見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます!   作:蒼天 極

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思いもしないところで友人と会うとなんだか嬉しくなるよね

「週末になのちゃん達と温泉旅行に行くんだ〜」

 

 マドレーヌを頬張りながらひなちゃんがそんなことを言ってくる。

 そう言えば毎年大体この時期に高町家と桃崎家、そして月村家……と言うか忍さん個人が共同となって温泉旅行を企画してたな。

 

「でねでね、今年はれお君も一緒に行こうよ!」

 

「う〜ん……」

 

 士郎さんや羽鳥さんの好意でアリサちゃん、ヤマト共々毎年誘われている俺氏。

 しかしこれは、なのはちゃん達にとっては大切なヤマト攻略のイベントだから毎年空気を読んで辞退してるけど、今年はどんな言い訳で欠席しようか……。

 

「ミッドの親戚にジュエルシードについて報告しにいかないといけないから──」

 

「フェイちゃんのことバレたらマズイからってミッドの報告は行かないって言ってなかった?」

 

「あ、ごめん間違えた。それじゃあデバイスの整備があるから──」

 

「でも、昨日遊び来たときメンテナンスしてたよね?」

 

「ぐっ……それじゃあそれじゃあ……」

 

「れお君……そうやって毎年断ってるけど、ひなと一緒はいや?」ウルウル

 

 …………。

 

 俺は無言で携帯を取り出すと、なのはちゃんに電話をかける。

 

「ごめんなのはちゃん、ひなちゃんの泣き落としに屈してしまった。今年の温泉旅行は俺も参加させてもらうから、ヤマトとのイベントは悪いけど……」

 

『にゃはは、気にしなくて大丈夫なの。どうせレオ君がいてもいなくても結果は変わらないから……』

 

「そう言ってくださると助かります……」

 

 という事で今年は俺も温泉旅行へ行くことになりました。

 ……ひなちゃんに屈してしまったとは言え、ここ最近は身体の疲れが取れなくて、奮発してスパでも行こうかと考えていたんだ。そんな中での温泉のお誘いは渡りに船だし、この際堪能させてもらおう。

 

 

 ◇

 

 

 それからいつもと変わらず小学校に言って放課後にジュエルシードを探す生活を続けていると、あっという間に週末、旅行当日となった。

 

「えっへへ〜、れお君と旅行〜♪」

 

「ひなったら随分嬉しそうね。そんなにれお君と一緒が嬉しいの?」

 

「うん! れお君と旅行って初めてだもん!!」

 

 それにしてもひなちゃんったら凄い喜びようだ。

 今までなのはちゃん達に気を使いすぎて、ひなちゃんに寂しい思いをさせてしまってたのかも知れないなぁ。

 だとしたらこの子には本当に悪いことをした。次からはちゃんと参加するようにしないとなぁ。

 

 さて、海鳴温泉へはなのはちゃん家の車と、すずかちゃん家の車、そしてひなちゃん家の車の三台で向かうことになる。ちなみにフェイトちゃんにも連絡を取ったらしいが、ちょうど旅館近くでジュエルシードを探してたらしいので彼女は現地集合だ。

 まぁそれはさておき、人数的に俺たち子供は二組に分かれてなのはちゃん家の車とひなちゃん家の車に乗るわけだが、年頃の乙女にとっては気になるあの子の隣に座りたいものだ。

 故に原作ヒロインズによる血で血を洗う戦争が……。

 

「なのは、すずか。ここは公平にじゃんけんで決めましょ。今回はアタシ達のうち二人がヤマトと両隣、負けた人は羽鳥さんの車でひなとレオと一緒ね」

 

「うん、去年は私が負けちゃったし負けないよ!」

 

「今年も負けないの!」

 

 別に起きなかったな。じゃんけんでならば平和的に決めれるだろう。

 そんな中、この平和的な戦いの発端であるヤマトがじゃんけんを始めようとするアリサちゃん達を「ちょっと待ってくれ」と止める。

 

「オレっていつもなのはとすずかとアリサの誰かだけどさ。全員公平にするなら今回はレオとひなとで座った方がいいんじゃ「馬鹿野郎っ!!」ごぶぇ!」

 

 空気も読まずにとんでもないことをほざきやがったヤマトを全力で蹴り飛ばす。

 スーパーでの食料の奪いを通して培われたこの脚力で蹴られたヤマトは、二メートルくらい空中に蹴り上げられてそのまま頭から落っこちた。

 

「ぐぅ……いってぇな! 何すんだ!!」

 

「お前がバカなこと言うからや! 鈍感だからってやっていい事といけない事があるといい加減気づかんかい!!」

 

 と言うことで俺とひなちゃんは強制的に羽鳥さんの車だ。

 一応ひなちゃんにヤマトと一緒がいいか聞いてみたが、ひなちゃんは俺と一緒がいいと嬉しいことを言ってくれた。

 

『何鼻の下を伸ばしてるんですかロリコン』

 

「ばっかこの歳になっても懐いてくれるひなちゃんに、お兄ちゃんは嬉しいだけだよ」

 

「あれ? 私の子供がいつの間にか増えてる? でもれお君なら大歓迎よ。ひなも喜ぶだろうし、ウチに養子に来る?」

 

「あ、すみません。冗談なので」

 

 なんて事を言い出すのだろうか羽鳥さんは。俺なんかに渡す愛情があるなら、その分はひなちゃんに注いであげてクレメンス。

 羽鳥さんを適当にいなしていると、肩を落としたなのはちゃんがトボトボとこちらへやって来た。

 

「うー、負けちゃったの……」

 

「ドンマイなのちゃん! でも帰りは確定でお隣に座れるんでしょ? 良かったねぇ」

 

「……アリサちゃんとすずかちゃんの二人のうち、どちらかは二回連続で座るってことだから、全然良くないの」

 

「可哀想ななのはちゃん……!! ひとえにテメェがじゃんけん弱ぇせいだが……」

 

「うー! 次は負けないの!!」

 

 ヤマトの隣を取り逃し悔しがっていたなのはちゃんだが、負けたからには潔くひなちゃんの車に乗りこむ。

 

 踏み台その2と同じ車というのは一見罰ゲームに見えるかも知れないが、なのはちゃんとはひなちゃん共々小学校に入る前からの付き合いだし、ひなちゃんを真ん中にして座ってるから別になんら問題は起きはしない。

 それになのはちゃんとひなちゃんも、グループ内では三女と末っ子的なポジションだから、相性もいいのだ。

 

「ふんふんふふ〜ん♪ どうリニス、気持ちいい?」

 

「はいぃ〜。あ、お腹もお願いします」

 

「は〜い」

 

「ねぇねぇひなちゃん。なのはもリニスのブラッシングしてみたいの」

 

「いいよ〜。はい」

 

「ありがと〜」

 

 ほら、二人仲良くリニスのブラッシングしてあげてるよ。

 

 そんな二人と一匹の姿を微笑ましく見ながらのんびり車に揺られていると、やがて今日泊まる旅館の途中にある道の駅に到着。

 ここでトイレ休憩がてら、売店でお土産とかを買うのだ。

 

「子供達もお小遣いで好きなものを買ってもいいけど、旅館に着いたら温泉入って直ぐにご飯だから買い食いはほどほどにな?」

 

「「「「「「はーい」」」」」」

 

 引率の士郎さんからのありがたいお言葉も済んだところで、六人で売店に入ってお土産を見る。

 流石にこういう場面ではヤマト達の好感度イベントなんかは起きないだろうし、一緒に行動しても問題ないだろう。あんまり好感度イベントなんかを考えすぎて別行動しても寂しいからな。

 

 ……お、これは…………

 

「このウーパールーパーのキーホルダー、なかなかイカしてると思わない? この道の駅のマスコットのウーパー君って言うらしいよ」

 

「うーん、ちょっとリアルすぎるかな……」

 

「はっきり言ってキモい。あんたセンスないわねぇ」

 

「ほぉ? センスがないとは言ってくれるじゃないかアリサちゃん。ではアリサちゃんがこれだと思うお土産とはなんぞ!?」

 

「ふふふ、よく聞いてくれたわね……これよ! このめんだこキーホルダー、この潰れた目がキュートでしょ? 鮫島にお土産として買おうかしら!!」

 

「う、うーん……確かに可愛いけど、これはこの道の駅とは関係なさすぎないかな?」

 

「なんならこれ商店街の雑貨屋でも売られてるぞ。もっとここでしか買えないもの買おうぜ?」

 

「ぐっ!」

 

 すずかちゃんとヤマトの言葉に撃沈したアリサちゃん。フフフ、可愛さに囚われるあまりその地でしか変えないものをと言うお土産の鉄則を忘れてしまうとは……君も人のことを言えないじゃないか。

 

「それにしても……ここのキーホルダーは良いのないなぁ。この剣型の抜刀できるキーホルダーは男の子としてロマンが湧くけど、お土産屋ならどこでも買える代物だしな」

 

「ロマンはよくわかんないけどそうだねぇ。なのはちゃんとひなちゃんは良いのあった?」

 

「よくぞ聞いてくれましたすずちゃん! ひなはこれ、このルーパーちゃんキーホルダーだよ! 小っちゃい目に大きな口が可愛いよねぇ。ランドセルにつけるからママに買ってもらお〜」

 

「なのははこのヒョウモンダコなの! この紫のつぶつぶが綺麗でしょ!?」

 

「……あっちにお土産用のお菓子とかあるし見に行ってみるか」

 

「そうだね」

 

 ヤマトとすずかちゃんはそう言って菓子折りを見に行ったのであった。

 

 その後、各々お土産を購入した俺らは小腹が空いたということで、ソフトクリームを買い食いすることにした。

 何味にするか俺含め悩んだものの、なのはちゃんが抹茶味、アリサちゃんとヤマトがチョコ、俺とすずかちゃんがミルク、ひなちゃんはチョコとミルクのミックスを購入。

 

「ふふん、アタシはヤマトとお揃いよ」

 

「甘いねアリサちゃん……」

 

「わたしとすずかちゃんはヤマト君と違う味だから、一口どうぞってできるの!」

 

「な!? 迂闊だった……で、でも同じ味でもあーんは出来るから……!」

 

 いやいや、そんなに食わせたらヤマトが腹冷やしてトイレから出て来れなくなる……いや、逆に腹壊させるのも面白そうだな。もしみんながアーンするなら俺のも食わせるか。

 

「……ん? レオ、なんか企んでないか?」

 

「なんのことかしらん?」

 

 そんな邪な考えを勘付いたヤマトの追求を華麗に回避しながら落ち着ける場所を探していると、屋外に広めのベンチがあった事を思い出し、そこで食べようとソフトクリームを落とさないように気をつけながら外に出る。

 するとそこには……。

 

「……これ、おいしいな」

 

「あれ、フェイトちゃんなの」

 

「あ、ヤマトになのは……それにみんなも」

 

 ベンチに座り、ちびちびと美味しそうに抹茶ソフトを味わっていたフェイトちゃん。

 合流は旅館での筈だったが、聞いているとジュエルシードの捜索を切り上げてここで一休みしてから旅館へ向かうつもりだったようだ。

 

「それでこのソフトクリーム? ……ってのに興味が湧いちゃって……つい」

 

「そうだったんだ。あ、フェイトちゃんも抹茶にしたんだね。わたしとお揃いなの!」

 

「ほんとだね。なのは」

 

 偶然とは言え思ってもいないところで友人と会うのはなんだか嬉しくなるもので、フェイトちゃんの座ってたベンチに座らせてもらい仲良くソフトクリームを食べ始める。

 ……このベンチには六人までしか触れなかったから俺は立ってるけど……まぁ、精神的年長者だしこれくらいはね。

 

「ヤマト君、ミルク味も美味しいよ。ほら、あーん」

 

「にゃ!? すずかちゃんずるいの! 私のもどうぞ!」

 

「あ、二人とも……ヤマト! アタシのも一口あげるわ!!

 

「え、あ、じゃあわたしも……少し溶けちゃってるけど』

 

 だが平和的に美味しかったねで終わるわけもなく、ヤマトラバーズのみなさんはヤマトの前に自らのソフトクリームを差し出す。

 

 ………………。ニヤリ

 

「そ、そんなに食べられないんだけど……と言うかアリサのはオレと同じ味だ「おいヤマト。俺のソフトクリームはすずかちゃんと同じ味なんだけど、かけてもらったチョコスプレーが合うんだよ。オラ、食えよ」モガッ!?」

 

「? よく分からないけどひなもやる〜! はい、ヤマト君。ひなのも一口あげるからヤマト君のも一口頂戴!」

 

 女子からのアーンを断る失礼なヤマトの口に自らのソフトクリームを押し付けてやっていると、ひなちゃんもよく分からないままにヤマトラバーズ達の真似をする。

 結果、ヤマトは予想通り腹を壊しトイレに駆け込んでしまったのだった。ザマァ。

 

「……ヤマトには悪い事しちゃったかも。後で謝らないと……」

 

「そうね。ちょっとムキになり過ぎたわ……」

 

「おーい、フェイトー!」

 

「あ、アルフ」

 

 トイレへ行ったヤマトの姿にやり過ぎたとなのはちゃん達が反省していると、オレンジ色の髪にイヌ耳を生やした女子高生くらいの女性が駆け寄ってくる。

 それを見たフェイトちゃんは笑顔で彼女に駆け寄る。

 

「どうだい、ちょっとは休めたかい?」

 

「うん。あ、ヤマトとひなとレオの三人にはもう紹介したけど改めて……この子はわたしの使い魔のアルフだよ」

 

 以前ひなちゃんの家にフェイトちゃん共々ご馳走になりに行ったときに、途中で彼女と合流して知り合っていたのだが、なのはちゃん達は初対面という事で改めてアルフを紹介される。

 というかヤマトも何気に紹介されてるのな。

 

「フェイトから話は聞いてるよ。アタシはアルフ、フェイトの使い魔さ。ウチのフェイトと仲良くしてくれてありがとうねぇ」

 

 笑ってそう言いながらなのはちゃん達をワシャワシャと撫でるアルフ。

 彼女にとってフェイトちゃんは大切なご主人であり、可愛い妹のような存在のようで、ひなちゃんに対してもこんな感じで頭を撫でてたなぁ……。

 俺はオッドアイって事で警戒されたけど。

 

 その後ヤマトがトイレから帰還した直後、そろそろ出発しようと言う士郎さんの声を聞いた俺達。フェイトちゃん達とはせっかくここであったのでみんなで行こうと言う話になり、フェイトちゃんとアルフは羽鳥さんの車に乗ってみんなで旅館に向かったのだった。




 〜おまけ〜

「ごめんね〜。ちょっとキツいかもだけど四人で座ってね〜」

「あの……やっぱりわたし飛んで行ったほうがよかったんじゃ……」

「大丈夫なの。ちょっとだけ窮屈だけどみんなと一緒のほうが楽しいよ!」

「うんうん! ……でもちょっと大変だなぁ……あ、そうだ! レオ君の上に座っても良い?」

「事故が起きたときに危険だからダメ。我慢しなさい」

「え〜……」

「パパ、絶対に事故を起こさないように超安全運転でお願いね」

「そりゃもちろんだけど……レオ君の上にひなが乗るのは断じて許さないからね?」
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