見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます! 作:蒼天 極
その後温泉から上がった俺は、女子と一緒にお風呂に入ってしまった件について責任を取るべく、そのまま遺書を書くために受付に紙とペンを貰いに行く。
だがなのはちゃん達がヤマトを庇ったことでついでに俺も許された。
「次はないからな?」
「はい。……でも次回からはどちらかの選択肢に生存できるルート作っておいてください。今回は行っても死刑、断っても死刑だったから悔いのない選択をしたんですし」
「……善処する」
おいそれやらない時の常套句ではないですかねぇ?
マジで頼みますよ!? 次やったら9歳のこの身体を生かして桃子さんとかに泣きついてやりますからね!?
「フェイトちゃん。あっちに牛乳売ってるの!」
「ほんとだ。でもなんで牛乳?」
「それはね、温泉に入った後の牛乳は格別だからだよ」
どう言うやり方で桃子さんに泣きつこうかを考えながらなのはちゃん達と合流すると、彼女らは温泉後の牛乳を選んでいるところだった。
この後ご飯だから飲まないほうがいいと思うけど……まぁ、入浴後の水分補給だし別にいいか。
「牛乳の他にもコーヒー牛乳にフルーツ牛乳。色々あるんだね。わたしはどれにしようかな……」
「牛乳がいいと思うよ?」
「そう? それじゃあそれにしようかな」
それにしても、なのはちゃんってば積極的にフェイトちゃんに話しかけたりしてるよなぁ。
フェイトちゃんってたまに寂しそうな目をするけど、なのはちゃんはそれが心配なのかもしれないな。
まぁ、それとは別に純粋に友達になりたいって言うのもあるんだろうけど。
「お、フルーツ牛乳あるじゃん。やっぱり風呂の後はフルーツ牛乳に限るよな!」
「……わたしもフルーツ牛乳にしよ」
「フェイトちゃんが裏切ったの!」
ガーンとショックを受けるなのはちゃん。
なのはちゃんの思いとは裏腹に、フェイトちゃんの優先順位はヤマト>なのはちゃんだったみたいだ。可哀想に……。
「さて……たまには趣向を変えて牛乳でも飲もうかね……」
「ちょっと、アンタコーヒー牛乳派でしょ!? 浮気は許さないわよ! こっちにしなさい!!」
「納得いかねぇ!!」
アリサちゃんによって半強制的にコーヒー牛乳になりました。
いや、確かに風呂上がりに飲むのはコーヒー牛乳派だけどさ……たまには趣向を変えてもいいじゃないか……。
その後フルーツ牛乳を飲んだフェイトちゃんはフルーツ牛乳をかなり気に入り、風呂上がりに飲むのはフルーツ牛乳の派閥に入ってしまった。
◇
その後旅館の料理に舌鼓をうち、トランプ勝負に興じていた俺達。
フェイトちゃんはトランプもやった事がないと言う事で、簡単なババ抜きを教えてみんなでやっていたが、フェイトちゃんとひなちゃんの全面対決となっていた。
「…………」
「…………」ムゥ……
「…………」
「…………」パァアア
「……えい」
「あー、取られちゃった! またひなの負けだよぉ!!」
「ひな、顔に出過ぎだよ……」
ババ抜きに必要なのはポーカーフェイス。
いかに相手の表情を見破りババを回避するか、いかに相手を騙してババを引かせるかが重要になる。この手の勝負ではすぐに顔に出てしまうひなちゃんには勝ち目がないようだ。
「むぅううう……もう一回! 次はひなが勝つもん!!」
「また? ひなも懲りないわねぇ」
「あはは、いいよ。もう一回やろっか……ふわぁ……」
眠そうに欠伸をするフェイトちゃん。
……フェイトちゃんは夜更かししてジュエルシード探してるっぽいし、ひなちゃんには悪いけどこんなくだらない理由でいつまでも夜更かしさせるわけには行かないよな。今日くらいはしっかり寝させてやらないと……。
「ひな、フェイトが眠そうだ。続きは明日以降にしてもう寝ないか?」
「むぅ……眠たいならしょうがないよね」
ヤマトも俺と同じことを考えていたようで、続きをしたがるひなちゃんを諭す。
と言う事で俺らは早いけどもう休む事にした訳だが、一個問題が出て来た。
「一緒に寝るのヤマト君!」
「一緒に寝ましょヤマト!」
「一緒に寝ようよヤマト君」
「一緒に寝てもいい? ヤマト」
「流石に四人と隣は難しいだろう?」
「「「「…………」」」」
……誰がそこのリア充野郎と隣で寝るかだ。
前回のように誰かが上に乗ると言う手段も、四人に増えた時点で誰かが一人余ってしまうのは確実。
そして三人以上寝るいい案も俺は思い浮かばなかったため、誰か一人は一緒に余ってしまうのだ。
「しょうがない。大当たり一枠、当たり二枠、外れ一枠を掛けて勝負するわよ。負けた人はひなの隣ね」
「え、その理論だと俺余るじゃん。いや、別に布団一つ占領するからいいけどさ……」
「アンタはひなともう隣が空いてるじゃないの」
「あ、そっか」
「当たりで妥協しても当たる確率は75%……でも今回は大当たりをとってみせる!」
「負けないの!」
すずかちゃん達がなんとしても大当たりを掴んで見せると息を巻く横で、フェイトちゃんはクイクイと俺の袖を引っ張る。
「どうしたのフェイトちゃん。俺にはひなちゃんいるから君に乗り換える気はないよ」
「うん違うからね? 気持ち悪い」
「グフッ!?」
ナチュラルに気持ち悪いと言うとは……フェイトちゃんって意外と口撃力高いよなぁ……。
ま、まぁ客観的に見れば確かに今の発言は気持ち悪かったし、言われても仕方がないか。
「そ、それでどうしたん?」
「当たりってヤマトの両隣りのことだよね、なら大当たりってなんなの?」
「ヤマトの上に乗って寝る。隣で寝るより密着出来るから大当たりなんだよ」
「そんな素敵なことを考えた人は天才だね。絶対に負けないよ!」
「お褒めいただきどうも」
大当たりについて疑問に思っていたらしいフェイトちゃんだが、大当たりの内容を聞くと目を光らせてなのはちゃん達のところへ向かった。
すっかりヤマトにゾッコンになっちゃって……さーて、今回はどうなるかな……?
〜一時間後〜
「「「「あいこでしょ! ……あいこでしょ! ……あいこでしょ!!」」」」
「いつまでやってんねん」
ほら見ろよ。待ちくたびれてヤマトもう寝ちまったぞ。それにひなちゃんも俺の腕を抱き枕がわりにしてスヤスヤと夢の中だし。
特にフェイトちゃんなんかはさっさと寝ないと不味いんだから、いい加減決着をつけちまいな!!
「あいこでしょ! あいこでしょ! ……やった、私の一人勝ちだね!」
「大当たりはすずかね。悔しいけどしょうがない、さぁなのは、フェイト、決着をつけるわよ!」
「「うん!」」
ようやく一人決まり負けた三人が再びじゃんけんを始めるが、流石に三人でならばあいこも長くは続かず、結局ヤマトの隣で寝るのはアリサちゃんとフェイトちゃん。負けてひなちゃんの隣で寝るのはなのはちゃんとなった。
「にゃ〜……負けちゃったの……」
「可哀想ななのはちゃん……!! ひとえにテメェがじゃんけんよわ「そのネタはもうやったの」あれ?」
いけねぇいけねぇ。一度使ったネタを何度もしつこく披露するわけには行かないからな。
指摘してくれたなのはちゃんに感謝していると、当の彼女はヤマトの隣を諦めきれないようで、レイジングハートからジュエルシードを一つ取り出すと、いそいそと寝る準備をしていたフェイトちゃんの元へ向かう。
「……フェイトちゃん。ジュエルシード一個あげるから交換して?」
「ダメだよなのは。わたしが勝ったんだか……え、ジュエルシード!? ……うーん…………」
あ、悩んでる。全力で葛藤している。
ジュエルシードを集めることを至上命題にしているフェイトちゃんが、ジュエルシードとヤマトの隣を巡り全力で葛藤している。
「ちょっとなのは? じゃんけんで決まったことなんだから諦めなさいよ」
「そうだよ。あんまり聞き分け悪いと、レオ君の隣で寝てもらうよ?」
「それは嫌なの!」
「俺は罰ゲーム枠かよふざけんな。ニコポナデポの刑に処してやろうかコラ?」
「ちょ、それはやめて! それリュウヤ君を思い出して嫌な気持ちになるから……!」
「ククク、嫌な気持ちになるからこそお仕置きは意味があるのさ。さぁ、潔くO☆SHI☆O☆KIされなすずかちゃん……」
逃げようとするすずかちゃんに一歩一歩にじり寄りたいが、ひなちゃんが俺の腕を抱き枕にしていると言う事でどう動こうか考えていると、この旅館の近くで魔力反応を感じる。……ジュエルシードだ。
「にゃ〜、寝ようとしてたのに流石にそれはタイミングが悪すぎるの……」
「……しゃーない。俺行ってくるからみんな先寝てていいよ」
「何バカな事言ってんのよ。一人でなんて水臭いわよ。せめてさっき失礼なこと言ったすずかを連れて行きなさい。その隙にアタシがヤマトの上で寝るから」
「酷いよアリサちゃん!?」
「冗談よ。今起きてるメンツでさっさと封印行くわ「……ん〜、うるさい…………って、この反応……ジュエルシード?」あ、ヤマト……すずかがうるさくするせいで起きちゃったじゃないの」
「ご、ごめん」
その後、ヤマトもジュエルシードの封印に向かうらしいという事で、未だ呑気に寝ているひなちゃんを除いた全員で向かう事になったのだが、ここで更に一つ問題が発生する。
「ひなちゃーん、悪いけど俺の腕離してくれない?」
「スピ〜……」
「お〜い、ひなちゃんや〜。もしも〜し?」
「スピ〜……」
熟睡してるひなちゃんが俺の腕を離してくれない……!
仕方ないため、ひなちゃんを起こさないように細心の注意を払いつつ優しく優し〜く起こそうとするが、逆にガッチリホールドして更に逃げられなくしてしまった。
「スピ〜……エヘヘェ」
「……仕方ない。レオは先に寝てていいぞ。ここはオレ達でなんとかするから」
「いや、そう言うわけには行かんでしょ? 金髪が乱入してくる危険もあるって言うのに……仕方ない。こうなれば最後の手段だ。ごめんねひなちゃん。おーきーてー!」
「ん〜……」
ひなちゃんは中途半端な時間に起こされるとブチギレるのだが、怒られる覚悟を決めて彼女を少々乱暴に揺さぶるのだった。
◇
「むぅうううう!」
無理やり起こされて外に連れ出されたひなちゃんは予想通り不機嫌になってしまい、頬を膨らませてながらそっぽを向いてしまっていた。
「ごめんねひなちゃん。でもジュエルシードは封印しないといけないから……」
「むぅうううううううう!!」
「ひなってばすっごいご機嫌斜めね」
「にゃはは……仕方ないよ。気持ちよさそうに寝てたし」
だよねぇ。本当に悪い事しちゃったよ。
明日お菓子買ってあげるからと言ってなんとか許してクレメンス。
そう言いながら頭を撫でてあげるが一向に機嫌は良くならない。でも俺の腕を振り払わないだけまだマシかな。
そんな事をしながら魔力反応のある場所へ到着。
「あ、ジュエルシード見つけた。今日は猿に取り付いてるよ!」
「ホントだね。暴れて動物を虐めてるし攻撃してもいいよね。フォトンランサー・フルオートファ「ひなの寝る邪魔するなんて絶対許さないんだからー!! シャイニングバスター・フルバースト!!」……え?」
『ウッキィイイイイイイイッ!!??』
秒殺であった。
フェイトちゃんがバルディッシュから黄色のスフィアを発射しようとする横で、一瞬で魔法陣を7個展開してそれぞれから射出されたピンクの光線で猿に集中砲火で浴びせたひなちゃん。
魔法陣展開から光線射出までわずか1秒。
完全に不意を突かれた猿はなす術なく倒され、ジュエルシードは封印されたのだった。
「レオ君帰ろ! もうひな起こしちゃ嫌だよ?」
「ア、ハイ」
そして不機嫌なひなちゃんに連行されるように旅館へ帰還する俺の横で、フェイトちゃんとアルフは悟った目でひなちゃんを見ていた。
「……ねえアルフ」
「……なんだいフェイト?」
「わたし、あの子には勝てる気がしないや」
〜おまけ〜
「あ、いいこと考えたの!」
「どしたん、なのはちゃん?」
「誰かがヤマト君の下敷きになるようになれば四人で眠れるんじゃ無いかな?」
「……いや、流石にそれは無いわ〜。だってヤマトと上に乗る子の体重がかかるから負担が尋常じゃないし、高さが出るからヤマトの隣で寝る人達が本当の意味で隣で眠れなく「なのは……アンタそれ名案じゃない……!」え?」
「そうだよ下ならヤマトにより密着できるね!」
「よし、それじゃあ大大当たり一人、大当たり一人、当たり二人でじゃんけんしましょ!!」
「「「うん!!」」」
「……コイツら、俺が思ってる以上に変態なのかもしれない…………」
その後ヤマトの「それは流石に問題がありすぎるだろ」の一言で却下となりました。