見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます! 作:蒼天 極
「ほらほらどうしたヤマト! この程度かコラ!?」
「ぐっ……んなわけねぇだろ!!」
「おっと! ハハッ、だよなぁ。ならもう少しギアを上げさせてもらおうか!!」
「上等だ!!」
アリサちゃんに頼み込んで、先にヤマトと戦わせてもらう事にした俺は、現在ヤマトと模擬戦を行っていた。
Nワンドによる魔力剣とTチェーンソーの二刀流で手数も二倍の筈が、流石はオリ主。先程までぼーっとしていた癖に、すぐに気持ちを入れ替えて、凄まじい技量で俺の攻撃を弾き反撃を行ってくる。
「ふわぁ……ヤマト君もレオ君も凄いの……」
「二人って本当はあんなに強かったんだね」
「うぅん。れお君も本気デバイス使ってないし、ヤマト君もレアスキル使ってないからまだ本気出してないよ。えぇっと……大体60パーセントくらいかなぁ?」
「あれで60パーセント……? ね、ねぇフェイト。アンタあの二人に勝てる自信ある?」
「……ないかな」
俺とヤマトの戦いが気になるのか、他の予選メンバーと戦わずに野次馬と化していた女子組の声が聞こえる。
ふふん、もっと褒めてくれてええんやで?
そんな事を考えていると、ヤマトは俺の隙を突いて回し蹴りを叩き込もうとしてくるが、すかさず膝を上げて、脛で彼の蹴りを受け止める。
流石に恭也さんに鍛えられてるヤマトに近接を挑むのは無謀すぎたようだな。
「……なら、遠距離攻撃でもしてみるか!」
「お前ならそうするだろうな! だが!!」
「おっと!?」
遠距離から安全に倒そうと距離を取ろうとするが、それを許すほどオリ主も優しくはない。
一瞬で俺の懐に潜り込んだかと思うと、俺が距離を取る暇を与えずに超高速で連続攻撃を叩き込んでくる。
「えぇ!? 今ヤマトが瞬間移動でレオの懐に……!?」
「あれは神速ね」
「神速?」
「わたしのお家に伝わる御神流って言う剣道で使う技の一つなの。瞬間的にだけど凄い速さで動けるから、これを極めた剣士の前では間合いも距離も武器の差も全てがゼロになるってお父さんとお兄ちゃんが胸を張って言ってたの」
「いつ見ても凄いよねぇ。……でもレオ君、その神速を対処してる…………」
「なのちゃんのお母さんといつも追いかけっこしてるからねぇ」
ひなちゃん、追いかけっこちゃう。商品をかけた戦いや。
それにヤマトの神速は未完成。週に一回以上桃子さんとやり合ってる俺からしたら、むしろ遅く感じてしまう。これでは神速ではなくただの加速だな。
「この間合いからは逃がさない……!」
「ならお前が離れろや、暴風域!!」
「な!?」
ヤマトの剣撃をFガントレットを盾代わりにして防御していたが、剣撃の合間を突いてWファンメランを展開して間合いから吹き飛ばす。
デバイスを持ち替える訓練は徹底的に行っているため、0.1秒もかからずにデバイスチェンジ出来るのだよ。
「Mブラスター展開っと。さぁ、撃ち合おうか!」
「チッ! 上等だ!!」
気流を乱されて地面に落下したヤマトに向かってMブラスターを構えると、地面に着地したヤマトは舌打ちをしながら刀と銃を合体させて粒子砲型に変形させて、それを俺に向ける。
そして互いに魔力を込めて、いつでも撃ちあえるように備える。
「くらえ。ルインズスマッ…………」
「……ん?」
だがヤマトが必殺の砲撃を放とうと引き金を引いた瞬間、彼の動きが止まる。
その瞬間のヤマトの表情はまるで本当にこれを撃っていいのかと葛藤するような、撃つのが怖いと言うような表情だった。
「隙を見せてくれてありがとよ! マキシマムブラストッ!!」
「……ぁ…………ぐぁあああああっ!!」
俺もこの状況で空気を読んで「どうした?」と言ってやるほど優しくはない。砲撃を躊躇う隙に容赦なく砲撃を叩き込んでやった。
「ヤマト君、大丈夫なの!?」
「立てる?」
「……あ、あぁ」
撃墜されてなのはちゃん達ハーレムメンバーに囲まれるなんとも羨ま……いや、別に羨ましくないな。まぁ、それはともかくなんとも情けないオリ主。
本来ならば女子に囲まれるという役得を邪魔せずに勝てた高揚感に身を委ねながらクールに去るタイプの俺であるが、今回ばかりは気を使うなんてことをせずにオリ主の前に降り立つ。
「……ったく、まさか
「…………」
「ちょ、レオ君! そんな言い方はないの!!」
「ちょっと待ってなのちゃん。多分だけど、れお君もヤマト君を傷つけたくて言ってるわけじゃないから、今は様子を見守ってよ?」
俺の容赦のない発言に当然ヒロイン達はいい顔をしないが、ひなちゃんが気を利かせて抑えてくれたため俺は話を続ける。
今度ひなちゃんの部屋にこっそり新しいオモチャ置いてあげよ。
「前のお前なら俺ごときものの数秒で倒せた筈なのにな」
「……仕方ないだろ。お前がオレよりも強くなったんだから」
「違うね、お前が弱くなったんだよ。さっきも俺より先に砲撃の準備が整ったのに撃つのを躊躇いやがって」
「それは……」
「大方二年生の頃に俺の腹に風穴空けて殺しかけた件についてフラッシュバックでもしたか?」
「……え? ちょ、レオ。なによそれ……」
「ヤマトが……レオを殺しかけた…………?」
「……ヤマト君が昔れお君との模擬戦でレアスキルを使ったの。でも、ヤマト君のレアスキルは力が強すぎて……れお君のシールドだけじゃなくてお腹まで貫通しちゃったの」
「解説ありがと、ひなちゃん」
そう。それこそヤマトが今までレアスキルを使ってこなかった理由だ。
コイツのレアスキルで強化された砲撃は、非殺傷設定の砲撃だった筈なのに、殺傷力を持ってしまい俺のシールドとアスカの持ち手と俺の腹をぶち抜いてしまった。
丁度当時居合わせていたひなちゃんが大急ぎで、非常に強力な回復魔法をかけてくれたお陰で、かろうじて死なずに貧血程度で事なきを得たが、オリ主とはいえ前世では戦いのない世界で暮らしてたヤマトの心にトラウマを植え付けるには充分すぎたのだ。
お陰様で我が最高傑作のデバイスを中破させた件について文句を言うに言えなかったよクソッタレ。まぁお陰様でアスカの耐久力をあげようって考える良いきっかけになったけどさ。
「……あぁ。最近訓練じゃなくて実戦で戦ってるからなのかな。お前を殺しかけた夢をよく見るんだよ。しかも今日はお前が死んで……葬式になって、周りから責められる夢まで見てさ。あのときはひながいたからなんとかなっただけで、今日の夢は最悪の未来だったんだよ……」
「それでなんだか今日はずっと心ここに在らずだったんだね」
「……分かってはいるんだよ。あのレアスキルを使わないせいでみんなに迷惑がかかってるって。あの巨大な大木が生えたときもレオがいなかったらとんでもないことになってた。でも……どうしてもこの能力を使うのが……俺は怖いんだよ」
「「「「ヤマト(君)……」」」」
……よし、これでヒロインズ達にヤマトがどう言うトラウマを抱えてるか教えてやることが出来たな。
『それじゃ、ヒロインズ。ヤマトの事任せたよ』
『……え、ふぇえ!?』
『ちょ、任せたって……いくらなんでもいきなりすぎるよ!』
『そうよ! ヤマトが今日元気なかった理由を聞き出すだけ聞き出して後はアタシ達に丸投げって……! そりゃあ、アタシ達も励ましてあげたいけど……』
『ごめんごめん。……でも、この件に関して俺が何百回も気にしてないって言ってるのに、アイツは悩み続けてる。俺じゃコイツを励ます事は出来ないんだよ』
アイツからしたら、俺が
え、アスカを中破させた件? そりゃお前あれだよ。逆恨みってやつだよ。
『それにさ、トラウマを払拭させることが出来るのが君達しかいないって思ってるんだよ。勝手して悪いけど良い機会だ。どんな結果になっても責めないから、言いたいことをこのオリ主に言ってやってあげて』
『……分かったの』
『上手く言えるか分からないけど……』
『私達の気持ち……しっかりヤマト君に伝えてみせる』
『せっかくくれたチャンス。無駄にはしないわ』
念話でそう言うと、意を決したように俯いているヤマトの方を向くヒロインズ。
さて、俺は心配そうに見つめてるひなちゃんと一緒にここから先の様子を見させていただきますか。
俺が様子を見るのに専念してから、一番最初に口を開いたのはなのはちゃん。
「……ねぇ、ヤマト君なんでしょ? わたしのお父さんの怪我を治してくれたの」
「それは……」
「だっておかしいよね。なのはのお父さんが大怪我して入院してるって言った次の日にお父さんは目を覚ましたの。しかももう動かないって言われてた箇所も問題なく動かせるようになってた。みんな言ってたよ、奇跡だって。……でもヤマト君が能力を使ってくれたんだよね?」
以前翠屋で士郎さんと雑談してるときに聞いた話だが、士郎さんは過去に爆発事故に巻き込まれて長期間昏睡状態に陥っていたらしい。しかも運が悪ければ一生目を覚さないとまで言われていたようだ。
だがある日急に意識が回復し、後遺症もなく退院できたと言っていた。
……まさか、ヤマトが裏から手を引いていたのか。
そんな事を考えていると、次に口を開いたのはすずかちゃん。
「レオ君とひなちゃんがいるから少し表現を濁しちゃうけど、以前私とアリサちゃんが誘拐されたときに後から恭也さん達も助けに来てくれたけど、そのときノエルが大怪我を負っちゃったよね?」
「それで生きる上で重要な箇所が壊れちゃって、もう助からないって言われてたけどヤマトが特別な魔法で助けてくれたわよね?」
「…………」
ヤマトお前、あの能力めっちゃ人命救助に使ってんじゃねえか。
と言うか生きる上で重要な箇所が壊れた……? 人に対して壊れたってニュアンスを使うか普通? いや、すずかちゃんは表現を濁すって言ってたし……これ以上考察するのはよそう。勘の良いガキは長生きできない。人生知らなくて良い事はあるのだ。
そして最後はフェイトちゃん。
……でも、フェイトちゃんって最近知り合ったばっかりだし、ヤマトの能力がどんななのかも知らない筈。流石に今回フェイトちゃんには厳しいかもしれないな。
「ヤマトと一緒に捜索してたとき、わたしが無茶をしすぎて一度倒れちゃった事があったよね。その後目を覚ましたら疲れが全部取れてて寝不足も解消されてた。あれもヤマトの魔法だよね?」
「ちょい待てぇ! お前使うのが怖いって言っておいてバッチリ使ってんじゃねえか!!」
「し、仕方ないだろ!? フェイトは無茶するから中途半端に介抱してもまた倒れるだろうし、それに高熱出してたんだから!!」
「ま、まぁまぁ。とりあえず倒れるまで無茶をしちゃってたことが判明したフェイトちゃんには後でお説教するとして「あ……」……ヤマト君の魔法は確かに誰かを傷つける危険があるのかもしれない。でも、ヤマト君の魔法のおかげで助かった人もいるの」
「なのは……」
「アンタがいなかったら、士郎さんやノエルさんは今生きてないかもしれないのよ。胸を張りなさい」
「アリサ……」
「それにレオ君の一件でヤマト君は凄く自分を責めてた。それなら、もう同じ失敗はしないと思うな?」
「すずか……」
「少なくともわたし達は、ヤマトのその魔法に感謝してるんだよ?」
「フェイト……」
ヒロインズ達に励まされて感極まったような表情を浮かべるヤマト。そして、その次の瞬間にヒロインズ達が突如こちらを向く。
え、これ俺達も何か言ったほうが良いパターンかしら?
「……ひなちゃんは言いたいことある?」
「えぇっと……えっとね……正直ひなはまだちょっとヤマト君のレアスキルは怖いよ。だってれお君はそれで怪我しちゃったから。でもその怖さを一番知ってるのはヤマト君だから。えぇっと……ヤマト君は反省してるのでもう使っても良いと思います!!」
「ひな……」
「さて、最後は俺か。……こほん、これ以上気にされるとこっちが迷惑だ。被害者の俺が気にしてないって言ってんだから、もうそれで良いんだよ。いつまでもウジウジ悩むな! しゃんとしろオリ主ッ!!」
「レオ……」
ヤマトは一度俺らの顔を見るとやがて俯き出した。
ヒロイン達に励まされたらちょっとは元気になると思ったが、急に俯き出して逆効果だったかしら……。
だがそんな俺の不安を裏腹にヤマトは急に立ち上がると「うぉおおおおおおお!!!!」と大きな声で叫ぶ。
コラッ! 山の中だからって急に叫ぶんじゃありません! ビックリするでしょうが!!
「レオッ!」
「はいはい、こちらレオですよ」
「悪いけどもう一回戦ってくれっ!!」
「……普段ならこのまま勝ち逃げするタイプなんだけど、吹っ切れたみたいだし今回だけサービスしてやんよ。さっきの戦いは無かったことにしてもう一回やるか!!」
踏み台とはオリ主を引き立たせる為の存在。
ならば主人公が覚醒した直後のチュートリアル戦の相手として、俺ほどちょうど良い相手もいないだろう。
チュートリアルに使われるのはちょいとムカつくが、今回ぐらいは付き合ってやろうじゃねえか。
「それじゃあ、わたし達は下がってるの!」
「頑張ってねヤマト君!」
「良い機会だから、レオから海鳴市最強の魔導士の座を奪い取ってやりなさい!」
「ヤマト、今度こそ勝ってね!」
「二人とも頑張ってね〜!!」
俺を応援してくれるのがひなちゃんだけな件について。
しかもそのひなちゃんもヤマトと俺を一緒に応援してるし……。
…………いいもんいいもん。どうせ踏み台は損な役割って知ってるから別に良いも〜ん。
「おっと、悲しんでる場合じゃねえや。本気状態のオリ主相手だし気を抜いたら一瞬で倒されるかもだから気合い入れないとな……。チュートリアル戦で情けない姿見せんじゃねえぞ! ヤマトッ!!」
「あぁ、オレの本当の力……奇跡の魔導士の力を見せてやるっ!!」
トラウマを払拭する事に成功して、先ほどよりも勝気な表情を浮かべるヤマトは、魔力を自らの身体に循環させると口を開く。
「
さぁ、第二ラウンド開始だ。
次回、ヤマトVSレオ(二回目)