見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます!   作:蒼天 極

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いけオリ主! ヒロインを惚れさせるんだ!!

「ゼェ……ゼェ……。し、死ぬかと思った……でも、身体がメチャクチャ軽い」

 

「自業自得よ。それに最近身体の凝りが酷いって言ってたから丁度いいでしょ?」

 

「心配すんな。流石に押したらいけない場所とかは押してないんだから」

 

 その後金髪少女と共にすずかちゃんの部屋に連行された俺は、アリサちゃんの発案で全身のツボというツボをヤマトの馬鹿力で押されると言う拷問なのか治療なのかのか分からないお仕置きを受けた。

 

 ぶっちゃけ世の地獄を味わったけど、全身の凝りが取れてだいぶ身体が楽になったからよしとしておこう。素人の整体は身体に悪いって言うけど、今回はツボを押されただし最悪回復魔法かけて貰えば良いしな。

 

 それにしても…………

 

「スゥ……スゥ……」

 

 チラリとすずかちゃんのベットを見ると、拷問ツボ押しで割と絶叫をあげていたにも関わらず目を覚ます気配のない金髪少女の姿。

 

「……目を覚まさないの」

 

「そりゃあヤマトと同レベルの身体能力のすずかちゃんの全力ビンタを受けたわけだしね。脳震盪になっててもおかしくはないと思うよ」

 

「ひ、酷い!? 私ちゃんと手加減したよ!! …………ほんのちょっとだけ」

 

 いや、ほんのちょっと手加減しただけじゃ意味ないのよ。

 ただでさえこの子速さ極振りで防御を疎かにしてるんだから、すずかちゃんの一撃もほとんどダイレクトで伝わっただろうて……

 

「ひな、すみませんがこの子の治療をしてあげてくれませんか?」

 

「うん! ……あ、そういえばリニス。この子のこと知ってるんだよね? この子って誰なの、リニスのお友達?」

 

 どうやらリニスは金髪少女の事を知っているようで心配そうな顔で金髪少女を見ていたが、その事が気になったひなちゃんの問いに静かに話し始める。

 

「……この子の名前はフェイト。私のかつての主人の娘です」

 

「そう言えばリニスってひなより前のご主人様がいるって言ってたね。てことはフェイトちゃん……フェイちゃんはリニスの教え子なの?」

 

「はい。私がこの子に魔法を教え、すずかさんの持っているこのバルディッシュを作りました」

 

「へぇ〜、それじゃあひな達の姉弟子さんなんだね!」

 

 なるほど、かつての教え子ならばそりゃ知っててもおかしくはないわな。それにしてもここでリニスの関係者に会うとは夢にも思わんかったなぁ。

 リニスと金髪少女……フェイトちゃんの関係を聞いて世間は狭いなぁと思っていると、フェイトちゃんの目がゆっくりと開く。

 

「……ん…………」

 

「あ、起きた。……ひなの回復魔法で起きたって事は、本当にすずかのビンタのダメージが大きかったみたいね」

 

「……すみません。次からはもう少し力を考えます……」

 

 いや、別に気にしなくて良いと思うよ。先に喧嘩売ったのこの子なんだし、デバイスも向けて来たんだからこうなる事も覚悟できてるだろうし……。

 

 ひなちゃんの回復魔法で治療されたフェイトちゃんがゆっくり起き上がると、目をクシクシと擦って周りを見回す。

 

「えっと……ここ、どこ?」

 

「あぁ、フェイト良かった! 目が覚めたんですね!!」

 

 そう言って彼女を大切そうに抱きしめるリニス。

 そんな彼女に対してフェイトちゃんは一瞬何が何だか分からないと言った感じで呆然と彼女のハグを受けていたが、やがて誰がハグをしているのか理解したのかフェイトちゃんは驚いたような表情を浮かべる。

 

「り、リニス……!? そんな……リニスはいなくなったって……役目が終わって消えたって母さんが言ってたのにどうして…………!?」

 

「一人消滅の時を待っているときにそちらのひなと上書き契約したんです! ……それにしても、こんなに大きくなって…………」

 

「ほんとにリニスなんだ……生きてて……生きてて良かった…………!!」

 

 そう言ってフェイトちゃんもリニスを強く抱きしめる。

 使い魔契約の終了が二人を引き裂いてしまったとは言え、元々リニスとフェイトちゃんはかなり仲が良かったんだろうなぁ……。

 

 

 ◇

 

 

「……それで? なんですずかの猫を虐めたのかしら? 返答によってはアタシ達がアンタを虐めるわよ?」

 

「いや、怖えよ。何する気だよ?」

 

「っ!」

 

 その後リニスと感動の再会を終わらせたフェイトちゃんだが、どうしてすずかの猫を襲ってジュエルシードを横取りしようとしたのかは聞き出さないといけないと言う事で、アリサちゃんが中々に恐ろしい顔でフェイトちゃんを問い詰める。

 彼女の顔にか虐めるという単語にかは分からないが、身の危険を感じたフェイトちゃんは大した身のこなしで俺らから距離を取ると、自身のポケットをまさぐり…………

 

「……あれ?」

 

 ポケットにお目当てのものが無かったのか、胸ポケットやお尻のポケットなんかもまさぐり、しまいには焦ったような表情で身体のあちこちを触り始める。

 

「あれ? ……あれ? …………ない。ど、どこに行ったの……?」

 

「もしかして……お探しのものはこれですか?」

 

「あ、返して!」

 

 すずかちゃんから預かっていた斧型デバイスを見せつけると、フェイトちゃんが必死な顔でデバイスを取り返そうと俺の元へと向かう。

 そりゃあこれ無いとほとんどの魔法使えなくなるし焦るのも当然だよなぁ。

 そんな事を考えながらフェイトちゃんにデバイスを取り返されないように構えた次の瞬間、彼女は真っ青な顔を浮かべたかと思うとピタリと動きが止まってしまった。

 

「ヒッ……オッドアイ…………」

 

「おい、オチが分かったぞ! さてはフェイトちゃん金髪に虐められたな!?」

 

「ほんとアイツには困ったもんだな。女子だったら見境ないんじゃないか?」

 

 ……ま、まぁ、こちらとしては取り返そうと言う意思より恐怖心が勝ってなにも出来ないのは好都合ですし?

 このまま脅させてもらうからいいもんいいもん。

 

「動かないほうがいいわよ? このデバイスは人質、少しでも黙秘したり抵抗しようとしたら、レオにこのバルディッシュを分解してもらうわよ?」(ゲス顔)

 

「あ、分解した後使われてる部品とかは他のデバイスに流用するから安心してネ。さぁ、俺の目を見て怖がった件について説明してもらおうか? 場合によってはこのバルディッシュとやらはバラディッシュになっちゃうなぁ?」(ゲス顔)

 

「う、うぅ……」ジワ……

 

「「「「うわぁ……」」」」

 

 おっとみんなが盛大に引いてるぞ。

 デバイスを壊されそうと言う絶対絶命な状況に目の端に涙を浮かべ始めたフェイトちゃん。そんな彼女を流石に放っておかなくなったのか、すずかちゃんが恐る恐るアリサちゃんに苦言を呈す。

 

「流石にやりすぎだよアリサちゃん。メイを傷つけたのは怒ってるけどもう仕返ししたし、事情があるならお話しした方がいいよ。だからもうやめよう?」

 

「……すずかがそう言うなら」

 

 今回一番怒っていたすずかちゃんにそう言われては、俺もアリサちゃんも引き下がるしかなく、バルディッシュに割と貴重な素材が組み込まれてるから分解して手に入れたかったんだが、渋々諦めて機材をしまう。

 

「レオ君。バルディッシュを貸して欲しいの」

 

「ん、ほい。尖ってるところあるから気をつけて」

 

「分かったの。……はい、フェイトちゃん」

 

「あ……」

 

 なのはちゃんにバルディッシュを渡してやると、この子は何を考えたのか泣きそうになっていたフェイトちゃんに返還してしまった。

 

「酷い事してごめんね。でもどうしてあんな事をしたのか聞かせて欲しいな。話してくれないと分からないこともあるから……ね?」

 

「…………」

 

「フェイト、お願いします」

 

「……分かった」

 

 フェイトちゃんはしばらくなのはちゃんの顔を見つめていてが、やがてポツリポツリと静かに話出した。

 なんでもフェイトの母親がジュエルシードを欲しているらしく頼まれるがまま集めているらしい。しかもタチの悪いことにジュエルシードを手に入れるためなら敵対した人を倒せとも言われてるんだとか。

 

「プレシア……あなたって人は…………」

 

「本当は戦いたくはないけど、ジュエルシードを持って帰れば昔みたいに優しい母さんに戻ってくれるかもしれないんだ。だから……」

 

「ジュエルシードを取り込んだすずかちゃんの猫を攻撃したんだね?」

 

「うん。……あ、あの…………ごめんなさい……」

 

「私はいいよ。でもメイにもちゃんと謝ってほしいな。ほら」

 

 そう言ってすずかちゃんがフェイトちゃんに子猫を抱かせる。

 彼女は慎重に猫を抱っこすると静かに「ごめんね」と謝罪したが、子猫もお家に帰れてすっかりリラックスしてるのか「にゃ〜」と鳴くだけで威嚇はしない。

 

「……許してくれるみたい」

 

「ほんと? 良かった……」

 

「フェイトって言ったわよね? 抱くだけじゃなくて撫でてあげたら喜ぶわよ」

 

「こ、こう?」

 

「みゃ〜♪」

 

「…………」

 

 なんか仲直りして和んでるけど、フェイトちゃんどうしようかな。

 ジュエルシードが手に入るなら俺らとの敵対も辞さないみたいだし、タダでさえ金髪一人でも大変なのにこれ以上敵は増やしたくない。

 

 ならば取れる選択肢は

 ①見逃す。

 ②デバイスだけ没収する。

 ③殴り倒して管理局に突き出す。

 ④管理局には突き出さないけど、拘束または怪我させてジュエルシード集めを邪魔できないようにする。

 のどれかか……

 

『どうする? 俺としては今のうちに無力化して管理局に突き出した方がいいと思うけど。今なら厳重注意くらいで済むし、万が一の時は親戚に口利きしてもらえばいいし』

 

『そうだね。ジュエルシードの件を抜きにしてもそうした方がいいと思う。このままじゃ良くないよ』

 

『うーん……わたしは反対かな。お話してそれがダメならぶつかり合ってでも、分かりあっていきたいの』

 

『なのはちゃんに賛成かな。リニスの大切な子みたいだしなんとかならないかなぁ』

 

『お友達になればいいと思う!』

 

『それができるなら苦労しないわよ。……うーんどうしようかしら……?』

 

 フェイトちゃんが猫を撫でるのに夢中になっている隙に、念話で彼女をどうするかを考えていたが、やがて一同せーのでヤマトの方を向く。

 

『どうした? 俺の顔をじっと見て』

 

『説得任せた』

 

『なんでオレなんだよ?』

 

 そりゃあお前がハーレム物の主人公だからだよ。持ち前の天然ニコポナデポを駆使してフェイトちゃんを惚れさせて味方に引き入れるんだ!

 みんなの視線を受けたヤマトは一度大きくため息を吐くと、真剣な表情でフェイトのほうを向き直る。

 

「フェイト、俺らと手を組まないか?」

 

「手を?」

 

「フェイトはジュエルシードを集めたい。オレ達はジュエルシードを封印して街の平和を守りたい。なら敵対するよりも先に協力してジュエルシードを集めた方が効率的だと思わないか? 取り分はオレら半分フェイト半分だ」

 

「……でもジュエルシードは渡せない。あなた達の持ってるジュエルシードも最終的には譲って貰うことになる」

 

「でもこの戦力を相手に一人でどうにか出来るのか? 龍帝院……金髪オッドアイも邪魔をするから一人じゃ集まらないと思うぞ」

 

「う……。ひ、一人じゃないもん。アルフがいるもん」

 

 アルフ……チラリとリニスを向くとどうやらフェイトちゃんの使い魔らしい。

 でも例えもう一人いるとしても6対2は流石に無理でしょ。さっきの身のこなしとかを見るに、多分俺ら転生者なら一人で勝てるだろうし。

 

「だからこうしないか? 21個のジュエルシードが集まったらフェイトはオレらの中で誰か一人を指名して戦うんだ。そして勝ったら集めたジュエルシードを全部お前に譲る。……どうだ?」

 

 こいつちゃっかり俺たちを巻き込みやがった。しかもこれは圧倒的にフェイトちゃんに有利な条件。

 一緒に行動していれば勝てる相手と勝てない相手は分かるだろうし、勝つ為なら自分の心を押し殺して戦う子だ。恐らく戦い慣れてないなのはちゃんかアリサちゃんを指名するのは目に見えてる。

 え、すずかちゃん? 流石にないだろ。ハンデありだったとは言え負けたんだし。

 

『悪い。巻き込んだ』

 

『大丈夫なの、勝てばいいもんね』

 

『そうね、アタシ達はジュエルシードが集まるまでにフェイトより強くなればいい』

 

 念話でのヤマトの謝罪に心強い発言をする現状指名される可能性の最も高い二人。

 そんな彼女らを他所に、フェイトちゃんはしばらく俯き考え込んでいたがやがてヤマトの顔を見てうなずいた。

 

「分かった。金髪の男の子が邪魔してジュエルシード集めもうまくいってないし、これ以上母さんの悲しむ顔は見たくない。だから手を組むよ」

 

「決まりだな」

 

 そう言ってヤマトが手を差し出すとフェイトちゃんは彼の手をおずおずと握る。

 契約成立……これでフェイトちゃんと一時的に手を組むことになったって事か。

 それにしてもせっかくのヒロインとのフラグだったのにただの交渉で終わらすなや。ここはフェイトちゃんも惚れさせてヒロインレースに参加させてあげろよ。オリ主として。

 

「アンタもリュウヤに悩まされてたのね。なんか嫌なことされてない?」

 

「だ、大丈夫。嫁とか言ってきたり、ジュエルシード集めないといけないのに遊ぼうってしつこく言ってくるだけだから」

 

「フェイトちゃんも苦労してるんだね……」

 

 金髪に対してヘイトを持っていたのは俺たちと同じなようで、早々に女性陣と打ち解けていた。

 あんまり仲良くなりすぎると、敵対した時が辛いと思うんだけど……まぁ、決着ついたら仲直りすればいいか。

 

「……なんだか勝手にジュエルシードを賭けられたんだけど」

 

「……なんかすまんねユーノ君」

 

「いや、まぁ探してもらってるのはこっちだから良いんだけどね。それに敵対するよりも味方になる方が良いってのも分かるし……」

 

 今回の一番の被害者は勝手にジュエルシードを賭けに出されたユーノ君であったとさ。




 ここのフェイトちゃんは明らかに戦力差がありすぎて真っ当に戦ったら勝ち目がないのと、金髪のせいでジュエルシードが思った以上に集まらない為、レオ達と手を組むことになりました。


 〜おまけ〜

「ところでリニス」

「どうしたんですかフェイト?」

「リニスは今は別の人の使い魔なんだよね? 一体誰の使い魔なの?」

「あぁ、それは……」

「は〜い! ひなだよ〜!!」

「あなたが……むぅ」

「? どうしたのフェイちゃん。ほっぺた膨らませて?」

「焼き餅焼いてるんじゃない? リニスをひなに取られた〜って」

「お餅焼いてるの? ひな、きなこで食べたいなぁ……」

「あ、これ焼き餅の意味を分かってないわね」

「えっとねひなちゃん。つまりフェイトちゃんは大好きなリニスをひなに取られて悔しいんだと思うよ?」

「そうなの? 大丈夫だよフェイちゃん。リニスに甘えたくなったらいつでもお家に甘えに来てもいいよ! あ、そうだ、二人でリニスをギュッてしようよ!!」

「え?」

「リニス〜! ギュ〜ってして〜!」

「分かりました。ほら、ギュ〜!! ……ほら、フェイトもどうぞ」

「あ、うん。わ、分かった!」

「……流石はひな。リニスの件で一悶着あると思ったが、案外すぐに壁は壊れるかもな」

「ひなちゃんってフレンドリーの化身だからね」
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