見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます! 作:蒼天 極
道の駅で色々ありながらも旅館に到着した俺達。
早速温泉を堪能したい所だがこの温泉、一つ重大な問題があった。
それは……
「見て。10歳以下は男湯女湯どっちでもオッケーみたいなの!」
「私達は9歳だしいけるね! フェイトちゃんはどうかな?」
「わたしも9歳だから大丈夫」
「決まりね。ヤマト、温泉行くわよ!!」
そう、ここの温泉は10歳以下は男湯女湯どっち入ってもオーケー。
まだ幼くてそういう間違いが無いだろうし、仲良く入ってほしいという旅館側の配慮だろうが、精神年齢が高いなのはちゃん達にとって、これは絶好のチャンスということでヤマトを女湯に誘ってしまった。
…………。
「男湯行くぞユーノ君!」
「ぐぇっ! ……あ、ヤバ……キュ、キュー!」
「れお君も入ろ〜? ……あれ?」
「レオならすごい勢いでユーノと一緒に男湯に駆け込んだよ?」
どうせひなちゃんが俺を巻き込むのは目に見えていたため、なのはちゃんの肩に乗っていたユーノ君を鷲掴みにしてとっとと男湯に逃げ込んでやったぜ。
ここは子供の身体を活かして桃子さんや羽鳥さんなんかの身体を拝むべき所なのかもしれないが、そんな図太い事が出来るのはスケベ系のラノベ主人公とヤマトくらい。
普通の一般ピーポーは罪悪感とか羞恥心とかで入れるものではないのだ。
それに今回は士郎さんと恭也さんがいるし、女湯に入ろうだなんて自殺と言っても良いからな。
実際、女子組に背中を押されて女湯に入ったヤマトを殺意のこもった目で見てたし。もう奴は明日の朝日を拝め無いだろう。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。
◇
その後男湯へ逃げ込んだ俺はユーノ君の身体を洗ってあげていた。
コイツ、フェレットに変身してるだけの人間だから変身解かせれば自分で洗えるだろうけど、他の人にバレたら面倒だし、さっきついつい強めに握ってしまったからこれくらいはな。
「ふんふんふふ〜ん……っと、よしユーノお湯かけるから動くなよ?」
「キュー!」
イタズラで洗面器に入れた冷水を思い切りかけてやりたい所だが、これでは側から見ると動物虐待に見えるため、今回はシャワーを弱目にして暖かいお湯をかけてやる。
そして洗面器に温泉のお湯を張ってユーノのそばに置いてやると、ユーノ君はそこにいそいそと入り気持ちよさそうに目を瞑った。
「キュ〜……」
『ふぅ……良いお湯だねぇ。洗ってくれてありがとね』
『どういたしまして。これ貸し一つな。因みに俺の貸しには利子がある上に、利子は
『悪徳金融どころの話じゃない! なんだよその利子だけで人破滅させられる鬼のようなシステムは!?』
『あはは、大丈夫だって最悪ベーリング海でカニ取ってきてもらうから』
『昨日なのはとテレビで見たよ! かなり過酷なところじゃないかなそこ!?』
「ユーノをじっと見つめてるけど、レオ君は温泉に入らないのかい?」
「うぉう!? ……し、士郎さん、気配消して背後にまわり込まないで下さいよ! 俺を暗殺する気でしたか!?」
念話に集中しすぎたのか、士郎さんが背後から声をかけていた。危ねぇ、今の下らないやり取りを口でしてたらユーノがお喋りできる不思議な動物だってバレる所だった!
なのはちゃんは親には魔法のこと話してないって言ってたし、俺からでしかも下らない理由でバレたなんて知られたら確実に
「ハハハ、もう暗殺なんてしてないよ。気配を消すのはなんとなくの癖さ」
「そうですか。それなら安心……え、今もうって言った? 過去に暗殺はしてるって認めた? 桃子さんにストーキングしてた人たちとか秘密裏に消してたんですかね?」
「…………」
「この状況で無言はやめて!!」
士郎さんの身体には古傷が沢山あるからこの冗談は笑えない。というかそこの胸の傷、刀で斬られないとまず出来ないような傷だろそれ? しかも脇腹の火傷の跡も爆風を食らわないとつかないような傷だし……。
これはマジでやってるかもしれない。
「父さん、その冗談は洒落になってないから。大丈夫だ麗央、ウチは至って健全だ。……命が大切ならこれ以上の追求は……分かるな?」
「」コクコク
どんな家系だよ高町家!?
驚愕のあまりビクビクしてると、恭也さんは小さく笑いこれも冗談だ。と言った。
なーんだ、一本取られた。……でもこれ以上の追求はやめよう。勘のいいガキは真っ先に消されると相場が決まってるのだ。
「レオ君はまだ身体洗ってないだろう? 驚かせたお詫びに背中流してあげるよ」
「ありがとうございます」
その後士郎さんに背中を流してもらったお礼に俺も士郎さんの背中を流してやり、念願の湯船に浸かる。
「「あ"〜生き返る〜……」」
「父さんはともかく麗央まで……おっさん臭いぞ?」
俺の精神年齢はとっくに40歳のおっさんだからいいんですー。
……最近若い子と一緒にいるせいか精神が退行してるような気もするけど……前世で碌な子供時代を歩めなかった分、今楽しんでると思えば……うん。
それにしても…………
「士郎さんも恭也さんも凄い筋肉ですねぇ。やっぱ剣道って鍛えられるんですか?」
「お、剣道に興味あるのかい? ……いや、この筋肉のつき方は剣士特有のものだし、どこかの道場で剣道でもやっているのかな? ……というか、槍とか無手とかもやってる筋肉のつき方だ。武術を極めたいなら一つに絞った方がいいぞ〜?」
すげぇ語りますやん士郎さん。
確かに俺は遠距離でちまちま魔法撃つより近接で殴るほうが性に合ってるから、中国武術を中心に色々な流派について調べて鍛えてるけどそれだけですねん。
と言うか俺の筋肉のつき方で武術をしてるかが分かるのはともかく、やってる分野まで見極めるってどんだけすごい観察眼持ってんですか士郎さん?
「いやー俺のなんて金髪対策も兼ねて趣味でやってるだけですんで。俺こんな見た目だからアイツによく喧嘩売られるし、ひなちゃんをアイツから守らないといけないし」
「……お前も苦労してるんだな。竜弥には俺もなのはも悩まされている。困ったことがあれば、いつでも言うんだぞ」
「そうだぞ〜。レオ君ならウチに剣学びに来ても大歓迎だからな? どうせ教えるの恭也だし」
「ありがとうございます」
御神流か〜……思えばヤマトもアリサちゃんもかなり剣の扱いが上手いし、桃子さんの使う神速もかなりの脅威……習得できれば今よりずっと強くなれるだろう。
でもその為にせっかくのアリサちゃんとヤマトの時間を邪魔して良いものか……まぁ、これはじっくり考えるとするか。
そんな事を考えていると温泉のドアが開く音がする。
ひなちゃんパパが入って来たのかしら? ならいつもお世話になってるし背中くらい流してあげなければ……
「お〜い、れおく〜ん!」
「ぶっ!? ひ、ひなちゃん!?」
そこにいたのはひなちゃんパパでなく、ひなちゃんご本人。
ど、どうしてこんな所に……そういえば10歳以下は男湯女湯どっちもオーケーだったな!? まさか女子がやるだなんて思わなかったよ!
「あのねあのね、向こうに子供用温泉ってのがあってね。すべり台とかもあるの! いっしょ行こうよ!」
「え、えぇ? ごめん俺これからサウナ入って水風呂で身体を整えるという大切な用事が……」
「え〜、入ろ〜よ〜!」
「だからダメだって。ほら、早く女湯に戻りな?」
「うぅ〜……」ジワッ
「レオ、ここでひなを泣かせたら……分かってるな?」
「あ、ハイ」
今まで参加しなかったからかどうしても今回は一緒に入りたいようで、またもや無意識に泣き落としを使って来たひなちゃん。桃崎家と家族絡みの付き合いがあると言う事で、恭也さんに睨まれてしまった俺には拒否権なんてものはなかった。
仕方ない、サウナは明日の朝に入らせてもらおう。
「……行きます」
「ほんと!? それじゃあ、早く行こ。なのちゃん達も待ってるよ〜」
「なのは? ……レオ君、行ったらどうなるか……分かるね?」
「なにそのジャイアニズム、じゃあどうしろと!?」
いや、分かるよ。分かりますよ!? なのはちゃんの裸体を拝ませたく無いと言う親心はしっかりと分かりますとも。
でもさぁ……ひなちゃん泣かせたらアウト、子供温泉の方へ行ってもアウト。どちらのルートも破滅しかねえじゃねえか。生存の道は無いのか生存の民はァ!!
「………………」
「れお君?」
……どっちを選んでも待っているのがあの邪神の元への強制送還と言うからには、悔いのない選択を選ばなければならない。
果たしてどちらが良いか…………。
…………よし。
「待たせたら悪いしね。さっさと行こっか?」
「うん!」
「「……」」ギロリ
どちらにしても破滅を免れないのなら、ひなちゃんを泣かせない事を優先させて頂きました。
とりあえず風呂上がったら真っ先に遺書でも書いておこう。
『なんと言うか……ドンマイレオ!』
『……そう言えばお前いたな』
『……え?』
「いくぞー、ユーノ君!」
「キュ!?」
『ちょっと、なんで僕まで巻き込むのさ!?』
『うるせぇ、こうなったらテメェも道連れなんだよぉ!!』
貴様だけのうのうと温泉を堪能させてたまるか、貴様も俺と同じように女子と一緒にお風呂に入ると言う恥ずかしさを味わうがいいわ!!
なーに、お前はフェレットだから高町親子の制裁対象じゃねえよ!!
◇
「お〜い、連れて来たよ〜!」
「あ、良いところで来たわね。丁度水鉄砲あったし水鉄砲勝負するんだけど、3対3だと一人余っちゃうの。レオ、アンタ審判やりなさいよ」
「さりげなく仲間外れにされた件について問い詰めたい気分ではあるが、それはそうと一ついいかい?」
「何よ?」
「お前ら羞恥心って知ってる?」