちゃったもんね!!」
「くっ……!!」
金髪であったアリサちゃんを怒らせてしまった事は後で土下座するとして、ここで現在の状況を確認してみよう。
バリアジャケットの装甲の薄さを見るにあの子は速度型……しかも障害物のない空を縦横無尽に駆け回る事に特化しているタイプだろう。
だが空は飛べなくしたし、唯一動ける地上も障害物の多い森の中。それに加えて俺らも空は飛べなくなったとはいえこっちは六人いる。しかも俺含めた三人ならば多分一人でも勝てる相手……。
……うん、勝ったな!
「ま、まぁまぁみんな。あの子にも何か事情があったのかもしれないの。まずはお話を「……ねぇみんな。悪いけどメイを探して来てくれないかな? きっと迷子になって寂しくて泣いてるはずだから。みんながメイを探してくれてる間に私はあの子をやっつけるから……」す、すずかちゃん?」
「あ、あなた……どうしてそんな怖い顔をしてるの……?」
なんとか仲裁をしようとするなのはちゃんだったが、その直後凄まじい悪寒を感じて咄嗟にそちらを向くと、凍りついたような冷たい目をしたすずかちゃんの姿。
大切な愛猫を傷つけられた飼い主はそれはそれはもうお怒りであった。
「ヒッ……す、すずちゃん……?」
「す、すずかちゃんが怒ってるの……」
「温厚な人ほど怒ると怖いって言うけど……」
「すずかの怒ってる姿を何回か見たことあるが、今回は今までで一番キレてるな」
「普段怒らない子が起こるととんでもないね。死んだな金髪少女、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。せいぜいちゃんと成仏しろよアーメン」
6対1で確実にやっつけたほうがいいとも思ったが、多分……いや絶対すずかちゃん一人で勝つと確信した俺達は、彼女の迫力に気圧されて一歩一歩後ろへ下がる金髪少女をすずかちゃんに任せて猫を保護しに向かったのだった。
◇
『フシャーッ!!』
「あぁ、やっぱり警戒しちゃってるの!!」
「大丈夫よ〜、アタシ達は痛い事しないから! ……ダメね、完全に警戒されてる」
「オリ主、あの猫メスだから攻略しろよ」
「無茶言うな」
「ひなに任せて。……大丈夫だよメイちゃん、メイちゃんを虐めた悪い子はすずちゃんがやっつけてくれてるからね。だからすずちゃんの所に……お家に帰ろ?」
『…………ミャ〜』
「す、凄い。あれだけ警戒してたのに警戒を解くなんて……」
「ひなも猫を飼ってるから……いや、メイにひなの心配する気持ちが伝わったんだろうな。今だひな!」
「うん! メイちゃん、少しだけ大人しくしててね? ……ジュエルシードシリアルナンバー14、封印!!」
◇
その後森の奥で子猫を発見。急に痛いことをされたため警戒をしていたものの、ひなちゃんの活躍でジュエルシードの封印に成功し、猫も無事元の大きさにもどった。
ただ巨大化しただけで、中身は甘えたい盛りの子猫のままであったことが救いだったな。
「おーい、すずちゃーん!! メイちゃん捕まえたよー!!」
「ニャー!」
「メイ! あぁ良かった……。もう怪しいものを咥えちゃダメだよ?」
すずかちゃんは右手でスノーホワイトを、左手で金髪少女から強奪した斧型デバイスを持ちながらも器用に猫を胸に抱すと、大事そうに抱きしめる。
そんな彼女のそばには頬が紅葉模様がつき、グルグル目で倒れている金髪少女の姿。
「……いくら相手の持ち味を潰してたとは言え、魔法を使い始めてわずか一週間の人がベテランの魔法少女……かは知らんが歴の長い魔法少女を一人で倒すなんて……」
「凄いね、すずかちゃん……」
てっきり追い払うだけかと思ってたけど、まさか倒すなんて……。
もし起きた場合このままでは危険だ。魔法での拘束は干渉されて解かれるかもしれないし、紐がなんかで腕でも縛ってしまおう。
「すずかちゃんなんか紐とかない?」
「持ってないよ……そう言えばお姉ちゃんが手枷とか持ってたような……お姉ちゃんに借りて来ようか?」
「お、丁度いいな。それじゃあみんなで借りに行こう」
「やめろよ。忍さんと恭也さんから生暖かい目で見られるのがオチだ」
「どうして生暖かい目なの?」
「大人になったら分かるさ」
「それじゃあてかせ? ……はダメか。……あ、ひな持ってるよ。はい!」
「ひな、リボンを差し出しちゃダメよ。ちぎられたらどうするの?」
さてさてどうしたものかと考えていると、気絶した金髪少女の顔が視界に入る。
それにしてもこの顔にこの服装……どっかで見たような…………あ。
「この子あのときの……」
「あのとき?」
「アンタ、コイツ知ってるの?」
この子ジュエルシードを拾おうとしたあの時、近くでデバイス展開していつでも強奪できるように構えてたあの子じゃねえか。
あのときは対応すんのが面倒くさくてジュエルシードを見て見ぬふりして譲ってやったんだけど……それを正直に言ったら叱られるだけじゃ済まないよなぁ……。
だからって黙ってても多分この子からバレるだろうし。
……よし、誤魔化そう。
「……今思い出したんだけど、なのはちゃんが魔法少女になる日の帰り道に、実はジュエルシードを見つけてたんだよね。あ、そのときはこの街にジュエルシードが落ちてるだなんて知らなかったから、なんか変な石が落ちてるとしか思ってなかったんだけど」
「ふむふむ……それとこの子がどう繋がるの?」
「綺麗な石だし拾おうかなぁと思ってたら、その子が近くで武器構えて俺の方見てたんだよね。やり合ったら多分勝てただろうけど、フレイムアイズとスノーホワイト完成させなきゃいけなかったし、喧嘩してまで綺麗な石を拾うつもりもなかったから見て見ぬ振りしてしまったんだよ」
ククク、嘘をついたとしても嘘を嘘で誤魔化す無限ループに入ってしまう。ならば真実を織り交ぜた嘘で少しずつ情報を開示していけばいいのさ!! 今のところ矛盾な点なんて無いはずだし、これで隠し通せるだろう。
だが、そう上手くいかないのが世の常。ヤマトが俺をジト目で睨みつけてくる。
「……お前、石が綺麗だからって引かれるタマじゃねえだろ? それに魔導師って分かってたならこの石が危険なものだって気づくだろ。お前なら」
「言ったろ? バッテリーデバイス作らなきゃいけなくて急いでたって。そのときはこの子がジュエルシードを狙う理由についてを考える脳のリソースを開けてなかったんだよ。でも悪かったと思ってる、ごめん」
「……レオって嘘ついてるとき瞬きの回数が増えるのよね」
「そんなバカな! 嘘つくときは自然体でいることを心がけているこの俺がそんな初歩的なミスをするわけが……あ」
自らの失態に気がつくがもう遅い。
いい笑顔をしたアリサちゃんとヤマトが指をポキポキと鳴らしながらゆっくりとこちらに詰め寄ってくる。
や、ヤベェ……
「なるほどなるほど……大方ジュエルシードが不味いものと知った上で敢えて見逃したって感じかしら?」
「あ、いや……」
「……お仕置きの時間よ♡ ヤマト、手伝って」
「おう。さて……オレに嘘をついた罪は重いぞ?」
「ちくしょうカマかけやがったな! ちょっと待て二人とも話せばわかる!! ちょ、ま……お、俺の……俺のそばに近寄るなぁああああああ!!」
逃げようとするがヤマトのバインドに取り押さえられ、アリサちゃんとヤマトの二人に襲い掛かられる。
面倒くさいからって怠慢をするべきじゃないと痛みと共に学んだ、小学3年春の出来事であった。
(なのは視点)
レオ君がヤマト君とアリサちゃんにお仕置きされる横で、わたしは気絶した女の子の顔を覗き込んでみる。
「……わぁ、綺麗な子だなぁ」
このままここに寝させたままで、風邪を引いちゃうのも可哀想だしとりあえずすずかちゃんのお家に運んであげようかな? 目が覚めたらメイにごめんなさいさせればいいもんね。
「ごめんなさい! 避難に予想以上に手こずってしまいました!」
「あ、リニス。大丈夫だよ、もう封印終わったもん! 今回はひなとすずちゃんが大活躍なのであった!」
「そうですか、頑張りましたね。……おや、なのはさん。誰か倒れているようですが、迷子の方でしょう……か……」
そんな事を考えていると、中庭に出てた猫を全て屋内に避難させ終わりひなちゃんの元へやって来たリニス。そんな彼女が金髪の女の子に気づき駆け寄ったその直後、大きく目を見開いた。
「……え……フェイト? ……どうしてここに……?」
〜おまけ〜
「……ねぇみんな。悪いけどメイを探して来てくれないかな? きっと迷子になって寂しくて泣いてるはずだから。みんながメイを探してくれてる間に私はあの子をやっつけるから……」
「わ、分かった。気をつけろよ、すずか!」
「……6人でならわたしに勝てたはずなのにどう言うつもり?」
「どう言うつもりもないよ。……ただ、うちの大切なメイを虐めたあなたをやっつけるだけ」
「……もしかしてあの子、あなたの飼い猫? ……だとしたらごめん、でもわたしはジュエルシードを母さんの元へ持っていかないと行けないんだ。だから……そこをどいて!」
そう言って金髪少女は斧型デバイスを鎌に変形させてすずかを攻撃しようと詰め寄るが、その瞬間足が氷で固められてしまう。
「な……っ!?」
「あなたにも事情があるんだね。……でも、それはそれ、これはこれだよ。メイの受けた痛みをあなたも思い知って」
「ヒッ──へぶぅ!!」パァアアアアアアアアン‼︎
すずかのビンタを受けた金髪少女はたったの一撃で意識を刈り取られてしまった。